モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~ 作:とけそうだら
モーブル商会は珍しく客足が途切れ、昼下がりの気怠い静けさが、帳簿をめくる紙音を際立たせていた。
だが、その平穏を打ち破るように、扉についたカウベルが軽やかに二度、鳴った。
「ごめーんくださーい!」
元気な声と共に入ってきたのは、小柄なエルフ――ネリオ・フォックスライドだ。
紫がかったショートボブを、鮮やかな橙色のヘアピンで留めた小さな頭。
そばかすの散った頬には、いつもの食えない笑みが張りつき、吊り上がった細い糸目――通称“キツネ目”が、愛想の良さの奥にあるしたたかさを隠している。
緑を基調とした軽装マントに、肩当て付きの革鎧。腰周りには地図筒や筆記具、大小様々なポーチがぶら下がり、歩くたびにカチャカチャと賑やかな音を立てる。
旅と取材の道具で全身を飾り立てた、歩く情報屋だ。
「ん~? くんくん……おっと、今日もいい匂いがしますねぇ。武具? ポーション? それとも揚げたてのドーナッツ? ……いやいや違う違う、これは“金貨”の匂いですねぇ! それも、客から毟り取った分厚い財布の匂いだ!」
「おう、今日は静かだと思ったら、嵐が来たか。わしを平気で“山ゴリラ”呼ばわりする小妖精か」
カウンターの奥から、ぷるんぷるんとした巨体を揺らしてモーブルがぬっと出てくる。
綺麗に撫で付けた髪をかき上げ、手にしていた帳簿をパンと叩いてみせた。
「で、今日は何の用だ。またダンジョンの隠し部屋でも見つけて、地図の空白を埋めた自慢でもしに来たか?」
「いやぁ、そっちの“冒険”はしばらくお休みでしてねぇ。今のあたしは、ペンを剣に変えた社会の代弁者! この街に巣食う“悪徳商会”の闇を暴きに――」
そこまで言って、ネリオは悪戯っぽく舌を出した。
「……って、言いたいところなんですけどねぇ」
「言うとる目が笑っとらんぞ、小妖精」
「やだなぁ、冗談ですよ冗談! あたしの腹の中はいつだって真っ白な雪原です! 今日は真面目な出版の“社長業”で来ました。広告、広告!」
ネリオは腰のポーチから、丁寧に折り畳まれた紙束を取り出す。 上段にはミニコミ誌『カヴェナ通信』の最新号。下段には広告枠の差し替え案が、手書きの版下として幾つも綴じられている。
「モーブル商会さんのミニ広告、今月分の更新です。『万能ツールセット』推しで行きます? それとも『偽物のポーションにご注意! ホンモノはモーブル商会で!』路線で、注意喚起のほうに振ります?」
「どっちも売れるが、今月は“新生活”のツールだな」
モーブルは太い顎に手を当て、商人の顔になった。
「これから暑くなる。南のアレクスティア剣王国から、避暑ついでに稼ぎ場所を求めて流れてくる冒険者が増える時期だ。引っ越しと新拠点の立ち上げ――そこに焦点を合わせた、“万能ツールセット”で行こう」
「ははっ、ほんと商人は現実主義! 季節の風と一緒に、人の財布の紐まで読んでる! ……いや、紐じゃなくて鎖ですか? 山ゴリさんの店は」
「鎖なら外へ逃げられんだろ。客を逃がさない、優しい店だ」
「屁理屈の質が悪い!」
ネリオは笑いながらも、すっと真顔に戻る。
この切り替えの早さが、この男がただの陽気なエルフではない証拠だ。
「じゃ、差し替え文言はこれなんてどうでしょう。『鍵開けから鍋の修理まで――一家に一台、モーブル商会の万能ツールセット』。“暮らし・生活魔法”のページに噛ませやすいフレーズにしてあります。読者もイメージしやすいですよ」
モーブルは金貨の入った小袋を取り出し、カウンター越しに滑らせた。
チャリ、と子気味の良い音が鳴る。
「相変わらず段取りだけはいいやつだ。……で、今の発行部数は三千だったか?」
「イエス、三千部! 『カヴェナ通信』は太っ腹の
「画策言うな。せめて“事業拡大”と言え」
「健全な
「……口の減らんやつだ。だが一万部となれば、もはや地方新聞並みだぞ。それだけの紙を揃えるコスト、どう計算している? タダで配って破産する気か」
モーブルの懸念に対し、ネリオは手元のクリスタルを指でピンと弾いてみせた。
チィン、と澄んだ音が響く。
「ご心配なく。
「……その魔導機械の名前を聞くと、後ろ盾の顔が脳裏に浮かんで、胃がきしむわ」
モーブルが渋面を作るが、ネリオはどこ吹く風とばかりに肩をすくめた。
「女帝エリザ様の勅命という“最強の盾”があるのは事実ですけど、所詮は“ただ一つの例外”ですから。検閲なしの出版なんて、お堅い連中からすれば目の上のタンコブだ。魔法議会に魔導騎士団、帝国警察……どいつもこいつも、あたしらを潰す口実を血眼で探してる。だからこそ、“生活の知恵”と“メシの情報”などお役立ち情報で民衆を味方につけて、『この雑誌がないと困る』と思わせ続ける必要があるんですよ」
「お役立ち情報、ね。お役人が顔を真っ赤にして怒り出しそうな、けっこう際どい記事も多いがな」
「怒る元気があるなら、まだ平和です」
ネリオはさらりと言い切って、机に肘をついた。
いつもは愛想よく細められているその“キツネ目”が、薄く開かれる。
三日月のように閉じた瞼の隙間から、鮮やかな青い瞳がギラリと覗いた。
そこにあるのは好奇心と、獲物を狙う狩人の光。
完全に“取材モード”だ。
「で、山ゴリさん。そろそろ今月の“ネタ”、くださいよ。誌面の空白が寂しがってるんです。商会の裏話、街の噂、闇市の動向――何か、極上のやつはありません?」
「無いと言ったら?」
「無いって言う人の懐ほど、温かいネタが眠ってるんですよねぇ」
ネリオは早口のまま、楽しげに喉を鳴らした。
モーブルは深々と溜息をつき、帳簿をカウンターへ放り出す。
「……お前さんは“情報”を食う魔獣か。まあいい。だが危ない橋は渡らんぞ。うちは一応“堅気”の商会だ。上から目をつけられたらたまらん」
「もちろんもちろん。堅気の顔して、裏側をちょーっとだけ覗く。ささやかな読者サービスってやつですよ」
「その“ちょーっと”で済んだ試しがないから言っておるんだ……」
「えー? 人聞きの悪い。あたし、覗くだけですよ?」
「覗いて、嗅いで、掘り返して、燃やすだろ」
「燃やしません! あたし火魔法は苦手です!」
「物理的な話はしとらん! 社会的な放火の話だ!」
そのとき、店の奥にある扉がギィ……と遠慮がちに鳴いた。
空気の読めない静寂と共に、小柄な影がそろそろと顔を出す。
お尻から伸びた黒い尻尾を隠しきれていない魔族の少年――ラースだ。
湯気の立つポットを両手で大事そうに抱え、店の空気をうかがうように目をパチパチさせている。
「あ、お客様。いらっしゃいま……ひっ、ネリオ様……?」
ラースが、ふっと言葉を詰まらせた。
瞬間、ネリオの視線がロックオンされる。
獲物を値踏みするようなねっとりした視線が、少年に絡みついた。
「おーっと! グッドタイミング! そこにおわすはラース少年じゃありませんか! 本日も絶好の商売日和で! 少年は今日も働き者で結構、結構!」
「う……は、はい……あの……その……」
「で、少年!」
ネリオは満面の笑みで、しかし目だけをギラリと光らせて詰め寄る。
「この山ゴリさんに関する、とっておきのタレコミとかありませんかねぇ? 例えば『外で拾い食いしてお腹壊した』とか、『屈強な冒険者に締め落とされて失神した』とか、『客の尻を触って慰謝料請求された』とか!」
バン! とモーブルがカウンターを叩く。
「あるか! 余計なことを吹き込むな。ラースは半引きこもりの店員だ。ゴシップなんぞ持っとらんわ」
「半引きこもりでも情報は落ちてますよ。ほら、床の上とかに!」
「落ちとるのは貴様が外から持ち込んだ靴裏の泥だ! あとで掃除していけ!」
ラースは可哀想なほど萎縮し、ポットを抱えたまま視線を泳がせた。
「ぼ、僕……記事は……その……怖い……です……」
「しませんしません! 記事になんかしませんよ! 安心してください!」
ネリオは両手を上げ、降参のポーズでおどけてみせた。
「あたしは弱い人の傷口を見世物にする趣味はないんです。ただ、こうやって初心な少年と仲良くおしゃべりがしたいだけ♪ 下心なんて、これっぽっちもありませんよ~?」
「……その“これっぽっちもない”顔が、一番信用ならんのだがな」
モーブルはフンと鼻を鳴らし、ラースへ顎をしゃくった。
「ラース、茶を置いたらさっさと奥に引っ込んどれ。こいつに捕まったら最後、骨の髄までネタにされるぞ」
「は、はい……旦那様……」
逃げるようにラースが去ると、店内には再び乾いた商売の空気が戻った。
ネリオは、カヴェナ通信の紙面を指でトントンと叩く。
「街の“おたより紹介”欄、最近すっごく荒れてるんですよ。『ギルドで威張ってる貴族に絡まれた』だの、『日用品の増税がきつい』だの、『騎士団の駐屯が増えて街が息苦しい』だの……読者の怒りが沸点に達してます。こういう時こそ、平和な生活ネタで中和したいんです。例えば――“店主直伝! 腰痛対策の極意”とか、どうです?」
「誰の腰が悲鳴を上げていると思っとる」
「え、山ゴリさんじゃないんですか?」
「違うわい! いや違わんけど年寄り扱いされると腹が立つ!」
ネリオはくすくすと笑いながら、手元のメモ帳をめくった。
「じゃあ方向転換! “万能ツールセットで出来る、雨樋の詰まり解消”とか、“鍋穴修理のコツ”とか。こういうの、山ゴリさんは得意でしょう?」
「得意だ。だが、それは“客が買った後に苦労する手間”を減らすための知恵だぞ。説明書付きで売っとるものを、無料でばら撒いたら中古品が出回って値崩れする」
「そこはほら、商会の名前を刷り込むんです。読者の記憶に刻む。いざという時に『あ、あの記事の店だ!』と思い出してもらう。知名度アップで長期的に回収する、いわゆる“先行投資”の記事ですよ!」
「損して得取れとは言うが……貴様の“得”ばかりデカすぎるのが気に入らん」
モーブルは渋い顔で唸ったが、明確な否定はしなかった。
「……で? 他には何だ。今月はどんな地雷を持ってきた」
「地雷だなんて。読者の心の“栄養素”ですよ」
ネリオは紙束の端をトントンと揃え、さらりと次のカードを切った。
「あと、小説コーナー。カヴェナの婦女子の方々から“もっと読みたい”と要望が殺到してまして。ページ数を倍増しようかと」
ピクリ、とモーブルの太い眉が跳ねた。
「小説? ああ、あの例の……ロマンス小説か。あの独特の……他の記事から浮きまくっている……」
「はい! 超・大人気なんですよ! 創刊から連載してますけど、“男性同士の恋愛なんて初めて読んだ”って衝撃と感動の声が多くて!」
指先で紙面を弾く音が、小気味よくリズムを刻む。
「カヴェナだけじゃありません。イングラジア各地、帝都、平民から貴族のご令嬢まで――身分の垣根を越えてファンレターが押し寄せています。感想、推しカプ論争、展開予想……もう、紙面が足りない!」
「足りないのはお前の羞恥心だ!」
「羞恥心は売り物にならないので在庫ゼロです!!」
「誇るな! 故郷の親兄弟が泣いとるぞ!」
「親兄弟は読んでません! 読んでるのは
「それが社会問題だと言っとるんだ!」
モーブルはこめかみを強く押さえ、呻くように続けた。
「……いいか、“大衆の人気”ってのは諸刃の剣だ。熱量は金を生むが、時に牙を剥く。下手に調子に乗って風紀を乱せば、お上の目も厳しくなるぞ。ある日突然、貴様の会社の扉に投げ文の短剣が突き立つかもしれん」
「刺さるのはだいたい、
「矢でも物理的に刺されば痛いわい!」
モーブルの警告もどこ吹く風、ネリオは悪びれもせずニカッと笑った。
「でも、だからこそ誌面を増やす価値があるんです。読者が熱くなれる場所を提供すれば、街の空気が荒れてもそこが“逃げ場”になる。胃袋と同じで、心にも
「……都合のいい理屈をつけよる」
「理屈はいつだって、便利なほうが勝つんですよ」
モーブルはまた一つ深い溜息を吐き、呆れたように呟いた。
「ま、書くのは貴様だがな。深森で朝露を飲んで暮らす“高潔な種族”と崇められているエルフが、あんなエロ小説を量産しているとは……世の婦女子方も夢にも思うまい」
「えへへへ、心外ですねぇ。あれは極上の“高純度ロマンス”です! ちゃんと単行本化して絶賛販売中! 定価銀貨二枚! 各地で重版出来の大ヒットですよ!」
「褒めとらん! 高純度すぎて劇物扱いされとるわ! まったく、エルフにも貴様みたいなゴシップ中毒の異端児がおるとは……世も末だな」
「失礼な! ゴシップは栄養満点の“心の保存食”ですよ!」
「栄養過多で読者が死ぬわい!」
モーブルのツッコミに、ネリオはケラケラと笑う。
だが次の瞬間、その笑みをスッと収め、真顔になった。
「……というわけで、小説の話です。あたし、今そのネタ作りで壁にぶち当たってまして。今回はぜひとも、山ゴリさんにお力添えを願いたいんです」
「協力? 断る。色恋沙汰の創作で、わしに手伝えることなど塵ほどもない」
「いえいえ、ご謙遜を。あなたにしかできない、重要な役割があるんですよ」
ネリオのキツネ目が、いつもより細く、怪しく光った。
「小説のリアリティを底上げするために……男性同士の、“致すシーン”の参考が欲しいんです!」
「……ん?」
モーブルは帳簿から顔を上げ、思考を停止させた。
「読者から『もっと生々しく!』『感情の機微を!』って要望が殺到してまして。理論武装だけじゃ、もう限界なんですよ~」
「……はぁ?」
モーブルは、人間が一度に出せる肺活量の限界を使って、その一言を吐き出した。
店内の空気がビリビリと震え、カウンターの上のペンが転がり落ちる。
「……貴様、今なんと言った? 聞き間違いでなければ、わしの耳が腐ったか、貴様の脳みそが腐ったかのどっちかだ」
「どちらも鮮度抜群ですよ! だから言ったじゃないですか。参考が欲しいんです。リアリティ、重量感、肌触り! あたしの小説、最近『心理描写は神だけど、絡みのシーンが淡白』ってレビューがついちゃったんですよ。これは作家生命に関わる由々しき事態です!」
ネリオはカウンターに身を乗り出し、上目遣いでモーブルに迫る。
その瞳は、特大スクープを狙うとき以上に真剣そのものだった。
「想像力だけで書くには限界があるんです。男の人の体温、筋肉の硬さ、吐息の熱さ、そして何より……受け入れる側の痛みと快楽の境界線! こればっかりは、どれだけ文献を漁っても“実感”には勝てません。――ま、山ゴリさんのは筋肉というより、極上の脂身でしょうけど」
「やかましいわ! だったらその辺の酒場で適当な男を捕まえてこい!」
「嫌ですよ。素性の知れない男に抱かれるなんて、取材以前にリスク管理が出来てないじゃないですか。病気も怖いし、口を割られるのも困る。その点、山ゴリさんは口が堅いし、身元も確かだし、何より清潔だ!」
「……っ」
(こいつ……本気で言っているのか……?)
モーブルは息を呑み、改めて目の前のエルフ――ネリオを見下ろした。
小柄だが、冒険者として鍛えられた引き締まった体躯。
いつも陽気で、風のように掴みどころのない男。
種族としての寿命が違うため、実年齢で言えばモーブルよりも遥かに年上だ。
だが、その外見は人間で言えば、まだ声変わりを終えていない少年――人間でいう九つか十の少年のように瑞々しい。
正直に言えば――ど真ん中、だった。
生意気そうにつり上がったキツネ目なのに、頬にはそばかすが散っていて、妙に純朴な愛嬌がある。
性格だって、ひねくれているようで根っこは腐っていない。
気位が高いはずのエルフでありながら、立場の弱い者や、それこそ奴隷のラース相手にだって気遣いを見せる優しさがある。
そんな男が今、潤んだ瞳でモーブルを見上げ、「抱かれたい」と言っているのだ。
しかも、初めてだという。
(……ありがたい、などと思ってしまったぞ)
理性のブレーキが、バキンと音を立てて粉砕された。
いや、認めよう。
実はずっと狙っていたのだ。
この生意気な唇を塞いで黙らせ、泣かせて、徹底的に自分の色に染め上げてやりたいと。
だが、暴走しかけた下半身に、最悪の懸念が冷水を浴びせる。
(……いや待て待て待て! こいつ、今はゴシップ記者だが中身は凄腕の冒険者だぞ。もし、今のレベルがすでに限界に達していたら……大惨事だ!)
モーブルは、自身の特異すぎる体質を呪った。
(わしが中で果てた瞬間、神々しい光がこいつの体を包み――伝説の『レベルブレイク』が発動してしまうではないか!)
それは世界でただ一人、“レベル師”モーブルのみが持つ禁断のスキル。
あろうことか『濃厚な体液』を介して強制的に限界突破を引き起こすその力は、世間にバレれば即座に国家機密レベルの指名手配だ。
まして相手は、あのスクープ狂いのキツネだ。
事後、賢者タイムの気怠さの中でさえ、発生したレベルブレイク現象について根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。
ダンジョンに潜れば、限界を感じていた自分の能力が突然上がりはじめたことに気づくだろう。
口止め?
無駄だ。
止まるような玉じゃない。
たとえ口封じに乱暴に犯して泣かせたところで、絶頂のアヘ顔を晒しながらペンを走らせるようなやつだ。
こんなやつに、もし記事に書かれでもしたら、商売人人生どころか社会的、肉体的に抹殺される!
(こいつは熟練のシルバー級冒険者……すでにレベルが
「……ネリオ、黙って後ろを向け」
「え、いきなりなにを言い出すんです? ……ああっ、まさか! このまま後ろから強引に押し倒して、問答無用でずぶっと――野生の山ゴリラの交尾のように!」
「違うわボケ! いいから後ろを向け!」
ネリオはぶつぶつ言いながらも、くるりと背中を向けた。
そこには、肉付きの薄い、しかしキュッと引き締まった少年特有の小ぶりなお尻があった。
(う、ぐっ……! なんてけしからん尻をしておる……! 今すぐズボンを引き裂きたい衝動を抑えろ、まずは『レベル鑑定』だ……結果は天国か地獄か、伸るか反るか……!)
モーブルは祈るような気持ちで、ネリオの無防備な背へとかざす。
(頼むぞ……スキル――『レベル鑑定』!!)
念じると、指先から放たれた淡い青色の光が、ネリオの華奢な体を包み込んだ。
まるでゲーム画面のように、ネリオの頭上に半透明のステータスウィンドウがポップアップする。
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【ネリオ・フォックスライド】
年齢:94歳
性別:男
職業:スカウト
ランク:シルバー級
レベル:51(限界レベル:55)
体力:1185
攻撃力:154
防御力:82
魔力:29
魔法耐性力:98
知力 :170
素早さ:349
運:298
経験値:1200/5550
特性: 【達人の解錠と隠密】 【回避特化】 【ダンジョン深層対応】
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(…………勝ったッ!!)
判定は白。
現在レベル51に対し、限界は55。
まだ成長の
これなら、どれだけ濃厚に注ぎ込んでも溢れることはない。
つまり――やり放題だ。
レベルブレイクの暴発など恐れる必要なし!
「……店を閉めるぞ。ラースには先に上がると言っておく。ついてこい」
「っ……!? さすが山ゴリさん! 話が早い!」
「茶化すな。気が変わらんうちに行け」
「無駄口を叩くな。気が変わらんうちにさっさと歩け」
言い捨てて、モーブルは二階への階段を上がり始めた。
その足取りは、欲望を抑え込むように重く、荒い。
ネリオはニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべたが、その指先は小さく震えていた。
うるさいほどの鼓動を悟られまいと、彼は急いでその大きな背中を追う。