モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~ 作:とけそうだら
《じゃあ、手はずを教えるぞ》
魔剣エクセリオンの宝玉が、青く冷たい光を放った。
淡々と、だが絶対の事実として告げる。
《魂の同化を軟化させる唯一の方法――それは"精神の
「……精神の極限共有? そんなもったいぶった言い方しないで、さっさと説明しろ」
《冗談に聞こえるなら耳かっぽじれ、デブ。要はだ――金髪のガキの
モーブルは額の脂汗を手の甲で乱暴に拭った。喉が鳴る。
「……つまり、夢の中でわしとニーシャくんの魂の距離を詰めろと?」
《そうだ。精霊魔法の基盤は"共感"と"共有"。理屈は単純――やることが地獄なだけだ》
エクセリオンの光が、部屋の隅で縮こまる少年を射抜いた。
《ラース。鍵はお前だ。精霊に好かれたお前が"媒介"になる。モーブルと金髪のガキが体を重ねて眠る。そこへ、光の精霊を宿したお前が輪に入る――眠る二人の魂を一時的に同期させる。同化の結び目がふっと緩む、その刹那を――俺様が斬る。精神世界で猫の魂だけを、器から引き剥がす》
ラースは顔を茹で上がったみたいに真っ赤にし、羊の角をぶるぶると震わせて俯いた。
「ええっ……!? ぼ、僕が……ニーシャ様と……!? そそそそんな……お、恐れ多いです……無理です……!」
《おい、勘違いすんなよ。ただ添い寝してやりゃいいって話じゃねえ》
エクセリオンの声が、一段低く、脅すように響いた。
《何度も言うが――この儀式の肝はお前だ、ラース。光の精霊を生身の器に降ろすってのは、術者の魂を削る行為に等しい。未熟な奴が半端な覚悟で精霊魔法を行使してみろ。……場合によっちゃ、代償として体の一部――いや、下手したら命さえ持っていかれる》
「ひっ……! か、体の一部に命まで……!?」
宝玉が、嘲笑うように一度だけ強く瞬いた。
《ま、"等価交換"ってやつだな。――が! 心配すんな! この俺様がそうならないようにしっかりナビゲートしてやる! 大船に乗ったつもりでどんと構えてろ!》
「……その大船、ちゃんと航海してきた実績あるんだろうな?」
《あ? ……まぁ、今回が初航海だ》
「沈むわ!!」
モーブルの絶叫が地下に響いた。
《うるせぇ! 前例がねえから"唯一の手段"って言ってんだろうが! 文句あんならテメーが代案出せ!》
ラースは震える声で呟いた。
「で、でも……失敗ばかりする僕なんかにそんな大役……本当に……務まるのでしょうか」
その時だった。
ニーシャが四つん這いのまま床を這い、ラースの足元にすり寄ってきたのは。
金色の尻尾が優雅に揺れ、猫耳がぴくりと立つ。
「……ラース、好き……かわいいにゃ……」
甘えるように頰を擦りつけ、喉の奥でゴロゴロと鳴らす。
すでに理性の半分は、獣の無垢な情愛に塗りつぶされていた。
モーブルは、深く、重い吐息をついた。
そして――。
「……ラース。ひとつ言っておく」
「だ、旦那様!? ひゃいっ!?」
いきなり弱点である尻尾の付け根をガシッと掴まれ、ラースの喉から素っ頓狂な悲鳴が漏れた。
「“三日”だ」
「……は、はい?」
「これが上手く行けば……貴様に特別有給休暇をやる。三日間だ!」
「え……ええええええええ……!! だ、旦那様……!! 僕に有給休暇!? 奴隷の身分で、そんな……!?」
「なんだ、不服か? 欲張りなやつめ! なら特別ボーナスもつけてやる。――銀貨十枚だ。それで好きなものを食って、好きなだけ遊んで寝ろ」
「ぎ、銀貨……!? じゅ、じゅうまい……!?」
ラースの目が、飛び出さんばかりに見開かれた。
――ラースにも一応、“給料”はある。
『自分で金を管理できない奴に、店の勘定は任せられない』。
そんなモーブルの方針で、月に一度、小遣い程度の銅貨数十枚が支給されていた。
それだけでも奴隷としては破格の待遇であり、ラースは毎月、恐れ多くて手を震わせながら受け取っていたのだ。
だが、銀貨十枚は世界が違う。
銅貨の束を何度積んでも届かない高さ。
計算しようとした瞬間、頭がくらりとする。
屋台の串焼きなら五十本。
甘い菓子も、果物も、『愛の皿亭』のドーナッツも遠慮せずに買える。
“選ぶ”という贅沢を、ラースは今までほとんど知らない。
「そ、そんな……いいんですか!? ただでさえお店の売上が落ちているのに……!」
「うるさい! これは“先行投資”だ! 損する前提で金を投げてるんじゃない……貴様から回収するつもりで投げてるんだ!」
「あう……旦那様、怖い言い方です……!」
モーブルは尻尾を掴んだまま、ラースの顔をぐいと引き寄せた。
至近距離で、脂汗と高級香油の入り混じった商人の熱気がぶつかる。
「これは『業務命令』だ。絶対に成功させろ」
「は、はいっ……!」
「そして五体満足で戻ってこい」
「……っ」
「失敗して体を持っていかれたりしてみろ。休暇は取り消し、治療費は月給から天引き、死ぬまでタダ働きだ。分かったな!」
それは脅し文句の皮を被った、モーブルなりの精一杯の「死ぬな」という祈りだった。
損得勘定では説明できない、あまりにも不器用な激励。
ラースの紫の瞳が、じわりと潤んだ。
恐怖で強張っていた肩が、別の熱い感情で震え始める。
「……は、はいっ! 必ず……必ず成功させます! 休暇と特別ボーナスのために……いえ、ニーシャ様と、旦那様のために!」
《けっ。現金な奴らだぜ》
エクセリオンが呆れたように明滅する。
だが、その光は心なしか頼もしく、強く輝きを増していた。
《商談成立だな。――始めようぜ。狂った夜会の幕開けだ》
地下倉庫の淀んだ空気が、一変する。
覚悟を決めた者たちの気力が、静かに、けれど激しく渦を巻き始めた。
◆
《おし、んじゃあ早速ミッション・スタートと洒落込もうぜ! 野郎ども、まずは一糸纏わぬ姿になりやがれ。肌と肌を密着させるんだよ。魂の
号令が下るや否や、モーブルは躊躇なく上着を放り投げ、シャツを引き裂かんばかりの勢いで脱ぎ捨てた。
露わになったのは、中年特有の不摂生が凝縮された、脂ぎったわがままボディだ。
《うっわ、汚ねぇもん見せんな。俺様が女だったら、金貨万枚積まれても抱かれたくねーわ》
「やかましいわ! わしだって、カチンコチンのなまくら刀より、”きゃわゆい少年”の肌触りのほうが一千倍マシじゃ!」
「うう……こ、こんな明るい場所で……緊張、します……」
対照的に、ラースは恥じらいに指先を震わせながら、主命に従い一枚また一枚と衣を落としていく。
現れたのは、夜闇に溶けるような褐色の肌と、しなやかに引き締まった腰つき。
そして、主人の視線に怯えるように揺れる黒い尻尾だった。
一方、ニーシャには自ら服を脱ぐ気配がない。
寝ぼけたようにきょとんと座り込んでいるだけだ。
「ニーシャくん、いい子だねぇー。ほーら、ばんざーい」
「にゃ……?」
ニーシャが小首を傾げ、一点の曇りもない瞳でモーブルを見上げる。
「うんうん、なんて素直でいい子なんだ。脚もそのままで……じっとしててねぇー」
モーブルは愛おしげに距離を詰めると、手慣れた所作で、しかし優しく少年の衣服を剥ぎ取っていく。
殻を剥いた果実のように現れたのは、陶器のごとく滑らかな純白の肌。
そこから生える金色の猫耳と尻尾。
肢体こそ未成熟だが、変化の副作用か、全身が微熱を帯びたように上気しており、触れるだけで溶けそうなほど感度が高まっているのが見て取れた。
「はぁ……っ。獣人化してもなお、ニーシャくんの裸体は至高だ。まさに生ける芸術品、神々しすぎて網膜が焼け焦げそうだ……」
恍惚の表情で涎を垂らんばかりのモーブルに対し、ニーシャは細まった瞳孔で興味深そうに見返してくる。
それは汚れを知らぬ、純粋な獣の好奇心だった。
モーブルはニーシャを壊れ物のように慎重に抱き上げると、床の毛布へそっと横たえる。
《おいラース、見惚れてんじゃねえぞ。ここからが本番だ》
エクセリオンの鋭利な思念が飛ぶ。
ラースはびくりと肩を跳ねさせ、二人の隣へ正座した。
《いいか、光の精霊を喚べ。テメェの|体《うつわを空っぽにして、明け渡すんだ。――恐怖に呑まれるなよ? ビビれば精神ごと消し飛ぶぞ》
「は、はいっ……!」
ラースは深く息を吸い込み、紫水晶のような瞳を閉じた。
小刻みに震える両手を胸の前で固く組み、祈りを捧げるように意識を研ぎ澄ませる。
「……精霊さん、応えてください。僕の体を使って……ニーシャ様を、助けてください……ッ!」
ラースの願いに呼応し、光の玉が空中にふわりと現れた。
地下の澱んだ空気が、瞬時に清浄な風へと塗り替えられる。
無数の光の粒子が収束し、ラースの褐色の肌が内側から発光し始めた。
それは「憑依」という生易しいものではない。
高位存在による、肉体の強制的上書きだ。
「うっ……ぐぅ、あああああッ!」
喉の奥から苦悶の声が漏れた。
異物が肉体を侵食する激痛と、内臓を焼かれるような非現実的な熱量。
だが、彼は歯が砕けるほど食いしばり、カッと目を見開いた。
その瞳孔が、紫から鮮烈な黄金色へと変色する。
「……準備、完了しました……旦那さま」
声色が、変わった。
幾重もの声が和音のように重なる、神聖にして無機質な響き。
光の精霊が、完全にその身へ受肉した証左だった。
《……上出来だ。よし始めろオッサン。まずはお互いに肌を合わせ、パスを通す。
エクセリオンの宝玉が明滅し、儀式の開始を告げる声が地下倉庫に厳かに響く。
淡い精霊光が部屋を幻想的に照らす中、モーブルはニーシャの華奢な身体へ覆い被さった。
中年男の重く脂の乗った肉塊が、少年の純白を逃げ場なく包み込んでいく。
ラースは傍らで息を潜め、精霊の力を制御しながらその光景を見守ることしかできない。
「ふへへへへ、待ってましたァ! さぁニーシャくぅん♡ 脂の乗った白馬の王子様が、君を助けに来ましたよー♡ たぁっぷりと大人の愛を注いであげますからねえ♡」
《……おいラース。俺様を抜け。今すぐこの豚を背中から串刺しにする》
「待て待て待てェ! 冗談だ、緊張をほぐすためのハイレベルなジョークだろうが! 殺気で肌が粟立って、ニーシャくんの質感が変わったらどうするんだ!」
モーブルは即座に真顔に戻って抗議したが、エクセリオンの宝玉は「次はねぇぞ」とばかりに赤く明滅している。
とはいえ、腕の中に感じる体温は嘘をつかない。
人と獣の境界で揺らぐ熱は、火傷しそうなほどに不安定だ。
(……やれやれ。こんな軽口でも叩かなきゃ、押し潰されそうだ)
ニーシャは抵抗しなかった。
むしろ安心しきった様子で、モーブルの分厚い胸板に額を押し付け、すーすーと小さな寝息を立て始めている。
あまりに無防備なその信頼が、逆にモーブルの胸を深く刺した。
(……くそ。こんな時まで、無垢な顔をしおって)
モーブルは、ふう、と息を吐いて瞼を閉じる。
戯れ言はここまでだ。
意識の深淵へ。
やがて、底のない闇が二人を飲み込んだ。
今年も作品を読んでくださり本当にありがとうございました。
ブックマーク、感想、評価など、ひとつひとつがとても励みになっています。
来年も自分のペースで楽しみながら小説を投稿していきたいと思います。
どうぞよいお年をお迎えください。