※二人目のターゲット
中学高校と生徒会長を務め、学生時代から変わらずの黒髪ロングで、見た目通りの真面目で堅物な性格。
職業は大手女性ファッション誌の出版社に勤める副編集長。
数か月前までは編集長だったが、不祥事を起こして編集長から副編集長になった。
その不祥事というのが、別の部署で編集者として勤務していた夫が、職場の女性と不倫して逮捕されたというもの。
今も逮捕されている夫の愚痴も吐かず真面目に職務に励む彼女だが、毎日のように同僚や部下から陰口を叩かれ、時に笑い者にされてかなりストレスを溜めている。
そのため、浮気・不倫を毛嫌いしており、接触した場合は通報する恐れがある。
恋愛経験は乏しく、交際人数は三人だけ。
その内、性行為をしたことのある相手は職場で出会って結婚した旦那のみ。
けれど性欲は強く、結婚生活で旦那よりも彼女の方から誘う回数は多かった。
お堅い見た目だがベッドの上では大胆で、一度発情すると自分を抑えられなくなる。
お酒に弱く、付き合いの席では呑まないか断ることが多い。
日常的に溜まったストレスを愛用のおもちゃを使って解消しているが、溜まる一方で、愚痴を吐ける気の置ける友人はいない。
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※
刑務所にて。
手錠を嵌められた和之は刑務官に連れられて面会所へと足を運ばせる。
その表情に覇気はない。
慣れない刑務所での生活に、一人残した妻である麗子への罪悪感。
「1304番。このままいけば出所まであと半年か?」
「え、ああ、はい……」
刑務官に声をかけられ返事をする。
面会所まで連れてきてくれる刑務官は、今このときだけ優しい雑談を交わしてくれる。
「出所したら、いつも面会に来てくれる奥さんとよりを戻すのか?」
「どう、でしょう……。麗子が、許してくれるなら」
「許してくれるんじゃないか」
「そうでしょうか、あはは……」
「あんなに健気な奥さん他にいないだろ。これに懲りて、出所したら奥さん一筋でいるんだぞ?」
「は、はい」
──とは言ったが、心の中に少しだけ不倫相手への想いも残っていた。
なにせ麗子とは違う若い身体に、麗子とは違う従順な態度。
悪いことだと、あんな健気な妻を裏切るわけにはいかないと、そう思っても忘れられない。
刑務所にいる間、隠れて自慰をするたびに頭の中で考えた。
麗子ではなく愛人を狂ったほど犯す妄想を。
きっと出所しても、自分は過ちを犯すだろう。
「入れ」
「はい」
刑務官に連れられて面会所に入ったが、そこには誰もいなかった。
あるのはDVDプレイヤーのみ。
わけもわからずにいると、刑務官にイスに座るよう指示された。
「えっと、こ、これは……?」
「お前の奥さんからのプレゼントだそうだ。今回は特別に、お前に視聴の機会が与えられた」
「はあ……」
DVDで何を見るというのか。
妻からの励ましのビデオメッセージか。
訳も分からずイスに座ると、和之の両腕にはめられた手錠はイスの背もたれに固定された。
「刑務官さん、これは!?」
「視聴中にお前が動かない為の処置だ」
「どういう──」
「それじゃあ、楽しんでくれよ?」
再生ボタンを押した刑務官が微かに笑っているのがわかった。
そして刑務官は退出すると、一人ぼっちの面会所で和之は再生された映像に目を向ける。
「え……?」
そこに映っていたのは妻の麗子ではなく知らない若い男性だった。
がっちりと鍛えられた男性はベッドに腰掛け、カメラに向かって手を振る。
『和之さん、見えていますか?』
その呼びかけを受けて全身が震える。
それに悪寒もした。
何せ背景が妻と過ごした寝室なのだから。
「なんだ、これ……え、なに、なんですか!?」
『驚いてますか? あなたが過ごした我が家の、それも寝室に見ず知らずの男がいて。まあ、驚いてますよね』
DVDということはこれは録画映像だ。
会話が噛み合うわけがないのに、不思議と噛み合っているように感じる。
『実はですね、警察から証拠品として和之さんと不倫相手とのハメ撮り映像が奥さんに送られたんですよ。知ってました?』
「え、そんなの……」
『証拠品なので最初から最後まで視聴して本人か確認しないといけないと言われたそうです。それを見た奥さんが悲しんでしまって。可哀想だと思いません? 最愛の、帰りを待っている旦那さんの不倫映像を目を逸らさず見ないといけないんですよ?』
青年の話す言葉を聞いて唾を飲む。
『そんなの不公平だと思うんですよ。片方だけ苦しみ続けるなんて。和之さんもそう思いませんか?』
「……」
『だから今度は、旦那さんに同じ苦しみを味わっていただこうと思って』
そう言った青年は笑みを浮かべると、不意に立ち上がる。
そして寝室の扉を開けると、部屋に入ってきたのはバスローブ姿の妻──麗子だった。
「え、は、はあ……?」
間抜けな声が和之から漏れる。
青年に連れられてベッドに座った麗子は、カメラに視線を向けると顔を真っ赤に染めて顔を背けた。
『ま、まって、やっぱ無理よ……』
妻の声だった。
正真正銘、和之の妻の声。
だが、今まで聞いたことのないような女の、牝の媚びるような声。
こんな声、今まで一度も聞いたことがなかった。
そんな顔を背けた妻の肩を抱き、顔を正面に向けさせる青年。
『ほら、旦那さんに言って』
『で、でも……あんっ♡』
胸を強く揉まれた妻の喘ぎ声。
唾が異常にあふれ出た。
『じゃあ、止めるか? それでもいいんだぞ、俺は別にな』
『そ、んな……』
『嫌ならほら、カメラに向かって言えよ。いつもみたいに、旦那じゃなくて俺を悦ばせろ』
『ん、はあ……ん……あなた』
妻は開いた口を開けて言った。
『今から、不倫するから……見て、ちょうだい♡』
恍惚とした表情は、罪悪感なんて感じておらずこれから与えられる喜びを想像しているようだった。