※この作品はR-18です。

モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~   作:とけそうだら

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第二十七話 モーブルとおしゃべりエルフ記者の、秘密のネタ作り②

 階段を一段昇るたびに、古びた木材が軋む音が、二人の心臓の音と重なるように響いた。  

 ネリオの視界には、先行するモーブルの背中しか映っていない。

 

 商人の実用的な衣服越しにもわかる、丸太のような逞しさと、その奥にある分厚い肉感。  

 

 それはいつも見慣れているはずの”山ゴリ商人”の背中なのに、これから起こることを意識した瞬間、途方もなく巨大で、そして恐ろしいほどに魅力的な「オスの壁」として立ちはだかっていた。

 

(うう……口では威勢のいいこと言ったけど、心臓が爆発しそうです……!)

 

 ネリオは震える指先をギュッと握りしめ、覚悟を決めるように息を飲んだ。  

 二階に上がり、モーブルが重厚な扉を開ける。

 

 そこは、モーブルの私室だった。   

 一階の雑多な店舗とは異なり、整然とした静けさが満ちている。

 

 まず目に飛び込んでくるのは、部屋の中央を占拠する特注の巨大な木製ベッドだ。  

 体重百三十キロを超えるモーブルの巨体を支えるためだろう、脚もフレームも城壁のように頑丈に作られている。  

 壁際には執務机があり、帳簿やインク、商売道具が並んでいるが、どこか学者の書斎のような知的な匂いも漂わせていた。  

 そして壁には――よく手入れされた革鞭が一本、静かに掛けられている。

 

「……へぇ、意外と綺麗にしてるんですねぇ。もっとこう、バナナの皮とか散乱してるかと」

 

「誰が野生の山ゴリラだ! 座るところがないから、そこへ掛けろ」  

 

 モーブルは顎でベッドを示し、背後で扉を閉める。  

 カチャリ、と鍵が掛かる音が、やけに大きく鼓膜を打った。

 

 それは、退路断絶の合図。  

 もう、後戻りはできない。

 

「……で、どうする? 小説のネタにするなら、貴様の希望に沿ったプレイをしてやらんこともないが」

 

 モーブルは上着を脱ぎ捨て、シャツ一枚になる。  

 その動作だけで、部屋の空気が湿度を帯びた気がした。

 

「大丈夫です。あたしがリード……あ、いや、あたしが受け身だから、リードしてもらうのか。ええと、とりあえず、服を脱ぐところから観察させてください」

 

 ネリオはポーチからメモ帳を取り出そうとしたが、すぐにモーブルにその手首を掴まれた。

 

「取材道具は没収だ。身体で覚えるんだろ? メモなんぞ取ってたら気が散る」

 

「えっ、でも忘れたら……」

 

「忘れるようなら、その程度の体験だったってことだ。ほら、来い」

 

 モーブルに引かれ、ネリオはベッドの縁に座らされる。  

 高級なスプリングが、彼の軽い体重をふわりと受け止めた。  

 次の瞬間、ベッドがきしりと音を立て、隣にドスンと重たい質量が沈み込んだ。

 

 近い。  

 体温が、匂いが、直接肌を撫でる距離。  

 視界の全てをモーブルの巨大な体が覆い尽くした。

 

「で、でかい……こんな至近距離だと圧迫感が災害級ですね……これ、文字にするなら『岩山に押し潰される小動物のような』って表現が……」

 

「黙れ」

 

 モーブルはネリオの震える小さな手を、自身の大きな掌でぎゅっと包み込んだ。

 

「……本当にやるんだな? 後で泣き言を言っても知らんぞ」

 

 低い声が、耳元ではなく、骨に直接響くようだった。  ネリオはゴクリと喉を鳴らす。

 

「まさか! あたしは一度食いついたネタは骨までしゃぶる主義なんです。それに……」

 

 ネリオは言葉を切り、少しだけ頬を染めて、上目遣いにモーブルを見つめた。

 

「……取材対象者との約束をドタキャンするなんて、報道人の仁義に反しますからね!」

 

「……よく回る口だ」

 

 モーブルは苦笑すると、その太い指でネリオの紫がかった髪をすくい上げた。  

 橙色のヘアピンに触れ、そのまま指先が尖った耳の輪郭をなぞる。

 

「ひゃうっ!?」

 

 ネリオの喉から、間の抜けた声が漏れた。  

 エルフにとって、耳は急所の一つだ。

 そこを、分厚く熱い、ペンダコのある指で容赦なく愛でられたのだ。  

 ぞわり、と背筋に電流が走る。

 

「……ふん、敏感だな。口ほどにもない」

 

「そ、それは……エルフ特有の生理現象で……って、んむ……っ!」

 

 言い訳しようとした唇を、モーブルの唇が強引に塞いだ。

 

 ちゅ、と音を立てるだけの挨拶ではない。  

 角度を変え、何度も啄むように、それでいて唇の形を自分の所有物として刻印するように、重く、熱く、押し付けられる。

 

「んっ、ん……ふ……っ」

 

 ネリオの細い手が、行き場を失ってモーブルのシャツを握りしめた。  

 熱い。  

 唇から注ぎ込まれる熱量が、全身の血液を一瞬で沸騰させていく。

 

 肌に触れるモーブルの口髭が、チリチリとした心地よい刺激と、圧倒的な「男」の実感を刻み込んでくる。  

 息継ぎの隙間すら与えられない略奪に、ネリオは酸素不足で頭が白く霞み始めた。

 

 ようやく唇が解放されたとき、二人の間には銀色の糸がとろりと引いていた。

 

 ネリオは肩で息をしながら、潤んだ瞳でモーブルを見上げる。  

 そこにいつものしたたかなキツネ目の面影はなく、あるのは熱に浮かされた、ただの無防備な少年の顔だけだった。

 

「……ぷはっ、はぁ、はぁ……! いきなり……濃厚すぎません……?」

 

「小説の参考にするんだろう? 薄味じゃ、目の肥えた読者は満足せんぞ」

 

 モーブルは意地悪く笑うと、ネリオの軽装マントの留め具に手を掛けた。  

 カチャリ、と硬質な音がして、マントが床へ滑り落ちる。  

 続いて、肩当て付きの革鎧。  

 モーブルの手際は驚くほどスムーズだった。

 スカウト特有の複雑な装備構造を瞬時に理解し、留め具を次々と外していくその手つきは、まるで希少な美術品を梱包から解く鑑定士のようだ。

 

「なんか……値踏みされてるみたいで、恥ずかしいんですけど」

 

「鑑定は済んでる。貴様は、市場に出せば国が傾くほどの“極上の逸品”だ」

 

「……っ!?」

 

 さらりと言われた言葉に、ネリオの顔がカッと沸騰した。  

 普段は減らず口でやり込める側なのに、こういう場面での「大人の男」の余裕と、直球の褒め言葉には敵わない。

 抵抗する間もなく上着が剥ぎ取られ、薄いインナーシャツ一枚になる。  

 モーブルの大きな掌が、シャツの上からネリオの脇腹を包み込んだ。

 

「……薄いな。ちゃんと栄養は足りてるのか?」

 

「足りてますよぉ! これでも実用性重視の、無駄のない筋肉なんです……!」

 

「ほう? どれ、厳正な品質チェックだ」

 

「ちょ、まっ……ひゃっ……!?」

 

 問答無用で、モーブルの手がシャツの裾から侵入してくる。  

 直に触れられた熱に、ネリオは反射的に背中を弓なりに反らせた。

 

 ごつごつした大きな手が、肋骨のラインを確かめるようになぞり、引き締まった腹筋の上を這う。  

 くすぐったいような、けれど芯まで痺れるような、甘く焦れったい感覚。

 

「んっ♡ あ……そこっ……!♡」

 

「ここか? 随分と凝ってるな。……それとも、快感のスイッチか?」

 

 モーブルはニヤリと笑い、ネリオの敏感な脇腹を親指で意地悪く押し込んだ。  

 ネリオの口から、可愛らしい悲鳴が漏れる。  

 天才スカウトとして、どんな難攻不落のダンジョンも攻略してきた彼だが、自身の体に仕掛けられた「エロ」という原始的な罠だけは、どうしても解除できないようだった。

 

「脱がすぞ」

 

 短く告げられ、ネリオは抵抗することなく両手を上げた。  

 シャツが脱がされ、上半身が露わになる。

 

 午後の日差しがカーテン越しに差し込み、ネリオの陶器のような肌を照らし出した。  

 小柄だが、冒険者として鍛え抜かれた無駄のない筋肉。  

 白い肌に残る古傷さえも、この男が潜り抜けてきた修羅場の証明書として、妖艶な魅力を放っている。

 

 モーブルは眩しそうに目を細め、熱い息を吐いた。

 

「……綺麗な体だ。傷の一つ一つまで、良い物語(ネタ)を持っていそうだ」

 

「……そんな、鑑定品みたいにまじまじ見ないでくださいよ。山ゴリさんこそ……脱がないんですか?」

 

 ネリオが視線を泳がせながら言うと、モーブルは「そうだな」と頷き、自身のシャツのボタンを外した。  

 現れたのは、圧倒的な質量と威圧感を誇る肉体だ。

 

 たっぷりとついた脂肪。

 一見すればただの肥満体だが、その奥には鋼のような筋肉が隠されていることなど、天才スカウトの観察眼(アイ)はとっくに見抜いている。  

 丸太のように太い腕、分厚い胸板、そして樽のような腹。  

 ネリオは魅入られたように手を伸ばし、モーブルの広い胸に触れた。

 

「……おっきい。それに、暖炉みたいに熱いです」

 

「お前の体が冷えすぎているんだ。ほら、もっと寄れ」

 

 モーブルが腕を広げると、ネリオは磁石に吸い寄せられるようにその懐へ埋まった。  

 肌と肌が密着し、世界のすべてがモーブルの体温に塗り替えられる。  

 モーブルの肌は少し汗ばんでいて、むせ返るような男臭い匂いがした。  

 ネリオはその匂いを胸いっぱいに吸い込み、うっとりと目を細める。

 

「んー……落ち着く匂い……大好きな金貨と、頼りになる強いオスの匂いですねぇ……♡」

 

「ここでも金貨か。……だが、今は取材は忘れろ」

 

「んふふ……♡ 稼ぐ男も強い男も大好物です……♡ なんかこう、物理的にも経済的にも守ってくれそうで……」

 

「現金なやつだ。……なら、その期待に応えて可愛がってやる」

 

 モーブルの分厚い掌が、ネリオの腹部を這い上がり、胸元の飾り気のない突起を指で弾いた。

 

「ひゃっ……! ちょ、そこ……! 男ですよ……? ぺったんこな胸なんて弄っても、虚しいだけでしょう……!」

 

「わしにとってはご褒美だ。未成熟な少年の胸ほど、唆るものはない」

 

「んんっ♡ 山ゴリさんは……やっぱり、性癖がねじ曲がってますね……♡」

 

「否定はせん。そうだ、わしはお前のような、きゃわゆい少年が大好きな変態だ。初耳か?」

 

「ふふっ……♡ 裏社会の噂では有名ですよ……。あなたが高級男娼の『蕾』を散らすことに、無上の喜びを感じてるって……っ♡ まさか、実話だったなんて……特ダネ、ですね……♡」

 

 ごつごつしたタコのある指先が、敏感な一点を執拗に攻め立てる。  

 擦られるたびに、ネリオの口から意図しない嬌声が漏れ出した。  

 声帯が勝手に震え、身体の芯が熱を持って疼き始める。  

 これは座学の“知識”ではない。暴力的なまでの“実体験”だ。

 

「男ってのはな、視覚よりも触覚で興奮する生き物らしいぞ。……お前の小説の『あとがき』に、そう書いてあったな」

 

「そ、それは……文献の受け売りで……偉そうに、書いた、だけで……あぁッ!♡♡」

 

 モーブルが首筋に顔を埋め、薄い皮膚を食むように甘噛みした。  

 ビリビリと、脳髄まで痺れるような電流が走る。  ネリオは、自分の書く小説がいかにリアリティに欠けていたかを痛感させられた。

 

 『首筋への愛撫に、彼は快楽を覚えた』

 

 ――違う。

 そんな生易しい記号じゃない。  

 これは神経が直接奏でられるような、もっと切実で、どうしようもない現象だ。

 

「……それにしても、貴様は本当に初物か? 随分と開発しがいのある、いい反応をするではないか。ん? もしかして……」

 

 モーブルは意地悪く囁き、指先の動きを早めた。

 

「夜な夜な、自分で慰めて開発しておったのか?」

 

「取材……しないで……!♡ んんっ……♡ そこまで詳細に分析されるの、恥ずかしいです……!♡」

 

 完全に立場が逆転していた。  

 いつもはペンと話術で他人の秘密を暴く側のネリオが、今は身も心も丸裸にされている。  

 吐息の熱さ、肌の粟立ち、隠しきれない快感の震え。  

 すべてがモーブルの手によって、白日の下に晒されていく。

 

 ズボンが引き下ろされ、下着も剥ぎ取られると、ネリオの下半身は完全に無防備となった。  

 恥ずかしさで膝をすり合わせようとするが、モーブルがそれを許さない。

 

「ふむ、可愛らしい形をしておる。皮被りの未成熟なモノに、後ろの穴も綺麗な桃色だ。……まだ何も知らない、汚れなき蕾そのものだな。まさに、手つかずの無垢な果実だ……」

 

 モーブルは観察するように目を細め、うっとりと舌なめずりをした。

 

「っ……! そんな、詳しい描写はいらないです! 恥ずかしすぎて死んじゃう……!」

 

「作家が素材の描写を嫌がるな。ほら、続きをやるぞ」

 

 モーブルはサイドテーブルの引き出しを開け、小瓶を取り出した。  

 商会で扱っている高級なマッサージオイルだ。

 蓋を開けると、ほのかに柑橘系の香りが漂う。  

 彼はオイルを掌に取り、体温で温めてから、ネリオの太腿に触れた。

 

「ひゃっ……!」

 

「冷たかったか? すぐに熱くなる」

 

 ヌルリとした感触と共に、モーブルの指が動き出す。  

 最初は太腿のマッサージのように、筋肉をほぐしていく。  

 緊張で硬くなっていたネリオの足が、次第に弛緩していくのがわかった。  

 

 モーブルは丁寧に、時間をかけて愛撫を続けた。  

 商売と同じだ。準備を怠れば、最高の結果は得られない。  

 特に今回は、大切な「取引相手」の初めてなのだ。

 粗相があってはならない。

 

 指が徐々に内側へ、そして中心へと近づいていく。  

 ネリオの呼吸が荒くなり、シーツを掴む手に力が入った。  

 時折漏れる吐息が、部屋の湿度を上げていく。

 

「ん、ぁ……♡ 山ゴリさ、ん……そこ、はぁ……♡」

 

「ここがどうした? ……正直にレポートしてみろ」

 

「いじわる……言わせないで、くださいよぉ……♡」

 

「言葉にするのも、取材の一環だろう?」

 

 意地悪な質問をしながらも、モーブルの手つきはどこまでも優しい。  

 ネリオの秘所を慈しむように包み込み、先端を親指の腹で転がす。  

 ぷりっとした鈴口から、我慢汁がとろりと滲み出ているのを見て、モーブルの喉が鳴った。

 

(……たまらん。なんて可愛い反応だ。こいつ……普段は減らず口ばかりの野次馬記者かと思っていたが、皮を剥けばこんなに甘い蜜を隠し持っていたとはな!)

 

 彼はネリオの耳元に唇を寄せ、低い声で囁く。

 

「ネリオ、いい声だ。……もっと聞かせろ」

 

「んぁっ!♡ み、耳……っ、だめぇ……!♡♡」

 

 弱点である耳への口づけと、下半身への執拗な愛撫。  

 ネリオの腰が反射的に浮き上がり、モーブルの手の中で小動物のように震える。  

 上下からの快楽の波状攻撃に、ネリオの理性の堤防は決壊寸前だった。

 

 モーブルはオイルを追加し、ついにその指を、未開の蕾へと這わせた。  

 きゅっ、と拒絶するように固く閉ざされた入り口。  

 そこへ、オイルで濡らした指先をねじ込むように押し当てる。  

 最初は異物を拒んでいたが、モーブルの熟練の愛撫によって、肉のヒダは少しずつ熱を帯び、柔らかく解れていった。

 

「……ん…ッ、はぁ、あ……♡ なんか……お尻、変な感じ……です……♡」

 

「異物感があるだろうが、我慢しろ。……ここを広げておかないと、お前が壊れてしまう」

 

「……っぐ!」

 

 ネリオが顔をしかめ、モーブルの腕にしがみついた。  

 指が侵入する圧迫感に、体が強張る。  

 モーブルは動きを止め、ネリオの額に滲んだ脂汗をキスで優しく吸い取った。

 

「大丈夫だ。ゆっくりやる。……わしを見ろ」

 

 促され、ネリオが潤んだ瞳を開く。  

 涙で濡れたキツネ目には、トロンとした色気と、全幅の信頼が滲んでいる。  

 その瞳に映るのは、欲望に塗れながらも、決して加虐には走らない紳士(おとこ)の顔。

 

「……山ゴリ、さん……」

 

「力を抜け。……わしに委ねろ」

 

 モーブルはネリオの唇を塞ぎながら、第一関節をゆっくりと沈み込ませた。  

 異物感にネリオが身じろぎするが、モーブルは根気強く、内壁を広げるように指を回す。  

 きつきつに締まった腸壁は、驚くほど熱く、指を吸い付くように脈打っている。

 

 グチュ、グチュ、ヌチュ、リ……。

 

 卑猥な水音が、部屋の静寂を犯すように響く。  

 ネリオの中に塗りつけられたオイルと愛液が混ざり合い、かき回されるたびに淫猥な音色を奏でているのだ。

 

「んんっ……♡ ふっ……ぁ…ッ、ん……っ!♡」

 

「……ネリオ、息をしろ。酸欠になるぞ」

 

「はぁ♡ はぁ♡」

 

 快楽の奔流に飲み込まれ、呼吸の仕方さえ忘れてしまうネリオ。  

 だが、ここで焦ってはいけない。  

 準備不足で強行すれば、互いに後悔することになる。  

 そうモーブルは逸る心を抑え、指を増やして愛撫を続けた。

 

(……しかし、これは思った以上に堪えるな)

 

 自分の指一本でこの吸いつきだ。  

 本番となれば、瞬殺されるのではないか。  

 モーブル自身の剛直は、すでにリミッターを振り切り、ズボンの中で痛いほど脈打っていた。

 

「あ……」

 

 ジュポン、と音を立てて指が引き抜かれ、ネリオが名残惜しそうな顔をする。

 

「よし、これで下準備は十分だ。……そろそろ、“本番”を始めていくからな」

 

 モーブルはネリオを抱きすくめ、そのままゆっくりとベッドに押し倒した。  

 ギシッ、と特注のベッドが悲鳴を上げ、ネリオの視界が反転して天井を映す。

 

 覆いかぶさるモーブルの影。  

 逃げ場のない質量と、圧倒的な体温の圧迫感。  

 普通なら恐怖を感じて縮み上がるはずのその重みが、今はたまらなく愛おしく、そして世界から自分を隠してくれる強固な盾のように頼もしく感じられた。

 

「ネリオ」

 

 名前を呼ばれ、視線が絡み合う。  

 至近距離で覗き込むモーブルの瞳の奥には、商人の冷静な光と、獣としての昏い情欲が混ざり合っている。

 

「……痛くなかったか? 初めてだから、最大限丁寧に扱ってはいるつもりだが」

 

「痛い? あはは……まだ、肝心なことは何もされてませんよぉ」

 

「これからするんだ。……もし嫌なら、全力で蹴り飛ばせ。お前の脚力なら、わしを吹き飛ばして逃げることも可能だろう?」

 

 そんな確認を今更するなんて、やっぱりこの男は不器用で、誰よりも優しい。  

 ネリオは首を横に振り、丸太のようなモーブルの首に細い腕を回した。

 

「蹴りませんよ。……だって、あたしは今、世界で一番安全なシェルター(場所)に匿われているんですから」

 

「……口の上手いキツネめ。これ以上、わしを夢中にさせてどうする気だ。……ちゃんと責任を取ってもらうぞ」

 

 モーブルは無造作に下着を下ろした。  

 弾け飛ぶように現れたのは、常識外れのサイズを誇る赤黒い怒張。  

 血管の浮いたその巨塔は、熱気を孕んで反り立ち、圧倒的な存在感を放っている。  

 ネリオは呆然とした目でそれを見上げ、ひゅっ、と喉を鳴らした。

 

「……うそ、でっか……」

 

「……これがお前が望んだ“真実(リアリティ)”だ。……受け止めきれるか?」

 

 眼前で脈打つ現実に、ネリオは頬を朱に染め、それでも震える唇で笑ってみせる。

 

「……愚問、ですね。あたしを……誰だと思ってるんですか……いかなる巨大権力(モノ)にも屈しない、不屈のジャーナリスト、ですよ……?」

 

「いい度胸だ。なら、その矜持ごと貫いてやる」

 

 モーブルはネリオの細い脚を掴んでM字に割り開き、腰を沈めた。  無防備に晒された蕾へ、張り詰めた亀頭をあてがう。

 

「いくぞ……痛ければ、叫んでいい。歯を食いしばるな。息を吐け」

 

 低く諭すような声に従い、ネリオはハッ、ハッ、と浅い呼吸を繰り返す。  次の瞬間、溶岩のような熱塊が、逃げ場のない体内へねじ込まれた。

 

 クチュッ……ヌ、ズブッ、ズブズブズブ……

 

「ひぎっ!? ぃぐッ……! あ゛ッ……! 熱い、お腹、裂けるッ……!!」

 

「……っ、く、狭い……! だが、じきに馴染む……! 力むな、耐えろ……!」

 

 モーブルはネリオの悲鳴を飲み込むように、ゆっくりと、しかし確実に腰を進めた。  ミチミチと音を立てて狭い内壁がこじ開けられ、許容量を超えた質量が深部へと侵食していく。  痛い。苦しい。内臓が焼けるように熱い。  だが、それ以上に脳を揺さぶるのは――絶対的な征服感。  圧倒的な質量と熱によって、体の隅々まで、ネリオ・フォックスライドという存在が塗り替えられていく。

 

「……ぐ、ぅ……っ! 入っ……全部、入った……!」

 

 ネリオがシーツを握りしめ、掠れた悲鳴を上げた。  ついに根元まで、容赦なく飲み込まれたのだ。

 

 ネリオの華奢な下半身と、モーブルの巨躯が完全に結合している。  その光景は、捕食された小動物のようであり、同時に、雄々しい聖獣を受け入れた巫女のようにも見えた。

 

 体内の圧迫感は限界を超えていた。  異物が、へその裏側まで詰まっているような満腹感と苦しさ。  けれど、モーブルが動かずにいてくれるおかげで、裂けるような痛みは徐々に熱い痺れへと変質していく。

 

「……息を吐け、ネリオ。力を抜くんだ。……そうすれば、もっと楽になる」

 

 モーブルが覆いかぶさり、汗ばんだ額に口づけを落とす。  その不器用な優しさに、ネリオの目尻から生理的な涙がこぼれた。

 

「んっ、はぁ……はぁ……。山ゴリさん……中、熱い……焼印を、押されてるみたい……」

 

「……焼印か。あながち間違いではないな。今、お前の体はわしの形状を記憶させられておる最中だ」

 

 モーブルは苦しげに唸り、ネリオの汗ばんだ髪を撫でた。  彼自身もまた、限界だった。  ネリオの中は驚くほど狭く、吸い付くような熱を持っていた。  動けば理性が弾け飛びそうになるのを、鋼の意志で抑え込んでいるのだ。

 

(……くそっ、なんて名器だ。処女特有の締め付けだけじゃない。こいつの内壁にある無数の粒立ちが、意思を持っているかのように絡みついてきおる……!)

 

 エルフ記者の体は、快楽に対しても貪欲だった。  侵入してきた異物を受け入れ、その形状を分析し、快楽へと変換しようとする本能が働いているのか。

 

「……少し、動くぞ」

 

 モーブルが腰を引くと、ジュチッ、と蜜の絡む音が部屋に響いた。  その淫らな音を聞いただけで、ネリオの背筋がぞくりと粟立つ。

 

「あっ……ぬける……」

 

「いいや、突くんだ」

 

 言い含め、モーブルは再度腰を打ち付けた。

 

 ズンッ!!

 

 先ほどよりも深く、容赦のない一撃。

 

「ひぎっ……!? あ、ああっ!♡♡♡」

 

 杭が最奥を小突く衝撃に、ネリオの体が弓なりに跳ねる。  痛みではない。  脳髄を直接ハンマーで殴られたような、強烈なスパーク。

 

「ど、どうだ……? まだ痛むか?」

 

「いた……くない……けど、変……! そこ、深い……っ! お腹、突き破られちゃう……!」

 

「破れんよ。お前は頑丈だ。……それに、ここが弱点なんだろう?」

 

 モーブルは確信を持って、先ほど指で探り当てた一点を、カリ首で抉るように擦り上げた。

 

「ひあッ!?♡ ん、あ、あぁッ!!♡♡」

 

 ネリオの声が裏返り、金切り声に近い嬌声があがる。  

 目を見開き、口をパクパクとさせながら、理性を飲み込む快楽の波に溺れていく。

 

「……いい声だ。取材の成果は出ているか? 今の気分を言語化してみろ、記者殿」

 

 モーブルは耳元で意地悪く囁き、抽送の速度を上げた。  

 

 ズチュ、パン、ズチュ、パン、パンッ!

 

 肉と肉がぶつかり合う音がリズムを刻む。  

 そのたびにネリオの体は揺さぶられ、モーブルの愛液と自身の蜜でデロデロに溶かされていく。

 

「しゅ、材……むり、です……!♡ こんなの……メモ、とれな……ひぐっ!♡ あ、あ、すごい、ゴリゴリするぅッ!♡♡♡」

 

「メモはいらんと言っただろう。身体に刻め。……わしの大きさ、熱さ、重さ、その全てをだ」

 

「はいっ、刻まれ……てるっ!♡ 山ゴリさんの全部、入ってきてるぅッ!♡」

 

 ネリオはモーブルの広い背中に爪を立てた。  

 

 ダンジョンでは「見つからなければ問題ない」を信条とする『回避特化』の天才スカウトが、今は自ら捕まりに行き、その圧倒的な質量に押し潰されることを悦んでいる。  

 逃げることなど考えられない。  

 この絶対的な「捕食者(オス)」に捕まることが、今の彼にとっての至上の喜びだった。

 

「あんっ♡ あんっ♡ あんっ♡ あんっ♡ あんっ♡」

 

(……こいつ、わしに犯されてめちゃくちゃ感じとるわ。可愛い。こいつのことがたまらなく愛おしい……!)

 

 モーブルの独占欲が爆発した。  

 普段は減らず口ばかり叩くこの口を、もっと乱れさせたい。  

 澄ましたキツネ目を、涙と欲望で濁らせたい。  

 自分以外の男など考えられないように、徹底的に「開発」してやりたい。

 

「ネリオ、こっちを見ろ」

 

「ふぇ……?」

 

 モーブルはネリオの顎を掴み、無理やり視線を合わせさせた。  

 涙で濡れた青い瞳が、モーブルを捉える。

 

「……黙らせてやる」

 

 宣言と共に、唇を重ねる。  

 下半身は激しく突き上げながら、口元は甘く、ねっとりと舌を絡ませる。  

 上下からの同時攻撃に、ネリオの思考回路は完全にショートした。

 

「んうッ!♡ んっ、んーッ……!!♡♡」

 

 口の中を蹂躙され、下腹部を突き上げられる。  

 息ができない。  

 苦しいはずなのに、頭の芯が痺れて、目の前がチカチカと明滅する。

 

 ――これが、セックス。  

 ――これが、愛し合うということ。

 

 今まで読んできたどの恋愛小説にも、こんな描写はなかった。  

 

 『溶けるような快楽』なんて陳腐な言葉じゃ表現しきれない。  

 これは『爆発』だ。  

 

 魂ごと粉微塵にされて、モーブルという熱量の中で再構築されるような、破壊と再生の儀式だ。

 

 唇が離れると、ネリオはだらしなく舌を出して荒い息をついた。  

 その表情は、どこか艶めかしく、妖艶ですらある。

 

「はっ、ぁっ、あッ!♡ すご、い……!♡ お腹、いっぱい……!♡ モーブルさん、モーブルさぁん……!♡♡♡」

 

「……ッ、いきなり名前呼びに切り替わるな……! 可愛すぎて、理性が持たん……!」

 

「はぁ、はぁ……っ、モーブルさん……♡♡ もっと……もっと奥、ください……!♡♡」

 

 ネリオが、自ら腰を揺らしてねだった。  その淫らな仕草に、モーブルの中で何かがプツリと切れた。

 

「……望むところだ。壊れるまで愛してやる!」

 

 モーブルの動きが変わった。  

 慈愛を捨て、獣のように激しく、深く、打ち付ける。  

 特注のベッドがきしみを上げ、部屋中に二人の荒い息遣いと水音が充満する。

 

 ドスン、ドスン、と重厚なピストンが繰り返されるたび、ネリオの視界が白く明滅する。  

 高い知力を持つ敏腕記者の頭脳は、もう機能していなかった。  

 『痛み』はいつしか『痺れ』に変わり、やがて脳髄を溶かすほどの『快楽』へと変貌を遂げていた。

 

(なに、これ……! 情報量が、処理しきれない……!)

 

 取材? 記事? 

 そんなものはとうに吹き飛んでいた。  

 

 視界にあるのは、汗にまみれたモーブルの雄々しい顔と、自分を貫く圧倒的な熱量だけ。  

 前立腺というスイッチを、容赦なく連打される。  

 

 そこは、先ほどの指での愛撫とは比較にならない。  

 太すぎる杭が、弱点を面で捉え、根こそぎ快楽を引きずり出してくる。

 

「ひぃっ、んあッ、あ゛あ゛ッ!♡♡ むり、むりぃッ!♡♡ おかしくなる、壊れちゃうぅッ!!♡♡」

 

「壊れるか! お前は真実を追求する記者さまだろうが! この程度の快楽、分析してみせろ!」

 

「ぶんせき、できないッ!♡♡ こんなデータ、知らないッ!♡♡ 頭とけますぅッ!♡♡」

 

 ネリオは泣き叫びながら、モーブルの広い背中に爪を立てた。  

 逃げたいのに、離れたくない。  

 もっと深く、もっと強く。  

 本能が、この巨漢のすべてを欲していた。

 

 モーブルはネリオの脚を肩に担ぎ上げ、さらに深く腰を沈める。  

 恥ずかしいほど開かれた股間を、自身の硬い恥骨で打ち据える。  

 パン、パン、と肉と肉がぶつかり合う卑猥な拍手が、部屋中に響き渡る。

 

「あ゛ッ!♡♡ あ゛あッ!♡♡ すご、いッ!♡♡ モーブルさんの、おっきいッ!♡♡ お腹いっぱいッ!♡♡」

 

「ネリオ……! ネリオ……ッ!」

 

 互いの名を呼び合いながら、二人は絶頂への階段を転げ落ちていく。  

 モーブルの額から汗が滴り落ち、ネリオの白い肌を濡らす。  

 汗と愛液が混ざり合い、二人の境界線が曖昧になっていく。

 

(……くる。もう、限界だ……!)

 

 モーブルの下腹部に、熱いマグマが溜まっていく感覚があった。  

 射精の予感。  

 

(……こいつのレベルはまだカンスト手前。……だから、出せる。全部、中に出しても安全だ!)

 

 その確信が、最後の引き金を引いた。

 

 バチュン! バチュン! バチュン! バチュン! バチュン!

 

「……っ、ネリオ! 出すぞ! 中に出す! 全部、くれてやる……!」

 

「はいッ! くださいッ! モーブルさんの、全部、あっ、たかいの、中にぃッ!」

 

 ネリオがモーブルの背中にしがみつき、脚を強く絡める。  

 逃がさない。

 一滴も漏らさないというように。

 

「う、おおおおおッ!!」

 

 モーブルは雄叫びと共に、最奥へと腰を突き入れた。

 

 ズチュゥウウウウウ!!

 

 亀頭が腸内の奥をノックし、尿道口が弾ける。  

 

  ビュビュッ! ビュルルゥ! ブュリュッルリュルル〜! ブリュブリュリュリュッルッ!!

 

 激しい脈動と共に、大量の白濁液がネリオの中へと放たれた。

 

「んぎぃッ!?♡♡♡ あ゛あ、あ゛あぁぁぁッ!!♡♡♡♡♡」

 

 ネリオがのけ反り、絶叫する。  

 熱い。  

 ただでさえ熱を持っていた体内に、さらに高熱の液体が注ぎ込まれる感覚。  

 お腹が膨れる。  

 モーブルの命のしずくが、ドクドクと断続的に注ぎ込まれ、ネリオの空っぽだった場所を満たしていく。

 

 同時に、ネリオ自身も限界を迎えた。  

 前を触られてもいないのに、後ろの刺激だけで達してしまったのだ。  

 ビクビクと白濁を散らしながら、目の前が真っ白な光に包まれた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」

 

 モーブルは最後の一滴まで絞り出すように腰を押し付け、ようやく動きを止めた。  

 二人の体は汗で濡れ、密着した肌がズルリと滑る。  

 部屋には、荒い呼吸音と、濃厚な精の匂いだけが充満していた。

 

 モーブルはゆっくりと体を離し、ネリオの顔を覗き込む。  

 ネリオは焦点の定まらない目で天井を見上げ、口を半開きにして、ピクピクと痙攣していた。  

 その顔は、淫らで、だらしなく、そして最高に幸せそうだった。

 

「……おい、やりすぎたか?」

 

 モーブルは少し心配になり、ネリオの頬を軽く叩いた。  

 ネリオが、はっとしたように瞬きをする。

 

「……あ、う……山ゴリ、さん……?」

 

「生きてるか? わしのイチモツに貫かれて昇天したかと思ったぞ」

 

「……半分、死んでました……天国の花畑が、見えました……」

 

 ネリオはへらりと力なく笑い、モーブルの手を握り返した。  

 その温もりに安堵しつつ、モーブルはこっそりとスキルを発動させた。  

 

 事後の確認。

 商売人としての、そしてレベル師としての、重要な在庫チェックだ。

 

(スキル――『レベル鑑定』……ふむ、よしよし)

 

 半透明のウィンドウに表示された文字列を見て、モーブルの口角が吊り上がる。

 

 

―――――――――

【特記事項】 処女喪失: 完了  対象: ジンジ・モーブル

―――――――――

 

 

(……レベルブレイク、問題なしっと。そして、わしがこいつの“初めて”を奪った事実も、しっかり画面に上書きされとるわ)

 

 モーブルは相手の処女を奪ったとき、ステータス画面の履歴を見てにやにやするのが、誰にも言えない密かな趣味だった。  

 この美少年エルフの歴史に、自分の名前が刻まれたのだ。

 

「……山ゴリさん? なにを悪い顔して笑ってるんですか?」

 

「いや……実にいい顔をしてると思ってな。極上の品を手に入れた気分だ」

 

 モーブルはウィンドウを消し、ネリオの額にキスをした。

 

「……すごかったです、山ゴリさん。あたし、こんなの……初めてです……なにも知らないで小説を書いていたのが恥ずかしい……」

 

 ネリオは恥ずかしそうに顔をシーツに埋めた。

 

「もう言葉にできないんです。……この満たされた感じも、お腹の熱さも、山ゴリさんの重みも。……全部、あたしだけのネタにしたい」

 

 記者が「ネタにしたい」と言う。  

 それは、彼にとっての最大の愛の告白だった。

 

「そうか。……なら、小説をもっとリアルに書くために、追加取材が必要だな?」

 

 モーブルが意地悪く囁くと、ネリオは顔を真っ赤にして、けれど嬉しそうに頷いた。

 

「……はい。独占取材、許可してくれますか?」

 

「ああ。……朝まで付き合ってやる」

 

 モーブルは再び、愛しいエルフを抱き寄せた。  

 夜はまだ長い。  

 ネリオのスタミナが尽きるまで、あるいはモーブルの理性が尽きるまで。  

 

 二人の「取材」という名の愛の営みは、まだまだ終わらないのだった。

 

 

◆

 

 数日後。  

 モーブル商会に、一通の封書と、インクの匂いも新しい小包が届いた。

 

 差出人は、ネリオ・フォックスライド。  

 あの夜、取材(という名の情事)を重ね、さらに艶やかさを増したあのエルフ記者からの贈り物だ。

 

「……来たか」

 

 モーブルは、はやる気持ちを抑えつつ、いつものカウンターの椅子にドカリと腰を下ろした。  

 封を開けると、まずは一枚の便箋がさらりと滑り落ちてくる。  

 走り書きだが、特徴的な跳ねるような筆跡。

 

『親愛なるスポンサー、兼、あたしのラブリーなダーリンへ。 おかげさまで、素晴らしいインスピレーションが湧きまくりました!  この最新号は、あたしたちの愛の結晶です。心して読んでくださいね♡

 

 追伸:腰の調子はどうですか? あたしは絶好調です!』

 

「……ふん、現金なやつめ」

 

 文面を目で追うモーブルの口元が、どうしても緩んでしまう。  

 あの夜の熱量と、ネリオの甘い喘ぎ声を思い出し、下腹部が熱くなるのを咳払いでごまかした。

 

 彼は気を取り直し、同封されていた冊子――『カヴェナ通信』の最新号を手に取った。  

 ずしり、とした重みがある。

 以前よりも紙質が良くなっているようだ。

 

「あっ! 旦那様、それってもしかしてネリオ様の雑誌の最新号ですか……?」

 

 いつの間にか、店員のラースが背後におずおず忍び寄っていた。

 

「そうだ。そう言えばお前もコレの愛読者だったな。……一緒に見るか?」

 

「あ……は、はい! 失礼します!」

 

 ラースは尻尾をパタパタと振りながら、モーブルの肩越しに誌面を覗き込む。

 

「……あっ、すごいです! 見てください!」

 

 ラースが指差したのは、表紙を飾る景気のいい見出しだった。

 

【祝! 発行部数1万部突破! 帝国全土へ拡大中!】 【緊急新連載! 天才作家が描く、禁断の愛の新境地!】

 

「ほう……本当に一万部まで一気に増やしたか。大したもんだ」

 

 モーブルは感嘆の声を漏らした。  

 ゴシップ紙とはいえ、一万部は並大抵のことではない。

 ネリオの情報収集能力と、大衆の欲望を掴む文章力が、いよいよ花開いた証拠だ。  

 商売人として、そしてパトロンとして、鼻が高い。

 

「やるもんだな、あいつも。……どれ」

 

 モーブルは微笑みながらページをめくった。  

 

 役人の不正、冒険者ギルドの裏事情、カヴェナの流行スイーツ、そしてモーブルの“万能ツールセット”の使用方法の紹介。  

 硬軟織り交ぜた記事のクオリティは相変わらず高い。

 どれも鋭い視点で書かれており、読んでいて飽きさせない。

 

「こ、今回の生活お役立ち記事はお掃除特集ですね……。お店の床磨きに役立ちそうです。……あ、旦那様。小説コーナーです!」

 

 ラースの鼻息が少し荒くなる。  

 どうやら彼もまた、一読者としてこのコーナーを楽しみにしているらしい。

 

「どれどれ?」

 

 モーブルも身を乗り出す。  

 誌面の最後尾。

 読者アンケートで常に一位を独走しているという、ネリオ書き下ろしの小説連載ページ。  

 既存の人気作『禁断の友情Ω(オメガ)』に続き、次のページをめくると――

 

 そこには、デカデカと新しいタイトルロゴが踊っていた。

 

『黄昏(たそがれ)の恋路 ~枯れゆく二人の、熱き果汁~』

 

「……ん?」

 

 モーブルの眉がぴくりと跳ねた。  

 なんだ……このタイトルから漂う、妙な哀愁と加齢臭は……。  

 嫌な予感が背筋を走る。

 

 挿絵には、二人の男性が描かれていた。  

 一人は、目尻に深い皺を刻んだ、紫髪の渋いエルフ。  

 もう一人は、立派な太鼓腹とちょび髭を蓄えた、ダンディな人間の商人。

 

「……おい、ラース。わしの目が腐っていなければ、この挿絵の二人……どう見ても『くたびれたおっさん』なんだが」

 

「……だ、旦那様。奇遇です。僕の目にも、かなりお年を召された紳士にしか見えないです」

 

 二人は顔を見合わせ、恐る恐る本文に目を落とした。

 

 

―――――――――

 

「……よせ、エルフの。わしの腰はもう限界だ」

 

 商人の男は、その豊かな腹肉を揺らしながら苦笑した。  

 しかし、エルフの老紳士は、その皺枯れた指で商人の分厚い唇を塞ぐ。

 

「言ったはずじゃ。あたしらの恋に、賞味期限などないと……。お主のその、加齢で弛んだ皮膚(かわ)も、山ゴリラのようなふさふさの胸毛も、あたしにとっては極上の珍味なんじゃよ……」

 

―――――――――

 

 

「…………」

 

 モーブルの手が止まった。  

 時が止まった。

 

 キラキラした美少年同士の恋ではない。  

 若々しい冒険者と貴公子の恋でもない。  

 そこに描かれていたのは、人生の黄昏時を迎えた、初老のエルフと、初老の人間の、ねっとりとした熟年恋愛(ロマンス)だった。

 

「……な、なぜだ……? なぜ……そっちへ行った!?」

 

 モーブルの声が、小刻みに震えていた。

 

 てっきり、自分たちをモデルにするにしても、多少は美化して「美少年と野獣」のような耽美なロマンスを書くと思っていた。  

 あるいは、ネリオ自身の見た目を活かした「ショタ×おじ」の王道を行くかと予想していた。

 

 だが、現実は違った。  

 ネリオが未開のジャングルから掘り出してきたのは――『枯れ専』。

 

 加齢臭と哀愁をスパイスに、互いの老いさえも愛で合いながら、よぼよぼと絡み合う……あまりにもニッチすぎる新境地(アビス)だった。

 

「す、ごいです……。斬新すぎます……。でもこれ、すごく……胸に染みます……?」

 

 ラースは一人、未知の扉に手をかけて目を輝かせている。  

 モーブルは舌打ちをし、恐る恐る続きに目を落とした。  

 そして、さらなる衝撃の描写に、呼吸を忘れた。

 

 

―――――――――

 

 商人の男は、指紋で汚れた鑑定メガネを外し、荒い呼吸で喘いだ。

 

「ああ……、いかん。興奮で……血圧が上がってしまう……」

 

「構わん。上がった分だけ、わしが介護してやる。……さあ、その脂の乗った愛らしいぷくっとした唇で、生存確認の口付けを……」

 

―――――――――

 

 

「うわあああああああ! 生々しい! リアリティの方向性がおかしいだろッ!!」

 

 バンッ!  モーブルはたまらず冊子をカウンターに叩きつけた。

 

 ドン引きである。  

 魂レベルで引いている。

 

 書き方がおかしい。

 根本的におかしい。  

 

 わしはまだ四十二歳だ。

 男盛りの四十二歳だぞ!  

 

 血圧も正常値だ! 

 介護も必要ない! 

 階段だって二段飛ばしで登れるわ!    

 

 あの情熱的な夜の取材の結果が、なぜ「高血圧」や「介護」、「老老介護の愛(おっさんずラブ)」に変換されるのか!

 

(……ま、まさか……あいつ……)

 

 モーブルは戦慄した。  

 ネリオは、モーブルとの行為を通じて、「大人の包容力」を学んだのではない。

 

 ”熟成された肉体の味わい深さ”を、極大解釈してしまったのだ。

 

 性癖のレベルブレイク。  

 魔導国の天才作家は、誰も踏み入れたことのない荒野(ジャンル)へと、全力で駆け抜けていってしまった。

 

「……旦那様。あとがきに作者コメントがありますよ」

 

 ラースが容赦なく読み上げる。

 

 

―――――――――

 

『作者コメント:最近、素敵なダンディズム(実話)に触れ、おじさまの魅力に目覚めました♡ 若い男の子もいいけど、これからは「枯れ」も開拓していこうと思います! 全国の枯れ専女子、ついてきてください!』

 

―――――――――

 

 

「ついていくか馬鹿者ォ!!」

 

 モーブルの絶叫が、商会に虚しく響き渡る。  

 一万人の読者に、この濃密すぎる「おっさんずラブ・介護編」がばら撒かれたのだ。  

 もはや社会的なテロである。

 

 頭を抱えてうずくまるモーブルの背後で、ラースがぽつりと呟いた。

 

「でも……この商人のモデル、どう見ても旦那様ですよね。……ネリオ様に、愛されてるんですね」

 

「……やかましい! こんな歪んだ愛され方があってたまるか!」

 

 モーブルは耳まで真っ赤にして『カヴェナ通信』を睨みつけた。  

 怒りと、羞恥と、そしてほんの少しの(本当にごくわずかな、砂金ほどの)「それでもネタにされるほど愛された」という嬉しさがないまぜになり、彼は深い深い溜息をついた。

 

「……次回の取材で、たっぷりと『教育的指導(おしおき)』をしてやる……。わしが現役バリバリだということを、その身に刻んでやるからな……!」

 

 新たなジャンルの扉をこじ開けてしまった天才作家と、そのモデルにされたレベル師。  

 二人の愛と性癖を巡る攻防戦は、まだ始まったばかりである。




ストックが尽きたため、しばらく投稿をお休みさせていただきます。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
またお話をお届けできるよう、少しずつ準備していきますので、そのときはぜひお付き合いいただけたら嬉しいです。
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