TS男子大学生の受難 〜メス堕ちしても、君が好き〜 作:キツネリス
世界には何万人に1人という割合でかかるような奇病がいくつも存在する。大抵は名前はおろかその存在すらろくに知られていないほどの非常に稀な病気で症状も様々であるのだが、それらの病気にはその希少性の他にもう一つ共通点がある。
それは、罹患するまで誰もが皆一様に「自分がかかるわけがない」と高をくくっている、という点である。
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ある日俺は突然高熱に見舞われた。全身を苛む怠さも尋常じゃなく体温を測る余裕すらないほどで、頭は重いし、身体を休めるために眠ろうとすれば悪夢に襲われてすぐ目を覚ましてしまう始末。あいにく解熱剤の類も家には置いておらず、できることと言えばとにかく安静にして体調が快方に向かうのを祈ることだけ。そうしてこの忌々しい謎の病気に冒されてから3日ほど過ぎた日の朝のこと。
今年入学3年目を迎え、もうすぐ21歳になろうかという男子大学生、倉橋夏樹は…気がつくと女の身体になっていた。
目を覚まし、未だ気怠いながらも上半身を起こすといつもとは違う妙な体の重みを感じた。寝ぼけていた頭が次第に冴えてくると、それがまるで肩から重たいリュックサックでも背負っているかのようなずっしりとした重みであると分かる。気になって肩を撫でてみるも特に変わった様子はなく、不思議がりながらもふと視線を下に下ろしたところで視界を遮る妙なものに気がついた。
視界に広がるのは、Tシャツの青色とその襟元から覗く自分の肌の色…しかし何かおかしい。どうして襟元の縁がこんなにも前にせり出しているのか?おまけにその隙間から覗ける素肌には縦筋が1本走っている…いや、これは縦筋なんかじゃない。正確に表現するならば…これは谷間というやつだ。
「な、何だこれ…」
段々と脳が己に起きた突然変異を認識していく。胸元に現れたそれは本来男である自分には存在するはずのない部位。にわかに信じがたいその部位の出現に、恐る恐る右手をそれへと近づけていく。そして、いよいよその指先が触れ…
ふにゅり。
「ふひゃあ!?」
驚きのあまり思わずビクッとわずかに体が震え、そして変に裏返った素っ頓狂な声まであげてしまった。指先が触れた瞬間その指をにわかに押し返そうとする程よい弾力と、また同時に指先をそのまま受け入れ包み込もうとするかの如き包容力を感じてしまう。その魅惑的な弾力と柔らかさは、自分の体でなければ夢中で触っていたことだろう。
乱れた心を落ち着けるべく目を閉じて深呼吸する。目で見て、触れてみて、得られた結果を前にした今もはや思考するまでもなかった。胸元に存在し柔らかくて弾力のある部位と言えば当然ながら結論は一つしかない。どういうわけか、今の自分には乳房がついているという事実を俺はようやく理解した。
病み上がりでまだ若干ズキズキと頭が痛むせいでここまで理解に至るのに思いの外時間を費やしてしまった。その後落ち着きを取り戻した頭で思考を重ねるうち、当然ながらもう一つ重大な変化が起こっているであろう懸念が湧いてくる。正直考えたくないことだったが、自分の体に関わることなので確かめないわけにもいかない。
恐る恐る指先を下へ下へと滑らせていき、お腹から下腹部を経てやがて股間へと至る。悲しいことに途中指先を遮るような障害物は穿いていた下着の他には存在せず、泣きたくなるほどにそこは平坦だった。
「ちょっと待った、嘘だろこれ…」
本来ならそこにあるはずの男性器は姿を消し、更地と化した後に残っていたのは、一筋の割れ目。少し強く撫でつければ指先が沈み込んでしまいそうなその触り心地を確かめた後、すぐさますっとその手を引っ込めた。そしてあらためてこの2つの体の変化を頭の中で反芻する。
突如現れた乳房。そして同時に姿を消した男性器。ないはずのものがあり、そして、あるはずのものがない。
2つの変化を確認したとき、俺は嫌でも自分が女になったと受け入れざるを得なかった。
「なんだよこれ…冗談キツイって……」
それはまさしく突然変異。急激な変化に俺はひどく戸惑いそして打ちひしがれた。…それでも、まずは受け止めなくてはならない。俺はもうひとつ気になったことを確かめるため、気怠い体に鞭打ち立ち上がると洗面所に向かった。
洗面台には当然ながら大きな鏡が付いている。俺は恐る恐る近づいていき、そして鏡越しに自分の今の顔がどうなっているのかを覗き見ようとして…次の瞬間鏡の向こうに現れた見知らぬ女の姿に驚愕し目を見開きながら、緊張のあまりごくりと喉を鳴らしつつその女の顔を注意深く観察し始めた。
切れ長の目と細くてシャープな鼻筋は…事情を知った親しい間柄の人間なら、まだ面影を感じるかもしれない。しかしながらやや幅広の唇は心なしかぷっくりと厚みを増したように見える。女性ウケを意識して短く切り揃えて外ハネを意識していた、ちょっと遊んでるっぽい印象も与えそうなショートヘア…その髪質もなんだか男だったときよりツヤツヤサラサラとしていて、前よりも綺麗になっているような…そんな印象を受けた。俺は内心呆気にとられながら思わず自分の頬を撫でた。鏡の中の女も何故か一緒に頬を撫でる。…まだこの女が自分だという実感が湧いてこない。
理解しがたい目の前の光景に頭がどうにかなってしまいそうだったが…それでも、この現実を受け止めるより他になかった。王子様系ボーイッシュ女子…例えるならばそんな肩書を持っていそうな風貌へ、俺の顔と体はすっかり変貌してしまったのだ。地味に男女問わず人気が出そうな見た目で、眺めていてとても複雑な気分にさせられてしまう。落ち込むあまり視線がつい下へと向きかけたところで…視界に写る変異した体つきに俺の中で緊張が走る。
鏡越しに見る乳房がまたやけに大きいのだ。仮に手のひらを添えたならまず収まりきらないであろうサイズ感はメロンだのスイカだのと揶揄されるのも頷けるほどで、あらためて見ると思わず触ってみたくなるような誘惑に駆られてしまう。俺は思わず自分の手をその見るからに柔らかそうな乳肉へと伸ばしかけて……しかしながら次の瞬間伸ばしかけた手を洗面台へとついた後がっくりとうなだれ、深くため息をついた。
(俺は何を考えてるんだ…)
俺には何が何でも男に戻らなければならない…そう考える理由があった。万が一にも我を忘れてこの体に溺れるようなことがあってはいけない。女の悦びなんてものを覚えて元に戻る決意が揺らぐなんてこと、絶対にあってはならないのだ。
男に戻る……それまで急激な体の変化にひどく戸惑い揺れ動いていた俺の心中がその瞬間嘘のように静まり返り、そして脳裏に浮かんだそのフレーズに俺はハッとうつむいていた顔を上げた。本来の姿である男に戻る、そのために俺が今成すべきことは…!
「病院…そうだ、病院に行かないと……!」
次の瞬間、俺は急いで部屋の中へと戻りスマホを手に取ると医療機関の連絡先を調べ始めた。
俺はこの病気を知っている。それは『女体化症候群』…
何もこれは正体不明の奇病というわけではない。
女になってしまった夏樹くんの見た目は言うなればくっころ系女騎士です。凛々しい女性ほど堕ちてく様はエロい。