モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~ 作:とけそうだら
扉をくぐった瞬間、世界の手触りが変わった。
回廊の湿気も、訓練場の白さもない。
温度そのものが抜き取られ、音の輪郭だけが残っている。
――静かすぎる。
空間は丸い。
天井も床も壁も境目が曖昧で、暗い水の中にいるみたいに距離感が狂う。
色は黒ではなく、薄い灰。
光があるのに影がない。
影がないのに、どこかが“怖い”。
《……なあオッサン。ここ、変だ》
「分かっとる。鼻が利く商人ほど、こういう空気は嫌いだ」
エクセリオンの声が珍しく低い。
いつもの悪態が薄いぶんだけ、背筋に冷たいものが走る。
中央に、何かが浮いていた。
人の形。
小さな少年――いや、“少年だったもの”。
ニーシャだ。
目を閉じたまま、無重力のように空中に浮かんでいる。
金髪は水草みたいにゆらゆら揺れ、頬は陶器のように白い。
そして頭には――猫の耳。
柔らかい毛並みの、ネコミミがぴんと立っていた。
背中側に、影の尾が一筋だけ垂れている。
尾は実体を持たず、煙のように揺らぎ、時折ぷつりと切れてはまた繋がる。
「……猫と絡まった、ってのは比喩じゃなかったんだな」
《比喩じゃねえ。実害だ》
エクセリオンが吐き捨てる。
だが、その声音にも焦りが混じっている。
ニーシャの周囲には、薄い膜のようなものが張っていた。
透明だが、触れれば指がちくりと痛む――心を拒む、棘の膜。
モーブルは一歩踏み出した。
空間がきしむ。
床がないはずなのに足裏に圧が返り、音が鳴る。
「坊っちゃん。聞こえるか。……迎えに来たぞ」
返事はない。
眠っているというより、遠くへ沈んでいる。
深い水底へ。
その時、膜の向こう側で、ネコミミがぴくりと動いた。
《反応したぞ》
「なら、今だ」
モーブルは手を伸ばす。
指先が膜に触れた瞬間――
ズン、と空気が落ちた。
落ちたのは温度じゃない。
“気分”だ。
世界の底が抜け、暗い感情が一斉に噴き上がる。
黒い煤のようなものが、床も天井も関係なく渦を巻いて襲ってきた。
《来やがった! “拒絶”のやつだ!》
エクセリオンが舌打ちし、モーブルの前に立つ。
闇が形を持つ。触手のように伸び、壁のように広がり、針のように突き刺さる。
だが、刺さるのは肉体じゃない。
刺さるのは“心”だ。
モーブルの胸に、言葉にならない冷たさが流れ込んだ。
誰かの声がする。
自分の声じゃない。
――要らない。
――近寄るな。
――また奪う気か。
「……っ」
息が止まった。
空気を吸っているのに、肺が満たされない。
闇の中に、景色が混じる。
紙の匂い。
冷たい書斎。
白砂の訓練場。
そして、そのどれとも違う“夜”。
月のない庭。
草の匂いが湿っている。
小さな墓標――いや、墓標の代わりに置かれた、壊れた首輪。
白い毛並みが、もう動かない。
「……ノーン……?」
モーブルが呟くと、闇がいっそう濃くなる。
痛みの中心を当てたからだ。
ニーシャの膜の向こうで、表情がわずかに歪んだ。
目は閉じたままなのに、眉だけが寄る。
そして、少年の唇が動く。
『……来るな』
声は小さく、鋭かった。
刃物みたいに短い拒絶。
「坊っちゃん、わしらは――」
『来るな!』
絶叫ではない。
なのに空間が割れた。
薄いガラスが砕けるように、見えない圧が跳ねた。
モーブルの体が弾かれ、数歩分、後ろへ滑る。
現実の床はないのに、転びそうになる感覚だけがある。
《おい、落ち着け! こいつは今、外と繋がるのを怖がってる!》
「怖がってる? ……拒んでいるんじゃなくてか」
《同じだが違う。拒絶は防御だ。奪われた奴ほど、二度と渡さねえってなる》
闇が再び押し寄せる。
今度は形が“人の顔”に似ている。
笑いながら泣く顔。
泣きながら笑う顔。
それらが一斉に言う。
――どうせいなくなる。
――どうせ奪われる。
――だから最初から要らない。
モーブルの喉が渇く。
ここは精神世界だ。
渇きは水分じゃない。
希望の欠乏だ。
エクセリオンが身を振り、闇を薙ぐ。
闇が裂ける。
だが裂けたそばから、また繋がる。
《切っても無駄だ。こいつ、“感情”そのものだぞ》
「なら、どうする」
《拾うしかねえ。原因のピースを出させて回収する。……だが問題は――》
エクセリオンの目線が、上を指す。
ニーシャの周囲の膜が、さらに厚くなっていた。
拒絶が拒絶を呼び、殻が固まっていく。
そして、ネコミミが伏せられた。
耳が畳まれると同時に、空間の温度がさらに下がる。
『……誰も、信じない』
その言葉が落ちた瞬間、闇が“壁”になる。
モーブルとエクセリオンを、中心から切り離すように。
分離の間――。
名前どおり、世界が“分ける”ことを選び始めた。
《ラース! 聞こえるか! 介入しろ!》
エクセリオンが虚空に向かって怒鳴る。
次の瞬間、上から温もりが降った。
薄い金の光。
ラースの誘導だ。
温もりは闇を押し返し、膜の表面を撫でる。
だが――届かない。
膜が拒むのは闇だけではない。
“優しさ”も拒む。
金の光が触れた場所から、じゅっと音がした。
温もりが蒸発するみたいに、光が削れていく。
《チッ……! こいつ、癒やしを毒だと思ってやがる!》
「癒やしを……毒に?」
《優しさで釣って、後で奪われた記憶がある。そういう奴は“温もり”に噛みつく》
ラースの光が強くなる。
だが強くするほど、膜の棘が立ち、闇が暴れる。
モーブルは歯を食いしばった。
正面から押せば押すほど、少年は閉じる。
――なら、商売の基本だ。
正面で売れないなら、横から回す。
裏を取る。
「エクセリオン。ここは“分離”の間だと言ったな」
《ああ、言ったが》
「なら、切り離されとるのはわしらだけじゃない。坊っちゃん自身も、何かから切り離された。……その“切れ目”があるはずだ」
エクセリオンが一瞬黙る。
罵声より先に、理解が来た。
《……“死別”か》
モーブルは頷いた。
闇の中で見えた景色――壊れた首輪。
動かない白い毛並み。
あれが真ん中だ。
「ノーンを失った夜。あそこが、分離の原点だ」
《だったら、その場面に潜れ。だが――》
「だが?」
《こいつは“見る”だけじゃ済まねえ。今の拒絶は、記憶を守るための暴力だ。触れたら、お前の心が裂かれる》
「裂かれてなんぼだ。商人は、損を引き受けて利益を取る」
《カッコつけんな、オッサン。……死ぬなよ》
「お前に言われたくないわ」
モーブルは一歩、闇へ踏み込んだ。
煤のような感情が体を舐め、耳元で囁く。
――帰れ。
――奪うな。
――二度と、誰も。
それでも進む。
闇の中心へ。
拒絶の核へ。
すると、世界が“場面”を吐き出した。
夜。庭。湿った草。
小さな手。震える指。
白い毛並み――ノーン。動かない。
幼いニーシャが、その隣に座っていた。
泣いていない。泣けない。
声も出ない。息だけが、ひゅう、と漏れる。
『……やだ』
絞り出すような声。
否定じゃない。祈りだ。
『……やだ、やだ……戻って……』
小さな手が、白い毛を揺らす。
揺らしても、温度は戻らない。
その瞬間、父の声が重なった。
『泣くな。みっともない。使い魔は装備だ。壊れたなら替えればいい』
幼いニーシャの肩が、びくりと跳ねた。
泣けない理由が、そこにある。
泣いたら怒鳴られる。
悲しんだら弱者だ。
愛したら奪われる。
だから――最初から、要らない。
記憶のニーシャが、ゆっくり顔を上げる。
目は真っ赤だ。
でも涙は落ちない。
落とせない。
『……もう、誰も……いらない』
その言葉が、今の“分離の間”へ繋がる。
拒絶の根。
闇の井戸。
モーブルは、胸の奥がきりきりと痛むのを感じながら、そっと言った。
「……坊っちゃん。そりゃあ、誰だって閉じる。閉じて当たり前だ」
返事はない。
だが、闇が一瞬だけ揺れた。
ラースの温もりが、上から差し込む。
相変わらず膜に削られ、細くなる。
それでも、消えない。
《オッサン! 何か掴め! 鍵穴を出させろ!》
「分かっとる……!」
モーブルは、記憶の中の幼いニーシャへ――届かないと知りながら手を伸ばした。
触れた瞬間。
痛みが走る。
胸を裂く痛み。
喉を焼く痛み。
“失った”という一点に凝縮された、子供には大きすぎる痛み。
だが、その痛みの中に――小さな形がある。
それは悲しみの核。
拒絶の理由。
守れなかった後悔。
そして、守りたいと願った証。
闇の底で、金の線がひと筋、走った。
白い世界には似合わない、細い細い“鍵穴”の輪郭。
膜が、ほんのわずかに薄くなる。
ネコミミ姿のニーシャの頬が、微かに緩んだように見えた。
『……やだ……奪うな……』
拒絶はまだ強い。
だが、扉の鍵は――確かにそこにある。
モーブルは血の味のする息を吐き、掌を握り込んだ。
「……拾うぞ。坊っちゃんの“別れ”を。……そして、戻す」
闇が、最後の抵抗のようにうねりを上げる。
ラースの光が、必死に差し込む。
エクセリオンが怒鳴る。
《潰されんな! ここが山場だ!》
分離の間の中心で、金の線がもう一度脈打った。
次の欠片が落ちる――その直前、世界が息を止める。
ネコミミの少年が、閉じた瞼の奥で、初めて“涙の形”を作りかけた。
――しかし、落ちない。
落とすことを、まだ許せない。
だからこそ、闇は濃く、重い。
そして、拒絶が告げる。
『……触るな。近づくな。……ボクから、奪うな』
モーブルは一度だけ目を閉じた。
商人の計算を捨て、ただ人間として、言う。
「奪わん。……取り返しに来た」
闇が、きし、と軋む。
鍵穴の輪郭が、もう一段だけ鮮やかになった。
だが、まだ足りない。
“分離”を解くには、最後の一押しが要る。
ラースの温もりだけでは届かない。
エクセリオンの力技でも壊せない。
必要なのは――ニーシャ自身が、ほんの少しだけ「外を見ていい」と思える理由。
その理由を、モーブルは今から探す。
◆
分離の間が、ひとつ息を吐いた。
闇が膨らむ。
煤の渦が太くなり、空間そのものが“嫌悪”で満ちていく。
《……オッサン、来るぞ。これ以上踏み込んだら――》
「分かっとる。だが、今引いたら二度と手が届かん」
モーブルは拳を握った。
掌の中に、まだ形になりきらない“別れ”の感触が残っている。
鍵穴は見えた。だが、開かない。
涙が落ちない限り、扉は開かない。
――泣くことを許されなかった子供。
その事実が、重石のように胸に沈む。
ネコミミのニーシャが、ふっと唇を動かした。
『……理由なんて、いらない』
静かな声だった。
静かすぎて、逆に怖い。
『外に出たら、また失う。優しいふりをして、奪って――それで終わりだ』
言葉の端々に、ノーンの死んだ夜が刺さっている。
湿った草。冷たい首輪。動かない白い毛並み。
そして父の声――「替えればいい」。
ミッドナイトの影が、ニーシャの背中側で大きくうねった。
尾が裂け、黒い糸になって伸びる。
まるで「近づくな」と空間に釘を打つように。
《ミッドナイトだ。主人を守ってる――いや、守り方が歪んでる》
「守り方が……歪む?」
《守る=排除になってる。“傷つかせる奴は最初から消す”って回路だ》
闇が壁になる。
モーブルとエクセリオンを中心から切り離すように、円を描いて盛り上がった。
壁の表面に、無数の“顔”が浮かぶ。
泣き笑い。嘲り。憐れみ。
優しさの顔をして、剥いだら牙の顔。
――どうせいなくなる。
――どうせ奪われる。
――だから最初から要らない。
「……くっ」
胸の奥が乾いていく。
希望が削れる感覚だ。
《ラース! 聞こえるか! 介入しろ!》
エクセリオンが怒鳴った。
次の瞬間、上から温もりが降ってきた。
薄い金の光。ラースの誘導。
だが光は、膜に触れた瞬間に“削れた”。
じゅ、と音がする。温もりが蒸発するみたいに、金が薄くなる。
《チッ……! こいつ、癒やしを毒だと思ってやがる!》
「優しさを……毒に?」
《優しさで釣られて、後で奪われた。
そういう奴は“温もり”に噛みつくんだよ》
外側の温もりが強くなるたび、内側の棘が立つ。
ラースの光は、じわじわと削られ――
それでも、ラースは止めない。
止められない。
金の光の揺らぎが、苦痛の呼吸みたいに乱れた。
「……ラース、無理をするな!」
返事はない。
だが“温もり”の向こうで、何かが軋む。
肉体が。精神が。限界を擦る音。
《外のラースが……潰れるぞ》
エクセリオンの声が、初めて怯えた。
その瞬間だった。
壁が裂けた。
闇が、牙をむく。
ミッドナイトの影が跳び、モーブルの頭上から降り注いだ。
触手。針。爪。
全部が“拒絶”でできた凶器。
モーブルは身を捻る。
だが闇は避けた先へも伸びる。
刺さるのは肉体ではなく、心だ。
耳元で囁きが炸裂する。
――帰れ。
――奪うな。
――お前も、奪う側だ。
「……っ、違う……!」
言い返した瞬間、闇が笑った。
反論するほど、相手は“こちらが必死”だと確信する。
その中心で、ネコミミのニーシャが静かに呼吸した。
眠っているはずの胸が、ゆっくり上下する。
『……ミッドナイト』
名を呼ぶ声。
祈りの声。
そして命令の声。
黒猫の影が、嬉しそうに尾を揺らした。
――融合が始まった。
「おい……待て! それは――」
《やべえぞ! このままくっついたら“分離”が“縫合”になる!》
黒い糸が太くなる。
ニーシャの背へ絡み、首へ巻きつき、心臓へ沈む。
影が“主人の中”へ流れ込む。
ミッドナイトは守るために溶ける。
主人の孤独へ、完全に同化する。
ネコミミのニーシャの瞼が、ゆっくりと開いた。
金色の瞳。
だがそこにあるのは子供の光じゃない。
夜の獣の目。
“排除”を正義として抱いた目。
『……邪魔をするな』
空気が焼ける匂いがした。
小さな掌に赤い光が集まる。
火球――いや、火球ではない。
圧縮された炎が“芯”になって回転し、槍のように尖っている。
《来る!》
――ドォン!!
爆炎が空間を薙ぎ払い、闇の壁すら赤く焼いた。
精神世界なのに、魂が焦げる錯覚が走る。
いや、錯覚じゃない。
熱が“心”に直接触れてくる。
モーブルは跳び退き、熱風を喉で噛み潰した。
「坊っちゃん! 正気に戻れ!」
『戻る? どこに?』
首を傾げる仕草だけが幼い。
だが目が冷たい。
『戻ったら、また奪われる。
だから、いらない』
爆炎が連射される。
炎は“効率”で研がれている。無駄がない。
避けても避けても、狭い隙間へ刺さってくる。
《クソッ……! ラースが持たねえ!》
上からの温もりが、途切れかけた。
金の光が震え、薄くなり、今にも消える。
――外でラースが悲鳴を上げている。
その気配が、温もりの形で伝わってきた。
《オッサン、撤退だ! このままだとラースが先に死ぬ!》
「……!」
撤退。
その判断が正しいのは分かる。
だが正しい判断が、必ずしも“救い”を連れてこないことも――商人は知っている。
ネコミミのニーシャが、両手を広げた。
赤い光が膨張し、球ではなく“炉”のように渦を巻く。
《次で焼き切られる! 引け、オッサン!!》
エクセリオンが叫んだ。
声がかすれている。珍しく、必死だ。
モーブルは歯を食いしばった。
「……まだだ」
《はぁ!?》
「坊っちゃんは、いま“温もり”に噛みつく。
優しさを毒だと思っとる。
なら――毒でも薬でもない形で、止めるしかない」
《何言って――》
炎の炉が回転し、空間の温度が跳ね上がった。
とどめが来る。逃げ場はない。
その瞬間、モーブルの頭に一つの手が落ちた。
(商売はな……相手の目を“値札”から外した瞬間に決まる)
予想外。
理解不能。
相手の思考が止まる“一瞬”。
モーブルは走った。
焼き切られる距離へ、逆に突っ込んだ。
「エクセリオン。口を閉じろ」
《は?》
「黙れ。……恥は、命より安い」
《オッサン!?》
モーブルは、服に手をかけた。
「こういう時は――商人は“身ぐるみ”を売るもんだ!」
バサッ。
商人服が落ちた。
下着も、見栄も、社会的な立場も、全部まとめて脱ぎ捨てる勢いで。
《なっ――!? 何してやがる、この変態!!》
エクセリオンの絶叫が脳内に響く。
だが、モーブルは止まらない。
その瞬間。
ネコミミのニーシャの炎が、ピタリと止まった。
金色の獣の瞳が見開かれる。
拒絶の壁が、一瞬だけ薄くなる。
“理解不能”な事態を前に、排除の回路がフリーズしたのだ。
『…………え?』
たった一拍。
けれど、百戦錬磨の商人には十分すぎる隙だった。
モーブルは巨体を揺らしダッシュで駆け抜け距離を詰め、腕を伸ばし――抱き寄せた。
「ニーシャくん! するぞ! セックスだ!」
冷たい。
軽い。
抱きしめた腕の中で、少年の体が小さく震えた。
炎の熱さは消え、代わりに氷のような孤独の温度が伝わってくる。
闇がざわめく。
ミッドナイトの影が牙を剥き、モーブルを引き剥がそうと背中に爪を立てる。
激痛が走る。
だが、モーブルの腕は鉄の万力のように離れない。
『……な、なにを……離せ、汚らわしい……!』
ニーシャが身をよじる。
拒絶の力が爆発しようとした、その時。
モーブルは、少年の唇を塞いだ。
『――んんッ!?』
言葉を封じ、息を奪う。
ただのキスではない。
魂の呼吸を合わせるような、深く、乱暴な口づけ。
『ひゃめっッ!? んむっ! ちゅぶっ、れろっ、ぐちゅっ、れろれろ、じゅぼれろぉっ!」
《おいオッサン! セックスって……正気か!? 相手は暴走した精神体だぞ!》
「ちゅぽん! いいから貴様は黙って指くわえて見てろ!」
『うぅ……。くすぐったい……にゃ……』
ニーシャが小さな声で呟き、身をよじった。
モーブルは慈しむように、けれど捕食者が獲物を味わうような粘着質さで――唇を重ねる。
んちゅ……ちゅぷ……。
初めのキスとは違って軽く、甘露を吸うように。
ニーシャの唇はマシュマロのように柔らかく、吐息からはあどけない薬草の香りがした。
少年はくすぐったそうに身をよじったが、すぐに喉の奥でエンジンのような振動が生まれ始める。
「ん……にゃ……ぁ……♡ くすぐったい……やめ……にゃ……♡」
猫のような甘い鳴き声。
拒絶の言葉を吐いているはずなのに、その響きはどうしようもなく甘えている。
モーブルは言葉を無視し、強引に舌をねじ込んだ。
逃げる小さな舌を執拗に追い回し、絡め取り、口内の粘膜すべてを塗り替える勢いで蹂躙する。
「うにゃっ……! んむぅ……♡ くすぐったいのに……変な感じ……♡」
ニーシャの身体がびくんと震え、猫耳がぴくぴくと忙しなく動く。
普段のプライドの高いニーシャなら、絶対に許さない行為だ。
モーブルは内心で、背筋が粟立つほどの悦びを感じていた。
この魔導国の至宝たる天才少年が、こんなに無防備に、くすぐったがりながらも自分を受け入れている。普段の傲慢不遜な態度からは想像もつかない。
そのギャップこそが、モーブルにとっては最高の媚薬だった。
「ふへへ、くすぐったいか? いいんだよ、ニーシャくん。今日は特別だ。普通なら絶対に言わないようなこと、たくさん言わせてやるからなー♡」
モーブルはキスを深くしながら、手をニーシャの首筋へ滑らせた。
白い肌を指先でねっとりと撫で、華奢な鎖骨のくぼみをなぞる。
ニーシャの身体がまたびくんと跳ね、尻尾が無意識にモーブルの腕へ絡みついた。
「にゃはっ……! そこ……くすぐったい……にゃ……♡ やめて……動かないで……♡♡」
くすぐったがるニーシャを、モーブルは体重をかけて強引に押さえつける。
少年の細い手首を片手でまとめて掴み、もう片方の手で、薄い胸の突起を探り当てた。
未成熟な小さな突起を指で摘み、優しく、意地悪に転がす。
「にゃうっ……♡ あっ……♡ そこ……変……♡♡ くすぐったいのに……熱い……♡」
ニーシャの声色が、少しずつ“熱”を帯びて変わっていく。
普段の理性的な少年なら、絶対にこんな声は出さない。
モーブルはそれを耳の奥で反芻し、存分に味わう。
指の動きを速め、突起を軽く摘まんで引っ張った。
「ふへへ、感じてるな? ニーシャくん、こんなおっさんに弄られて感じちゃうなんて、普段の君じゃ絶対にありえないよなァ♡ 一流の品ってのは、弄り甲斐があるもんだ」
「にゃ……にゃに言ってる……にゃ……♡ ボクは……そんな……♡♡」
ニーシャは否定しようと身をよじるが、体は正直に反応している。
モーブルは容赦なく手を進めた。
胸から手を滑り落とし、平らな腹を撫で、へそのくぼみを指先でほじくるようにくすぐる。
ニーシャの身体がまた跳ね、尻尾がバンバンとシーツを叩く。
「ひゃんっ……♡ お腹……くすぐったいにゃ……♡ ……やめ……♡♡」
モーブルはニーシャの肌に滲んだ汗を指で拭い、ペロリと舐めた。
塩辛く、ほのかに甘い汗の味。
これこそが、生きているニーシャの味だ。
「美味いな、ニーシャくんの汗ぇ。もっと出してくれてええぞぉ。商人は『極上品』の味見は遠慮せん主義でな」
モーブルは舌を伸ばし、ニーシャの身体を直接舐め始めた。
首筋から鎖骨へ、ぬめるような舌使いで這わせ、汗を余さず舐め取る。
ニーシャの肌は白く滑らかで、汗が珠のように光って誘っているようだった。
「にゃっ……♡ 舐めないで……汚い……♡ くすぐったいにゃあ……♡♡」
くすぐったがるニーシャを無視し、モーブルは胸の突起を口に含んだ。
舌先で転がし、吸い付き、軽く歯を立てる。
電流が走ったように、ニーシャの身体がびくびくと痙攣し、甘い絶叫が漏れた。
モーブルは口で愛撫しながら、もう片方の胸も手で弄り、溢れ出る反応のすべてを貪る。
ニーシャの体液――汗、唾液、吐息、そのすべてを味わい尽くす。
普段のプライド高い少年が、こんな屈辱的な行為を許すはずがない。
その背徳感が、モーブルの欲をさらにどす黒く、熱く燃え上がらせていく。
「あわわわわ……ニーシャ様、すごいえっちです……」
その光景を、精霊を介してラースは瞬きもせずに凝視していた。
《おいおい、見とれてる場合じゃねーぞ! おめーは不測の事態が起こったときに対処するんだ! しっかり気ぃ張って精霊を制御しとけよ!》
「は、はい!」
ラースはしっかりと二人の姿を焼き付ける。
精霊憑依によって黄金色に染まった瞳は、ただの情事を見ているのではない。
唾液が繋がり、息が混ざり合うたび――二人の魂の波長が“
モーブルは唇を離さず、舌を絡ませたまま、ラースに指示を出す。
「んぅー……! ッぷ……ラース、聞こえるか! 貴様も触れ! ニーシャくんの身体を、熱を、魂の形を! 外から指先でしっかり感じ取れ! 治療の一環だ、遠慮するな!」
「え……は、はい……! 貴族様に恐れ多いですが……し、失礼いたします、ニーシャ様……治療のため、失礼しますっ……」
ラースの細い指が、恐る恐るニーシャの薄い胸にある突起へ触れる。
途端、精霊の光と肉体の刺激が同時に走り、ニーシャの身体がびくんと跳ね上がった。
猫耳がぴくりと立つ。
「にゃうっ……♡!?」
驚きと快楽が混ざった悲鳴。
モーブルはニーシャの首筋に唇を這わせて吸い付き、ラースは震える手で光を注ぎながら胸を愛撫する。
三人の荒い吐息が、少しずつ、確実に重なり始めた。
背中で蠢いていた黒い影――ミッドナイトが、焦ったように揺れた。
孤独を餌にする影が、主人が「他者」によって満たされていく光景に、本能的な恐怖と嫉妬を感じているのだ。
エクセリオンの声が、儀式の進行を見守るように静かに響く。
モーブルは、ニーシャの白く細い両脚をゆっくりと左右へ押し広げた。
無防備に晒された秘所。
桃色の蕾は、主人の拒絶の言葉とは裏腹に、すでに蜜で濡れそぼり、期待するようにヒクついている。
まるで、これから与えられる楔を待ちわびるかのように、静かにクパクパと開閉していた。
『や、やだ……! 来るな、挿れるにゃ……! 壊れちゃう……!』
ニーシャの悲鳴が上がる。
それは拒絶の叫びでありながら、どこか“知っている快楽”が訪れることへの、甘い怯えを含んでいた。
モーブルはニーシャの華奢な腰を万力のように掴み、亀頭を蕾にあてがうと、容赦なく腰を押し進めた。
ぬぷっ、ずぷ、ずぷずぷッ。
精神の世界に、湿った肉の音が響く。
熱く脈打つ太い楔が、冷え切った少年の秘所を強引にこじ開け、貫いていく。
『にゃあ゛、あ゛あ゛あ゛っ――!?♡♡♡』
ニーシャの喉から、声にならない絶叫が迸る。
背中が弓なりに反り、金色のネコミミがピンと立ち、尻尾の毛が電流を受けたように逆立つ。
拒絶の闇が、ドロドロと波打った。
侵入者を排除しようとするミッドナイトの意思と、侵入者を深部まで受け入れそうになるニーシャの本能が激しくぶつかり合う。
ずっぽ、ずっぽ、ずっぽ、ずっぽ、ずっぽ――!
モーブルが突き上げるたびに、ニーシャを覆っていた透明な膜――心を閉ざす“棘の殻”が、内側から熱でドロドロに溶かされていく。
それは痛みではない。
恐怖でもない。
圧倒的な“生の実感”が、摩耗し乾いた魂に直接注ぎ込まれる暴力的な救済だ。
「っ、う、ぅぅ……! やだ、熱い、お腹のなか……変ににゃる……!」
ニーシャの瞳が潤み、獣の金色が揺らぐ。
背後のミッドナイトの影が、悲鳴を上げるように激しく明滅した。
孤独を餌にする影にとって、この強烈な接触は劇薬だ。
他者と繋がり、満たされる感覚。
それは“拒絶”という概念を根底から否定し、焼き尽くす行為。
《なるほどな……! 言葉が通じねえなら、本能でハッキングするってか! イカれた商法だが、理に適ってやがる!》
エクセリオンが叫ぶ。
《おいラース! 聞こえるか! チャンスだ!》
外――現実世界にいるラースに指示が飛ぶ。
《今、回路が完全に繋がった! オッサンが“パイプ”になってる! 外から弾かれてた癒やしを、オッサンの肉棒を通してガキの中に流し込め!》
その指示に応えるように、精神世界のモーブルのペニスが淡く、しかし力強く発光した。
ラースの魔力だ。現実の肉体から送られた温もりが、結合部を通じてニーシャの魂の深淵へ、奔流となって流れ込む。
「ぐ、おおっ……!」
モーブル自身も苦悶と快楽の入り混じった声を上げる。
自分の男根を魔力の導管にする負担は半端ではない。尿道から芯まで焼けるような熱さだ。
だが、気持ちいい。
ニーシャの中は、魔法の熱と肉の締め付けで、気が狂うほど気持ちいい。
自然と、腰の動きも激しく、早くなる。
熱く狭い内壁が、モーブルの肉槍を逃すまいと強烈に締めつけ、ニーシャの身体がびくんと震える。
「んあっ……♡ モーブル……深いにゃ……♡ お腹の奥……熱いのが、当たってる……♡♡」
ニーシャの声が甘く溶け、金色の猫耳がぴくりと立ち、尻尾がモーブルの腕に絡みつく。
「坊っちゃん……感じるか。これが“熱”だ。お前が欲しかった温もりだ!」
パン、パン、パン、パンッ!
肉と肉がぶつかる湿った音が、床のない空間にリズムを刻む。
モーブルは汗だくになりながら、少年の腰を掴み、何度も、最深部を叩くように打ち付ける。
『あ、あうっ、んくっ、ひぐっ……! にゃ、にゃああっ♡ すごい、来る、深いぃっ♡』
ニーシャの声が変わっていく。
拒絶の叫びが、甘い喘ぎに。
排除の意思が、求める熱に。
ラースの光とモーブルの欲望が混ざり合い、快楽が脳髄を白く焼き尽くす。
“失うのが怖い”という理屈を、“今ここにある圧倒的な熱”が塗りつぶしていく。
『モー、ブル……っ! モーブル……っ!』
獣の声が消え、少年の声が戻る。
涙が、閉じた瞼から溢れ出した。
モーブルはさらに強く抱きしめる。
楔を最深部まで押し込み、己の存在を刻みつける。
「わしはここにおる! どこにも行かん! お前の中に、ずっとおる!」
それは嘘ではない。
物理的にも、精神的にも。
モーブルという存在が、ニーシャの空っぽだった心の穴を埋める“栓”になったのだ。
モーブルは腰の動きを速める。
パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!
「おほほほほ♡ ニーシャくんと交尾! 従順になった猫耳ニーシャくんと交尾! おほ! 最高! 最高じゃあああ!」
「ああっ……♡ モーブル……すごい……♡♡ ラースの魔力……熱い……♡♡♡」
ニーシャの声が高くなり、身体がびくびくと痙攣する。
猫耳が優しく揺れ、尻尾が空気を叩く。
その時、現実世界からラースの甘い懇願が響いてきた。
精神のリンクを通して、声が脳に直接届く。
『旦那様……僕も……入れて……欲しいですぅ♡ 精神だけじゃ足りない……僕も、体ごとニーシャ様といっしょに感じたいです……♡♡』
「ぬぅ……欲しがりめ! そうか、じゃあ貴様は現実世界のわしの肉棒にケツマンコを挿れておけ! こっちで興奮してる分、現実のわしのモノも大きくなっておるだろ?」
『は、はい! ビンビンですぅ! では、旦那様。失礼します!』
現実世界のベッドの上。
ラースは腰を浮かすと、仰向けになったモーブルの屹立するペニスを、自らの蕾にあてがった。
ぬるりと、モーブルの昂りがラースの内側へゆっくり沈む。
『あぅううううう!♡ 旦那様の、すごいですぅううう!♡ 精神ではニーシャ様と、肉体では僕と……全部繋がってますぅぅ♡』
「くっ、感じるぞ……ラース……ニーシャくんのと合わさって二倍に……現実と精神、両方から締め付けてくるぞ……♡」
精神世界ではニーシャを突き、現実世界ではラースに跨がられ、モーブルの魂と肉体は快楽のサンドイッチ状態にあった。
三人が完全に繋がり、魂の波長が強く共鳴する。
精霊の光が部屋を淡く染め、ニーシャに憑依していたミッドナイトの魂が、あまりの快楽の波動に耐えきれずさらに緩む。
《完璧だ! 結び目がほどけ始めてる! このまま頂点まで持っていけ!》
エクセリオンの声に興奮が混じり、光が強く輝く。
モーブルは精神世界でニーシャの腰を強く抱き、現実の肉体も無意識に腰を跳ね上げる。
ラースもモーブルを強く抱きしめ、腰を激しく動かす。
パンッ! パンッ! パンッ! パンッ!
次元を超えた二重の交わりが、絶頂へと加速していく。
「くうっ、くぅぅ……! 精神のチンポも、現実のチンポも、パンパンじゃあ! 前と後ろ、夢と
モーブルの理性が弾け飛ぶ寸前だった。
精神世界ではニーシャの未成熟で熱い肉壁が、現実世界ではラースの献身的で巧みな肛門が、示し合わせたように同時にモーブルの昂りを搾り上げている。
『あぁっ、んあぁっ……♡ モーブル、モーブルぅ……♡ ボクの中……いっぱい、かき混ぜてぇ……♡♡』
ニーシャの瞳からハイライトが消え、快楽に蕩けた表情で涎を垂らす。
かつての拒絶など見る影もない。
今はただ、モーブルという存在に満たされることを至上の喜びとする、雌の顔だった。
『旦那様ぁ! 僕も、僕もイきそうですぅ! ニーシャ様と繋がって、魔力が、快感が、逆流してきますぅぅ♡』
現実世界のラースもまた、白目を剥きかけて腰を打ち付けている。
《いいぞ、臨界点だ! 拒絶の殻はもうボロボロだ! オッサン、最後だ!
「おうよ! 覚悟しろニーシャくん! そしてラース! わしの全てを……お前たちの魂の最深部に注ぎ込むぞおおおおっ!!」
モーブルは雄叫びを上げ、渾身の力で腰を突き上げた。
ドズゥゥゥゥゥゥンッ!!
精神と肉体、二つの世界で同時に、楔が最奥と前立腺を穿つ。
『――ッ!?!? にゃ、にゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ♡♡♡♡』
『ひぎぃいいいいいいいいっ♡♡♡♡』
ニーシャとラース、二人の絶叫が重なる。
その瞬間、モーブルの尿道口から、白濁した熱い奔流が爆発的に射出された。
「で、出るぅ! 出る出る出るっ! わしの
ビュルルルルルッ! ドピュッ! ドピュルルルッ!
精神世界ではラースの魔力を帯びた光る精液がニーシャの胎内を灼き、現実世界では生々しい雄の種がラースの直腸をどろりと満たす。
二重の射精。
魂と肉体、次元を超えた同時絶頂。
『あぁっ、熱っ、熱いぃいいい……♡ お腹、いっぱい……モーブルの、いっぱぁい……♡♡』
ニーシャの身体が激しく痙攣し、白目を剥いてガクガクと震える。
その絶頂の余韻の中で、背中に張り付いていたミッドナイトの影が、たまらず悲鳴を上げた。
ギニャアアアアアッ――
影がのたうち回る。
圧倒的な“生の歓喜”と“肯定”のエネルギーに焼かれ、これ以上張り付いていられなくなったのだ。
べり、べりべりべりっ!
音を立てて、黒い影がニーシャから剥がれ落ちそうになる。
だが、まだだ。
最後の一本――未練のように伸びた黒い糸が、しぶとくニーシャの魂に食らいついている。
《往生際が悪ぃぞ、黒猫ォ!》
エクセリオンが叫んだ。
モーブルの背後で、聖剣の輝きが閃光となって迸る。
《ここからは俺の仕事だ! オッサンがこじ開けた隙間、俺が断ち切る!》
――ザンッ!
光の刃が、空間ごと黒い糸を斬り裂いた。
一切の未練を許さない、鮮やかな一閃。
プツンッ。
何かが切れる音が、世界に響いた。
同時に、ニーシャの頭から猫耳が消え、尻尾が光の粒になって霧散する。
ミッドナイトの影は弾かれたように遠くへ飛び去り、小さな黒猫の形へと戻っていった。
《よしっ! 分離完了だ!》
エクセリオンの勝どきと同時に、空間に散らばっていた光の欠片――回収した記憶のピースたちが、一斉にニーシャの元へ集束する。
”忍耐”。”友情”。”守護”。”優しさ”。”最適化”。”喪失”。
そして――。
モーブルは射精の快感と疲労に打ち震えながら、薄れゆく意識の中で、最後のピースがカチリと嵌まる音を聞いた。
――”受容”。
ニーシャが、他者を、自分を、そして愛されることを受け入れた瞬間だった。
空っぽだった心の穴が、温かな光で満たされていく。
「……よかったな……坊っちゃん……」
モーブルは満足げに呟き、光に包まれるニーシャを抱きしめたまま、深い眠りの底へと落ちていった。
◆
チュン、チュン……。
高い位置にある通気口の向こうから、微かに小鳥のさえずりが聞こえてくる。
地下倉庫特有のひんやりとした空気の中で、モーブルは重い瞼をこじ開けた。
「……んぐ、腰が……腰が砕けそうだ……」
場所は、モーブル商会の地下倉庫。
殺風景な石造りの空間に場違いなほど豪奢なベッドが置かれ、その上は地獄のような、あるいは天国のような惨状と化していた。
モーブルは仰向けに大の字になり、その股間にはラースが力尽きたように突っ伏している。
無防備に晒されたラースの尻からは、白濁した液体がだらりと垂れ、シーツに背徳的な染みを作っていた。
そして、モーブルの太い腕の中。
金髪の少年が、安らかな寝息を立てていた。
ニーシャだ。
猫耳はない。
尻尾もない。
いつもの冷徹な仮面は剥がれ落ち、年相応よりもずっと幼く見える、無防備な寝顔があるだけだ。
その肌は上気し、事後の艶めかしさを帯びているが、表情からはあの能面のような凍てついた孤独は消え失せていた。
枕元には、小さな黒猫――ミッドナイトが、普通の猫の大きさで丸くなり、「ふぅ、ひどい目にあった」とでも言うように前足で顔を洗っている。
「……終わった、のか」
《ああ。大団円だ、デブ商人。“拒絶”は消えた。ガキの魂も元通り。ミッドナイトも正常化。……お前の息子以外は、すべて平和に解決だ》
「うるさいわ。わしの息子を見ろ。かわいい美少年二人を抱いて、ツヤツヤのテッカテカ、元気ピンピンのビンビンじゃわい」
モーブルは苦笑し、腕の中の少年をそっと撫でた。
大きな手が髪を梳くと、ニーシャが身じろぎし、無意識にモーブルの贅肉たっぷりの柔らかい胸へ頬をすり寄せる。
「……ん……モーブル……ぶよぶよ……あったかい……」
寝言。
だがそれは、もう悪夢にうなされる声ではなかった。
心からの安心が紡いだ、幸福な寝息だ。
「……ゆっくり寝ろ、坊っちゃん。商談は、起きてからだ」
モーブルは二度寝を決め込むように目を閉じ、ラースの頭とニーシャの頭を同時に抱き寄せた。
高窓から差し込む細い朝の光が、埃と戯れるように三人を優しく照らしていた。
あけましておめでとうございます!
昨年は作品を読んでくださってありがとうございます。
今年もマイペースに投稿していこうと思います!
2026年もどうぞよろしくお願いします