※この作品はR-18です。

モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~   作:とけそうだら

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第二十三話 ニーシャと猫耳ポーション②

《じゃあ、手はずを教えるぞ》

 

 魔剣エクセリオンの宝玉が、青く冷たい光を放った。

 淡々と、だが絶対の事実として告げる。

 

《魂の同化を軟化させる唯一の方法――それは"精神の極限共有(ダイブ)"だ》

 

「……精神の極限共有? そんなもったいぶった言い方しないで、さっさと説明しろ」

 

《冗談に聞こえるなら耳かっぽじれ、デブ。要はだ――金髪のガキの精神世界(なか)に入り込む。テメーがガキと抱き合って眠り、意識を同期させるんだ。絡まった糸は、外からじゃ解けねえ。内側から"ゆるめる"んだよ》

 

 モーブルは額の脂汗を手の甲で乱暴に拭った。喉が鳴る。

 

「……つまり、夢の中でわしとニーシャくんの魂の距離を詰めろと?」

 

《そうだ。精霊魔法の基盤は"共感"と"共有"。理屈は単純――やることが地獄なだけだ》

 

 エクセリオンの光が、部屋の隅で縮こまる少年を射抜いた。

 

《ラース。鍵はお前だ。精霊に好かれたお前が"媒介"になる。モーブルと金髪のガキが体を重ねて眠る。そこへ、光の精霊を宿したお前が輪に入る――眠る二人の魂を一時的に同期させる。同化の結び目がふっと緩む、その刹那を――俺様が斬る。精神世界で猫の魂だけを、器から引き剥がす》

 

 ラースは顔を茹で上がったみたいに真っ赤にし、羊の角をぶるぶると震わせて俯いた。

 

「ええっ……!? ぼ、僕が……ニーシャ様と……!? そそそそんな……お、恐れ多いです……無理です……!」

 

《おい、勘違いすんなよ。ただ添い寝してやりゃいいって話じゃねえ》

 

 エクセリオンの声が、一段低く、脅すように響いた。

 

《何度も言うが――この儀式の肝はお前だ、ラース。光の精霊を生身の器に降ろすってのは、術者の魂を削る行為に等しい。未熟な奴が半端な覚悟で精霊魔法を行使してみろ。……場合によっちゃ、代償として体の一部――いや、下手したら命さえ持っていかれる》

 

「ひっ……! か、体の一部に命まで……!?」

 

 宝玉が、嘲笑うように一度だけ強く瞬いた。

 

《ま、"等価交換"ってやつだな。――が! 心配すんな! この俺様がそうならないようにしっかりナビゲートしてやる! 大船に乗ったつもりでどんと構えてろ!》

 

「……その大船、ちゃんと航海してきた実績あるんだろうな?」

 

《あ? ……まぁ、今回が初航海だ》

 

「沈むわ!!」

 

 モーブルの絶叫が地下に響いた。

 

《うるせぇ! 前例がねえから"唯一の手段"って言ってんだろうが! 文句あんならテメーが代案出せ!》

 

 ラースは震える声で呟いた。

 

「で、でも……失敗ばかりする僕なんかにそんな大役……本当に……務まるのでしょうか」

 

 その時だった。

 

 ニーシャが四つん這いのまま床を這い、ラースの足元にすり寄ってきたのは。

 

 金色の尻尾が優雅に揺れ、猫耳がぴくりと立つ。

 

「……ラース、好き……かわいいにゃ……」

 

 甘えるように頰を擦りつけ、喉の奥でゴロゴロと鳴らす。

 すでに理性の半分は、獣の無垢な情愛に塗りつぶされていた。

 

 モーブルは、深く、重い吐息をついた。

 そして――。

 

「……ラース。ひとつ言っておく」

 

「だ、旦那様!? ひゃいっ!?」

 

 いきなり弱点である尻尾の付け根をガシッと掴まれ、ラースの喉から素っ頓狂な悲鳴が漏れた。

 

「“三日”だ」

 

「……は、はい?」

 

「これが上手く行けば……貴様に特別有給休暇をやる。三日間だ!」

 

「え……ええええええええ……!! だ、旦那様……!! 僕に有給休暇!? 奴隷の身分で、そんな……!?」

 

「なんだ、不服か? 欲張りなやつめ! なら特別ボーナスもつけてやる。――銀貨十枚だ。それで好きなものを食って、好きなだけ遊んで寝ろ」

 

「ぎ、銀貨……!? じゅ、じゅうまい……!?」

 

 ラースの目が、飛び出さんばかりに見開かれた。

 

 ――ラースにも一応、“給料”はある。

 

 『自分で金を管理できない奴に、店の勘定は任せられない』。

 そんなモーブルの方針で、月に一度、小遣い程度の銅貨数十枚が支給されていた。

 それだけでも奴隷としては破格の待遇であり、ラースは毎月、恐れ多くて手を震わせながら受け取っていたのだ。

 

 だが、銀貨十枚は世界が違う。

 銅貨の束を何度積んでも届かない高さ。

 計算しようとした瞬間、頭がくらりとする。

 

 屋台の串焼きなら五十本。

 甘い菓子も、果物も、『愛の皿亭』のドーナッツも遠慮せずに買える。

 “選ぶ”という贅沢を、ラースは今までほとんど知らない。

 

「そ、そんな……いいんですか!? ただでさえお店の売上が落ちているのに……!」

 

「うるさい! これは“先行投資”だ! 損する前提で金を投げてるんじゃない……貴様から回収するつもりで投げてるんだ!」

 

「あう……旦那様、怖い言い方です……!」

 

 モーブルは尻尾を掴んだまま、ラースの顔をぐいと引き寄せた。

 至近距離で、脂汗と高級香油の入り混じった商人の熱気がぶつかる。

 

「これは『業務命令』だ。絶対に成功させろ」

 

「は、はいっ……!」

 

「そして五体満足で戻ってこい」

 

「……っ」

 

「失敗して体を持っていかれたりしてみろ。休暇は取り消し、治療費は月給から天引き、死ぬまでタダ働きだ。分かったな!」

 

 それは脅し文句の皮を被った、モーブルなりの精一杯の「死ぬな」という祈りだった。

 損得勘定では説明できない、あまりにも不器用な激励。

 

 ラースの紫の瞳が、じわりと潤んだ。

 恐怖で強張っていた肩が、別の熱い感情で震え始める。

 

「……は、はいっ! 必ず……必ず成功させます! 休暇と特別ボーナスのために……いえ、ニーシャ様と、旦那様のために!」

 

《けっ。現金な奴らだぜ》

 

 エクセリオンが呆れたように明滅する。

 だが、その光は心なしか頼もしく、強く輝きを増していた。

 

《商談成立だな。――始めようぜ。狂った夜会の幕開けだ》

 

 地下倉庫の淀んだ空気が、一変する。

 覚悟を決めた者たちの気力が、静かに、けれど激しく渦を巻き始めた。

 

◆

 

《おし、んじゃあ早速ミッション・スタートと洒落込もうぜ! 野郎ども、まずは一糸纏わぬ姿になりやがれ。肌と肌を密着させるんだよ。魂の共鳴(リンク)深度ってのは、物理的な接触面積に比例すっからな》

 

 号令が下るや否や、モーブルは躊躇なく上着を放り投げ、シャツを引き裂かんばかりの勢いで脱ぎ捨てた。

 露わになったのは、中年特有の不摂生が凝縮された、脂ぎったわがままボディだ。

 

《うっわ、汚ねぇもん見せんな。俺様が女だったら、金貨万枚積まれても抱かれたくねーわ》

 

「やかましいわ! わしだって、カチンコチンのなまくら刀より、”きゃわゆい少年”の肌触りのほうが一千倍マシじゃ!」

 

「うう……こ、こんな明るい場所で……緊張、します……」

 

 対照的に、ラースは恥じらいに指先を震わせながら、主命に従い一枚また一枚と衣を落としていく。

 現れたのは、夜闇に溶けるような褐色の肌と、しなやかに引き締まった腰つき。

 そして、主人の視線に怯えるように揺れる黒い尻尾だった。

 

 一方、ニーシャには自ら服を脱ぐ気配がない。

 寝ぼけたようにきょとんと座り込んでいるだけだ。

 

「ニーシャくん、いい子だねぇー。ほーら、ばんざーい」

 

「にゃ……?」

 

 ニーシャが小首を傾げ、一点の曇りもない瞳でモーブルを見上げる。

 

「うんうん、なんて素直でいい子なんだ。脚もそのままで……じっとしててねぇー」

 

 モーブルは愛おしげに距離を詰めると、手慣れた所作で、しかし優しく少年の衣服を剥ぎ取っていく。

 殻を剥いた果実のように現れたのは、陶器のごとく滑らかな純白の肌。

 そこから生える金色の猫耳と尻尾。

 

 肢体こそ未成熟だが、変化の副作用か、全身が微熱を帯びたように上気しており、触れるだけで溶けそうなほど感度が高まっているのが見て取れた。

 

「はぁ……っ。獣人化してもなお、ニーシャくんの裸体は至高だ。まさに生ける芸術品、神々しすぎて網膜が焼け焦げそうだ……」

 

 恍惚の表情で涎を垂らんばかりのモーブルに対し、ニーシャは細まった瞳孔で興味深そうに見返してくる。

 それは汚れを知らぬ、純粋な獣の好奇心だった。

 モーブルはニーシャを壊れ物のように慎重に抱き上げると、床の毛布へそっと横たえる。

 

《おいラース、見惚れてんじゃねえぞ。ここからが本番だ》

 

 エクセリオンの鋭利な思念が飛ぶ。

 ラースはびくりと肩を跳ねさせ、二人の隣へ正座した。

 

《いいか、光の精霊を喚べ。テメェの|体《うつわを空っぽにして、明け渡すんだ。――恐怖に呑まれるなよ? ビビれば精神ごと消し飛ぶぞ》

 

「は、はいっ……!」

 

 ラースは深く息を吸い込み、紫水晶のような瞳を閉じた。

 小刻みに震える両手を胸の前で固く組み、祈りを捧げるように意識を研ぎ澄ませる。

 

「……精霊さん、応えてください。僕の体を使って……ニーシャ様を、助けてください……ッ!」

 

 ラースの願いに呼応し、光の玉が空中にふわりと現れた。

 地下の澱んだ空気が、瞬時に清浄な風へと塗り替えられる。

 無数の光の粒子が収束し、ラースの褐色の肌が内側から発光し始めた。

 それは「憑依」という生易しいものではない。

 高位存在による、肉体の強制的上書きだ。

 

「うっ……ぐぅ、あああああッ!」

 

 喉の奥から苦悶の声が漏れた。

 異物が肉体を侵食する激痛と、内臓を焼かれるような非現実的な熱量。

 だが、彼は歯が砕けるほど食いしばり、カッと目を見開いた。

 その瞳孔が、紫から鮮烈な黄金色へと変色する。

 

「……準備、完了しました……旦那さま」

 

 声色が、変わった。

 幾重もの声が和音のように重なる、神聖にして無機質な響き。

 光の精霊が、完全にその身へ受肉した証左だった。

 

《……上出来だ。よし始めろオッサン。まずはお互いに肌を合わせ、パスを通す。前菜(オードブル)はゆっくり、優しくな》

 

 エクセリオンの宝玉が明滅し、儀式の開始を告げる声が地下倉庫に厳かに響く。

 淡い精霊光が部屋を幻想的に照らす中、モーブルはニーシャの華奢な身体へ覆い被さった。

 中年男の重く脂の乗った肉塊が、少年の純白を逃げ場なく包み込んでいく。

 ラースは傍らで息を潜め、精霊の力を制御しながらその光景を見守ることしかできない。

 

「ふへへへへ、待ってましたァ! さぁニーシャくぅん♡ 脂の乗った白馬の王子様が、君を助けに来ましたよー♡ たぁっぷりと大人の愛を注いであげますからねえ♡」

 

《……おいラース。俺様を抜け。今すぐこの豚を背中から串刺しにする》

 

「待て待て待てェ! 冗談だ、緊張をほぐすためのハイレベルなジョークだろうが! 殺気で肌が粟立って、ニーシャくんの質感が変わったらどうするんだ!」

 

 モーブルは即座に真顔に戻って抗議したが、エクセリオンの宝玉は「次はねぇぞ」とばかりに赤く明滅している。

 とはいえ、腕の中に感じる体温は嘘をつかない。

 人と獣の境界で揺らぐ熱は、火傷しそうなほどに不安定だ。

 

(……やれやれ。こんな軽口でも叩かなきゃ、押し潰されそうだ)

 

 ニーシャは抵抗しなかった。

 むしろ安心しきった様子で、モーブルの分厚い胸板に額を押し付け、すーすーと小さな寝息を立て始めている。

 あまりに無防備なその信頼が、逆にモーブルの胸を深く刺した。

 

(……くそ。こんな時まで、無垢な顔をしおって)

 

 モーブルは、ふう、と息を吐いて瞼を閉じる。

 戯れ言はここまでだ。

 意識の深淵へ。

 やがて、底のない闇が二人を飲み込んだ。

 




今年も作品を読んでくださり本当にありがとうございました。
ブックマーク、感想、評価など、ひとつひとつがとても励みになっています。
来年も自分のペースで楽しみながら小説を投稿していきたいと思います。
どうぞよいお年をお迎えください。
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