※この作品はR-18です。

モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~   作:とけそうだら

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第四十一話 ラースと『信用』のドーナッツ①

 魔法実験の暴走により、天才魔法使いニーシャが猫耳と尻尾を持つ半獣と化してしまった怪事件――通称『ニーシャ猫耳事件』。

 

 獣の本能に呑まれ暴走する彼を救うため、モーブルは精神世界への『潜行』を決行した。

 その際、現実世界(そと)から命綱を支え続けたのが魔族の少年ラースだった。

 

 もし彼の献身的なサポートと、強張った心に寄り添う優しさがなければ、ニーシャの精神は使い魔ミッドナイトと完全に同化し、二度と人の心を取り戻せなかっただろう。

 その「特級の功績」に報いるべく、モーブルはラースにとっておきの三連休を与えた。

 

 事件から一週間が経過し、騒動の余波がようやく凪いだころのことだ。

 

 

 その三連休の、初日の朝。

 ラースはいつものように早起きし、体に染み付いた習慣でホウキを手に取った。

 さっそく店の床を掃こうとした、そのときだ。

 

 

「おい、なにをしている」

 

 

 背後から主人の低い声が降ってきた。

 

 

「あ、旦那様……お掃除です。早く開店準備をしないと、お客様が——」

 

 

 だが、ホウキを動かそうとした手は、荒々しく掴み止められた。

 

 

「――チッ。聞いておらんかったのか。貴様は今日から『有給休暇』だと、先週言っただろうが」

 

「あ……ゆ、ゆうきゅう……?」

 

 

 不機嫌な舌打ちと共に、ラースの手から命綱のごときホウキがひったくられる。

 呆然とするラースを放置して、主人は忙しなく開店準備を進めていく。

 重い木箱をひとりで動かし、商品の陳列を始めるその広い背中に、ラースは店の隅から恐る恐る声をかけた。

 銀髪の合間から片目だけを覗かせ、縋るように主人の背を見つめる。

 

 

「あ、あの……旦那様がお一人で働いておられるのに、奴隷の僕だけのうのうと休むなんて、天罰が下ります……」

 

「たわけ。わしが休めと言っているんだ。天罰など下らん、さっさと奥に引っ込んでいろ」

 

「でも……僕はお役に立つのが役目です! しかも『有給』って、働かないのにお金がもらえるということですよね……? 奴隷の身でそんな都合のいい話、絶対に何か恐ろしい罠です……っ!」

 

 

 ラースの月給は銅貨十枚。

 子供の小遣いにも満たない額だが、本来なら奴隷に報酬など与えられない。

 それを思えば、もらえるだけでも破格なのだ。

 

 

「バカモン! どこの主人が自分の奴隷に罠を張るんだ! 貴様はわしのことを鬼か悪魔とでも思っとるのか!」

 

「うう……で、でも、働かない奴隷なんてただの飯食い虫です……っ。まさか、のんびり太らせてから売り飛ばすおつもりですか!? ど、どうか見捨てないでください……!」

 

「——ええい、鬱陶しい!!」

 

 

 飛躍しすぎるラースの妄想に、ついにモーブルの堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「主人が休めと言ったら休むのが奴隷の義務だろうが! 口答えする暇があったら、とっとと視界から消えろ! 今日はわし一人で店を切り盛りせんといかんのだ! 貴様に構っておられんくらい忙しい!」

 

「ひっ……!」

 

 

 本気の怒声に肩を震わせ、ラースの黒い尻尾が怯えたように脚の間へと丸く引き込まれた。

 それでもその場から動こうとしない煮え切らない態度に、業を煮やしたのか。

 モーブルはズカズカと歩み寄り、ラースの細い手首を乱暴に掴み取った。

 

 そして、空いたもう片方の掌へ、ジャラリと冷たい金属の束をねじ込んだ。

 ずしり、と重い。

 銀貨、十枚。

 それを見た瞬間、ラースは言葉を失った。

 

 

「ひゃっ……!? だ、旦那様……これは……!」

 

「何を驚いている。銀貨十枚、きっちりだ。ニーシャ坊っちゃんの件で、報酬を出すと言っただろう」

 

「で、ですが……こんな大金……!」

 

「いいか、ラース。これは業務命令だ」

 

 

 驚きに目を見開くラースの指を、モーブルは両手で無理やり握り込ませると、吐き捨てるように言い放った。

 

 

「何か買うもよし、街で遊び呆けるもよし……旨い飯でも、くだらん玩具でも、なんなら女を買って抱くでもいい。とにかく金を使って、腹の底の欲を吐き出してこい。それがこの三日間の、貴様の『仕事』だ」

 

「よ、欲望……ですか……!?」

 

「そうだ。三日後に財布が空になっていなかったら――晩飯抜きだからな!」

 

 

 言い捨てるなり、モーブルは踵を返す。

 逃げるように仕事へと戻っていくその背中は、「これ以上の問答は受け付けん」と雄弁に語っていた。

 

 ラースは掌に残る銀貨の冷たさを握りしめ、呆然と立ち尽くした。

 二年間の付き合いだから、分かる。

 これ以上何か言えば、主人は本気で雷を落とすだろう。

 

 

(お休み……? 有給……?)

 

 

 ぎゅっと、銀貨を握る手に力がこもる。

 

 

(僕だけの……僕だけが自由に使える、時間とお金……?)

 

 

 じわり、と。

 主人の言葉を頭の中で反芻するたび、ラースの胸の奥で、小さな火種のような期待が熱を帯びていった。

 脚の間に収まっていた黒い尻尾が、ゆっくりと、おずおずと、外へ這い出てくる。

 

 休みだ。

 誰の命令もなく、誰に急かされることもない、自分だけの時間。

 

 『愛の皿亭』のドーナッツを、口に詰め込めるだけ頬張る。

 本屋で分厚い冒険小説を、表紙が擦り切れるまで吟味して買い込む。

 街の子どもたちが宝物のように抱えていた、憧れの玩具を、自分のために選んでみる。

 

 これまでは指をくわえ、遠くから眺めるしかなかった光景が、今は手を伸ばせば届く場所にある。

 奴隷にとって最大の禁忌であり、同時に最大の夢だった「自由」の欠片が、掌の中にある。

 

 黒い尻尾が、くるりと弧を描いてはずんだ。

 選択肢は、無限にあるように思えた。

 

 

 ――だが結局。

 休暇の一日目、ラースが店の敷居を跨いで外へ出ることはなかった。

 

 外の世界には無限の選択肢が広がっていたが、ラースにとって一番気にかかるのは「たった一人で店を切り盛りする主人の背中」だったのだ。

 

 幸いにして、この日は朝からポツポツと冷たい雨が降り出し、客足はまばらだった。

 ラースは二階へと続く階段の中腹に身を潜め、手すりの隙間からこっそりと一階の様子を窺っていた。

 もし客が押し寄せて主人が忙しくなったら、すぐさま飛び出してヘルプに入るつもりだったのだ。

 有給休暇だろうが関係ない。

 いざとなれば「体が勝手に!」と言い訳をして突撃する覚悟を決めていた。

 

 しかし、主人は少ない客に余裕を持って対応するだけで済んでいた。

 ラースの出番はない。

 それでも、モーブルは決して暇を持て余すようなことはしなかった。

 客足が途絶えた時間を使い、普段は手の回らない棚の奥の清掃や、商品の細かな手入れ、陳列棚の修繕など、黙々と裏方の作業をこなしていく。

 

 その無駄のない動きと、商品を慈しむように扱う主人の姿に、ラースは階段に座り込んだまま見入っていた。

 

 

(旦那様は、誰が見ていなくても、あんなに丁寧にお仕事をされているんだ……。あの道具の手入れの仕方、今度真似してみよう)

 

 

 それはラースにとって、どんな冒険小説を読むよりも面白く、価値のある生きた勉強だった。

 銀貨十枚はお守りのように財布の奥底へしまい込んだまま。

 

 結局、自由を与えられた奴隷の休日は、尊敬する主人の働きぶりを階段の陰から忠犬のようにじっと見守り続けるだけで、静かに、そして密かに充実したまま終わっていくのだった。

 

 

 

 休暇の二日目。

 時刻は昼過ぎ。

 一階の店舗は、いつも以上に押し寄せた冒険者や買い物客たちでごった返し、むせ返るような熱気と喧騒に包まれていた。

 ラースは二階へと続く階段の踊り場から、息を潜めて下の様子を見つめていた。

 

 視線の先には、臨時雇いのシルヴィオとルチオへ矢継ぎ早に指示を飛ばしながら、自ら重い木箱を運ぶモーブルの姿があった。

 だが、陳列棚の最下段に回復ポーションの小瓶を押し込もうと身を屈めた、その瞬間だ。

 

 

「――痛ッ、たたた……」

 

 

 恰幅の良い体が唐突にビクンと強張り、モーブルが片手でトントンと腰のあたりを叩いた。

 顔をしかめ、あからさまに苦しそうな仕草を見せる。

 

 

(だ、旦那様……っ! 腰を……!)

 

 

 じっとしていられなかった。

 主人があんなに痛そうに泥臭く立ち働いているのに、本来その雑用をこなすべき奴隷の自分が、のうのうと休んでいるなんて。

 罪悪感と心配で胸が押し潰されそうになり、ラースは壁に掛けてあった予備のエプロンを引っ掴んだ。

 

 

「だ、旦那様! 僕が代わり――」

 

 

 居ても立っても居られず、反射的に階段を駆け下りようとした。

 だが、その声が紡がれ切るより早く。

 

 腰を押さえたままのモーブルが、ギロリと、鋭い視線を階段の上へ突き刺してきた。

 

 

「――ヒッ!」

 

 

 言葉は、ない。

 だがその眼光は、どんな怒号よりも雄弁だった。

 

 

『来るな。休めと言ったのが分からんのか、大人しく引っ込んでいろ』

 

 

 絶対零度の拒絶。

 

 ラースは喉の奥をヒュッと鳴らし、踏み出しかけた足をピタリと止める。

 持ち上がりかけていた黒い尻尾が、しゅんと萎れて床すれすれまで沈んだ。

 無言の圧力に弾かれるように、彼は逃げるようにして踵を返した。

 自分に許された唯一の聖域――屋根裏部屋へと。

 

 軋むベッドに腰を下ろしても、ラースの心臓はまだドクドクと鳴っていた。

 

 

(旦那様、すごく痛そうだった……僕が手伝えば、少しは楽になるのに……)

 

 

 握りしめたままのエプロンが、くしゃくしゃに皺を寄せている。

 主人の命令には逆らえない。

 店には立てない。

 けれど、あの辛そうな背中を見た後で、ただベッドに寝転がって「有意義なお休み」を満喫するなんて、到底できるわけがなかった。

 

 

(ただ休むだけなんて、絶対に申し訳ない……。せめて、せめて何か……次にお店に出たとき、もっと旦那様のお役に立てるようにならないと……!)

 

 

 ならばせめて、頭だけでも働かせよう。

 心を店に置こう。

 ラースは弾かれたように立ち上がると、主人の蔵書から借り出していた本を机に広げた。

 

 食い入るように、来る日も来る日もめくり続けたページを開く。

 商売の心得、錬金術の理、古代語で綴られた薬草の効能書き。

 黄ばんだ紙面を埋め尽くしているのは、あの大きな手で書き込まれたモーブルの力強い筆跡だ。

 ラースはそれにすがるように目を落とし、必死に知識を頭へと叩き込み始めた。

 

 

『感情は取引を曇らせる最大の不良債権である』

『祈る前に準備しろ。準備の後に覚悟しろ』

 

 

 あるいは、乱暴な走り書きでこんな言葉も記されていた。

 

 

『金貨の重さは天秤で量れるが、信用の重さは量れない。だからこそ絶対に安売りするな』

 

 

 余白にびっしりと書き込まれたその言葉の数々は、ただのメモではない。

 『レベル師』という類稀なるスキルを持ちながらも決してそれに甘んじず、あえて泥臭い道を選ぶ主人の――血の通った“商人の魂”そのものだった。

 

 

「そういえば僕、字……読めるようになったんだなぁ……」

 

 

 本に視線を落としながら、ラースはふと感慨に耽った。

 

 魔族は、生まれてすぐに奴隷としての宿命を背負わされる。

 過酷な労働を強いられる彼らに、まともな教育を受ける機会など与えられない。

 そのため、文字の読み書きができる魔族など、この世界には数えるほどしかいない。

 

 本来なら、ラースも無知なまま一生、店の裏で荷運びと掃除だけをさせられて終わるはずだった。

 ましてや、世間から忌み嫌われる魔族である。

 店先に立たせ、商売に携わらせることなど、偏見の根強いこの世界においては不利益でしかない。

 客の信用を失うどころか、いわれのない反感を買いかねない禁忌なのだ。

 

 けれどモーブルは、ラースを引き取って一年が過ぎた頃から、仕事の合間を縫って彼に読み書きと計算を教え始めた。

 世間の目など鼻で笑い飛ばし、ラースをただの所有物ではなく「商人見習い」として扱ってくれたのだ。

 小さな手にペンを握らせ、複雑な帳簿の読み方を教え、時には重要な商談の場にさえ同席させた。

 

 『いつか独り立ちできるように』――

 口にこそ出さないが、その不器用で、あまりにも大きな親心が、インクの染み一つひとつから痛いほど伝わってくる。

 

 ラースは震える指先で、主人の文字をなぞった。

 胸の奥が熱くなる。

 自分を忌むべき魔族としてではなく、一人の「ラース」として導いてくれるこの恩義に、何としても報いたい。

 いつかこの偉大な背中に並び立てる商人になりたい。

 ただ守られるだけの奴隷ではなく、言葉と手腕で、主人の隣に立つ資格を己の手で掴み取りたい。

 

 それは、魔族であり奴隷という絶望の境遇に生まれたラースが、人生で初めて抱いた、唯一にして最大の「夢」だった。

 

 古びた紙からは油と黴の匂いが、不思議と心を安らげる主人の残り香となって漂っている。

 カサリ、と乾いたページをめくる音が、静寂な屋根裏に吸い込まれていく。

 傾斜した天井のすぐ下、狭い部屋で知識を貪るこの時間だけが、自分がいま、誰に強制されるでもなく、己の意思で未来を紡いでいる――「自由」であることの、唯一の証だった。

 

 銀貨十枚は、三日が終わっても財布の底で眠ったままだった。

 主人から与えられた休暇の使い道として、およそ褒められたものではないだろう。

 それでもラースにとっては、これ以上ないほど満ち足りた三日間だった。

 

 

◆

 

 あの特別な休暇から、一月が過ぎた。

 

 忙しない商売を終えたモーブル商会に夜の帳が降りる頃。

 ラースは主人の寝室で、モーブルとふたりきりの時間を過ごしていた。

 

 

「……ジュルッ、ヂュプッ、んむ……ッ♡」

 

 

 仄暗い密室には、ひどく卑猥な水音だけが満ちている。

 ラースは寝台の脇に深々と膝をつき、主人の股間へと顔を埋めていた。

 

 モーブルの太く逞しい雄を口いっぱいに含み、舌を絡ませ、十一歳という幼体のすべてを使って懸命な奉仕を捧げている。

 

 昼間の店員としての労働とは異なる、じっとりと熱を帯びた時間――。

 それは、モーブルに買われた奴隷としての、夜の務めであった。

 

 しばらくの間、押し付けられる快感だけに意識を沈めていたモーブルだったが、ふと、胸の奥に引っかかっていた小さな違和感の正体に思い至る。

 

 

(……そういえば、ここ最近の忙しさですっかり頭から抜けておったが。あの時こいつにくれてやった銀貨十枚……結局何に化けたのか、まだ報告を聞いておらんな)

 

「……おい、ラース。貴様に聞いておかねばならんことがある」

 

 

 不意に、頭上から低く重い声が降ってきた。

 ラースは先端を喉の奥に含んだまま、縋るような上目遣いで主人を見上げる。

 快楽に昂っているはずのモーブルが、なぜか眉間に深い皺を刻み、険しい顔で自分を見下ろしていた。

 なにか、不快な思いをさせてしまったのだろうか。

 

 

「ん、んぅ……?」

 

 

 不安に駆られ、口を離そうと身を引きかけた瞬間。

 モーブルの大きな掌が、ラースの頭部に生える羊のような角を乱暴に鷲掴んだ。

 

 

「誰がやめろと言った。そのまま続けろ」

 

「んぶっ……ッ! んぐ、ぁひ……ご、ごめんなぁい……ッ、ぢゅぷっ、じゅるるる……ッ♡」

 

 

 有無を言わさぬ力で押し付けられ、ラースは再び主人の熱に埋没する。

 

 

「……ふぅ。そのまま聞け。先日の特別休暇の件だ。三日間、貴様は屋根裏に籠もって、わしの本を読み耽って過ごしておったそうだな」

 

「じゅぶ……れろ、れろ……は、はひ……おやふみ、いららき……あり、がほう……ごじゃいまひた……んッ、じゅぼっ♡」

 

「礼などいらんと言ったはずだ。……問題は、別の話だ」

 

 

 モーブルは一度、短く息を吐き出す。

 忙しさに押し流され、危うく埋もれかけていた記憶を、ひとつひとつ掘り起こすように言葉を紡いだ。

 

 

「特別休暇の報酬として、わしは貴様に銀貨十枚を渡したな。あれから――あの金を、何に使った?」

 

 

 問いかけられた瞬間、ラースの喉がビクリと収縮した。

 敏感な裏筋を舌で刺激しながら、モーブルは深々と呆れたように鼻を鳴らす。

 

 

「その反応……なるほど、まだ一枚も動いておらんと見える。……まったく、貴様というやつは。あれほど『金は使え』と言っておいたはずだぞ」

 

「んぐっ、ふ、ふぅ……! だ、だんなざまぁ……ッ! もっ、もっらいなく、て……ッ♡」

 

 

 太い剛直を咥え込んだまま、ラースは溢れる涎を糸引かせ、必死に弁解を試みる。

 だが、モーブルは聞く耳を持たなかった。空いた大きな掌が、獲物を定めるようにゆっくりとラースの腰へ伸びる。

 

 

「言い訳は聞いとらん。約束ひとつ守れん商人見習いに、預けられる勘定は限られるぞ」

 

 

 モーブルの声音が、低く冷たく落ちる。

 

 

「いいかラース。信用ってのは、金貨と違って一度減ったら簡単には戻らん。今回はひとつ、わしの中での“信用勘定”を減らしたと思え」

 

「……っ、も、申し訳ありません……!」

 

 

 これ以上は耐えきれず、ラースは慌ててペニスから口を離し、荒い息を吐きながら深く頭を下げた。

 そのひたむきな唇からは、銀の糸のように艶やかな唾液が滴り落ちている。

 モーブルは自身の雄から垂れるその湿り気を無骨な中指で絡め取ると、容赦なくラースの背後へと手を伸ばした。

 

 

「馬鹿者が。金は血液と同じだ。巡らせてこそ価値がある。天下の回りものだと何度言えばわかる。んん〜?」

 

 

 ――ヌチュ、じゅちゅぅうう。

 

 みだらな水音とともに、ラース自身の唾液で濡らされただけのアヌスへ、太い中指が無造作にねじ込まれた。

 

 

「あグッ!?♡♡ ひ、ぃ……ッ、ぁ!♡♡」

 

 

 急激な異物感に、ラースはビクンと腰を跳ねさせる。

 だがモーブルの太い腕は獲物を逃がさず、容赦なく第二関節まで一気になぶり埋めさせた。

 

 

「金というモノはな。使わねば淀み、腐り、ただの金属片に成り下がる。……この穴と同じだ。こうして定期的に解して広げてやらねば、いざという時に使い物にならんだろうが」

 

「ふッ、うぅーッ!♡♡ だ、めぇ……指、太いぃ……ッ!♡♡」

 

「黙って咥えろ。それから、きちんと吸え。舌が止まっているぞ。わしひとり満足させられん奴に、客の満足など一生理解できるはずがない」

 

 

 モーブルはさらに腰を突き出し、ラースの狭い喉奥を蹂躙しながら、後ろの孔(あな)を容赦なく掻き回した。

 ――グリッ。

 分厚い肉壁を押し広げ、節くれだった指が最奥の敏感な粘膜を強引に擦り上げる。

 

 

「んんーッ!♡♡♡ ン、んグッ、ぉぉ……ッ!♡♡♡」

 

 

 口腔と直腸、上下の粘膜を同時に激しく侵され、ラースの思考は真っ白に染まっていく。

 涙目で懸命に舌を動かし、主人の雄を慰めようとするが、容赦なく突き上げられる快感の波に顎がガクガクと震え、とうてい制御が効かない。

 

 だが、モーブルの教育はそれだけでは終わらなかった。

 彼の空いたもう一方の手が、ラースの背後――震える尻の隙間から頼りなく垂れ下がる、しなやかな黒い尻尾へと伸びる。

 

 

「貴様は口先だけではわからんようだからな。……金が回る感覚というものを、身体に直接教え込んでやる」

 

 

 モーブルは、震えるラースの尻から伸びる、しなやかな黒い尻尾の根元をガシッと鷲掴みにした。

 

 

「んうッ!?♡♡♡」

 

 

 魔族にとって、そこは第二の性器とも呼べる急所中の急所だ。

 薄い皮膚越しの神経を直接握り潰されるような刺激に、ラースの背筋に電流にも似た強烈な痺れが走る。

 

 

「くくく……いい反応だ。ここを弄られると弱いんだったな」

 

 

 モーブルは凶悪にニヤリと笑うと、握った尻尾を自身の顔へ引き寄せ、その柔らかな先端をねっとりと舐め上げた。

 

 

「あ、んぐ……ッ!♡ だ、だんな……ふぁま……んぅ、そ、こ、は……だめッ!♡」

 

 

 ザラリとした主人の舌の感触が、尻尾の表面を逆撫でる。

 後ろの穴では凶悪な太指が暴れ、口内では主人の剛直がさらに熱を持って膨れ上がる。

 そして、魔族としての急所である尻尾までもが唾液に塗れ、貪られていく。

 三方向からの同時攻撃。

 逃げ場などどこにもない、圧倒的な快楽の奔流。

 

 

「じゅるッ、ちゅぷ……んむ……甘いな、貴様の尻尾は」

 

「ひぃッ!♡ んぐ、ふぅ……!♡ お、おふぁひく、なっちゃひ……まふ……ッ!♡♡」

 

 

 尻尾をしゃぶられ、吸い上げられるたび、ラースの腰がガクンガクンと無様に痙攣し、腸の壁がモーブルの指をきつく、本能的に締め付ける。

 脳髄がどろどろに溶けていくような感覚。

 これ以上責められれば理性が弾け飛び、ただ快楽だけを乞う獣に堕ちてしまうという恐怖と、抗いがたい悦楽。

 

 

「いいか、ラース。商人にとって『物を売る』ことと同じくらい重要なのが、『物を買う』という行為だ」

 

 

 ズチュッ、ズポッ。

 

 卑猥な水音を立てて、太い指がラースの内壁に出入りを繰り返す。

 商売の本質を説く厳格な教えと、下腹部から無慈悲に突き上げられる暴力的な快楽――。

 そのあまりのギャップに、ラースの精神はすでに崩壊寸前だった。

 

 

「身銭を切って、迷い、選ぶ。……自分の財布が痛むとき、人の心がどう震えるか。どんな『甘い言葉』に唆され、どの『急所』を突かれれば、客は我慢できずに財布の紐を緩めてしまうのか」

 

 

 モーブルは指の数を無造作に二本へと増やし、さらに奥深く、柔らかい腸壁をこじ開けるように侵入する。

 

 

「いいか、ラース。客の深層心理(あそこ)を『グリグリ』と抉られたとき、人間がどれほどだらしなく悦ぶか……それを自分の肌で知らねば、客の心など掴めるはずがないだろうが!」

 

「んッ!♡ んぶーッ!♡ わ、ふぁかり……ひグッ!? ぁあッ!♡♡」

 

 

 最も敏感な一点を、硬い爪先でカリリと引っ掻き回された。

 それと同時に、もう一方の手で弄られていた尻尾の付け根を強く噛まれ、脳を直接焼かれるような衝撃が走る。ラースのペニスが激しく跳ね上がり、だらしなく先走りの蜜を溢れさせた。

 

 

「今のオヌシは、金を使うことを恐れて縮こまっておる。それでは商人の器も、こっちの器(あな)も大きくならんぞ」

 

 

 口内に挿入されたモーブルの剛直が、限界を告げるように限界まで膨張し、熱を帯びる。

 射精の時は、すぐそこまで迫っていた。

 

 

「明日、店は休みにする。これは業務命令だ」

 

 

 モーブルがラースの羊の角を乱暴に鷲掴み、腰の動きを爆発的に激しくする。

 ガプッ、ガプッ、と喉の奥が乱暴に鳴らされる。

 

 

「んグ、げボッ、んッ……!♡♡」

 

「明日一日で、その銀貨十枚の使い道を考え、実際に何かを買ってこい。自分のために使うもよし、ドブに捨てるもよし。とにかく『自分の金で選んで買う』という経験を刻み込んでこい。いいな」

 

 

 モーブルの荒々しい呼吸が落ち、指の蹂躙が最高速に達する。

 内壁の最奥、最も弱い一点を執拗に叩き潰されるように突き上げられ、ラースの細い意識は快楽の濁流に完全に飲み込まれていった。

 

 

「それができるまで、店には一歩たりとも入れんからな! 分かったら……イけェッ!!」

 

「ん、ん゛゛ぅううううーーーッ!!♡♡♡♡」

 

 

 ――どぷん、どぴゅるるるるるるっ!!

 

 主人の号令とともに、暴力的なまでの白濁の奔流が、ラースの喉奥深くへと勢いよく叩き込まれる。

 同時に、極限まで責め立てられていたラースの自身もあっけなく限界を迎え、濃い白濁液をシーツの上へぴゅぴゅっと何度も撒き散らして果てた。

 

 

「んぐ、ごクッ……ッ、はぁ、はぁ、はぁ……ッ♡♡♡」

 

 

 精液を飲み干し、ラースが力なく寝台に突っ伏す。

 目尻には涙が浮かび、口元も下半身も、愛液でぐしょ濡れだった。

 

 

「……ふん。口技はまあ、及第点といったところだな」

 

 

 モーブルは満足げに荒い息を整えながら、ちらりとシーツに沈むラースを一瞥した。

 

 

「なにを買ってなにを得るのかせいぜいわしの期待に応えるように励むことだ。さあ、明日の『初めての買い物』に備えてさっさと寝ろ」

 

 

 言いながら、モーブルの太い指が、ラースのしなやかな黒い尻尾の根元を――ぎゅうぅぅぅ……っと、無造作に握りしめた。

 

 

「ひ、ぎィッ!?♡♡♡」

 

 

 ――どぷっ、どぴゅ……びゅるるるるっ……!!

 

 余韻で限界まで過敏になっていた急所を容赦なく「握り潰さ」れ、ラースの身体が弓なりに跳ね上がる。

 もう絞り出すものなど一滴も残っていないはずだというのに、痙攣するペニスがびくびくと痛みにも似た脈を打ち、透明に近い薄い精液を、シーツへと情けなく吐き散らした。

 

 

「ぁ、ああっ……ッ!!♡♡♡ ひ、ぐぅ……ッ♡」

 

 

 糸が切れた操り人形のように、ラースは汗ばんだシーツへと崩れ落ちる。

 指先ひとつ動かせないほどの脱力感。視界が急速に暗転していく。

 けれど、遠のく意識の淵で、ラースは強く強く念じた。

 

 

(明日は……必ず、買い物を……)

 

 

 減らしてしまった主人の「信用勘定」。

 それを取り戻すために、銀貨を使わなければならない。

 

 

(旦那様の、ために……僕は……)

 

 

 最後の使命感だけを胸に抱き、ラースは深い微睡みの底へと沈んでいった。

 

 

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