※三人目のターゲット
石破大学に通う二年生。
家族構成は父と母と三奈の三人家族。
父と母は小さな工場を営む。
経営状況はそこまで良くはなく、いつ倒産してもおかしくなかった。
それでも今日まで続けてきたのは、他に行き場のない従業員がいる為、なんとか踏ん張っている状況。
三奈は大学進学と共に上京。
大学にて、
三奈の両親の営む工場は、石嶋グループと呼ばれる大企業から融資を受けていた。
この融資が断ち切られると工場はあっという間に倒産する。
そのことを知った石嶋から、工場への融資をネタに恋人(セフレ)になるよう脅され、従うことに。
容姿は快活な雰囲気のある茶色のポニーテール。
学生時代はテニス部ということもあって、健康的な体型。
大学でつるんでいる連中が派手で騒がしい者が多いが、三奈自身は誰にでも優しいことから、大学でのファンも多い。
依頼人は大学の学友で、寝取るだけでなく石嶋と別れさせてほしいという要望。
♦
柏原さんから紹介されたのが三日前。
バイトって履歴書を用意して面接して合否の電話を待って……っていう段階があるのが普通だと思ってたんだけど、全部すっ飛ばして柏原さんから『この日に自宅に行って仕事して』って連絡があって──。
「今日。来ちゃった……」
タワマンを見上げながら私はぼやく。
硬直して数秒。
顔をぶんぶん振って、スマホを確認する。
「日付は今日。時間は朝の10時前。服装も派手すぎず大人しすぎず……いいのかな、これで。まあいっか、よし」
入口でうだうだ悩んでいても仕方ない。
私は覚悟を決めて自動ドアを通る。
広々としたロビーを歩き、普通のマンションやアパートではいない警備員にお辞儀をしてインターホンを押す。
『はい』
「あっ、えっとその、柏原さんから紹介いただいた渚美奈です!」
『ああ、どうぞ』
オートロックが解除される。
声は事前情報あるから若い感じがするけど、愛想はあんまり。
低い声でプロボクサーって聞いていたから、やっぱ怖い人をイメージする。
「それに、調べたけど名前載ってなかったんだよね……」
エレベーターに乗りながら昨日ことを思い出す。
プロのボクサーなんだから調べたら名前が出て当たり前なネット社会。
なのに名前を検索しても、玄栖雄吾なんてボクサーは検索に引っかからなかった。
引っかからないということはプロではなくアマ。
でも、アマチュアでこんなとこ住めるはず……。
「やっぱヤバイ人かな。でも、柏原さんの紹介だし……あー、でも、柏原さんも胡散臭いか」
確実にヤバイ案件に手を付けた感はあるけど、提示された給料はかなりの金額だった。
普通に働くよりも数倍。
だからこそ闇バイトの可能性もあるんだけど。
「風雅に内緒で来ちゃったの失敗だったかな。でもまあ、もし危なくなっても彼が助けてくれるとも思えないけど」
一応は彼女だけど、他に遊んでる子いそうだし。
キープかセフレか。
どちらにしろ、助けてと言って彼が助けに来てくれる気はしない。
と、そんなことを考えていると。
「着いちゃった」
タワマンって上に行けば行くほど家賃凄いんじゃなかったっけ。
私、何階まで来た?
考えるのを止め、覚悟を決めてインターホンを押す。
数秒。
ドアが開いた。
「やあ、待ってたよ」
「あ、えっと、柏原さんから紹介していただいた渚美奈です!」
ドアが開いて出迎えてくれた男性を見て何度もお辞儀をする。
年齢は私よりも少し上か同じぐらい。だけど生きる世界が違うみたいな、そんな雰囲気を一瞬で感じた。
全体的に顔がシュッとしていて、あんまりテレビとか見ないけどイケメンの誰かに似ていそうな顔をしている。
それに目が。
鋭くて怖いんだけど、それでも惹かれる雰囲気がある。
風雅もイケメンの分類なんだと思うけど、これは……。