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変態は一度家に帰り、お菓子や飲み物を補充してから部室へ向かった。
部室は倉庫を一個丸ごと貰い、改良したような形になっており、中にはパソコンが置いてあるデスクトップと、真ん中に置かれたちゃぶ台、落書きしか書かれていない黒板や、漫画が入った本棚など、様々なものがしっちゃかめっちゃかに置かれている。
部室に入れば、そこには既に後輩が二人だけいた。
中を見渡すが、他に来ている者はいないようだった。
「あ、先輩。こんちゃっす!」
「……」
後輩は両方とも♂である。
無口とワンコである。
無口は黒髪、ワンコは金髪の短髪である。
整ってはいるがムスッとした顔立ちの無口と、可愛げがあるワンコの二人が並ぶと、なんだか微笑ましい雰囲気を放っている。
「どうしたんすか、そんなに血相変えちゃって。もしかして女の子関係?」
「……(首を振る)」
「だよね、まさか先輩に春が来るわけがないか」
「(首を振る)」
失礼な後輩である。
変態は後輩に慕われている。
しかし、もしかすれば変態は後輩に舐められているのでは無いかと、最近では疑っている。
舐めると言えば、友人♂の汗ばんだ肌やTKBはあまじょっぱくて───
「て、ちょっと。どうしたんですか、いきなり
!落ち着いて…落ち着けってば!!」
「……!!」
唐突に壁に頭を打ち付け続ける変態を、後輩二人が押さえつける。
「もー!!どーしたんすか!!?悩みとかなら聞きますから、ここは冷静になって!!」
「……!!(首を振る)」
後輩の説得も虚しく、なおも抵抗を続ける変態により、新たな被害が生まれそうになったその瞬間。
がらがら、と扉が開く音が聞こえた。
「お前ら部室に入ってそうそう騒がしいんだよ!!おい変態!!後輩巻き込んで暴れてんじゃねぇ!!」
扉の向こうから現れたのは、メガネをつけた青色の派手な髪色をした♂であった。
しかし、彼は変態にとって友♂と同じくらいには親交度が高い友人であり、変態の所属する部活の副部長でもある。
名をば、ツンデレと申す。
「急にふざけたこと言い出したな。遂に頭が狂ったのか?」
「何言ってんですか先輩。元からでしょ、この人の場合」
「…………」
聞こえてるんだよなぁ。
変態は嘆いた。誰も反応しなかった。
泣いた。
「ったく……オラ、さっさと活動を始めんぞ」
ツンデレ♂が頭をかきながら淡々と告げる。
あれ?と変態が頭を傾げた。
「あれ?副部長、他のみんなは待たないんすか?」
ワンコが変態の抱いた疑問を代弁し、それに対しツンデレ♂が苦々しげな顔で答える。
「今日は来ねぇらしい。部長は取材旅行、知識オタクはしばらく休み。真宵と奏多は好きなゲームのイベントがあるんだとよ」
「あらら…他二人はともかく、ゲームやるだけならここでやればいいのに」
「……(首を振る)」
「まぁ、確かに集中は出来ないかもっすね」
誰もこの部屋でゲームをすることを咎めないことから分かると思うが、変態がツンデレ♂などの仲間と共に創り出したこの部活はそこまで活動に積極的ではない。
その上メンツが少々アクが強く、このように制御しきれていないのが現実である。
まぁ、最近ではそもそも活動することが無く、暇な時間をほとんどゲームや同人活動に割いているのが実態なので、そうなるのもある種当然かもしれないが。
「だけど、今日は久々に活動出来そうなんだよ。……ほら、これだ。ヒーローが倒した怪人の一部と戦闘の録画を入手できた」
そう言って、ツンデレ♂はバン、と音を出して、ちゃぶ台の上にビデオカメラと液体の入ったケースに入れられた謎の触手を叩きつける。
「マジすか?動画ならともかく、怪人の一部とかよくバレずに回収できたっすね」
「……(首を振る)」
「まぁな。ヒーロー部の連中をマークしておいて、ある程度近くで盗撮…じゃなくて記録してたんだよ」
サラッと犯罪宣言しているツンデレ♂に、まとも枠じゃなかったのかと、変態が思わずドン引きする。
話を戻せば、どうやら近くで怪人が出現したらしく、それをヒーローたちが撃退したとのこと。
───そう、怪人…ひいてはヒーロー。
この世界には、怪人がいる。
それは能力を暴走させた馬鹿だったり、ただの悪人だったり、特定の組織に作り出された者も僅かではあるが存在する。
しかしそのほとんどが、能力者が強いストレスを受け、それによって能力が独り歩きし、能力を持つ本人すら知らぬ間に怪人として顕現してるパターンである。
異能力の成長には、強い強い思いなど、精神に関する力が必要不可欠である。逆説的に、大きな感情の動きや思いなどには強力な力が宿る。
しかし、大半の人間はその能力を受け入れるだけの器を持たず、急激に増え溢れ出した力が形を生して怪人と化す。だからこそ、この世界から怪人が消えることは無いのだ。
そして、ヒーロー。
彼らは特定の国家資格を有し、国家公認で異能を用いた怪人との戦闘・殺害が許容された存在である。
ヒーローになるためには一定以上の魔法や"異能”の素質が必要であり、ヒーローの資格を得るのに年齢は関係がない。
それ故に、この学校のヒーロー部のメンバーはヒーローとして活動来ているのだ。
勿論、そのヒーロー部に所属している友♂も、国家資格を持つヒーローとして日夜戦いを繰り広げている。
そして、そんな怪人やヒーローについて研究・観察することが、変態が友♂をどうにか助太刀できないかと考え創り出したこの部活───「ヒーロー活動促進部」の活動内容である。
今回のようにヒーローの戦闘・怪人について研究したり、本人達の顔や名前を隠した状態で記事や動画にし、そういった活動を周知させ、支持を得るなどといった活動を主に行っている。
その他にも、戦闘中にメンバーの”異能"を用いて近隣住民の避難や人払いをしたり、さり気なく怪人やヒーローを誘導し、戦闘しても被害が少ない場所で遭遇させるなどの補助行為もしている。
勿論、危険にさらされることもあるが…問題は無い。
この部活に所属するメンバーの大半は一定以上のレベルの異能力者であり、各々の理由からヒーローにならないだけの猛者である。
これは意図した形ではなく、なんか知らねぇけど偶然そうなっただけなので、実は変態は割とドン引きしていたりする。
ちなみに、ココ最近活動がなかったというのはヒーロー達の活動が減ったと言う訳ではなく、むしろこの街の外に出るレベルで活発になってしまったが故だ。
それに最近では戦闘がすぐに終わることも増え、加えて市民が街中で起こる戦闘に慣れ始め、自分たちの方からすぐに避難するようになって来たためこちらが手を回す必要が減ってきたことが挙げられる。
その結果、自堕落に部室で遊び呆ける毎日が続き、なんならヒーロー部の陰に隠れた落ちこぼれみたいな扱いをされているのである。
変態が気まぐれに買ったコーヒーキットを使ってコーヒーを作り、大人な雰囲気を醸し出しながら飲んでいると、
「ふーん…今回の怪人、ミミズみたいで気持ち悪いっすね」
「……」
「ミミズってか、触手じゃねぇか」
後輩二人とツンデレ♂が戦闘中の盗撮…ならぬ取材のための録画を視聴し始める。
ちらりと変態も覗けば、友♂が仲間と共に怪人と……触手の怪人とやり合ってるではあるまいか。
変態は思わず口に含んでいたコーヒーを吹き出した。
「うわっ!ばっちぃ!!」
変態が吹き出した液体がツンデレ♂に少し降りかかってしまったらしく、バカみてぇに暴れだしている。
「誰のせいだ、誰の!!」
変態は素知らぬ顔をして録画の続きを見た。
友人♂が触手に絡まれ、あられのない姿になっていた。
変態は再度吹き出した。
「って、今度は俺ぇ!?」
「……!!!」
無口は間一髪で避けたようだが、ワンコには軽くかかってしまったらしい。
変態は軽く反省した。
ツンデレ♂は兎も角、ワンコは後輩であり、お金に余裕がある訳でもない。制服のクリーニング代も決して安くはないのだ。
即座に謝罪し、できる限りの手段で汚れをふき取った上でクリーニング代にチップもつけて渡す。
もしこれでも不足するようなら、この
「へ、!?い、いやいや、きゅ急に何言ってんすか!?」
ワンコがこれでもかとくらい動揺しているが、本気である。
もしもワンコが本気でそう望むのであらば、こちらもやぶさかでは無い。
「い、いや…その、なんというか。そういうのは、どうかなーって…ちょっと、困るというか…」
何故か頬を赤らめながらワンコがそう言うので、変態は仕方がなく引き下がった。
……何故だろう、無口とツンデレ♂からの視線が痛い。
特にツンデレ♂からの視線が鋭く、これでもかと睨みつけてくる…こわいよぉ。
「うっせ!!いいから大人しく見てろ!!」
そう言われ、渋々録画の続きを見てみれば、何故か服という服が解けた友♂の姿があった。
穴という穴に侵入して卵を植え付けようとする触手と、それに抵抗する友♂の淫靡な姿が画面に映し出され、さながら同人誌の表紙のような様相を生していた。
運がいいことに、変態は何も口に含んでいなかった。
代わりに、変態の鼻から赤い花が咲いた。
「きめぇ」
「先輩、ちょっとキモイっす」
「……(首を振る)」
変態は壁に頭をうちつけた。
誰も止めてくれなかった。
壁に血が着いた。
暴れる変態を横目に、ワンコ♂が画面に視線を戻すと、既に場面は移り変っており、肝心の部分を見逃してしまっていた。
「って、ほら。怪人倒しちゃったっすよ」
「……(首を振る)」
そう言われて冷静になってみて見れば、画面の向こうでは友♂がミミズ怪人を撃退し、仲間の女の子に介抱されているところだった。
変態は少しモヤっとした感情を覚えた。
良くない物の気がしたので捨てた。
「にしても、妙っすね」
「……(首を振る)」
「そうだな、妙だ」
え?なんのこと?
変態は首を傾げた。
変態は決して馬鹿ではない。
しかし、物事を察する能力はとても低かった。
変態が唸り声をあげると、ワンコ♂が説明してくれる。
「ここら一体の住民の"異能”は大体知ってるハズっすけど…俺、こんな触手みたいな能力見たことないっス。ましてや服だけを溶かす酸なんて…」
「観光客なんかの可能性もあるが、俺もこんな"異能”は聞いたことがない。そして、ここまで生物として人間からかけ離れた怪人もな」
繊維だけを溶かす酸とか、サラッと言ってることがやばいが…そう言われてみれば、確かにはだけた友♂の体には傷一つなかったと、変態は記憶の中の友♂を甦らせる。
自身の記憶と相違ない裸体であったため、あれは間違いなく健康的な友♂の身体だ。
そうして思考を馳せる変態を尻目に、ツンデレ♂が情報をまとめあげ、結論を導き出す。
「どちらにしてもあいつが苦戦する程度の怪人が生まれるような異能力者が居たら直ぐに"分かる”」
なるほど、つまりは───
「──恐らく、裏で手引きしてるやつらがいるな。それも、相当悪趣味な」
ツンデレ♂が告げたその言葉は、自分たち……ひいてはヒーローにとっての、新たなる敵が現れたことを意味していた。
凄い軽い上に中身のない世界観説明です。えろ目的に作った作品なのであとから色々付け足されるかも。
・ヒーロー
国家資格を持ってれば誰でもなれるけど、国家資格を得るためには相応の異能や魔法など力が必要。まれに戦闘以外の能力が認められた場合は補助要因として資格を得る場合もあるし、なんなら異能なしでも戦えるバグも発生することがある。
・怪人
基本的には作中の説明通りで、ほとんどが異能が弱い人達が強い感情を抱くことで発生する。大体はその感情通りに動いて、エッチな感情だったら竿役みたいになるし、怒りだったら全てを破壊しようとする。
今回の場合は誰かしらが作ったと思われるが……?
・ヒーロー部
存在自体は秘匿されているが、国家資格を持つ生徒はみんなここに入ってる。利点としては学校側から理解と援助を得られること。授業中抜けても怒られないし、後から補習受けさせてもらえたりもする。
・ヒーロー活動促進部
何故かヒーロー部のことを知っていた変態とその仲間たちによって作られた部活。周りからは名ばかりのサボり部だと思われている。
怪人の研究なんかはそこまで意味はないし進んでいないが、被害を抑えるという一点に限れば実は結構役立っている。
その気になればこいつらだけで怪人は倒せるが、大体のメンバーが資格を持っていないため戦う気は無い。