※三人目のターゲット
渚美奈ナギサミオ、20才。
石破大学に通う二年生。
家族構成は父と母と三奈の三人家族。
父と母は小さな工場を営む。
経営状況はそこまで良くはなく、いつ倒産してもおかしくなかった。
それでも今日まで続けてきたのは、他に行き場のない従業員がいる為、なんとか踏ん張っている状況。
三奈は大学進学と共に上京。
大学にて、石嶋風雅イシジマフウガと出会う。
三奈の両親の営む工場は、石嶋グループと呼ばれる大企業から融資を受けていた。
この融資が断ち切られると工場はあっという間に倒産する。
そのことを知った石嶋から、工場への融資をネタに恋人(セフレ)になるよう脅され、従うことに。
容姿は快活な雰囲気のある茶色のポニーテール。
学生時代はテニス部ということもあって、健康的な体型。
大学でつるんでいる連中が派手で騒がしい者が多いが、三奈自身は誰にでも優しいことから、大学でのファンも多い。
依頼人は大学の学友で、寝取るだけでなく石嶋と別れさせてほしいという要望。
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「できるの?」
「できる、と……思います。大学でスポーツ学科に所属していて、トレーニング後の施術の基礎は勉強しましたから」
「へえ、そうだったんだ。だから佐夜子さんは君に紹介したのかな」
「どうなんでしょう、それはわからないですけど」
何より。
「自分のミスだから……」
本来は別のプロを呼んだ方がいいと思うんだけど、それでも。
「わかったよ」
玄栖さんは少し考えた後に頷いた。
「マッサージといっても全身をほぐすだけだから、頼むもうかな」
「すみません、玄栖さん……」
「気にしないでください、鵜飼さん。それよりすぐ病院へ行ってください」
「は、はい」
申し訳なさそうにしながら、トレーナーさんが部屋を出て行く。
「それじゃあ、寝室でいい?」
「しんし……あ、は、はい!」
二人っきりの空間、寝室、マッサージ。
トレーナーさんを怪我させてしまったことへの罪悪感で他のことは何も考えてなかったけど、ふと意識した。
そういえば、玄栖さん服……。
いやいや、マッサージなのに服を着てくださいなんて言えるわけない。
だけどパンツだけの格好で、ベッドの上でマッサージは。
「それじゃあ、よろしく」
「あ、はい……」
白で統一された生地のダブルベッドでうつ伏せになる玄栖さん。
大丈夫、座学だけど大学で勉強してきたから。
私は恐る恐るといった感じで玄栖さんのお尻に座り、背中へと手を伸ばす。
「いきなり力を込めるなんて、意外と大胆だね?」
「え、あっ、痛かったですか!?」
「いいや、そういうことじゃないよ。ただ緊張していたみたいだから、触っているのか触っていないのかわからないぐらいの力しか入れられないと思ったんだ。このままでいいから」
「はい、じゃあ……」
習ったことを思い出して体を解していく。
見てすぐにわかったけど、やっぱり凄く鍛えているんだな。
細く見えた体型も、触ったらほとんど筋肉だらけ。
脂肪なんてない、筋肉を覆っているのは皮だけ。
「んっ、しょ、はあ、ん……っ!」
痛いと言われないからできるだけ強く。
「そういえば、トレーニング中だったから話せなかったけど、大学生なんだね」
「はい、そうです。大学の講師に来た柏原さんに紹介してもらって」
「佐夜子さんが講師? あの人って、誰かに物事を教えることできたっけ?」
「えっと、正直なところ、あんまり……」
「あはは、だよね。完全に玉の輿で成り上った人だからね。それでバイトか。他にもバイトしてるって佐夜子さんが言ってたけど」
「居酒屋のバイトと、カフェの店員と。あと、時間があったらコンサート会場の設営とか」
「色々してるんだね。学費の為?」
「ですね。その、家族経営の工場が貧乏で……大学も、本当は行かない方がいいかなって思ってたんですけど、親が行けって。だけど、学費とか、上京するから一人暮らしでかかる出費とか頼むのもアレなんで、全部自分で出してるんです」
「え、自分で? それは……東京だと、結構大変じゃない?」
「まあ」
両親もそれはダメだって仕送りしてるけど、今まで一度も、送ってもらったお金には手を出していない。
万が一、工場が失敗したときに少しでも足しにできるように。
「偉いね。それに、少しだけ境遇が俺と似てる」
「えっ、玄栖さんとですか?」
「俺は生まれたときには両親がいなかったんだ」
「え……」
「それで孤児院に預けられたんだけど、その孤児院もお金が無かったから高校すら出てないんだ。で、喧嘩に明け暮れていたときにスカウトされて今って感じなんだ」
「そう、なんですね……。え、私よりも壮絶な気が」
「そんなことないよ。まあ、不幸自慢したいわけじゃないんだけど、似た境遇の子と話すと親近感があって少しだけ嬉しいんだ。周りには、こういう人いないからね」
「あ、それわかります。親の金で好き勝手に生きている大学の友達とかを見ると少し……」
「イラッてするよね」
「はい。あはは」
確かに玄栖さんが言うように、今の話を聞いて玄栖さんに親近感が湧いた。
仲間みたいな。
雇い主なんだけど、そんな風に思った。
「もし、喧嘩に明け暮れていたときに、佐夜子さんに拾ってもらってなかったら今ごろどうなってたか」
「え、スカウトって柏原さんにされたんですか?」
「ああ、そうだよ。まあ、正確には違うことでスカウトされたんだけどね」
「違うこと?」
マッサージにも慣れてきた頃、仰向けのまま玄栖さんに聞く。
「佐夜子さん、若い男が好きだから……。そっちの世話係でね」
「そっちの、て……え、あ」
若い男が好き、そっちの世話。
それだけでどういう関係かすぐに理解できた。