※この作品はR-18です。

モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~   作:とけそうだら

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第四十話 ニーシャとカイルの「犬猿コンビ、再始動?」⑤

 プシュー、プシュー……。

 

 無機質な噴射音と共に、視界が甘く、艶めかしい桃色に侵食されていく。

 

 

「……ッ! カイル、吸うな! 呼吸を止めろ!」

 

 

 ニーシャは瞬時に反応した。

 ローブの袖で口元を覆い、同時に防御魔法の障壁を展開しようと杖を構える。

 だが、その鋭い警告は、隣にいる「野生動物」には一秒遅く届いたようだった。

 

 

「んあ? なんだよニーシャ、すげえいい匂いがすんぞ? なんかこう……花畑っつーか、熟れた果実の蜜みてぇな……」

 

 

 カイルは無防備に鼻をひくつかせ、あろうことか、その桃色の煙を「すぅーっ」と魔獣並みの肺活量で、胸いっぱいに吸い込んでいた。

 

 

「馬鹿か、お前は! ダンジョンの罠だと言っているだろうが! 吐け! 今すぐ肺の中身を全部交換しろ!」

 

「え? あ、やべ。……けほっ、けほっ!」

 

 

 ニーシャの怒号でようやく事態を察したカイルが、激しくむせ返る。

 だが、時すでに遅し。

 彼の顔色は、咳き込む赤さとは別に、どこか熱っぽい、危険な紅潮を帯び始めていた。

 

 

「……はぁ、はぁ。なんだこれ……すげえ熱い。胃袋の奥から、火がついたみてぇだ……」

 

 

 カイルがふらりとよろめき、自分の襟元を乱暴に掴む。

 

 ビリ、ビリビリッ! 

 

 安っぽいシャツが悲鳴を上げて裂け、鍛え上げられた胸板が露わになった。

 玉のような汗が浮いた肌が、桃色の煙の中で妙に生々しく、いやらしく光る。

 

 

「おい、正気か? ここで脱ぐな! ボクに汚いものを見せるんじゃない!」

 

 

 ニーシャはジリと後退り、背中の壁にぶつかった。

 出口は巨大な石扉で塞がれている。

 魔法で吹き飛ばそうにも、この部屋自体が古代の強固な結界で守られており、内部からの破壊は困難だと直感が告げていた。

 

 

「だってよぉ……熱いんだよぉ。身体ん中が、マグマみたいに熱くてたまんねぇんだよぉ……」

 

 

 カイルの目は潤み、焦点が定まっていない。

 まるで高熱にうなされる病人のようだが、その瞳に宿る熱は、病魔のそれとは決定的に異なっていた。

 理性を溶かし、本能だけを剥き出しにする、ドロドロとした渇望の色。

 

 その時、カイルの背中から、クックック……という下卑た笑い声が響いた。

 魔剣エクセリオンだ。

 

 

《ギャハハハ! 傑作だなぁオイ! まさか『陽炎の楼閣』の裏ボスが、こんなコテコテの『お約束』だったとはよぉ!》

 

「……魔剣。貴様、何か知っているな? もったいぶらずに説明しろ」

 

 

 ニーシャが氷点下の声で問いただすと、エクセリオンは下卑た笑い声をあげ、刀身を小刻みに震わせた。

 

 

《あぁ、知ってるとも! 古代文献の『禁書コーナー』でも特に手垢で汚れたページに載ってるヤツだ。『淫魔の宴(サキュバス・バンケット)』――別名、『交わらなければ出られない部屋』ってな!》

 

「……は?」

 

 

 ニーシャの思考が、一瞬停止した。

 あまりに偏差値の低い単語が、天才の脳内辞書に登録されていなかったからだ。

 

 

「なんだそれは。三流官能小説の読みすぎか? 悪いがボクは、そんな低俗な冗談に付き合っている暇はない」

 

《それが大真面目なんだよなぁ、天才サマよぉ! この煙はただの催淫ガスじゃねぇ。呪いだ。一度吸い込めば最後、強制的に理性のタガを外される。……そして一番厄介なのが、許容量を超えて『中毒化』しちまった場合だ》

 

 

 エクセリオンは、わざとらしく溜めてから、最悪の宣告を口にした。

 

 

《脳髄までドロドロに溶かされて、死ぬまで終わらない『発情期』を迎えるって寸法よ》

 

「い、一生だと……!?」

 

《おうよ。理性が消し飛んで、ヤってもヤっても収まらねぇ猿になる! 解除条件はただ一つ。この部屋の中で、生命の神秘たる『交歓』を完遂すること。……要するに、『セックス』だな!》

 

「ば、馬鹿な……ここには男二人しかいないんだぞ……! それをどうやって……」

 

《あァ? なに寝ぼけたこと言ってやがる! テメェみてぇな可愛らしいナリしてりゃ、裏でパトロンの爺さん相手に股開いてんだろ? 今更『穴』の使い道に迷うこともねぇだろうが!》

 

「き、貴様ッ……! ボクは誇り高き貴族だぞ! 街角の男娼と一緒にするなッ!」

 

 

 ニーシャの顔が屈辱で真っ赤に染まる。

 だが、エクセリオンの嘲笑は止まらない。

 

 

《違ぇってなら『実績』で証明してみな! 一つ言えることは、コトを致すまでは、空間転移だろうが障壁破壊だろうが、あらゆる脱出手段は無効化される。そういうクソ真面目で、最高に悪趣味な強制術式が組まれてんだよ!》

 

「ありえない……。そんな低俗な術式、ボクの解析魔法(アナライズ)で書き換えてやる――!」

 

 

 ニーシャは反論しようと杖を掲げる。

 だが、展開された魔法陣は、カイルから発せられるムンムンとした熱気に押されるように、ジジジ……とノイズを走らせて霧散してしまった。

 

 

《無駄無駄ァ! これは古代竜語(エンシェント・ドラゴン・ランゲージ)で記述された『絶対命令(ギアス)』だ。神代の偉大な魔法使い様が、暇つぶしか歪んだ性癖でこさえた最悪の遺産さ。テメェの魔力が尽きるのが先か、そこの小僧の理性が決壊するのが先か……見物だなァ!》

 

「くっ……! 古代の叡智をなんだと思っているんだ、このド変態先人どもめ……!」

 

 

 ニーシャはギリ、と唇を噛み締め、悔しげに杖を握りしめた。

 認めたくはないが、エクセリオンの言葉が真実であると、魔術的直感が告げている。

 この空間は、閉鎖系《クローズド・サークル》としてあまりに完成されすぎているのだ。

 

 そして――最大の「危機」は、すぐ目の前まで迫っていた。

 

 

「……なぁ、ニーシャ……」

 

 

 熱っぽい吐息と共に、カイルがふらふらと距離を詰めてくる。

 いつもなら憎まれ口を叩き合うだけの口元が、今はだらしなく緩み、どこか甘えるように震えている。

 

 

「……なぁ、俺……どうかしちまったのかも知れねぇ」

 

 

 カイルは熱に浮かされたように呟き、ニーシャの華奢な肩に顔を埋めた。

 

 

「俺の好みは、リシアさんみてぇな包容力のある巨乳美女だ。……こんな生意気で、可愛げのないガキなんかじゃねえはずなのに……」

 

 

 その吐息が、ニーシャの首筋をじりじりと焼く。

 

 

「なんでだろ……? 今、目の前にいるお前が……その生意気な顔も、平らな身体も……全部が、たまらなく可愛く見えて、どうしようもねぇんだ……!」

 

「寄るな、頭を冷やせ! この盛りのついた野良犬が!」

 

 

 ニーシャは反射的に杖を突きつけ、氷結魔法の構築を始める。

 だが、カイルは避ける素振りすら見せず、むしろ杖の切っ先を自らの熱い胸板で受け止めた。

 

 

「……はぁ、冷たくて気持ちいい……。お前のその冷たさも、悪くねぇな……」

 

 

 カイルは恍惚とした表情で、ニーシャの杖を包み込むように握りしめた。

 その掌の熱さが、杖を伝導してニーシャの手にも直接流れ込んでくる。

 

 

「ひっ……!」

 

 

 ニーシャは思わず小さな悲鳴を上げ、手を引っ込めようとした。

 だが、馬鹿力だけが取り柄のカイルの剛腕に、非力な魔法使いが敵うはずもない。

 

 

「なぁ、よく見るとよ……お前、すげえ肌白いな。上等なミルククリームみてぇに美味そうだ」

 

「……分析するな、気色悪い……!」

 

「髪も、キラキラしてて……飴細工みてぇだ。いつもツンケンしてるけどよ、黙ってりゃ……結構かわいい顔してんだな……」

 

「ッ!? な、何を……! ガスの影響で視覚野までバグったか、この駄犬ッ!」

 

 

 ニーシャの顔が、怒りと羞恥で林檎のように赤く染まる。

 普段なら「殺すぞ」と一蹴するところだが、カイルの瞳があまりにも真っ直ぐで、そして潤んでいるせいで、毒気が抜かれるというか、調子が狂う。

 

 グイッ。

 

 抵抗する間もなく、カイルはニーシャの手首を掴み、強引に引き寄せた。

 ゼロ距離。

 汗と、雄(オス)の匂いと、桃色の煙の甘い香りが混ざり合い、ニーシャの冷静な脳髄を直接犯していく。

 

 

「ニーシャ……俺、もう駄目だ。身体ん中が、痒くて、熱くて……どうにかなっちまいそうだ……」

 

「知るかッ! 壁に向かって一人で処理しろ!」

 

「一人じゃ無理だ……。目の前に、こんな『ご馳走』がいるのによ……」

 

 

 カイルの顔が近づく。

 唇が触れそうな距離。

 

 

「させるかッ!」

 

 

 ニーシャは咄嗟にカイルの足を踏みつけ、その隙に突き飛ばした。

 カイルは「うおっ!?」と声を上げ、よろめいて床に尻餅をつく。

 

 その隙に、ニーシャは部屋の隅へと走った。

 心臓が早鐘を打っている。

 これはまずい。

 非常にまずい。

 カイルは完全にガスにやられている。

 理性など風前の灯火だ。

 そして自分も、口を覆ってはいるものの、皮膚から微量に吸収しているのか、身体の芯が妙に火照り始めていた。

 

 

(……冷静になれ。思考を止めるな。ボクはニーシャ・オブライエン。魔導国が誇る至宝にして、稀代の天才だぞ。エリザという最愛の人がいながら、こんなふざけた罠に屈して、人生を棒に振ってたまるか……!)

 

 

 ニーシャは必死に脳内の演算回路をフル回転させ、最適解を探る。

 

 『物理的な壁の破壊』?――却下だ。エクセリオンの解析通り、空間ごと因果律で固定されている。

 『転移石による離脱』?――不可能。座標軸がメチャクチャに歪められていて、飛べば異次元の藻屑となる。

 『カイルの昏倒』?――無意味だ。気絶させても「行為」のフラグは立たない。ボクたちがここで干からびたミイラになるだけだ。

 

 つまり。

 あの下品な魔剣の言う通り、「条件」を満たす以外に、ここから生きて出る道はない。

 

 

(条件……すなわち、『性交』か)

 

 

 ニーシャはギリ、と奥歯が軋むほど強く噛み締めた。

 屈辱だ。

 このボクが、あろうことか、あんな野良犬のようなやつと。

 しかも、こんなカビ臭いダンジョンの床で。

 ムードもへったくれもない、ただの動物的な交尾を強いられるなど。

 

 確かに、モーブルには幾度と無く抱かれてきた。

 だが、あれはあくまで『レベルブレイクの儀式』という名の等価交換。

 レベル限界値の底上げと金、互いの利害が一致したビジネスライクな契約行為に過ぎない。

 

 そこに好意など介在しないし、ボク自身はあくまでノーマルだ。

 断じて、男に抱かれる趣味などない。

 

 

(だが……このまま躊躇していれば、ガス中毒で廃人化。一生、盛りのついた犬畜生として生きる羽目になる。……論理的帰結として、選択肢は一つしかない)

 

 

 生存への最短ルートは、屈辱を受け入れること。

 それが、天才ニーシャ・オブライエンが弾き出した唯一の解だった。

 

 ニーシャは覚悟を決めたように短く息を吐き、再びカイルの方を向いた。

 カイルは床に座り込んだまま、獣のような荒い息をつき、ギラギラとした瞳でこちらを睨みつけている。

 その目は、もはや理性の枷が外れた、飢えた肉食獣のそれだった。

 

 

「……分かった。認めよう。ここから出るには、”アレ”をするしかないらしい」

 

 

 ニーシャは努めて冷静な声を出そうとしたが、語尾が僅かに震えるのを、どうしても止めることができなかった。

 

 

「アレ……? アレってなんだよ、ニーシャ……」

 

「とぼけるな! お前が今、そのズボンの中で暴発しそうな……ペ、ペニスを使って! やりたくてたまらないことだ!」

 

 

 カイルはきょとんと目を丸くした後、ニタリと口の端を吊り上げた。

 その笑顔からは、いつもの少年のような屈託さは消え失せ、雄の欲望だけがドロリと滲み出していた。

 

 

「へへ……マジかよ? あのお高く止まったニーシャ様が、俺なんかに……? ハッ、すげぇ夢見てぇだなぁ……」

 

「勘違いするな! これはあくまで『脱出のための儀式』だ! 生存のための、緊急避難的な実験手順の一つに過ぎない! ……そこに感情など一ミリもない。いいか、絶対にないぞ!」

 

「うぉぉ、嬉しいぜぇ……。俺、お前とヤりたくて……もう限界なんだよ……。へへ、死ぬほど気持ちよくしてやるからな……」

 

 

 カイルがゆらりと立ち上がり、上着を脱ぎ捨てる。

 剥き出しになった、汗ばんだ筋肉質の身体を見て、ニーシャは思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。

 

 

(なにが『気持ちよくしてやる』だ、この変態野郎が……!)

 

 

 やるしかない。

 腹は括った。

 だが、その瞬間、ニーシャの脳裏に、ここに来て最大にして致命的な問題が浮上した。

 

 

(――待てよ? 『気持ちよくしてやる』だと? ……やるとして……ボクは『どっち』だ?)

 

 

 ニーシャは眉間に深々と皺を寄せ、帽子の鍔を直した。

 生物学的な事実として、ニーシャは男だ。

 そして目の前の野獣も、当然ながら男だ。

 つまり、物理的な挿入において「攻守(ポジション)」の役割分担が不可避となる。

 

 

(ボクが……抱かれる? 受け……だと? このボクが?)

 

 

 想像しただけで、背筋に冷たい悪寒が走った。

 プライドが許さない。

 魔導国の至宝たる自分が、あの泥だらけの冒険者にマウントを取られ、あまつさえ体内に「ナニか」を侵入されるなど。

 そんなことになれば、ボクの尊厳は粉々だ。

 一生消えない汚点になるどころか、末代までの恥だ。

 

 

(ならば、ボクが抱く? ……攻めとして、あいつを?)

 

 

 カイルを値踏みするように見る。

 身長はこいつの方がやや高い。

 筋肉質で、汗臭くて、無駄にガタイがいい。

 性格だって大雑把で、デリカシーの欠片もない。

 顔の造作だけは認めてやらなくもないが、そっちの趣味など断じてない。

 

 正直、抱きたい要素が塵(ちり)ほども見当たらない。

 それに、「攻め」となればそれなりの生理的昂(たかぶ)りが必要だが、現在のニーシャの精神状態は、氷河の魔獣も裸足で逃げ出す絶対零度だ。

  こんな理不尽な極限状態で、ペニスが元気に起立するなど、人体の構造的にありえない。

 

 

(いや、しかし……この煙の強制力を逆手に取れば……あるいは……!)

 

 

 ニーシャが脳内で必死のシミュレーションと、自身への言い訳を構築している間に、事態は待ったなしで進行していた。

 カイルはもう、鼻先が触れるほどの距離まで迫っている。

 圧倒的な熱気。

 雄(オス)特有の匂いと、桃色の煙の甘い香りが混ざり合い、ニーシャの思考回路を焼き切ろうとしていた。

 

 

「ニーシャ……俺、もう我慢できねえ……」

 

 

 掠れた、だが強烈な情欲を孕んだ声。

 カイルが太い腕を伸ばし、ニーシャの華奢な肩を鷲掴みにした。

 そして、問答無用で床へと押し倒す。

 

 

「うわっ!?」

 

 

 ドサッ、という鈍い音と共に、ニーシャの視界が反転した。

 背中に冷たい石畳の感触。

 上には、天井を覆い隠すほどの、逞しい男の影。

 見上げれば、そこには理性なき獣の瞳をしたカイルが、今にも噛み付かんばかりの形相で見下ろしていた。

 

 マウントポジション。

 最悪の体勢だ。

 ニーシャは本能的な危機感を覚え、必死に声を張り上げた。

 

 

「待て! 順番が違う! ここは公平に議論を……そう、ボクが上だ! 攻守の決定には交渉の余地を――」

 

「ああん? うっせえ口だな……」

 

 

 カイルは鬱陶しげに眉を寄せると、ニーシャの両手首を片手で纏めて頭上へ押さえつけた。

 

 

「変なこと言えねーように……俺が、その生意気な口を塞いでやるよ」

 

 

 宣言と同時。

 カイルの顔が覆いかぶさった。

 

 

「んんっ!?」

 

 

 唇が、奪われる。

 それはロマンチックなキスなどという生易しいものではなかった。

 明確な「捕食」。

 カイルはニーシャの薄い唇に噛み付くように吸い付き、強引にこじ開けにかかる。

 

 

「や、やめ……んむっ! んぅ……ッ!」

 

 

 ニーシャは顔を背けて逃れようとするが、カイルの空いた手が顎をガシリと掴み、逃げ道を封鎖する。

 抵抗を許さない強引さで、熱く濡れた舌が口腔内へと侵入してきた。

 

 蹂躙が始まる。

 カイルの舌は、まるで獲物を味わう蛇のように、ニーシャの口内をくまなく暴れ回った。

 歯列をなぞり、上顎をくすぐり、逃げ惑うニーシャの舌を絡め取って吸い上げる。

 

 

「んぐッ、ふ、ぁ……ッ!? ちゅぷ、んん……ッ♡」

 

 

 ニーシャの喉奥から、情けない悲鳴と甘い水音が漏れる。

 だが、その声すらも、甘い唾液と共にカイルに飲み込まれていく。

 味がする。

 カイルの、男の味。

 そして、自分自身の味。

 二人の唾液が混ざり合い、淫靡な水音を立てて絡み合う。

 

 

「れろっ、じゅる……くちゅ、ちゅぅ……♡」

 

 

 下品な粘着音が、静寂のダンジョンに反響する。

 

 

(くそっ……力が……入らない……!)

 

 

 ニーシャは必死に腰を捩り、カイルの重い身体を跳ね除けようと足掻く。

 だが、岩のように動かない。

 魔法使い(キャスター)と剣士(アタッカー)。

 基礎体力の絶望的な差が、ここに来て越えられない「壁」となって立ちはだかる。

 

 それに、何より恐ろしいのは、自分自身の身体の反応だ。

 ガスの影響か、抵抗する手足に力が入らない。

 むしろ、カイルに触れられている箇所から――唇から、舌から、手首を掴む指先から、痺れるような甘い電流が走り、身体が勝手に弛緩していくのが分かった。

 

 

(やめろ……ボクは男だぞ……! こんなやつにいいようにされて感じるわけが……!)

 

 

 理性では拒絶している。

 だが、脳髄を犯す桃色の煙と、カイルの雄々しい熱量が、ニーシャの防衛本能を次々と陥落させていく。

 熱い。

 気持ちいい。

 もっと、奥まで。

 そんな浅ましい思考が、泡のように湧いては消える。

 

 カイルのキスは、さらに激しさを増していった。

 ただ吸うだけでは飽き足らず、ニーシャの下唇を甘噛みし、舌先で執拗に弄ぶ。

 

 

「んんッ……ちゅ、じゅぷ……ふあぁ……♡」

 

 

 酸素が足りない。

 息継ぎの隙間すら与えられず、ニーシャの意識が白濁していく。

 視界の端で、カイルの瞳が爛々と輝いているのが見えた。

 獲物を美味そうに貪る、獣の目。

 その瞳に映っているのは、涙目で喘ぎ、無様に涎を垂らす自分の姿だ。

 

 

「ん……♡ はぁっ、んんッ、ごふっ……!」

 

 

 限界が近いことを悟ったのか、あるいは十分に味わい尽くしたのか。

 カイルはようやく顔を離した。

 ぷつり、と。

 二人の間に、銀色の糸がとろりと引いて切れる。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ッ!♡」

 

 

 解放されたニーシャは、溺れた魚のように大きく口を開けて酸素を貪った。

 胸が激しく上下し、乱れた呼吸が整わない。

 眼鏡はずれて鼻先に落ち、瞳は生理的な涙で潤んでいる。

 その姿は、誰がどう見ても「犯された後の雌(メス)」そのものだった。

 

 ニーシャは震える手で口元を拭い、潤んだ瞳でカイルを睨みつける。

 

 

「き、貴様……よくも……! ボクの口の中を……獣のように貪(むさぼ)って!」

 

 

 精一杯の虚勢。

 だが、今のカイルにそんな抗議は届かない。

 舌なめずりを一つして、ニタリと妖艶に口角を吊り上げるだけだ。

 

 

「へへ……ニーシャ、お前……中、すげえ甘いな……」

 

「ッ!?」

 

 

 カイルの手が、ニーシャのシャツのボタンへと伸びる。

 そこにはもう、迷いなど微塵もなかった。

 あるのは、目の前の「極上の獲物(ご馳走)」を骨までしゃぶり尽くそうとする、純粋で暴力的な性欲のみ。

 

 

「こんなにイイ声で鳴くなんてよ……知らなかったぜ。なぁ、もっと聞かせてくれよ。お前の、可愛い声をさ……」

 

 

 カイルは恍惚と呟き、ニーシャの華奢な首筋に顔を埋めた。

 ザラリとした舌が肌を這う感触に、ニーシャの背筋が大きく跳ねる。

 

 

「ひゃっ……! そこ、は……!」

 

「感じてんのか? 口より身体のほうが正直じゃねえか……」

 

 

 カイルの手が、ニーシャの白衣の隙間から滑り込み、薄いシャツの上から胸の突起を弄るように愛撫する。

 脳髄に直接電流を流されたような快感に、ニーシャの声が裏返った。

 

 

「あ、あっ……! やめ……馬鹿、そこぉ……!♡」

 

(駄目だ、身体が言うことを聞かない……! このままじゃ、本当に……!)

 

 

 理性のアラートが脳内でけたたましく鳴り響く。

 だが、カイルの愛撫は止まらない。

 ズボンのベルトに手がかけられ、カチリとバックルが外れる音が、処刑台の合図のように残酷に響いた。

 

 そのままカイルは両手でニーシャのズボンを掴み、躊躇なく引き下ろした。

 スルリと布地が滑り落ち、下着ごと太腿まで露わになる。

 冷たい空気に晒された肌が粟立つが、すぐにカイルの熱い視線がそれを塗り替えた。

 

 

《ヒャハハハ! いいぞ小僧、そのままだ! 高慢ちきな天才サマを鳴かせてやれ!》

 

 

 エクセリオンの下卑た野次が、どこか遠くで聞こえる。

 ニーシャは屈辱と快感の波に溺れながら、薄れゆく意識の中で必死に叫んだ。

 

 

「……っ、離せ……! この、発情した野蛮人がッ!」

 

 

 ニーシャは最後の抵抗を試みた。

 細い腕を振り上げ、カイルの頬を張ろうとする。だが、その手首は虚しく空中で捕らえられた。

 

 

「暴れんなって。……意地張ったって、身体は正直に鳴いてるぜ?」

 

 

 カイルの声は熱を孕んで嗄(か)れていたが、その手つきは妙に優しかった。

 手首を締め付ける力は強くない。けれど、絶対に逃がさないという鋼の意志が込められている。

 その矛盾した接触が、ガスの熱に浮かされたニーシャの神経を逆撫でする。

 

 

「鳴いてなどいない……! これは生理的な反射反応だ! ボクは、お前ごときに情けをかけられるほど落ちぶれては――ひぁっ!?」

 

 

 抗議の言葉は、可愛らしい悲鳴に変わった。

 カイルのもう片方の手が、ニーシャの剥き出しになった太腿の内側を、無遠慮に撫で上げたからだ。

 普段は誰にも触れさせない柔らかな皮膚を、剣ダコのある指先が這い上がる。

 ザラリとした感触と共に、痺れるような熱が腰の奥へ突き抜けた。

 

 

「へえ、反射ねぇ。……じゃあ、もっとイイ反応させてやるよ」

 

 

 カイルは獰猛に笑い、ニーシャの両足を強引に割り開いた。

 充満する桃色の煙が、二人を優しく、そして残酷に包み込んでいく。

 

 視界の端で、古びた石壁がゆらゆらと歪んでいた。

 それがガスの幻覚作用なのか、あるいは涙で視界が滲んでいるせいなのか、今のニーシャにはもう判別がつかない。

 唯一はっきりしているのは、自分の股間に割り込んできたカイルの、圧倒的な体温だけだ。

 

 

「……ここ、強がってる割にすげえ震えてるぞ」

 

 

 太腿を這っていた手が、さらに上へと侵略する。

 薄いシャツの上から胸の膨らみを弄るように愛撫されたかと思えば、指先は迷いなくさらに下腹部へと滑り落ちた。

 

 

「ち、ちが……っ、それは、怒りで震えて……あッ、んぅッ……!♡」

 

 

 否定しようとした唇から、甘い吐息が零れる。

 カイルの指先が、露わになったニーシャの屹立したペニスを、直接鷲掴みにしたからだ。

 熱い掌で包み込まれ、親指で先端を擦られる感覚。

 ニーシャは反射的に腰を跳ねさせたが、カイルの体重に押さえ込まれて逃げ場がない。

 

 

「……なぁ、ニーシャ。昔パーティ組んでた頃、俺はずっとお前のこと見てたんだぜ」

 

 

 カイルが粘りつくような声で、ニーシャの耳元に囁く。

 

 

「野営のテントで、お前がすました顔で寝てるのを見るたび、考えてた。……こんな気位の高い貴族様は、溜まったモンをどうやって処理してんのかなって。まさか、自分の手でシコったりなんかしねえよなって」

 

「な……ッ、変態、か……!」

 

「ああ、そうかもな。自分で慰める姿なんて想像もつかないくらい、お前は綺麗だったからさ。……だから、俺がお前にオナニーのやり方教えてやろうかって、ずっと考えてたんだよ」

 

 

 カイルは獰猛に笑い、握りしめた肉竿を扱く速度を速めた。

 

 

「んっ……ぅぅ……」

 

「ニーシャ。……顔、熟れたリンゴみてぇに真っ赤だぜ」

 

「うるさい……見るな……! その目でボクを……見るなァ!」

 

 

 ニーシャは腕で顔を隠そうとしたが、拘束されたままではそれも叶わない。

 仕方なく目をきつく閉じる。

 だが視覚を遮断した分、他の感覚が嫌なほど鋭敏になった。

 カイルの荒い息遣い。

 汗と革の匂い。

 そして、下腹部に押し当てられている、硬く、脈打つほどに熱い「雄の証拠」。

 

 

(こいつの……こんなに、硬くなって……)

 

 

 天才の脳裏に、不本意な解析結果が浮かんでしまう。

 素肌に直接押し当てられるその熱は、明らかにニーシャへ対する直情的な興奮の証だった。

 

 確かに、サイズだけで言えば、かつて経験したモーブルのような大人のそれには遠く及ばない。

 未成熟で、可愛らしいとすら言える大きさだ。

 だが、その質量に込められた熱量と硬度は、紛れもなく「雄」のものだった。

 

 小さいからこそ、リアルだ。

 モーブル以外のモノが中にねじ込まれ、内側を暴れ回ったらどうなってしまうのか。

 未知への恐怖と、ガスによって増幅された背徳的な期待感が、頭の中でぐちゃぐちゃに混ざり合い、理性を溶かしていく。

 

 

「……なぁ、ニーシャ……そろそろ、いいよな?」

 

 

 カイルが顔を上げ、熱に濡れた瞳でニーシャを見下ろした。

 

 

「俺……お前が欲しい」

 

 

 直球すぎる言葉。

 普段なら「反吐が出る」と一蹴するはずの台詞が、今は胸の奥を激しく揺さぶり、熱くさせる。

 ニーシャは潤んだ瞳をうっすらと開き、目の前の男を睨みつけた――つもりだったが、それはただの誘うような上目遣いにしかならなかった。

 

 

「お、覚えてろよ……カイル……! ここから出たら、絶対に……黒焦げにしてやるからな……!」

 

 

 それが、ニーシャ・オブライエン精一杯の、降伏宣言だった。

 

 

「へへっ……ありがとな。……愛してるぜ、相棒……」

 

 

 カイルはニカっと笑うと、ズボンを完全に脱ぎ捨て、自身のモノを露出させた。

 抵抗はもう、なかった。

 剥き出しの肌に冷たい空気が触れるが、すぐにカイルの熱い体温がそれを覆い隠した。

 

 準備運動などという、丁寧な気遣いはなかった。

 あるのは、己の繁殖本能と、溢れ出す熱量のみ。

 

 

「ニーシャ。……入れるぞ」

 

 

 確認は、形式だけだった。

 カイルは腰を沈め、一気にその楔を打ち込んだ。

 

 

「ぎぃっ――!?」

 

 

 ニーシャの喉から、声にならない絶叫が漏れた。

 裂けるような鋭利な痛みと、無理やりこじ開けられ、埋め尽くされる圧迫感。

 内臓の位置がずれるのではないかというほどの暴力的な侵入感に、目の前がチカチカと明滅する。

 

 

「ぐっ……ぅぅ……! き、きつ……ぃ……!」

 

「はぁ、はぁ……! 締め付けがすげぇ……! 挿れただけでイキそうだぜ……!」

 

 

 カイルもまた、苦悶と快楽が入り混じった表情で動きを止めていた。

 額から玉のような汗が滴り落ち、ニーシャの頬を濡らす。

 密着した二人の胸板が激しく上下し、早鐘を打つ心臓の音が重なり合って一つになる。

 

 

(痛い……痛いのに……なんだ、この熱さは……)

 

 

 ニーシャは必死に呼吸を整えようとしたが、吸い込む空気は甘い桃色の煙だけ。

 媚薬成分を含んだガスが肺を満たし、血液に乗って全身を駆け巡る。

 その熱が、下腹部の痛みを徐々に、とろけるような疼きへと変質させていく。

 

 少しずつ、カイルが腰を動かし始めた。

 最初はゆっくりと。

 まるで、様子を伺うように。

 あるいは、互いの形を確かめ合うように。

 

 ぬちゃ……ぐちゅっ……。

 

 粘膜が擦れ合う、湿った音が鼓膜を叩く。

 ニーシャの身体がビクリと跳ねた。

 

 

「ん、あ……っ! や、動く……な……っ!」

 

「無理だ……。こんなに熱くて、中がウネウネ吸い付いてくるんだぞ……我慢できるわけねぇだろ……ッ!」

 

 

 カイルの呼吸が荒くなる。

 理性のタガが外れる音が聞こえた気がした。

 カイルはニーシャの腰をガシリと掴むと、一度大きく引き抜き、そして勢いよく打ち付けた。

 

 ズプンッ!!

 

 

「あぎっ!? ふ、ふあぁッ!♡♡♡」

 

 

 深い。

 さっきよりも深く、鋭く、最奥を抉られた。

 ニーシャの思考が白く弾ける。

 

 

「んぁ、ぁっ……!♡ カイル、だめ、そこ……っ!♡」

 

「ダメじゃねえよ。ここ抉ると、内壁がキュッて締まるな……。お前、ここが好きなのか?」

 

 

 カイルの律動は、すぐに加速していった。

 遠慮も手加減もない。

 ただひたすらに、目の前の「雌」を貪り尽くそうとする、純粋で暴力的なピストン運動。

 

 パン、パン、パンッ!!

 

 肉と肉がぶつかり合う音が、卑猥なリズムを刻んで部屋中に響き渡る。

 カイルの硬く熱い楔が、ニーシャの中を容赦なく出入りし、敏感な粘膜を擦り上げる。

 

 

「ひ、あ、うぅッ!♡♡ んくッ、ふぁぁ……!♡♡」

 

 

 苦痛はいつしか消え去っていた。

 代わりに押し寄せてきたのは、脳髄を焼き切るような快楽の奔流。

 突き上げられるたびに、背骨に電流が走り、視界がチカチカと明滅する。

 

 

(おかしい……ボクは男だぞ……! こんなこと……感じるわけが……!)

 

 

 理性では否定している。

 だが、身体は正直だった。

 カイルに打ち付けられるたびに、ニーシャの内壁は喜びの悲鳴を上げるように収縮し、彼を強く締め付けて離さない。

 ガスの効果で感度が何倍にも跳ね上がっているのか、あるいはカイルとの相性が異常なまでに良すぎるのか。

 どちらにせよ、ニーシャはもう、この快楽の濁流から逃れることはできなかった。

 

 

「カイル……!♡♡ カイルッ、んあぁッ!♡♡ もっと……!♡♡」

 

 

 自分の口から出ているとは思えないような、甘く淫らなねだり声が漏れる。

 それを聞いたカイルの動きが、さらに激しくなった。

 

 

「ははっ、天才サマが涎たらしてねだるなんてよ……。あぁ、いいぜ。望み通り、おかしくなるまで突いてやるよ……!」

 

 

 ぐちゅ、ぐぽっ、ずぷぅッ……!

 

 結合部から溢れ出る愛液と、擦れ合う粘膜が奏でる水音が、いやらしく響く。

 桃色の煙の中で、二つの影は一つに溶け合い、離れ、また激しく混ざり合う。

 汗と精液と、雄の匂いが充満する密室。

 そこはもう、ただの交尾の場と化していた。

 

 カイルはもう、理性など欠片も残っていなかった。

 ただ目の前の「獲物」を貪り、自分のすべてを注ぎ込むことだけを考えていた。

 ニーシャの細い腰を掴み、獣のように腰を打ち付ける。

 一度突くたびに、ニーシャの華奢な身体が揺れ、綺麗な金髪が乱れる。

 その姿がたまらなく煽情的で、カイルの暴走に拍車をかける。

 

 

「いい声だ……もっと鳴けよ、ニーシャ……! 俺の名前呼んで、イキ顔見せてみろ!」

 

 

 カイルはニーシャの足を自分の肩に担ぎ上げ、さらに深く侵入できるように体勢を変えた。

 恥ずかしいほど大きく股を開かされ、カイルの顔が目の前に迫る。

 

 

「ひゃっ……!?♡ あ、足、そんな……恥ずかし……ッ!♡」

 

「恥ずかしがることねえよ。ほら見ろ、入り口がヒクヒクして俺のを咥え込んでる。……口では嫌がっても、下の口は正直だな?」

 

 

 カイルはニヤリと笑うと、腰をグラインドさせながら、ニーシャの中にある「スイッチ」を探り当てた。

 前立腺。

 男性における性感の核。

 

 グリッ。

 

 

「――ッ!? ひぃッ!?♡♡♡」

 

 

 そこを擦られた瞬間、ニーシャの身体が弓なりに反り、目が見開かれた。

 声にならない悲鳴。

 頭のてっぺんから爪先まで、雷に打たれたような衝撃が走る。

 

 

「ここか……? ここが良いのか? ここ擦ると、中がギュウギュウ締まるな……可愛いぜ、ニーシャ」

 

「や、やめ……そこ、だめぇッ!♡ おかしくなる……!♡♡ 壊れちゃうぅッ!♡♡♡」

 

「壊れちまえよ。お前の思考回路(なか)、全部俺で埋めてやるからさ……!」

 

 

 カイルは執拗にそこを攻め立てた。

 突くたびに、抉るたびに、擦るたびに。

 ニーシャの理性が、プライドが、自制心が、音を立てて崩壊していく。

 

 ぐちゅん、ずぷ、ぐりゅッ!

 

 

「あ、あ、あぁッ!♡♡ そこ……!♡♡ 深いッ、深いよぉッ!♡♡ んあぁッ!♡♡」

 

「奥まで……! 全部、入れてやる……! 俺の全部を、お前の深ぇところに……!」

 

 

 パンパンパンパンッ!!

 

 激しすぎるピストン。

 ニーシャの身体はカイルのリズムに合わせて揺さぶられ、快楽の海に溺れていく。

 もう、自分が誰なのか、ここがどこなのかも分からない。

 分かるのは、カイルの熱さと、突き上げてくる衝撃だけ。

 もっと欲しい。もっと強く。もっと深く。

 そんな浅ましい獣の本能だけが、ニーシャを支配していた。

 

 最奥を突かれた瞬間、ニーシャの眼前で火花が散った。

 限界だった。

 高まりきった快感が臨界点を超え、白濁した意識の中で、ただ「イく」ことだけを渇望する。

 

 

「い、く……ッ!♡♡ カイル、だめ、いくぅッ!!♡♡ もう、むりぃッ!!♡♡」

 

「俺も……出すぞッ! ニーシャッ!! おまんこ(ナカ)に出すぞ、受け取れぇッ!!」

 

 

 カイルが最後の一突きを繰り出し、最深部で、動きを止めた。

 ニーシャの身体を抱きしめ、渾身の力を込めて腰を押し付ける。

 

 ビュッ! ビュルッ! ドクンッ!!

 

 カイルの雄が脈打ち、熱い奔流がニーシャの中に解き放たれる。

 大量の精液が、白濁した熱となって、ニーシャの内壁に叩きつけられる。

 

 

「んぐぅッ!?♡♡♡ あ、あぁぁぁぁぁッ!!♡♡♡♡♡」

 

 

 同時に、ニーシャ自身も白濁した欲望を吐き出した。

 カイルの腹を汚し、二人の体液が混ざり合う。

 絶頂の余韻。

 カイルは出し切るまで腰を押し付け続け、ニーシャの中を自身の種で満たしていく。

 

 ドクドク、と注がれる感覚。

 お腹の中が熱い。

 満たされている。

 その事実に、ニーシャは得も言われぬ幸福感と、背徳的な充足感を感じていた。

 

 

「はぁ、ぁ……っ、ん……っ……♡」

 

 

 やがて、カイルがゆっくりと身体を離した。

 ポン、という卑猥な音と共に結合が解け、溢れた白濁液が太腿を伝って床に零れ落ちる。

 

 ニーシャは虚ろな目で天井を見上げ、浅い呼吸を繰り返していた。

 全身が汗で濡れ、四肢が痙攣している。

 だが、その表情はどこか蕩けており、カイルに向けられた瞳は、情事の熱を孕んだまま甘く潤んでいた。

 

 

「……へへ、いいザマだ……」

 

 

 カイルは満足げに笑うと、震える手でニーシャの頬に触れた。

 その指先は優しく、先ほどまでの獣のような激しさが嘘のようだ。

 

 

「昔から、お前のそういう『冷徹な天才サマ』って面(ツラ)……大っ嫌いだったのにな。……でも、本当のお前は、不器用で、すげぇ……」

 

 

 囁くようになにかを言いかけた、その時。

 ふつり、とカイルの身体から力が抜けた。

 

 ドサッ。

 

 糸が切れたように意識を手放し、ニーシャの胸元に崩れ落ちる。

 すぐに規則正しい、泥のような寝息が聞こえ始めた。

 ガスによる興奮と連戦の疲労で、肉体の限界を超えていたらしい。

 

 

「……っ、最後まで……勝手なヤツだ……」

 

 

 ニーシャはカイルの重たい頭を乱暴に突き放そうとしたが――結局、その手が動くことはなかった。

 

 

 ズズズズズンッ……!

 

 その時、部屋を揺るがすような重低音が響いた。

 入り口を塞いでいた分厚い石扉が、ゆっくりと上昇していく。

 同時に、充満していた桃色の煙も、換気扇が回ったかのようにスゥッと引いていった。

 

 どうやら、「条件」は無事にクリアされたらしい。

 

 

《ヒュ~ウ! お熱いこって! まさか天才サマが、あんな淫らな声で鳴くとはなぁ! 良いもん見せてもらったぜ!》

 

 

 エクセリオンの下卑た口笛が脳内に響く。

 ニーシャはカイルの重たい頭をそっと床に下ろすと、ふらつく足取りで立ち上がり、乱れたローブを直した。

 顔はまだ赤い。だが、その瞳にはいつもの冷徹な光が戻りつつあった。

 

 

「……黙れ。記憶を消せ。今すぐにだ。さもなくば研究室で解体して、魔導具の触媒にするぞ」

 

《お~こわ! だが無理だなぁ! 俺様は『絶対記憶』の呪い持ちだ! 天才サマの可愛い『アンアン声』は、俺様の魂(ソウル)に永遠に刻み込まれちまったよ!》

 

「…………」

 

 

 ニーシャは無言で杖を構え、致死量の魔力を切っ先に集束させた。

 パチパチと青白い火花が散り、本気の殺気が部屋の温度を下げる。

 

 

《わ、悪かった! 冗談だ! やめろ、ガチのやつはやめろ!》

 

「フン……」

 

 

 ニーシャは鼻を鳴らして魔力を霧散させると、踵を返して部屋の中央にある石の台座へと歩み寄った。

 目的は一つ。

 この騒動の元凶であり、唯一にして最大の戦利品である『星屑の欠片』だ。

 あれさえ手に入れば、今日の理不尽な苦労も、失ったプライドも、多少は報われるはずだ。

 

 

「……さて、とっとと回収して帰るか」

 

 

 ニーシャは期待を込めて台座の窪みを覗き込んだ。

 だが。

 

 

「……は?」

 

 

 そこにあったのは、ただの石ころだった。

 あの深遠なる蒼(あお)の輝きは完全に失われ、道端に転がっているような無惨な灰色に変色している。

 魔力反応もゼロ。

 ただの燃え尽きた炭だ。

 

 

「お、おい……冗談だろ……こんな……」

 

 

 ニーシャは震える手で石を拾い上げようとしたが、指先が触れた瞬間、ボロボロと砂のように崩れ落ちてしまった。

 

 

《おーおー! まーそうなるわなぁ! あのトラップは宝石の膨大な魔力をエネルギー源にして発動するんだよ! つまり、テメェらがあのピンク空間でイチャイチャするために、国宝級の宝石一個分の魔力を使い切っちまったってわけだ!》

 

「な、なんだと……!?」

 

 

 ニーシャは膝から崩れ落ちそうになった。

 数千分の一の確率で引き当てた奇跡。

 それが、まさかこんな馬鹿げたトラップの燃料として消費されたなど。

 

 

 ニーシャは膝から崩れ落ちそうになった。

 数千分の一の確率で引き当てた奇跡。

 それが、まさかこんな馬鹿げたトラップの燃料として消費されたなど。

 

 

「ふ、ふざけるな……! ボクの苦労は……ボクの貞操は、一体なんだったんだ……!」

 

《高い勉強代だったな! ま、命があっただけ儲けもんだろ?》

 

「……くっ、認めるものか! まだだ! まだ時間はある! リポップを待って、もう一度周回すれば――」

 

 

 ニーシャは執念の炎を燃やし、杖を握りしめようとした。

 だが、その視線の端に、床で大の字になって眠るカイルの姿が映った。

 

 無防備な寝顔。

 満足げで、どこか幼い寝息。

 その身体には無数の傷があり、そして何より、ニーシャを守るために酷使された疲労の色が濃く滲んでいた。

 

 

「…………」

 

 

 ニーシャは小さく息を吐き、握りかけた杖の力を緩めた。

 このまま放置して周回を再開すれば、カイルは間違いなく魔物の餌食だ。

 

 

「……はぁ。今回だけは、貸しにしておいてやる」

 

 

 ニーシャは諦めたように呟くと、眠るカイルの元へ歩み寄り、短く詠唱した。

 

 

「『浮遊(レビテーション)』」

 

 

 ふわり、とカイルの巨体が宙に浮く。

 ニーシャは杖を振り、見えない糸で引くようにカイルの体を自身の背後に固定した。

 

 

《お? なんだ天才サマ、意外と情け深いじゃねえか》

 

「心外だな。これは管理責任の問題だ。コイツが他所で『ボクがあんな声で鳴いた』なんて囀(さえず)ってみろ、飼い主であるボクの品位が疑われる。……躾(しつけ)が行き届くまで、ボクの手元で管理するのが一番合理的だろう?」

 

《素直じゃねえなぁ。ま、そういうことにしておいてやるよ》

 

「……ふん、まったく。昔からボクに負担ばかりかけさせやがって。……この貸しは、高級店の特上肉で返済してもらうからな」

 

 

 最後の言葉は、憎まれ口というにはあまりにも優しく響いた。

 ニーシャは宙に浮くカイルを従え、ゆっくりと出口を目指す。

 手の中には何もない。

 だが、その小さな背中は、宝石よりも価値のある「相棒」という名の温もりを、確かに背負っていた。

 

 

 

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