※この作品はR-18です。

モブおじ精液でレベルアップ!? ~でも好みのショタっ子しか手助けしません!!~   作:とけそうだら

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第六十二話 おしゃべりエルフと古代の『問いかけの箱』⑩

「――はい! 陰謀と借金の話は、今夜のところはここまで!」

 

 ぱん、とネリオが両手を打ち鳴らした。

 張り詰めていた社長室の空気が、その軽快な音に追い払われる。

 

「勝手に区切るな」

 

「続きは次回の会合で、素面の頭で考えましょう。今夜はまず、男爵様から頼まれていた黒檀の箱の謎が無事に解けたこと。そして、三週間にわたる山ゴリさんの不眠不休の大活躍を祝しまして――」

 

 ネリオは芝居がかった仕草で両腕を大きく広げた。

 

「胸と喉を熱くする、盛大な慰労会を始めますよぉ!」

 

「わしの苦労を、酒を飲む口実にするな」

 

「細かいことはさておき――」

 

 ネリオは、机の中央に置かれた細長い酒瓶を指差した。

 

「早くそれを開けてくださいよぉ。せっかく社員が全員帰るまで待ったんですから」

 

「貴様が高い酒を社員へ分けたくなかっただけだろうが」

 

「おや。祝杯を提案したのは山ゴリさんでしょう?」

 

「依頼が一段落したからな。慰労くらいは必要だ」

 

「それなら、ご自分のねぐらで飲めばよかったのでは?」

 

 ネリオが不思議そうに首を傾げる。

 

「ねぐらと言うな。家でも飲めるが――」

 

 モーブルは椅子の背へふんぞり返り、貫禄たっぷりに腹を揺らした。

 

「たまには出資先の会社が、パトロンであるわしをどれほど丁重にもてなすのか、抜き打ちで確認してやろうと思ってな」

 

「……つまり、接待を要求するために来たんですか?」

 

「わしはフォックス広告の出資者の一人だぞ。資金を出してやった大恩人が、わざわざ足を運んでやったのだ」

 

 モーブルは偉そうに、太い指を一本立てた。

 

「酒の一本や二本、美貌の社長による愛想のよい歓待くらいあってもよかろう」

 

「やだなぁ。あたしの接待は別料金ですよぉ」

 

「いくらだ」

 

「特別価格で、金貨十万枚」

 

「高っ! 男爵家の借金を、一晩で全額回収する気か! ここはぼったくり酒場か!」

 

「では、予算不足につき美少年社長による極上の接待は中止でぇす♪」

 

 ネリオは両腕で大きなばつ印を作った。

 

「代わりに残っている接待は、お酒だけですねぇ」

 

「その酒すら、わしが持参したのだがな!」

 

 モーブルが持ってきたのは、深い琥珀色の酒を封じた細長い瓶だった。

 瓶の口は蝋で厳重に封じられ、古びたラベルには、カヴェナの南方に位置するアレクスティア剣王国の老舗醸造所の紋章が刻まれている。

 ネリオは瓶を魔導灯へ透かし、光の中でゆったり揺れる濃密な酒を眺めた。

 

「へえ……ずいぶん立派な瓶ですねぇ。これ、かなりの高級品でしょう?」

 

「アレクスティア産のバーレイワインだ。麦酒の一種だが、並の麦酒とは濃さも酒精も桁が違う」

 

 モーブルは瓶を指先で軽く叩いた。

 

「昔、少しばかり商売の知恵を貸してやった弟弟子(おとうとでし)が、いっぱしの商人になって送ってきた。まあ、長年越しの『配当』のようなものだな」

 

「ほうほう。そんな大切なお酒を一人で楽しむでもなく、わざわざあたしのところへ持ってきたと」

 

「勘違いするな。貴様に飲ませるためではない」

 

「では、何のために?」

 

「わしが気分よく酒を味わうために、話し相手として貴様を呼んだだけだ」

 

「それを世間では、『一緒に飲みに来た』って言うんですよぉ」

 

「言わん」

 

「はいはい。山ゴリさんは今夜も素直じゃありませんねぇ」

 

「酒を開ける前から、酔っ払いのような戯言を抜かすな!」

 

 ネリオは都合の悪い言葉を綺麗に聞き流し、棚から二つの小ぶりな杯を取り出した。

 モーブルは呆れ顔のまま、瓶口を覆う蝋を剥がし、栓へ手をかける。

 

 ――ぽんっ。

 低く小気味よい音とともに栓が抜け、濃密な香りがふわりと立ち昇った。

 

 煮詰めた麦芽の甘い香り。

 焦がした砂糖を思わせるカラメル香。

 干し葡萄や熟した果実、樽木、そして鼻の奥を熱く撫でる強い酒精。

 紙とインクの匂いに満ちていた雑然とした社長室が、たちまち重厚な芳香に包まれていく。

 

「おお……! これは、すごい香りですねぇ……!」

 

 ネリオは小動物のように鼻をひくつかせ、うっとりと目を細めた。

 

「炒った麦に、干し果実と焦がした蜜。それから、乾いた草原の焚き火を囲んで、荒くれ剣士たちが夜通し酒盛りをしているような――」

 

「最後の連中まで香りへ混ぜるな。酒が汗臭くなる」

 

「勇猛な戦士たちの熱き魂の香りですよぉ」

 

「ただの酔っ払いの体臭だろうが!」

 

「もう、風情がありませんねぇ」

 

「いいか。二十年寝かせたヴィンテージだぞ。普通の麦酒と思うな。一滴たりともこぼすなよ」

 

 ネリオはモーブルから恭しく瓶を受け取った。

 

「お任せください。あたし、お酒を注ぐ腕だけは一流ですから」

 

「その限定的な自信は何だ」

 

 ネリオはまず、自分のガラス杯へ酒を注いだ。

 とく、とく、とく。

 粘りを感じさせる濃い酒が、杯の中へゆっくりと満ちていく。

 適量をとうに越えても、ネリオの手は止まらない。

 杯の縁近くまで、なみなみと注いでしまった。

 

 続いて、持ち主であるモーブルの杯へ――ちょろり。

 半分にも届かないところで、ぴたりと瓶を起こす。

 

「おい」

 

「何です?」

 

「わしの分が、明らかに少ないぞ」

 

「これは酒精の強いお酒なのでしょう? 大切なパトロン様が酔い潰れては大変ですからねぇ。接待する側としての細やかな配慮ですよぉ」

 

「ならば、なぜ貴様の杯は縁まで満たされておる!」

 

「あたしはエルフなので大丈夫です」

 

「何の根拠にもなっておらん!」

 

「疑り深いですねぇ。純真な男爵様を見習って、もう少し人を信じてみては?」

 

「男爵様の美徳を、自分の酒の横領へ利用するな!」

 

「まぁまぁ。細かいことを気にしていると、せっかくの美酒が不味くなりますよぉ」

 

 ネリオは瓶を自分の椅子の脇へさりげなく避難させると、ガラス杯を高く掲げた。

 

「では――」

 

 細い目を、いつにも増して楽しげに細める。

 

「ウィルハルケン家とヴァーゼルの再建計画が、無事に最初の一歩を踏み出したことに」

 

「うむ」

 

「『カヴェナ通信』の発行部数が、今後ますます伸びることに」

 

「……まあ、ついでだな」

 

「そして何より――太っ腹なパトロン様が、これからも末永く、気前よく出資してくださることを願いまして!」

 

「最後の一言が本命か!」

 

 軽やかな音を立てて、二人の杯が触れ合った。

 

「乾杯!」

 

「乾杯だ」

 

 ネリオはさっそく、酒を一口含んだ。

 次の瞬間、普段は糸のように細められている瞼が、大きく見開かれる。

 

「おお……これは……!」

 

 口いっぱいに広がる、濃厚な麦芽の甘み。

 カラメルや蜂蜜を思わせる芳醇さの奥から、干し葡萄や熟した果実、樽木の複雑な香りが次々と立ち上がる。

 最後には、強い酒精と深い苦みが、喉から胸へ熱い余韻を残した。

 

「本当に美味しいですねぇ。麦酒というより、まるで麦から造った濃厚な果実酒みたいです」

 

「だからバーレイワインと呼ばれる。名にワインとついてはいるが、原料は葡萄ではなく麦だ」

 

「なるほど。これは、ちびちび時間をかけて楽しむお酒ですねぇ」

 

「分かっておるではないか」

 

「それにしても、美味しい」

 

「当然だ。市場へ出せば、金貨五枚は下らん」

 

 ネリオの喉が、ぴたりと止まった。

 

「……ごほっ。飲んでいる途中に値段を言わないでくださいよぉ。急に金貨五枚が喉へ引っかかったじゃないですか」

 

「貴様にも、金貨の重みを味わわせてやろうと思ってな」

 

「なるほど! では、一滴も無駄にしないよう、ありがたく味わいます!」

 

 そう言うなり、ネリオは先ほどまでの慎重さをかなぐり捨て、一気に杯を傾けた。

 

「おい! 待て、馬鹿エルフ!」

 

「んぐ、んぐ、んぐ……!」

 

「それは味わう速度ではないぞ! 酒精の強い酒を麦酒のように流し込むな!」

 

「高価な物は、価値が失われる前に楽しむべきです!」

 

「二十年寝かせた酒が、数分で劣化するか!」

 

「人の会社へ持ち込んだ時点で、半分はあたしの所有物です!」

 

「どこの法律だ!」

 

「フォックス広告社内規則、飲食物管理規定の第一条です!」

 

「そんな規則は存在せん!」

 

「たった今、社長権限で制定しました!」

 

「社員が帰ったあとに、自分へ都合のよい規則を増やすな!」

 

 モーブルは慌てて酒瓶を奪い返し、自分の手元へ抱え込んだ。

 

「まったく、油断も隙もない奴だ……。この酒は、杯一杯を時間をかけて味わうものだぞ」

 

「あーあ。接待相手の前で、お酒を独占するのは感心しませんねぇ」

 

「持ち主はわしだ!」

 

 モーブルは瓶を守るように太い腕で囲いながら、自分の杯を手に取った。

 そして、ようやく酒を口へ運ぶ。

 

 熟成された麦芽の重厚な甘み。

 カラメルと干し果実のような深い風味。

 樽木の香ばしさと、長い眠りによって角の取れた苦み。

 その奥から立ち上がる酒精の熱が、喉から胸へゆっくりと落ちていく。

 

 芳醇なバーレイワインは、山登りと泥仕事と遺跡探索、そして三週間にわたる交渉で疲れきった巨体へ、じんわりと染み込んでいった。

 

「ふぅ……」

 

 思わず、満足げな息が漏れる。

 向かいに座るネリオが、にやりと笑った。

 

「どうです? 当社の接待は」

 

「酒はうまい」

 

「でしょう?」

 

「わしが持ってきた酒だからな」

 

「場所代と、美少年社長の笑顔までついているんです。十分すぎるほどでしょう」

 

「金貨十万枚分の笑顔には見えんぞ」

 

「おやおや。ずっと見つめておいて、よく言いますねぇ」

 

「酒の向こう側に、たまたま貴様の顔があるだけだ」

 

「はいはい。照れなくてもいいんですよぉ」

 

「酔う前から面倒な奴だな、貴様は!」

 

 ネリオは楽しそうに笑いながら、頬杖をついていた手を下ろした。

 そのまま、杯の中で揺れる琥珀色の酒へ視線を落とす。

 

「……でも、まあ」

 

 ネリオは杯の中で揺れる琥珀色へ視線を落とすと、ふっと、いつもの人を食ったような笑みを薄くした。

 

「今夜くらいは、山ゴリさんを少し丁重にもてなしてもいいかもしれませんねぇ」

 

「何だ。酒に毒でも入れたのか」

 

「人が素直になった途端、暗殺を疑わないでくださいよぉ!」

 

「貴様の日頃の行いを省みろ」

 

「もう、失礼しちゃいますねぇ」

 

 口では抗議しながらも、ネリオはいつものように冗談へ逃げなかった。

 

「『カヴェナ通信』がここまで続いたのは、山ゴリさんのおかげですから」

 

 モーブルは、杯を口元へ運びかけた姿勢のまま、ピタリと動きを止めた。

 

「投資しただけだ」

 

「その投資先は、貴族の不正も汚職も平気で記事にする、たいへん評判の悪い新聞社でしたけどねぇ」

 

「自覚があるなら、少しは内容を改めろ」

 

「嫌です!」

 

「即答するな!」

 

 ネリオは小さく笑い、机に積まれた古い新聞へ指を置いた。

 

「この国で貴族を敵に回すというリスクが、どれほど『割に合わない投資』か。長年、冷徹にそろばんを弾いてきた山ゴリさんは、誰よりよく知っていたはずです」

 

「だから毎度、危ない橋を渡るなと言っておる」

 

「それでも、橋の手前であたしを見捨てなかった」

 

 モーブルは黙った。

 

「出資を引き揚げるどころか、印刷機が壊れれば部品を手配してくれた。紙もインクも、貴族に圧力をかけられたときの取引先も、全部つないでくれた」

 

「投資先を潰さぬためだ」

 

「ええ。儲けのため。広告のため。将来性を見込んだから」

 

 ネリオは指を折りながら一つずつ数えたあと、穏やかに付け加えた。

 

「そういうことにしておきます」

 

「しておくも何も、それが事実だ」

 

 モーブルは鼻を鳴らした。

 

「わしは貴様とこの会社を、商売のために利用しておるだけだ。利益を生まんと判断すれば、容赦なく見切るからな。覚悟しておけよ」

 

「はいはい。そう言いながら、何年も見切ってくれないんですよねぇ」

 

 ネリオは手元の杯を、ことん、と机へ置いた。

 

「昔なら誰にも届かなかった声が、今では新聞になってカヴェナ中へ届いています。まだ、世の中を変えられたなんて大それたことは言えません。でも、理不尽に踏み潰されて、なかったことにされる声は、ほんの少しだけ減りました」

 

 そして、まっすぐにモーブルを見る。

 

「その最初の一歩を踏み出させてくれたのは、あなたです」

 

 一拍置いて、静かに続けた。

 

「――ありがとうございます、モーブルさん」

 

 山ゴリさんではなく。

 ネリオは久しぶりに、からかいのない声でその名を呼んだ。

 

 モーブルは何も答えなかった。

 気まずそうに顔を背けたまま、無言で杯を傾ける。

 ごくり、と喉を鳴らす音だけが社長室に響いた。

 

「……ふん。珍しく真面目な話かと思えば、一銭にもならん御託を並べおって。せっかくの上等の酒が台無しだ」

 

「おやぁ、もしかして照れてます?」

 

「照れておらん」

 

「では、どうしてこっちを見ないんですかぁ?」

 

「貴様のニヤけた面を見ながらでは、酒が不味くなるからだ!」

 

「おやおや。耳まで真っ赤にして言われても、説得力ゼロですねぇ」

 

「酒が回っただけだ!」

 

「まだ一口しか飲んでませんけど?」

 

「ええい、うるさい! わしが酔ったと言えば酔ったのだ!」

 

 モーブルの怒声に、ネリオは柔らかく笑った。

 その笑みは、いつもの人をからかうものより、ほんの少しだけ穏やかだった。

 

「はいっ! では感動の時間はこれにて終了!」

 

 ぱんっ、と弾けるような音を立てて両手を打ち合わせる。

 次の瞬間には、ネリオの顔にいつもの人を食ったような悪戯っぽい笑みが戻っていた。

 

「大口スポンサー様への感謝を込めまして! これより、美少年エルフ社長肝煎りの『特別な接待』を始めまぁす!」

 

「……特別な接待だと?」

 

 モーブルはピクリと眉を動かした。

 

「何だそれは。わしをダシにして新たな紙面のネタでも仕込むつもりではあるまいな」

 

「ふっふっふ。ご想像にお任せしますよぉ」

 

 ネリオは椅子からぴょんと飛び降り、足早に社長室の扉へ向かった。

 

「どこへ行く」

 

「接待の準備ですよぉ」

 

「酒のつまみなら、肉と塩気の強いものにしておけ」

 

「ええ、お任せを。パトロン様には、決して忘れられない『刺激的』な夜をお約束しますから」

 

 扉を開けかけたネリオが、肩越しに妖しく微笑む。

 

「……待て。貴様がそういう顔をするときは、必ずろくでもないことが起きる。猛烈に嫌な予感がするぞ」

 

 ネリオは意味ありげに片目を細め、そのまま部屋を出ていった。

 扉が閉まる。

 廊下の向こうから、慌ただしく戸棚を開ける音が聞こえた。

 何かを引っ張り出す音。

 布が床へ落ちる音。

 金属の留め具を、何度も付け直す音。

 

「……何をしておるのだ、あやつは」

 

 モーブルは酒を飲みながら待った。

 一分。

 二分。

 ほどなくして、二階の奥で勢いよく扉が開け放たれた。

 

「はい、ドーン! 大変お待たせいたしましたぁ!」

 

 場違いなほど明るいネリオの声が、静かな部屋に響き渡る。

 

「遅いぞ。つまみの一つを用意するのに、どれだけ――」

 

 振り向いたモーブルの言葉が、文字どおり喉の奥で止まった。

 扉の向こうに立っていたのは、つまみを載せた盆を持つ給仕ではない。

 あまりにも破廉恥で――それでいて、思わず息を呑むほど艶やかな姿に変わり果てたネリオだった。

 その身を包んでいるのは、女性用に仕立てられた漆黒のバニーガール服。

 頭上には、エルフ特有の尖った耳よりさらに長い、一対の黒い兎耳が堂々とそびえていた。

 

「…………」

 

 モーブルが絶句する中、ネリオは扉の陰から、焦らすようにゆっくりと姿を現した。

 

 細い腰を大きく左右へくねらせ、これ見よがしに尻を突き出す。

 動きに合わせ、お尻から生えた白い尻尾がぴょこ、ぴょこと小刻みに跳ねた。

 

「あはっ! フォックス広告特製――バニーエルフによる、最上級オブ最上級のパトロン接待でございまーす!」

 

 沈黙。

 モーブルは何度か瞬きをする。

 手元の酒を見る。

 不敵な笑みを浮かべながら、くねくねと腰を揺らしているバニー姿のエルフを見る。

 もう一度、酒を見る。

 

「……わしは、もう酔っておるのか?」

 

「それはおかしいですねぇ。まだ一杯目のはずですよ」

 

「では、貴様が狂ったのか?」

 

「失礼ですねぇ。これは立派な宣伝用衣装ですよぉ」

 

「なぜそんなもんが会社に保管してある!」

 

「ん〜、前にソホウの歓楽街にある娼館を取材した際、お土産に持たされましてねぇ」

 

「どこの業務で使うのだ、それを」

 

「いつか役に立つかもしれないと思いましてぇ」

 

「その『いつか』が、今なのか!?」

 

「はい。まさに今です!」

 

 ネリオは迷いなく言い切り、満面の笑みを浮かべた。

 そして、舞台の上を歩く踊り子のような足取りで、悠然とモーブルへ近づいていく。

 歩くたび、網タイツがかすかな擦過音を立てる。

 

「日頃からお世話になっているパトロン様へ、最大限の感謝をお伝えする絶好の機会ということですよぉ」

 

 ネリオは、来客用の椅子へどっしりと腰掛けるモーブルを見下ろすように、ぐっと身を乗り出した。

 

 その衣装はあまりにも無防備だった。

 本来なら豊かな女性の胸を収めるための硬いカップと、彼の平坦な身体との間に、ぽっかりとした大きな「隙間」が生まれる。

 ネリオが息をして身をかがめるたびに、コルセットの胸元がカパカパと浮き上がり、白く滑らかな胸板、うっすらピンク色に色づいた乳首、そして華奢な鎖骨が、隠す気も隠れる気もなくチラチラと覗いていた。

 

「お、おまっ……見えておるぞ!」

 

「ん〜? 見えるって、何がですかぁ?」

 

「お、あれだ……。ピンク色のあれが……」

 

「ほほう? どの辺りでしょう。ここですかぁ? この、あたしのおっぱいあたりについてるやつですかねぇ?」

 

 ネリオは白手袋に包まれた指先を、自らの胸元へゆっくりと這わせた。

 だが、押さえるどころか、浮いたカップの縁をさらにわずかに押し下げてしまう。

 ぽっかりと空いた隙間から、白く滑らかな胸板と薄紅色の乳首がいっそう無防備に晒された。

 

 モーブルの喉が、ゴクリと大きく鳴る。

 

「どうですかぁ。興奮しました? 山ゴリさんの野生のオスな部分が、そろそろ元気になってきたんじゃありませんかぁ?」

 

「ば、馬鹿を言え! そ、そもそも、エルフがそのような恥知らずな服を着るなど聞いたこともないぞ!」

 

 モーブルは真っ赤になった顔を背け、視線をあちこちへ泳がせた。耳の先まで見事に茹で上がっている。

 ネリオはその反応を見逃さなかった。

 ますます楽しそうに身をよじり、黒い網タイツに包まれた脚を艶めかしく交差させる。

 その仕草に合わせてハイレグの股間が引き伸ばされ、男としてのささやかな膨らみが布越しに露わになった。

 

「まあ、それはそうですねぇ」

 

 ネリオは妙に納得したように頷いた。

 

「あたしたちエルフは、清廉さと気高さが売りですからねぇ。種族的な誇りもありますし、普通ならこんな格好、誰もしたがりません」

 

「ならば、なぜ貴様はそんなものを嬉々として着ておるのだ!」

 

 ネリオはクスクスと喉を鳴らし、さらに一歩、深く踏み込んだ。

 モーブルの頑強な両膝の間へ、自分の細い脚をするりと滑り込ませる。

 網タイツに包まれたエルフの柔らかな太腿の感触が、ズボン越しに生々しく伝わってきた。

 

「っ……ネリオ」

 

 近い。

 吐息が直接肌に触れるほど、近かった。

 エルフ特有の、どこか柑橘を思わせる甘く爽やかな香りが、ほんのりとしたアルコールの匂いと混じり合い、モーブルの鼻腔を甘く、ねっとりと満たしていく。

 

「だって、あたしにとって『本当に特別な人』が来てくれたんですから。……本当に、本当に大切な、愛しの山ゴリさんが」

 

 ネリオはモーブルの耳に指を絡め、蠱惑的な上目遣いで覗き込んだ。

 

「だからこの格好は、あなたのため“だけ”に、着たんです」

 

「なっ……」

 

「ふふっ♡ 言っておきますけど、誰にでもこんな姿を見せるほど、あたしは安くないんですよぉ? 山ゴリさんだから……特別に、です」

 

 モーブルの太い眉が、ぴくりと跳ねる。

 目の前にいるバニー姿のエルフは、彼にとってあまりにも圧倒的な『目の毒』だった。

 

 単に露出が多くて破廉恥な衣装だから、というだけではない。

 普段は減らず口と皮肉ばかりを叩き、どこまでも人を食った態度を崩さないあのネリオが、今、自分のためだけにこんな痴態を晒して、甘く擦り寄ってきている――。

 その事実を真っ向から突きつけられた瞬間、モーブルの分厚い胸の奥で、ドクンと重い心音が否応なく跳ね上がった。

 

 ネリオはモーブルのその分かりやすい反応を肌で感じ取ると、狙いどおりとばかりに、とろりと妖艶に目を細めた。

 

「だから、こんな姿をほかの誰かに見られたら、さすがのあたしも恥ずかしさで死んでしまうかもしれません」

 

 ネリオは熱を帯びた声で囁きながら、頭上の長い兎耳の根元を指先でなぞった。

 

「耳までこんなに長くして」

 

 続いて艶かしく腰をひねり、白い丸尻尾を見せつけるように小さく振る。

 

「お尻には、こんな可愛らしい尻尾までつけて」

 

「……自分で可愛らしいと言うな」

 

「ん〜、でもあたしが可愛いのは事実ですからねぇ」

 

「厚かましいわ」

 

 モーブルが声を絞り出すように吠えると、ネリオは声を立てずに笑った。

 

 けれど、その白い頬には、確かな朱色が差している。

 すべてが計算ずくの完全な演技、というわけではないらしい。

 羞恥を誤魔化すように笑いながらも、決して逃げようとはしない。

 薄く染まった頬と、わずかに潤んだ青い瞳。

 その嘘偽りのない初々しい反応が、かえってネリオの退廃的な妖艶さを、恐ろしいほどに際立たせていた。

 

「でも、山ゴリさんになら……こんな恥ずかしい姿を見られてもいいかなって、思ったんです」

 

「……なぜだ」

 

「だって、あたしの『初めて』を捧げた相手ですし」

 

 ネリオは悪戯っぽく、甘く微笑んだ。

 

「それに今や、フォックス広告を支えてくださる偉大なパトロン様です。少しくらい特別扱いしないと、罰が当たります」

 

「ネ、ネリオ……」

 

「ねぇ、山ゴリさん」

 

 ネリオの白手袋に包まれた指先が、モーブルの逞しい胸板へそっと触れた。

 服の上から分厚い肉の輪郭を確かめるように、じわじわと撫で下ろしていく。

 

「ただ眺めているだけでは、つまらないでしょう?」

 

「何を……言っておる」

 

「せっかくの接待ですから」

 

 砂糖菓子のように甘く絡みつく声が、モーブルの耳元へ直接注ぎ込まれる。

 

「お酒と一緒に、バニー姿のエルフを心ゆくまで堪能しちゃいませんかぁ?」

 

 そう囁き終えると同時、ネリオの白手袋に包まれた手が、モーブルの胸板から離れた。

 指先が向かったのは、サイドテーブルに置かれていたモーブルのグラスだ。

 

「……ネリオ?」

 

 モーブルがいぶかしげに眉を寄せる中、ネリオは琥珀色の強い酒が入ったグラスを優雅に持ち上げ、ふっくらとした唇を縁に当てた。

 コクッ、と一口だけ酒を含む。

 しかし、飲み込む様子はない。酒を含んでわずかに頬を膨らませたまま、悪戯っぽい、けれど酷く艶めいた流し目でモーブルを見つめてくる。

 

 カチャリと音を立ててグラスをテーブルへ戻すと、ネリオは長い兎耳を揺らしながら、躊躇いなくモーブルの顔へとにじり寄った。

 

「なっ――んっ!?」

 

 モーブルが制止の声を上げるより早く、ネリオの柔らかな唇がピタリと重なる。

 ちゅっ、と吸い付くような音が鳴った直後、ネリオの滑らかな舌がモーブルの唇を強引にこじ開けた。

 

「んちゅ……っ、んぅ……♡」

 

 開かれたモーブルの口内に、ネリオが含んでいた琥珀色の酒が、熱い唾液とともに一気に注ぎ込まれる。

 アルコールの焼け付くような刺激と、エルフ特有の甘い蜜のような唾液が混ざり合い、モーブルの舌をじゅわりと熱く焼いた。

 

「ん、むぐ……っ、んんっ!」

 

 突然の口移しにむせそうになるモーブルの首に、ネリオは細い両腕を回し、絶対に逃がさないとばかりに深く深く舌を絡ませてくる。

 

 ちゅむ、くちゅ、ちゅる……。

 

 静まり返った社長室に、強い酒と唾液が混ざり合う、ひどく卑猥な水音が響き渡る。

 ネリオの舌は、モーブルの口腔の隅々まで味わい尽くすように這い回り、分厚い舌にねっとりと絡みつき、酒の最後の一滴までを共有するように激しくかき混ぜた。

 バニー衣装の隙間から覗くネリオの素肌が、身を乗り出すたびにモーブルの胸に押し付けられ、服越しでもわかるほどの柔らかな熱を伝えてくる。

 

「ぷぁ……っ、はぁ、んっ……」

 

 やがて、わずかな息継ぎのために唇が離れた。

 二人の間に、酒と唾液の混じった銀色の糸が、だらりと淫らに引かれる。

 

「かはっ……! き、貴様……っ、いきなり酒を……っ」

 

 荒い息を吐くモーブルの唇を、ネリオは濡れた自分の舌でぺろりと妖艶に舐めとった。

 

「んふふ……♡ 山ゴリさんの唇で濾過されたお酒、とびきり美味しいですねぇ♡ これが、一流の男が醸し出す極上のヴィンテージってやつでしょうか♡」

 

 ネリオは熱に浮かされ、とろとろに潤みきった青い瞳でモーブルを見つめると、甘い吐息とともに再びその唇を塞いだ。

 

「んちゅ……っ、あむ……ちゅ、れろ……♡」

 

 今度は酒を通さない、直接の濃厚な貪り合いだった。

 網タイツに包まれたネリオのしなやかな脚が、モーブルの丸太のような腰へしがみつくように絡みつく。

 鼻腔を抜ける強いアルコールの香りと、ネリオの身体から放たれるエルフ特有の甘い柑橘の匂い。

 そして、思考を真っ白に塗り潰していくような粘着質な舌の感触。

 

 ――もう、限界だった。

 

 モーブルの内に辛うじて残っていた理性の壁が、音を立てて完全に崩れ去る。

 彼の中の『野生のオス』が、理屈を吹き飛ばして暴れ出した。

 太く強靭な腕が、硬いコルセットから無防備に剥き出しになっていた滑らかな素肌を、ひどく乱暴に掻き抱く。

 

「っ……あぁんっ!?♡ やだっ……いきなり、そんな強くっ……!♡」

 

 ミシッ、と衣装が軋むほどの圧力に、ネリオは素頓狂な甘い悲鳴を上げた。

 自分から煽って仕掛けたはずの『接待』だったのに。

 モーブルの規格外の腕力と、圧倒的なオスの熱量に真正面から当てられ、ネリオの計算ずくの余裕はあっけなく瓦解する。

 

「貴様が火をつけたのだ……もう、逃がさんぞ」

 

 モーブルの野太い声が、すぐ耳元で低く唸る。

 

「あ……っ、逃げる、わけない、ですよぉ……っ。そもそも、これ……あたしからの、接待……っんぅ!♡」

 

 軽口を叩こうとしたネリオの唇が、再びモーブルによって塞がれる。

 今度は酒の助けなどいらない。

 むき出しの欲望だけで貪り合うような、荒々しく深い口づけだった。

 

 そのまま分厚く大きな手がネリオの細い腰をガッチリと掴み、自身の膝の上へと強引に押し据える。

 その瞬間、ネリオの体内で『仕掛け』が残酷なまでに作動した。

 

「ひゃあっ!?♡ あ、や……っ、奥、ぐりって……!♡」

 

 姿勢を変えられたことで、お尻に挿入されたプラグ型の丸尻尾が、敏感な最奥の粘膜を強烈に擦り上げたのだ。

 ネリオは雷に打たれたように背中を反らせ、潤んだ瞳からポロポロと生理的な涙をこぼした。

 

 モーブルは、自らの膝の上でビクビクと痙攣するネリオを見下ろし、その腰のあたりで小刻みに震えている『白い尻尾』へと視線の焦点を合わせる。

 

「……なるほど。そういうことか。どうりで先程から、無駄に腰をくねらせておると思ったわ」

 

「あっ……♡ だ、だめっ、触らな……ひぐっ!?♡」

 

 モーブルの無骨な指先が、白い丸尻尾を容赦なく鷲掴みにした。

 そして、意地悪く、ゆっくりと円を描くように捏ね回す。

 

「あァッ!♡ ひい、ぃ……っ!♡ なか、かき混ぜられてぇ……!♡ あたま、真っ白に、なっちゃう……っ!♡」

 

 暴力的な快楽に呑まれ、完全に主導権を奪われたネリオの姿は、先程までの小賢しく余裕めいた態度は見る影もなかった。

 モーブルは満足げに低く鼻を鳴らすと、もう片方の手を、バニー衣装のぽっかりと空いた『隙間』へとねじり込んだ。

 わざとらしくカパカパと浮いていた硬いコルセットの奥へ、太い指が躊躇いなく侵入する。

 

「ひんっ……!♡ ご、ゴリさんの指、ざらざらして……っ♡」

 

 ペンを執り、時に自ら重荷を運び続けてきた豪商の分厚く固い掌が、エルフ特有の滑らかな胸板を無遠慮に這い回る。

 そして、すでに硬く尖っていた薄紅色の乳頭を、ざらついた指の腹でゴリゴリと容赦なく弄んだ。

 

「散々自分で見せつけてきたのだろうが。ここがお望みか、ええ?」

 

「あぁっ!♡ は、いっ……もっと、もっと乱暴に……っ♡」

 

 モーブルはネリオのしなやかな身体を片腕で軽々と抱き上げると、マホガニーの重厚な社長机に積まれた書類を乱暴に払い落とし、そこへバニー姿のエルフを押し倒した。

 背中を打つ冷たい木板の感触に、ネリオがビクリと身をよじる。

 だが、黒い網タイツに包まれた長い脚は自ら大きく開かれ、モーブルの丸太のように頑強な胴体を誘い込むように絡みついた。

 

「これが最高の接待なのだろう? ならば……最後までこのわしを満足させてみろ、ネリオ」

 

 ネリオは荒い息を吐きながら、熱に浮かされたとろとろの瞳で、自身を見下ろす巨漢のパトロンを見つめ返した。

 小賢しい計算もエルフとしての矜持も瓦解し、ただ快楽を乞うような顔になり果てていながらも、そのふっくらとした唇には、悪女のように艶やかな笑みが張り付いている。

 

「ええ、もちろん……っ♡ 朝までたっぷり、山ゴリさんの熱……ぜんぶ、搾り取ってあげますよぉ……っ♡」

 

 鼓膜を撫でる声はひどく甘く蕩けていたが、潤んだ瞳の奥には、いつもの人を食ったような悪戯っぽい光が微かに揺れていた。

 完全に主導権を奪われ、圧倒的な力で組み敷かれながらも、自ら火をつけた猛獣の反応を心底楽しんでいる――そんな食えない余裕が、まだこのエルフには残っている。

 

 モーブルは苛立たしげに低く唸った。

 

「……生意気な口を利くな」

 

 丸太のような太い腕が伸び、ネリオの細い両手首を片手で容易く拘束する。

 そのまま冷たい机の天板へと乱暴に押し付け、身動きをとれなくした。

 

「ひゃあっ……!♡ やっ、そんないきなり、激しくしないでくださいよぉ……!♡」

 

「自分で『もっと乱暴に』と言ったのは貴様だろうが」

 

 戒められた手首に力が入った直後、モーブルの太い指が、丸尻尾の根元を再び無慈悲に捻り上げた。

 その瞬間、ネリオの華奢な腰がビタンッと大きく跳ねる。

 

「ひあぁんっ!♡」

 

 異物が最奥の粘膜を無慈悲に抉った瞬間、甘い電流が背筋を駆け上がる。

 黒い網タイツに包まれた両膝ががくがくと小刻みに震え、すでに溢れ出していた情欲の雫が、布地をさらに濃く、淫らに染め上げていった。

 

「ふん……。そのふざけた格好で、随分と感じておるな」

 

「う、うるさいです……っ。山ゴリさんが、無駄に乱暴にするせいでしょうが……!

 

 モーブルは短く荒い息をひとつ吐き、ようやく自身のベルトに手をかけた。

 チャキ――と、重く冷たい金属音が社長室に落ちる。バックルが外され、布地の下で限界まで膨れ上がっていた熱いものが、ようやく解放の時を迎える。

 

 机に両手を押さえ込まれたネリオは、迫りくるその凶悪な熱を上目遣いに見つめた。

 喉が、期待と緊張でごくりと鳴る。

 

「……やっぱり、大きいですねぇ」

 

「今さら驚くことか」

 

「いや、やはり驚かされますよぉ。こんな極太の人参が……小柄なエルフの身体に、ちゃんと入るのかって♡」

 

 挑発するような笑みを浮かべた瞬間、モーブルは、すでに蜜で濡れそぼった、ネリオのうさぎの尻尾の根元を太い指で固く掴んだ。

 

「あ……っ、待っ……山ゴリさ――」

 

 制止の声など、当然聞かれない。

 モーブルはプラグを、じわじわと、生殺しにするような遅さで引き抜き始めた。

 

 ずぶ、ずぶぅ……っ。

 

「ひあぁっ!?♡ あ、あぁっ……あっ!♡ だめっ、そんなゆっくり抜かれたら……変になっちゃうっ!♡」

 

 太い膨らみが敏感な肉壁を押し広げ、削るように擦りながら一寸ずつ抜けていく。

 引き抜かれるたびに、ネリオのアナルの柔肉がプラグに吸い付くように外側へ引きつれ、ひくりと赤くめくれ上がる。 内壁がくい、と外に翻りかけては、また熱く収縮して追い縋る。そのたびに透明な蜜が糸を引き、めくれた縁を淫らに濡らした。

 

 強烈な異物感と、めくれるような羞恥に、ネリオは背中を大きく反らせ、爪先までピンと突っ張らせて喘いだ。

 

 そして――ぬぽんっ。

 下品で湿った音とともに、プラグが完全に解放される。

 

「はぁッ……!♡ んぁあっ……♡」

 

 押し留められていた愛液がどろりと溢れ、冷たい机の木目を汚した。

 最奥を掻き回された余韻で、ぽっかりと開いたピンク色の入口がひくひくと収縮し、物欲しそうに蜜を吐き出し続けている。

 

「や……見すぎですよぉ……っ。そんなにじろじろ見られたら……恥ずかしい……」

 

「知らん」

 

 モーブルの声は低く、熱を孕んでいた。

 視線はネリオの脚の間――プラグを抜かれたばかりの蜜穴から、一瞬たりとも動かない。

 

「これほどの美麗品を目の前に突き出されて、逸らす理由などない」

 

 空気に晒されたピンク色の柔肉が、小刻みに痙攣している。

 透明な蜜が糸を引き、網タイツの股布は横にずらされたまま黒く濡れそぼり、織り目が淫らに光っていた。

 

 モーブルはネリオの膝裏を両手でがっしりと掴むと、無理矢理に大きく脚を開かせた。

 机の上で完全に晒された結合部を、品定めをするようにゆっくりと見つめる。

 親指で入口の縁を丁寧に押し広げ、中の熱を直接確かめた。

 

「ひゃうっ……!♡ 指、あつい……っ!♡」

 

「随分と柔らかくなっておるな。さっきまでの栓のおかげか。……準備は万全、というわけだ」

 

「うぅ……そんなこと、言わないでくださいよぉ……」

 

 ネリオは羞恥で顔を真っ赤に染めながらも、腰を逃そうとはしなかった。

 むしろ開かれた脚の内側を小刻みに震わせ、モーブルの熱い視線を意識するたびに、さらに蜜を溢れさせている。

 

 モーブルはようやく、自身の解放された熱を右手で握った。

 すでに限界近くまで膨張し、血管をくっきりと浮かべたそれが、ネリオの入口に重く押し当てられる。

 熱い先端が柔肉に触れた瞬間、ネリオの細い身体がびくりと大きく跳ねた。

 

「あっ……♡」

 

 モーブルは荒い息を整えながら、目の前のネリオの顔を鋭く見据えた。

 怯えと蕩けるような甘さが混ざり合う表情の奥で、まだ消えずに燻る小さな悪戯心が光るのを確かに捉える。

 

「どうだ……怖いか、ネリオ」

 

 ネリオはほんの一瞬だけ息を呑んだ後、ふっと唇の端を持ち上げた。

 精一杯の虚勢を張るように、いつもの人を食ったような笑みを浮かべて見せる。

 

「まさか……こんな太くて逞しいもの、楽しみでなりませんよぉ……♡ 早く、山ゴリさんの全部……ここで味わいたいです……♡」

 

 その挑発的な言葉とは裏腹に、添えられた細い手は縋りつくようにモーブルの腕へ絡みつき、立てられた爪が皮膚に小さな傷を作っていた。

 期待と緊張で揺れる碧眼が、目の前で猛り狂うオスの姿を克明に映し出している。

 

「ふん、強がりおって。またヒーヒー啼き叫んで許しを乞うても、責任は取らんぞ」

 

 モーブルは鼻を鳴らすと、自らの全体重を乗せるように腰をぐっと押し進めた。

 熱く硬い怒張が、開ききったネリオの秘肉を容赦なく貫き始める。

 

「ひぁ……♡」

 

 言葉の最後が甘く上擦り、社長室の空気に溶けた。

 モーブルは腰を沈め込む。

 

 ずぶ、ずぶぅ……っ。

 

 凶悪な亀頭がゆっくりと、しかしたじろぎもなく食い込んでいく。

 プラグで解されていたはずの内側は相変わらずあまりにも狭く、恐ろしいほどの熱量で貪欲に締め付けてきた。

 押し開かれた粘膜がくちゅ、と卑猥な水音を奏で、あまりに太い幹を一寸ずつ体内へ飲み込んでいく。

 

「んぁあっ……!♡ は、はぁっ……大きい……っ♡ やっぱり大きすぎますってぇ……っ!♡」

 

「くっ……このエルフの小穴、やはり締めつけが尋常ではない……っ!」

 

 浮き立つ興奮とあまりの締め付けに、モーブルの額へ怒張した青筋が浮かぶ。

 ネリオの細い身体は、太い塊を奥へ受け入れるたびにビクビクと激しく痙攣し、熱い肉壁がその形状を記憶しようとするかのように、ぴたりと吸い付くように張り付いてきた。

 

「全部……入りますかぁ……っ♡」

 

「入れる。最後までな」

 

 ずぶずぶ、ずぷっ……!

 

 根元まで完全に埋まった瞬間、ネリオは大きく背中を弓なりに反らせた。

 頭上の黒い兎耳が冷たい机に激しく擦れ、白い喉が呼吸を求めてせわしく上下する。

 結合部からは押し潰された蜜が白く泡立ち、ぽたぽたと重く滴り落ちていった。

 

「ひぁあっ……!♡ お腹……っ、いっぱいで、息が……っ!♡」

 

「慣れるまで待ってやろうか」

 

 モーブルはネリオの両手首を再び天板へ力任せに押さえつけると、腰を止めたまま内部の熱い感触を味わった。

 波打つ肉壁が彼の形状を隅々までなぞるように吸い付き、脈打つたびに逃がすまいと強く締め上げてくる。

 ネリオのしなやかな脚はすでに無意識のうちにモーブルの腰へとしがみつくように絡みつき、網タイツ越しの柔らかな太腿の感触が生々しく腰へ伝わっていた。

 

 数呼吸の、張り詰めた静寂。

 

「……もう、いいです」

 

「早いな」

 

「いいから……動かして!♡ じれったいです……っ!♡」

 

 待ちきれないようにネリオが自ら腰を小さくくねらせる。

 その甘く貪欲な仕草に、モーブルの理性のタガがまた一つ外れた。

 

 ネリオの腰を掴む手にぐっと強烈な力を込め、そのままさらに奥深くへと抉り込む。

 ごり、と不穏な音が錯覚されるほど強く最奥を叩き潰され、ネリオは声もなく絶叫するように再び背を反らせた。

 

「あァッ!?♡ ひいっ……おくっ……おくまで来てるぅ……!♡」

 

 重厚な机の脚がギィと不穏な音を立てて軋む。

 だがモーブルはその程度の抵抗など意に介さず、深々と埋め込んだまま、器用に片手でネリオの膝裏をぐっと押し上げた。

 開かれた結合部から、ずぶずぶと太い怒張が出入りする生々しい様が、淡い魔導灯の光下に隠すこともなく晒される。

 

「やっ……!♡ やだっ……そんな奥まで入ってるところ……見せないでぇ!♡」

 

「貴様こそ、こんな風に端から端まで呑み込んでおいて、いまさら何を恥じる」

 

 ネリオの懇願をあっさり切り捨てると同時に、モーブルは腰を大きく引いた。

 体内でぎちぎちに埋まっていた質量が一気に抜け出し、敏感な襞を逆向きに捲り上げていく。

 

「んひぃっ……!♡ ぬけちゃうっ……!♡ ぜんぶ、ぬけちゃうからぁっ!♡」

 

 必死の声に呼応するように、内部の肉が名残惜しそうに追い縋る。

 だがそれも一瞬のことだった。

 

 次の瞬間――再び、叩きつけるように剛直が最奥へ突き立てられる。

 

 どちゅっ!

 

「ひぁああぁっ!?♡♡ は、入っ……最奥、また潰されたぁッ!♡♡」

 

 直撃の衝撃でネリオの碧眼が大きく見開き、頭上の黒い兎耳がピンと跳ね上がる。

 一度完全に抜けかけたところへ容赦なく叩き込まれた質量に、下腹部が熱く爆発したような錯覚さえ覚えた。

 

「くっ……! これほど太いものを根元まで受けておいて、まだ締め付けるか……!」

 

「あぁっ、だっ、だってぇ……っ!♡ 山ゴリさんがっ、あんな、いじわるな抜き方するからぁっ!♡」

 

「なら、望み通り一気に満たしてやったまでだ!」

 

 モーブルの動きは止まらない。

 膝裏から手を外し、ネリオの細い腰を両側からガッチリと掴み直すと、荒々しく律動を開始した。

 熱く蕩けた内壁を蹂躙するように深く、浅く、そして時に体重をかけてグラインドさせながら抉っていく。

 肉が打ち合う重い音と、粘液が掻き混ぜられる卑猥な水音が重なり合い、社長室の空気をいっそう淫靡に満たしていった。

 

「ひうぅっ!♡♡ やっ……それだめぇっ……!♡♡ おくに……こすれっ……んひぃっ!?♡♡」

 

「ダメという顔ではないぞ。涎を垂らして喜ぶな」

 

 モーブルは嘲るような笑みを浮かべた。

 彼の言う通り、ネリオの唇は開きっぱなしで閉じられず、そこからだらりと垂れた唾液が顎先を伝っている。

 碧眼には大粒の涙が浮かび、白い頬は鮮やかに紅潮して、額には熱い汗が滲んでいた。

 

「だっ……だって……だってぇ……♡ こんなに大きなのが、普通なら届くはずもない深い場所まで届いてるんですから……感じない方がおかしいでしょぉ……!♡」

 

 ネリオはとろとろに蕩けた表情で、甘えたような抗議を吐き捨てる。

 その瞳の奥にはまだ小さな悪戯心と反抗心が燻っていたが、圧倒的なオスの威圧感の前では今や風前のともし火でしかなかった。

 

 モーブルはそんなネリオの喘ぎに興奮を煽られ、さらに容赦なく腰を叩きつけた。

 熱く滾った剛直が狭い腸道を往復するたび、ネリオは甲高い嬌声をあげ、華奢な体全体を激しく震わせる。

 

「ひあぁあんっ!!♡♡ だめぇっ……これ以上したら……おかしくなるっ!!♡♡ おなかの中全部ごりごり擦られてっ……もう耐えらんないですぅぅぅっ!♡♡」

 

「なら耐える必要などない!」

 

 机に乱暴に押し付けられたネリオの両腕は、もはや抵抗するために存在していない。

 突き上げられる激しい衝撃から自分を支えるためだけに、冷たい木目を必死に掻きむしっていた。

 

「ひぐっ、あぁっ♡♡ すごいっ、すごいです山ゴリさんっ♡♡ お腹のなか、壊れちゃうっ!♡♡ こんなゴリラの極太人参、うさぎちゃんエルフの身体じゃ持ちませんよぉ……っ!♡♡」

 

「フン、相変わらず口だけは減らん奴だ……! なら、二度と減らず口が叩けぬよう叩き潰してやる!」

 

 モーブルは掴んでいた腰へさらに強く指を食い込ませると、手加減を完全に捨て去り、容赦のない超高速のストロークを開始した。

 

 ズバァンッ! ズチュッ! ズバズバズバッ……!

 

「ひやあぁあぁっ!?♡♡ あっ、あ、あーっ!♡ だめっ、だめだめっ!♡ それ早すぎるぅッ!♡♡」

 

「言ったはずだ、手加減はせんとな……!」

 

「あはぁっ!♡ あっ♡ あっ♡ おくっ、おくの固いとこっ、毎回ごんごん当たってるぅっ!♡♡ ひぃんっ、いっちゃう、またヘンになっちゃうからぁッ!♡♡♡」

 

 引き抜いては叩きつけ、擦り上げては最奥を突き潰す。

 豪商の力強い腰つきが容赦なく襲いかかるたび、ネリオの背中が跳ね、可愛らしい唇から言葉にならない甘い悲鳴とよだれが撒き散らされた。

 

 バニーガール服の硬いカップはすっかり押しズレ、晒された胸板の小さな乳頭が、モーブルの荒い息と胸板の接触で擦られて赤く熟し切っている。

 

「山ゴリっ……山ゴリさんぁっ!♡♡ あたしっ、あたしのナカ、全部山ゴリさんの形になっちゃうぅぅ……っ♡♡」

 

「なってしまえ! 二度とほかの男を受け入れられんよう、隅々までわしの色で染めてやる!」

 

「ひぁあぁっ!♡♡ はいっ、はいぃっ!♡♡ あたしのぜんぶ、山ゴリさんのものですからぁっ!♡ だから……っ、もっと奥に、熱いの……たっぷり、注ぎ込んでくださいぃいっ!♡♡♡」

 

 絶頂の波が押し寄せ、ネリオの内壁が狂ったようにモーブルの男根を締め上げた。

 逃げ場を失った熱気が、二人の結合部から湯気となって立ち上るかのように、部屋の温度をどこまでも引き上げていく――。

 

「ぬ、ぅ……ッ! この……欲張りな小穴が……ッ!」

 

 ネリオの内壁が絞り上げるような暴虐的な締めつけに、モーブルの喉から獣のような低吟が漏れる。

 極限まで昂ぶった感覚が腰の奥に集まり、堰を切って溢れ出そうとしていた。

 

 モーブルは逃げようとするネリオの腰を逃がさぬよう力任せに抱え込み、最後の一押しとばかりに、限界を越えて深々と根元まで突き立てた。

 

 どちゅんっ……!!!

 

「ひぎゃあぁあっ!?♡♡♡ おくっ、おくの最奥っ、突き破られちゃうぅッ!♡♡♡」

 

 直後、モーブルの身体が大きく強張る。

 限界を迎えた灼熱の白濁が、脈打つ拳のように激しくネリオの最奥へ吐き出され始めた。

 

 びゅるるるるるるるる……!! どくっ、どく、どく……ッ!

 

「はひぃいいいいいいっ……!!♡♡♡♡ あ、ひああっ!♡♡♡♡ あつい……あついのがドクドク来てるぅっ!♡♡♡♡ 山ゴリさんのあついの……お腹のなかに、いっぱい……ッ♡♡♡♡♡」

 

 白濁が打ち込まれるたび、ネリオの華奢な身体が大きく跳ね上がる。

 途絶えることのない濃厚な塊が狭い最奥の容量を一瞬で満たす。

 溢れかえった熱が粘膜を焼き焦がしていくような錯覚に、ネリオは目を白黒させて激しい絶頂の余波に打ち震えた。

 

「くっ……ふぅ……っ! ん、ぬう……っ」

 

 モーブルはネリオの上に覆いかぶさるように倒れ込み、荒い息を吹きかけながら、ドクドクと脈打つ肉根から最後の一滴までをネリオの体内に注ぎ込み続けた。

 

 社長室を満たすのは、二人の荒い吐息と、冷めやらぬ濃密な熱気。

 やがてぐちゅぐちゅと脈打っていた肉脈がゆっくりと収まり、静寂が戻ってくる。

 

「はぁッ……はぁ……ッ♡ すご……すごすぎますよぉ、山ゴリさぁん……っ♡」

 

 ネリオは力なく机の上に投げ出されていた腕を動かし、自分の上に重なるモーブルの逞しい背中に回した。

 網タイツに包まれた脚はまだ小刻みに痙攣しており、結合部からは溢れきれなかった熱い蜜と白濁の混ざり合ったものが、だらりと冷たい机の木目を汚し続けている。

 

「……ふん。決して忘れられない『刺激的』な夜を約束すると言ったのは貴様だろう」

 

 モーブルは息を整えながら低く呟き、ゆっくりと腰を引いた。

 

 ――ちゅぽんっ。

 

 湿った卑猥な音が響き、太い塊が肉壁から滑り出ていく。

 途端、押し留められていた大量の白濁が、ぽっかりと開きっぱなしになったピンク色の穴からどろりと勢いよく溢れ出した。

 

「ひゃうっ……♡ お腹から……いっぱい溢れてきますよぉ……♡」

 

「これだけ注ぎ込めば当然だ。……まったく、ひどい有様だな」

 

 モーブルは息をつきながら、完全に甘く伸び切って恍惚とした表情を浮かべるネリオを見下ろした。

 ぐちゃぐちゃに崩れたバニーガール衣装、乱れて机に擦れた黒い兎耳、そして内側から白濁を吐き出し続けている秘所。

 

 ネリオはとろけた碧眼で上目遣いにモーブルを見つめると、ふっと、いつもの人を食ったような笑みを力なく唇に浮かべてみせる。

 

「……ふふっ♡ でも……これで『特別価格の金貨十万枚分の接待』、少しは元が取れたんじゃないですかぁ……?」

 

「バカ者が。……こんなもので帳消しになると思うな」

 

 モーブルは呆れたように鼻を鳴らすと、乱れた服を整えつつ、ネリオの汗ばんだ額に優しく、けれど無骨に短く口づけを落とした。

 

「……まだまだわしは満足しておらん。投資した分の利息は、体で払ってもらうからな」

 

「おやぁ……パトロン様は、本当にお好きですねぇ……♡ いいですよぉ……♡ 大切なパトロン様のためなら、この可愛いバニーちゃんが何度でも極上の接待をして差し上げますよぉ……♡」

 

 外はまだ深い闇に包まれ、夜はたっぷりと残されていた。

 一度火のついた二人の体温が、そう簡単に冷める気配などあるはずもない。

 

 ――そして、言葉通り本当に朝を迎えるまで。

 ネリオは偉大なパトロン様を、限界まで「搾り取り」続けたのだった。

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