モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~ 作:とけそうだら
イングラジア魔導国南部辺境、地方都市カヴェナ。
この街に訪れる朝は、小鳥のさえずりよりも先に、街道を行く車輪の轟音と共にやってくる。
朝陽が照らすのは、波打つ海面ではない。
街の背後にそびえ立つ、万年霧に覆われた険しき「
カヴェナは今、朝の喧騒に包まれて目を覚まそうとしていた。
街の入口となる大門からは、食料や日用品、そして最新の魔導具を満載した巨大な魔導荷車の隊列が、土煙を上げて次々と雪崩れ込んでくる。
自給率の低いこの街において、これらは生命線であり、同時に冒険者たちが湯水のように消費する黄金の源泉でもあった。
「さぁ、買った買った! 首都アルセリウム直送の最新ポーションだ! これさえあれば死にかけても生還できるぞ!」
「こっちにはセレンス経由で届いた東方の剛剣がある! アルマジロンの装甲だって紙切れみたいに斬り裂ける代物だ!」
大市場区では、商人たちが喉を枯らさんばかりの掛け声で客を呼ぶ。
焼きたてのパンと腸詰めの香ばしい匂いが漂う中、冒険者ギルドの前には、一攫千金を夢見る荒くれ者たちが早朝から長蛇の列を作っていた。
ここは「深淵への玄関口」にして「陸の孤島の黄金郷」。
大陸中から食料と武具が吸い込まれ、代わりに高純度の魔石と古代の遺物が吐き出される、ダンジョン経済の心臓部。
商人たちが札束を数えながら忙しく行き交い、冒険者たちは期待と不安を武具と共に背負い、そして借金を抱えた者たちが暗い路地裏へと消えていく。
光と闇、欲望と死が隣り合わせのこの街には、今日も尽きることのない熱気が渦巻いていた。
だからこそ――モーブルのようなしたたかな商人が、この街には軒を連ねているのだ。
石畳に響くざわめきの中を、ひとりの男が鼻歌交じりに歩いていた。
冒険者向け商品で名の知れたモーブル商会の店主、ジンジ・モーブルである。
丸々とした腹と、頬いっぱいに広がる笑みが、今日が“当たり日”だと雄弁に語っていた。
心が弾む理由は一つしかない。
先日、腕利きの冒険者たちに混じって自分の足で「ルビア湖底洞窟」へ潜り、巨大水棲魔獣の晩餐になりかけながら、執念で持ち帰った素材。
それを使って仕立てたポーションが――期待を軽々と飛び越える出来だった。
「ふふ……あれなら銀貨10枚は固い。いや、待て。あの赤は間違いなく上物……特級として金貨1枚でも文句は出まい。……まとめて捌けば金貨10枚。夢じゃないぞ、これは」
儲けの数字が増えるほど、口元はだらしなく吊り上がる。
街の活気が背景にあると、成功の匂いまで風に混じっている気がした。
「わははは! これで当面は安泰だな! やはりモーブル商会こそ、イングラジア随一の冒険者用品店よ!」
鼻歌はさらに大きくなる。
だが、その穏やかな朝の空気を、一本の悲鳴が引き裂いた。
「ひぃいいいいっ! お助けくださぁい!」
広場の方角から、喉が潰れるような絶望の叫び。
通りの人間が一斉に足を止め、恐れと好奇心を半々に混ぜた目で、そちらを窺った。
「なんだぁ? せっかくの上天気だってのに」
モーブルは首を傾げ、流れに押されるように広場へ向かった。
人垣の隙間を縫って覗き込んだ瞬間、目の前の光景に喉がひゅっと鳴る。
広場の中央で、傷だらけの商人が宙に吊られていた。
青い魔力の光が身体を絡め取り、見えない鎖に引かれるたび、商人は情けなく身をよじって呻く。
「ふざけおって……貴様が売りつけた品、まるで役に立たなかったぞ」
貴族然とした華美な装いの男が、杖を掲げている。
口元に浮かぶのは怒りではなく、弱者を弄ぶ者の薄い笑み。
杖の先で青い魔力が脈打った。
「お願いです! 偽りはありません! 心を込めて作った品で――」
「誠意? その誠意で私はダンジョン攻略に失敗し、笑いものだ。詐欺師め。警備隊に突き出してやる。……いや、その前に、少し“教育”してやらねばな」
周囲の人々は、誰も前に出ない。
視線だけが集まり、空気だけが冷える。
「そんな……! 妻と子が待ってるんです! どうか、どうかお慈悲を……!」
涙と汗で濡れた商人の視線が、人垣の端のモーブルとぶつかった。
助けを求める目。
モーブルは反射的に視線を逸らし、半歩、退いた。
(……ニンポン商会の店主か。粗悪品を掴ませるような男じゃない。となると――)
貴族の言いがかり。
そう考えるのが自然だった。
だが、同時に別の計算も走る。
ここで口を挟めば、次に宙へ浮くのは自分だ。
「おい、そこの太った男。貴様、この詐欺師の仲間か?」
鋭い声が、モーブルの背骨を叩いた。
広場の視線が一斉に刺さる。
冷たい汗が首筋を滑り落ちる。
「とんでもございません! 私め、そのような貧相な男とは何の関わりも――ええ、まったく!」
両手を揉み、腰を折り、声だけを砂糖菓子のように甘くする。
貴族はモーブルを一瞥しただけで興味を失い、再びニンポンへと杖先を向けた。
モーブルは、人垣の隙間をするりと抜ける。
背後で響く悲鳴を、まるで“風の音”か何かのように聞き流しながら、心の中で早口に言い訳を並べた。
(悪いなニンポン。貴族相手じゃ分が悪すぎる……ちょっと痛い目を見れば、あのお貴族さまも気が済むだろう。……運が悪かったんだ、お前は)
忌まわしいものから逃げるように通りを曲がると、今度は奴隷商の店先が視界に入った。
粗末な鉄格子の檻の中で、光を失った瞳の奴隷たちが、ただの“商品”として座り込んでいる。
若い女、労働力になりそうな屈強な男、そして――まだ世界の理不尽を理解するには早すぎる幼子。
値踏みする客の視線と、商人の調子のいい口上。
そこには確かに笑い声すら混じっていた。
ふと、一組の客が目につく。
早速買われたのであろう魔族の幼い少女が、小汚い平民の中年男に抱えられていた。
男は卑猥な笑みを浮かべ、少女の首筋を執拗に舐め回している。
少女が嫌がって身をよじるたび、男はそれを楽しむように腕の力を強めていた。
モーブルは、知らず息を吐いた。
ほんの少し歯車が違えば、自分があの檻の中だったかもしれない。
魔力に恵まれず親を失い、幸運にも商業ギルドに拾われた過去が、胸の奥でざらついた。
「……結局、どこも同じか。貴族だろうが平民だろうが、強い者が弱い者を踏みつけて生き残る」
弱肉強食。
それが、このイングラジアという国の正体だ。
「この世はそういう風に、できている」
空を仰げば、朝の光がやけに眩しい。
目に沁みるのは日差しのせいだけじゃないと、モーブル自身が一番よく分かっていた。
「だが、わしは商人だ。賢く立ち回り、流れに乗って生き残る。それがわしのやり方だ……見ていろ。いつか必ず、この才覚でこの国でのし上がってやる」
新たな決意を胸に押し込み、モーブルは馴染みの『愛の皿亭』で好物のドーナツを買った。
紙袋越しに伝わる温かさと、鼻をくすぐる甘い油の香りが、ささくれた心を薄く撫でていく。
広場の喧騒は、もう遠い。
再び鼻歌を取り戻し、モーブルは自分の店へ向かって歩き出した。
さっきまでの動揺など、最初から存在しなかったかのように。
♦
「おい、ふざけんなッ!!」
怒声がカヴェナ商業区の午後の空気を引き裂いた。
年季の入った『モーブル商会』の看板が、その音圧に共鳴してビリビリと震える。
道行く人々が何事かと足を止める中、ちょうど戻ってきたモーブルは、入口から漏れ聞こえる物々しい音に深く眉を寄せた。
「やれやれ……今度はわしの店か。どうにも今日は厄日らしい」
独りごちる口元とは裏腹に、その目には既に商売人の冷たい計算が光っている。
厄介事は御免だが、火種を放置すれば店が燃える。
彼は小さく息を整え、何事もなかったかのように平然と店内へ足を踏み入れた。
案の定、カウンター前で騒ぎが起きていた。
歴戦の戦士風情の大柄な男が、エプロン姿の小柄な魔族の少年――ラースに怒号を浴びせかけている。
飛び散る唾、充血した目。その剣幕は狭い店内に反響し、陳列棚の繊細なガラス細工をカタカタと怯えさせていた。
「この魔族の出来損ないが! 奴隷同然の分際で、人間様から代金を取ろうだと? 片腹痛いわ!」
檻から放たれた猛獣のような殺気。
一触即発の危険な空気。
「ひっ……お、お客さま……申し訳、ございません……。で、でも、僕は……ここの店員なので……お代を、いただかなくては……」
褐色の肌を持つ少年は、恐怖にすくみ上がっていた。
力なく垂れ下がった黒い尻尾、白い髪の間から覗く羊角を隠すように俯く姿。
薄暗い店の照明が、震える小さな背中を頼りなく浮かび上がらせる。
(……またラース絡みか。客のあしらい方を覚えろと言っているんだがな)
モーブルは内心で深く舌打ちをした。
ラースの痛ましい様子など一瞥もくれず、ただ冒険者の装備とランクだけを冷静に観察する。
瞬時に相手の懐事情と性格を計算。
最適な対応を選択。
次の瞬間には――顔に人好きのする満面の笑みを貼り付けていた。
「いやはや、これはこれは! 大変失礼いたしました!」
わざとらしいほど柔らかく、しかしよく通る声でモーブルは割って入った。
冒険者がぎろりと睨みつけてくる。
「あぁ? あんたがここの主人か? こんな使えねえ魔族を雇ってるとはな。店の質も知れるってもんだ!」
「面目次第もございません。なにぶん、この通り零細な店でして。人手が足りず、猫の手だろうが魔族の手だろうが借りたい有様でして。お客様にご不快な思いをさせてしまったこと、平にご容赦を」
モーブルは流れるように腰を折り、深々と頭を下げた。
「それだけじゃねぇ! こいつは接客もまともにできねーのか! ちょっと怒鳴っただけでこの有様だ。やはり魔族なんぞ、人間様には遠く及ばん劣等種よ!」
「まことにおっしゃる通りです。これもひとえに、わたくしの指導不足、人を見る目のなさ故。わたくしがもう少し出来た店主であれば、このようなご迷惑をおかけすることもなかったのでしょうが……」
「けっ! やはりイングラジアの連中は甘っちょろいぜ。こんな魔族のガキを使う店が成り立っているとはな。俺の国じゃ叩き出されて鉱山送りだ!」
「いやはや、皆様の寛大さに支えられて、どうにかこうにか糊口をしのいでいる有様でして……」
困り果てたように眉を下げ、脂汗を拭う太った店主。
その情けない態度に、冒険者の怒気もわずかに削がれたようだ。
空気が緩んだ瞬間を、モーブルは見逃さない。
「ところで旦那様、その見事な筋肉……もしやかの戦士の国、『ストーンブラッド王国』からのご来訪では?」
「ん? まあな。この国のダンジョンは最近稼ぎが良いと聞いてよぉ。昨日、こちらへ来たばかりさ」
思いもよらず故郷の名を出され、冒険者の表情が緩む。
モーブルはここぞとばかりに大げさに手を打ち、目を輝かせた。
「おおっ、やはり! その鍛え上げられた美しい筋肉! もしや、貴方様はストーンブラッドでも名のある冒険者なのでは?」
露骨な称賛。
だが、単純な筋肉馬鹿にはこれが一番効く。
冒険者はまんざらでもない様子で胸を反らした。
「ふん、まあな。国じゃ『壊し屋ゲッペル』なんて呼ばれて、ちっとは名を知られた身だ。ギルドランクも、伊達にシルバーを貰っちゃいねえ」
「おお、シルバー級! いや、お見かけした瞬間から、ただならぬ覇気を感じておりました! その屈強な体躯、鋭い眼光……もしや歴戦の猛者かと拝察しておりましたが、やはり! いやはや、ぜひ今後とも、当店をご贔屓に願いたいものですなぁ」
立て板に水の如きお世辞。
冒険者の警戒心は、春の日差しを浴びた氷のように溶けていく。
「ふーん……この店、案外掘り出し物もあるかもしれねぇな……。おい、この剣なんざ、なかなか良さそうじゃねえか。まあ、ストーンブラッドの名工の作には及ばんだろうが」
(かかった!)
モーブルは内心で快哉を叫びつつ、さらに畳み掛ける。
「さすがお目が高い! これは、かの名工ラウルゴが魂を込めて鍛えたと噂される逸品でございます! イングラジア広しといえども、そうそうお目にかかれる代物ではございませんよ!」
「へぇ、ラウルゴねぇ……で、値段は?」
「はい、こちらは特別価格で……金貨30枚となっております」
モーブルが告げると、ゲッペルは息を呑んだ。
「さ、金貨30!? ……ぐ、むぅ……しかしレアものの剣か……いや、俺は両手剣の使い手。ラウルゴの剣は片手剣だ。俺には必要ない……」
心が揺れている。あと一押しで落ちる。
モーブルは心配そうな表情を作り、親しげに肩を叩いた。
「おや、それは実にもったいない! このような業物を、この破格値で手に入れる好機など、滅多にございませんぞ! 旦那様ほどの腕利きがサブウェポンとしてこれを持てば、まさに鬼に金棒! 運命の出会いかと!」
「そ、そうか……運命、か……」
「ええ、そうでございますとも! しかも! これも何かのご縁です。今日、たった今この場で決めていただけるなら……特別に1割引き! ――いや、もう一声いきましょう! 出血大サービス、2割引きの金貨24枚で結構です! さあ、名工の業物がこのお値段! この運命的な機会を逃す手はありませんぞ!」
「……よし、決めた! 買うぞ、この剣!」
男は革の財布を取り出し、有り金のほとんどであろう硬貨をカウンターに叩きつけた。
念願の業物を手にした冒険者は、満足げな笑みを隠せない。
「ふっ、なかなか良い店じゃねえか。また寄らせてもらうぜ」
意気揚々と店を出ていく広い背中。
パタン、とドアが閉まり、外界の喧騒が遠のいた瞬間――モーブルの顔から人懐こい笑みがすっと消えた。
まるで能面を外すように無表情に戻り、冷ややかに鼻を鳴らす。
「……ふん、ストーンブラッドの田舎者が。おだてりゃ面白いように金を吐き出す。なけなしの金貨をはたいて、高値で剣を掴まされてご満悦とはな。おかげで今夜の宿代も、飯代すらもすっからかんのくせに」
勝ち誇ったように独りごち、モーブルは天井を仰ぐ。
埃の一つも見当たらない、自慢の城。
「ま、おかげで塩漬けになってた在庫も捌けた。懐も潤って、言うことなしだ。モーブル商会を舐めるな、という話よ。……売れ残りとはいえ、わしの選んだ品だ。モノが一級品であることに間違いはないんだから、感謝してほしいくらいだぜ」
その瞳には、獲物をまんまと罠にはめた後の、冷徹で計算高い光が宿っていた。
ふと、彼の視線が床に力なく座り込んでいるラースへと落ちた。
まだ小刻みに震え、顔も上げられずにいる少年の姿に、モーブルの眉間に微かな、しかし確かな不快感を示す皺が刻まれる。
「おい、ラース。いつまでそうしているつもりだ。厄介事はとっくに過ぎ去ったぞ。ちゃっちゃと働け。閉店にはまだ早い」
返事はない。
ただ、ひっく、と息を詰めるような小さな嗚咽が聞こえるだけだ。
まるで、嵐の後におびえる小動物のように。
「はぁ……まったく、手のかかるガキだ……」
モーブルはこれみよがしに深いため息をつく。
長い商売の中で、幾度となく繰り返してきたであろう忍耐を示す仕草だ。
しばし目を閉じ、煩わしさを振り払うように頭を振ってから、彼は自分に言い聞かせるように呟く。
「モーブル商会繁盛の秘訣、その二十五——”時は金なり”」
彼は小さく頷くと、今度は鋭く、突き放すような声でラースに言葉を投げかけた。
「商売に涙は要らん。泣いて詫びれば、客が金を払うか? 払わんだろうが。メソメソしてる暇があるなら手を動かせ。床、補充、棚の整理。客がいない今が稼ぎ時だ」
容赦のない言葉は、革鞭のように少年の心を打ち据える。
ラースはさらに体を縮こまらせ、喉の奥からかろうじて声を絞り出した。
「ご、ごめんなさ……っ、旦那、様……。僕は……出来損ないの、魔族だから……。何を、やっても……うまく、できなくて……」
か細い声は、店の隙間風にすら掻き消されてしまいそうだ。
褐色の肌を、恐怖の汗が伝っていく。
窓から差し込む午後の光が、彼の絶望とは裏腹に、小さな羊角を鮮血のように鮮やかに照らし出していた。
モーブルは腕を組み、心底面倒だと言わんばかりの、長く、深い溜め息を吐く。
その表情には、損得勘定だけでは割り切れぬ苛立ちのような感情が複雑に混じり合っていた。
彼は無言で一歩踏み出すと、大きな手をラースの脇に差し入れ、半ば強引に立たせた。
「何度言わせる。魔族だの人間だの、そんなもんは商売においてクソの役にも立たん。価値があるのはただ一つ――お前がこの店で、わしが払った代価に見合う『働き』をするか、否か。それだけだ」
「で、でも……僕は……っ!」
なおも続けようとしたラースの反論は、モーブルの射抜くような視線に縫い止められた。
その瞳の奥には、厳しい光のさらに奥に、底なしの沼のような昏い感情が渦巻いている。
「口答えをするな。忘れたか、ラース。……お前が、誰の所有物であるかを」
所有物――すなわち“奴隷”。
その言葉が落ちた瞬間、空気が冷える。
ラースは息を止め、血の気のない指先で小さな拳を握りしめる。
握っているのに、何も掴めない手だ。
「……は……い……。だんな、さま……」
声は吐息に近かった。
沈黙が店内に沈み、埃の粒まで重く見えた。
(そうだ……僕は奴隷だ。旦那様の気まぐれで、明日には捨てられるかもしれない。ただ、生かされてるだけの――)
張り詰めた沈黙が、埃の舞う店内に重く落ちる。
その重苦しさを破ったのは、モーブルの短い鼻息と、ごそりという乾いた音だった。
彼は何食わぬ顔で、年季の入った革鞄から紙袋を取り出す。
くしゃくしゃで、油染みがある。
――持ち帰りの菓子袋だ。
「え……?」
ラースの目が、涙の膜越しに大きく見開かれる。
「……ほらよ。『愛の皿亭』のドーナツだ」
ぶっきらぼうに言って、紙袋を軽く揺らす。
甘い匂いが、場違いなくらいに優しく漂った。
「こないだ、わしが食ってるのを涎垂らして見てただろうが」
「そ、そんな……! 奴隷の僕なんかが……こんないいもの、いただけるわけ、ありま、せん……!」
ラースが慌てて首を振る。
モーブルは眉をしかめ、返事の代わりに袋を胸元へ押し付けた。
「一個じゃ足りんだと? 欲張りな奴め! ならば残り二つ全部やる。次の客が来る前に、さっさと胃袋に押し込め」
「で、でも……!」
「糖分が入ってない頭は使い物にならん。泣き虫が店に立ってる方が、よっぽど商売の邪魔だ」
言い切ってから、モーブルは後頭部をがりがり掻く。
そして、少しだけ声を小さくする。聞こえないふりをする程度に。
「……お前にメソメソされたら、客が遠のく。こっちが困る。だから食え。分かったな」
ごつり、と痛くない程度にラースの頭を小突く。
「早く一人前の商人になれ。わし一人で店を背負うのは、骨が折れる。稼げ。しっかり働け。わしを楽にしろ」
(一人前の……商人……?)
その言葉は、まるで乾いた大地に染み込む水のように、ラースの心へと落ちた。
今まで「奴隷」「魔族」「出来損ない」という鎖で雁字搦めにされていた心が、ほんの一箇所だけ、カチリと音を立てて緩んだ気がした。
(奴隷の僕が……商人になって、いいの……?)
おずおずと、まるで触れた瞬間に消えてしまう幻に触れるように、震える指先で紙袋を受け取る。
ずしりとした重みと、そこから伝わる確かな温もり。
それは、絶望という分厚い鉛色の雲の隙間から、ほんの一瞬だけ差し込んだ、焼けるように眩しい光だった。
「だ、旦那さ……ま……っ。……ありが、とう……ござい、ます……っ」
声はまだ震えていたが、先程までの消え入りそうな響きとは違う。
そこには、小さな種火のような、確かな意志の芯が宿っていた。
ゆっくりと顔を上げる。涙で濡れた瞳の奥で、燻っていたはずの光が、再び力強い炎となって揺らめき始めていた。
「ふん」
モーブルは気まずそうに短く鼻を鳴らすと、それ以上何も言わずにくるりと背を向けた。
帳簿が積まれた店の奥へと大股で歩いていくその耳が、心なしか赤らんでいるように見えたのは、きっと西日のせいだろう。
無愛想で大きな背中を見送りながら、ラースは手の中のドーナツを、世界でたった一つの宝物のようにぎゅっと抱きしめた。
ふわりと漂う砂糖の甘い匂いと、揚げた生地の香ばしさが、傷だらけの心をゆっくりと解きほぐしていく。
(いつか、きっと……。旦那様のお役に立てるように。旦那様が安心して背中を預けられるくらい、強くて、頼りになる……誰からも一目置かれるような、立派な商人に、僕もなるんだ……!)
心の奥底で、温かくて力強い決意が、確かな形を結んでいく。
それは、ドーナツの甘さに似た、希望の味だった。
ラースはゆっくりとドーナツを一口齧る。
砂糖のじゃりっとした食感と共に、優しい甘さが口いっぱいに広がる。
それは空腹だったお腹だけでなく、凍てついていた心の芯まで溶かしていくようだった。
絶望の淵から始まる一日ではない。
確かな希望と共に、新しい一日が、今、ここから始まっている。
カウンターの奥から、モーブルが「……ぐふふっ、今日もたっぷり稼ぐぞ」などと独り言を言いながら、パチパチと軽快に算盤を弾く音が聞こえてくる。
その音は、まるでラースの新しい門出を祝う音楽のように響いた。
ラースは残りのドーナツを大事そうにエプロンのポケットにしまうと、涙の跡を袖でごしごしと乱暴に拭った。
そして、ほんの少しだけ胸を張り、商品棚へと向かう。
その足取りは、まだ覚束ない。
けれど、そこにはもう迷いはない。
未来へと向かう、小さくも力強い、新たな始まりの一歩だった。
♦
数日が過ぎた、ある日の早朝。
『モーブル商会』の扉には「準備中」の木札が静かに揺れている。
だが、その裏側からは、活気に満ちた作業の音が漏れ聞こえていた。
店内では、店主のモーブルと、羊角を持つ魔族の少年ラースが、まるで精密な歯車のように噛み合って開店準備を進めている。
「おお、今日の『霧隠れ草』は上物じゃないか! この露の付き具合……申し分ない!」
モーブルは
太い指先が、熟練の錬金術師のように繊細な動きで葉を検分していく。
「これで特級の解毒薬がいくつか作れそうだ。ラース、お前はそっちの棚の在庫、リストと照合しておけ」
「はい、旦那さま!」
ラースは弾んだ声で応え、すぐに棚へと向かう。
その表情は真剣だが、以前のような怯えの色はない。
モーブルへの深い信頼と、与えられた役割を全うしようとする矜持が滲んでいる。
指示された作業を、丁寧かつ迅速にこなしていくその動きには迷いがなかった。
もちろん、その笑顔の裏から、かつての苦い記憶が完全に消え去ったわけではない。
魔族というだけで蔑まれ、物のように扱われた奴隷としてのかつての日々。
絶望の色だけに塗りつぶされていた彼の世界は、モーブルに――気まぐれか打算かはさておき――拾われるまで続いていたのだ。
だが、今は違う。
隅々まで掃き清められ、磨かれた武具やポーションのかすかな香りが漂うこの整然とした店が、彼にとってかけがえのない「居場所」になりつつあった。
妥協を許さず、常に利益を追求する冷徹な商人の下で働く日々は、決して楽ではない。
厳しい言葉が飛んでくることも日常茶飯事だ。
それでも、理不尽な暴力や気まぐれな蔑みに晒されていた以前に比べれば、この「働けば評価される」という単純で安定したルールは、凍てついていた彼の心を、春の日差しのように溶かし始めていた。
そんなラースの小さな背中をちらりと盗み見て、モーブルは誰にともなく小さく頷いた。
そして、すぐに自分の作業へと意識を戻す。
「ラース、ポーションの空き瓶、在庫は十分か?」
「はい、旦那さま。昨日、しっかり補充しておきました。棚の整理も済んでいます」
ラースは棚から顔を上げ、はっきりと答えた。
その澱みない返事に、モーブルは満足げに「よし」と呟き、調合台に向き直る。
「上出来だ。これで開店準備は万端だな。……ふふ、今日はたんまり稼がせてもらうとしよう」
不敵に笑うモーブルの大きな背中を見つめ、ラースの胸に温かいものが込み上げる。
厳しい主人。
計算高い商人。
けれど、自分を「魔族」ではなく「店員」として扱い、時には不器用な気遣いを見せてくれる人。
モーブルは彼にとって、もはや単なる主人以上の、尊敬する、頼もしい存在になっていた。
「あの、旦那さま。開店まで、あとどれくらいですか?」
「ん? あと一時間弱といったところか」
モーブルは懐中時計を確認してパチンと閉じる。
「ふむ、丁度いい。昨日仕入れた『長持ちパン』も今のうちに並べておくか。腹を空かせた冒険者が飛びついてくるかもしれん」
言いながら、丁寧に梱包された木箱をラースに手渡した。
ラースは箱を受け取ると、慣れた所作で梯子をかけ、高い棚へと軽やかに登っていく。
「よいしょっと……」
手際よく品物を並べるその動きは、まるで踊りのようにリズミカルだった。
仕事に没頭するあまり、無意識のうちに緊張が解けたのだろう。
ズボンの裾からのぞく黒い尻尾が、小刻みに動き始めた。
ふりっ、ふりっ、ふりっ。
右へ、左へ。
そのたびに、尻尾と連動するように少年の華奢な身体全体が、自然な律動を生み出していく。
まるで見えない音楽に合わせて指揮を振るように、無邪気に、楽しげに。
「…………」
モーブルの手が止まった。
その光景に釘付けになったまま、喉がごくりと音を立てる。
無防備に揺れる尻尾。
無邪気な背中。
朝から燻っていた得体の知れない焦燥感が、今、熱を持った別の形へと変質し、腹の底からじわりと這い上がってくるのを感じた。
「これで最後……よし、綺麗に並んだ……って。あっ、旦那様!?」
仕事を終えて振り返ったラースの赤い瞳が、驚きで見開かれる。
いつの間にか背後に忍び寄っていたモーブルの分厚い手が、自分の腰に這っていることに気づいたのだ。
「な、なんですか? どうしたんですか急に……っ」
慌てて身を引こうとするラース。
だが、モーブルの手は離れるどころか、這うように下へと滑り落ち、敏感な尻尾の付け根を指先で愛撫するように撫でた。
「ひんっ……!」
思わず喉から漏れた声は、自分でも耳を疑うほど甘く、艶めいた響きを帯びていた。
「旦那様……どうして……」
潤んだ瞳で、縋るようにモーブルを見上げる。
その無防備な表情が、モーブルの嗜虐心をさらに煽り立てた。
「むふふ、お前がそんな可愛い尻をふりふりと振りながら仕事をしとるからだ。わしを誘っているのかと思ったぞ?」
言うが早いか、モーブルはラースの柔らかな臀肉を鷲掴みにし、服の上から強く揉みしだいた。
「あうっ!♡ ダメです……♡ そっ、そこっ!♡ 触られると……弱、くてっ……♡」
ラースは身をよじって抵抗しようとするが、丸太のような太い腕にがっちりとホールドされ、逃げ場はない。
さらに、モーブルの大きな手は蛇のようにズボンの隙間へと潜り込むと、熱を帯びた少年の小さな
「ダメだと? 口ではそう言いつつ、こんなに硬くしとるじゃないか」
耳元で低く囁くと同時に、モーブルはラースの股間から屹立したソレを優しく引きずり出し、無骨な掌で包み込んだ。
「……っ!!♡」
熱い指先が触れた瞬間、ラースは声にならない悲鳴を上げて背中を反らす。
モーブルは少年の反応を楽しむように、ゆっくり、ねっとりと愛撫を続けた。
「あっ♡ あうっ♡ んくっ♡ だ、旦那様ぁ……っ!♡」
ラースは堪えきれずに嬌声を洩らし、恥ずかしさに顔を真っ赤にして身を捩る。
しかし、その抵抗すらも愛撫の一部と化したかのように、モーブルの手の動きは止まらず、むしろ激しさを増していくばかりだ。
「あっ……だめぇ……♡ おかしく、なっちゃう……♡」
太い指で扱かれるたびに、少年の華奢な身体に電流のような快感が走り、膝がガクガクと笑い始める。
もはや立っていることすらままならないラースの腰を支えながら、モーブルはさらに追い打ちをかけた。
「おい、こっちへ来い」
ラースを抱きかかえるようにして梯子から下ろすと、抵抗する間も与えず、その場に四つん這いにさせる。
無造作にズボンを引き下げれば、無防備な幼な尻が露わになった。
「だ、旦那さま……何をするんですか……?」
涙目で振り返り、不安げに尋ねるラース。
だが、モーブルは返事の代わりに、ぬらりと濡らした太い指先を、窄まった蕾へと宛てがい――そして、一気に埋め込んだ。
「あうっ! お尻のなかぁあああっ……!♡♡♡」
異物の侵入に、ラースの身体がビクンと跳ねる。
敏感な粘膜を蹂躙される感覚に、脳が白く弾けた。
モーブルは容赦なく、中の狭さを確かめるように指を蠢かせ始める。
「あうっ♡ あっ♡ あひいっ!♡」
モーブルの指の動きに翻弄され、ラースは無意識に腰をくねらせてしまう。
その動きに合わせて黒い尻尾が激しく揺れる様は、まるで本能に支配された別の生き物のようだった。
「なんだ? もう感じとるのか? 淫らな尻尾だな」
モーブルは嘲るように笑うと、さらに激しく指を出し入れし、もう片方の手で未熟な乳首を強めに摘み上げた。
「ひゃうんっ!?♡♡♡ ち、違います……そんなんじゃ……ぁあっ♡」
否定の言葉とは裏腹に、ラースの口から漏れる吐息は、甘い蜜のように蕩けきっていた。
「だが、ここは正直みたいだぞ? もう先っぽが濡れとるじゃないか」
モーブルはそう言うと、指の腹でラースの亀頭の先端を擦るように刺激する。
「あぅっ!♡♡♡ ああーっ!!♡♡♡」
敏感な部分への強い刺激に、ラースは背筋を仰け反らせながら悶えた。
そんな反応を楽しむように、モーブルはさらに愛撫を続ける。
やがて少年の口から漏れる声は切羽詰まったものへと変わっていった。
「ああっ♡ ダメぇえ……っ♡ 僕……も、もう……っ♡」
「くくくっ。いいぞ? ほらイケよ!」
モーブルはトドメとばかりに爪を立てながら激しく擦り上げた。
そして同時に親指で鈴口をグリッと押し込んだ。
その瞬間、ラースは大きく身体を震わせる。
「あぁっ!♡ 出ちゃうううっ!!♡♡♡」
その量は幼い少年らしい控えめなものだったが、同時に量以上に濃厚な青臭さが部屋の中を漂った。
「ぐふふ……たっぷり出たな」
モーブルは満足げに呟くと、ラースの股間に顔を寄せる。
そして、そこに付いた粘液を舐め取るように舌を這わせた。
「あぁっ!♡♡ やっ……!♡ 舐めないでくださぁいっ……!♡♡」
ラースは恥ずかしさとくすぐったさに身悶えし、必死に逃げようとするも、手足にはまるで力が入らず、されるがままになっている。
やがて少年の精を味わって満足したモーブルが巨根が少年の尻に押し付けられた。
「あっ、旦那様……♡」
不安そうに振り向くラースに、モーブルは囁くように言った。
「挿れるぞ」
その言葉に反応する間も無く、ずぶっという音と共に巨大な肉棒が侵入してきた。
「ああーっ!!♡♡♡」
一気に貫かれた衝撃で悲鳴のような声を上げる少年だったが、すぐにその声は快感に染まっていく。
そしてモーブルはゆっくりと腰を動かし始めた。
パンッ、パンッと肌と肌がぶつかり合う音が響くたびに、少年の体は激しく痙攣した。
「ひぐぅっ♡ おくっ……旦那さまのがっ……おくまで届いてますっ!♡♡♡」
「どうだ? わしのちんぽは気持ち良いだろ?」
ふりふりする少年の黒い尻尾を掴み、ねちっこくレロレロ舐め回しながらモーブルは尋ねる。
「はいぃ♡ すごくっ……きもちイイですっ♡♡♡」
尻尾をいじられる快感と、尻穴を犯される快感に、ラースは涙ぐみながら蕩けた表情で答える。
もうそこに奴隷だった頃の悲壮感はない。
あるのはただ快楽に流され、堕ちていく一匹の獣の姿だけだ。
その様子に興奮したのか、モーブルは更に動きを速めた。
ばちん! ばちゅん! という音と共にラースの結合部からは大量の愛液が溢れ出す。
「ひあっ♡ 激し……くぅんっ♡ だめえっ!♡♡」
主人によるあまりの激しい責めに泣き叫ぶラースだったが、同時に自身のモノもまた硬く屹立しているのを感じていた。
モーブルはそんな少年の反応を見ながら、さらに動きを加速させる。
グボッ! ヌポォ! ズッポ……ズブン……ドスンッ!! ブボッ!!!
まるで思いやりのない乱暴な、ただただ己の快楽のためだけに行われるモーブルの激しいピストン。
ラースのお尻を容赦なく責め立てていく。
だが、そんな乱暴な行為にも関わらず、ラースは痛みや苦しみではなく、快楽を感じてしまっていた。
それは自分の主人に対する、あるいは敬愛する大人の男性としてのモーブルに対する愛情なのか。
しかしそんな感情もすぐにかき消されてしまうほどの強烈な刺激がラースを襲う。
「んっ♡ だんなさ……ふぁっ!♡ ひぃんっ!♡」
モーブルの巨大な肉棒が前立腺を擦り上げる度に、ラースの口からは甘い吐息が漏れる。
「おらっ、もっと淫らに鳴け、ラース! 雌犬のようにな! わしの全てを悦ばせるんだ!」
モーブルの声は獣のように低く、欲望に濡れた響きで店内に響き渡った。
太い腰をさらに激しく打ち付けると、パンッ! パンッ! と肉と肉がぶつかり合う淫靡な音がこだまする。
二人の結合部からは、泡立つ愛液が飛び散り、木の床に濡れた染みを広げていく。
「あぁっ♡ んんっ♡♡ 旦那様ぁ…!♡♡♡ お尻の奥……もっと、もっとほじくってくださいぃっ……!♡♡♡」
ラースの声は、理性の糸が切れた獣のそれだった。
赤い瞳は潤み、快楽に蕩けた表情でモーブルを見上げる。
少年の小さな体は、激しいピストンに耐えきれず、ぐらりと床に崩れそうになる。
だが、モーブルはそんなラースの華奢な腰を力強い腕で抱き上げ、一気に膝の上へと引き寄せた。
対面座位の姿勢で、少年の熱い肌を己の胸に密着させる。
そして、モーブルの唇がラースのそれに貪るように吸い付いた。
「んむっ…♡ ちゅっ…れるぅ…じゅるっ…♡」
モーブルの舌は、ラースの口内を荒々しく、だが巧みに蹂躙した。
少年の甘い唾液を吸い尽くし、舌を絡ませ合うたびに、ぬるりと滑る感触が二人の欲をさらに煽る。
ラースはモーブルの首に細い腕を回し、キスに溺れるように身を委ねた。
唾液が混じり合い、唇の隙間から滴るその感覚に、少年の意識は甘く溶けていく。
同時に、モーブルの太い手がラースの小さな肉棒を握りしめた。
熱く脈打つそれを、容赦なく上下に扱き上げる。
「ひあぁんっ!♡♡ だめぇえっ!♡♡ 両方一緒はダメぇぇええ!!♡♡♡」
前後から同時に与えられた強烈な快楽に、ラースは悲鳴のような声を上げた。
だが、モーブルの攻め手は休まるどころか更に激しさを増した。
少年の小さな身体を抱き締めるようにして抱きすくめ、激しく腰を打ち付ける。
二人の腹の間で挟まれた陰茎からは先走りが漏れ出し、潤滑油となって動きを滑らかにする。
ぐちゅっ、ぐちょぉお、じゅぽじゅぽじゅぽっ!!
淫靡な水音と少年の嬌声だけが店内に響く。
「んふぅっ!♡ あぁっ、旦那様ぁ……!♡ もっと…もっとキスしてくださぁい…!♡♡」
ラースは甘えるようにそう言うと、再び自分から唇を重ねた。
舌を伸ばし、必死に口内を貪ろうとする少年の姿は、まるで母鳥に餌を求める雛のようだ。
そんなラースの姿にモーブルは満足げな笑みを浮かべると、より一層激しく責め立てる。
少年の小さな体を抱きしめながら、その細い首筋に強くキスをする。
「ひああっ!?♡」
突然のことに一瞬痛みが走るが、それもすぐに快楽へと変わる。
強く吸われた箇所に赤いキスマークができる。
同時に、ラースの小さなモノからカウパー液が少し飛び出した。
「くぅっ……! いいぞ……出すぞ! お前のケツマンコに種付けしてやるっ!!」
モーブルはそう言うと、最後の追い込みとばかりに腰の動きを加速させる。
パンッ! パァンッ!! グチャッグチョッ!!!
肉がぶつかり合う音が、まるで雷鳴のように店内に轟く。
二人の結合部からは、愛液と汗が混じり合った滴が飛び散り、床を濡らす。
「あっ♡ んあぁっ!♡♡ 旦那さまっ!♡ 旦那さまぁっ……!!♡♡♡」
ラースは快楽に染まった声を上げながら、必死にモーブルの体にしがみつく。
少年は己の中の主人への忠誠心が壊れるのを感じながらも、それでもなお愛しいと思う気持ちが溢れて止まらない。
そんな心の葛藤の中、やがてモーブルは一際強く腰を打ち付けると、その巨根を根元まで埋め込んだまま動きを止めた。
「出すぞっ! ラース! 全部受け止めろ!!」
モーブルの声は、欲望の頂点で吠えるように響いた。
一気に少年の最奥まで突き入れ、そこで堰を切ったように精を放つ。
どぴゅっ! びゅるるるるっ!! びゅるうううううううっ!!!
「ああぁっ!!♡♡♡ イきますっ!♡♡ 旦那様と一緒にイッちゃいますぅううっっ!!!♡♡♡♡♡」
モーブルの熱い奔流がラースの腸内を満たしていく。
ラースもまた絶頂に達し、幼い肉棒から控えめな白濁を放ちながら、ビクビクと全身を痙攣させた。
少年の腹はモーブルの肉棒の形に膨らみ、結合部からは溢れ出た精液がとろりと流れ落ちる。
「ふぁあぁ……♡♡ 旦那さまのせーえき……いっぱい出てるぅ……♡♡♡」
ラースは射精の余韻に浸り、甘く掠れた声で呟いた。
モーブルの肉棒が最後の脈動を終え、ゆっくりと引き抜かれると、少年の肛門はパクパクと開閉を繰り返す。
まるで生き物のように蠢き、溢れ出た精液を床に滴らせた。
白濁の滴は、木の床に小さな水たまりを作り、店の空気に甘い匂いを漂わせる。
「ふぅ、ラース。たまらん反応だったぞ」
モーブルは満足げにそう言うと、ズボンを穿きなおした。
一方、ラースは床にぐったりと横たわり、放心したように天井を見つめている。
時折、華奢な体がぴくっと震え、角がわずかに揺れる。
その頬には、羞恥と混乱が混じった熱がまだ残っていた。
「さてと、ぼやっとしてる暇はないぞ。もうすぐ開店だ。はやく準備しろ」
モーブルの声が、いつもの調子を取り戻して響く。
ラースはハッと我に返り、目を丸くして跳ね起きた。
「えっ!? も、もうそんな時間ですか!?」
慌てて身なりを整えようと手を動かすラースだが、服の乱れと体の火照りに気づき、顔が真っ赤に染まる。
モーブルはそんな少年の様子を一瞥し、くすっと笑みを漏らす。
「おいおい、その格好で客の前に出るつもりか? 冒険者どもの目が釘付けになっちまうぞ」
「あっ…う、うわっ、すみませんでした! すぐ、すぐ体を洗ってきますっ!」
ラースは耳まで真っ赤にしながら、転がるように店の奥へと駆け出した。
浴室へと続く扉の向こうで、バタバタと水をかぶる音が響く。
「まったく、世話の焼ける小僧だ……」
モーブルはそうぼやきながら肩をすくめたが、その口元には隠し切れない柔らかな笑みが浮かんでいた。
ラースの慌てぶりも、どこかこの商会に欠かせない彩りの一つになりつつあったのだ。
「よしっ! 今日も一丁、がっぽり稼いでやるぞ!」
モーブルは拳を握り、気合いを入れるように声を張り上げた。
目をキラリと光らせ、調合台の上のポーション瓶を最後に確認する。
その背中には、商人の野心と、どこかラースへの不器用な気遣いが同居しているようだった。
やがて、開店の時刻がやってきた。
モーブル商会の扉が勢いよく開かれ、市場の喧騒が一気に店内に流れ込む。
冒険者や旅人たちが、次々に商品を手に取り、目を輝かせる。
「この回復薬、色の輝きが違うな!」
「おい、長持ちパンまだあるか?」
客たちの活気ある声が響き合い、店内は笑いと熱気に包まれる。
こうして、今日もモーブル商会は華々しくその一日を始めたのだった。