※この作品はR-18です。

TS男子大学生の受難 〜メス堕ちしても、君が好き〜   作:キツネリス

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ラッキースケベがお好き?結構、ではますます好きになりますよ。(突然のコ◯ンドー語録)


第ニ章『思わぬ助け』

 女体化症候群。世間一般ではそう呼称され広く認知されている。

 高い高熱と倦怠感に苛まれ、体内では女性ホルモンが異常に分泌されホルモンバランスを崩し、そして体の構造を性別が変わるレベルで勝手に再構築してしまう。

 おまけにこの病気の大きな特徴として、思春期を迎える前後の未成熟な体を持つ男子にしか発生しないというものがある。そのため突然の体の異変に子供たちが不安にならないよう、対象の時期を迎える男の子たちにはこの病気に関する特別な教育が施される。

 そのとき教わった記憶を頼りに俺は専用の電話番号へと連絡していくつかの問診を終えた後、紹介された病院を受診するべくいまだ気怠い体を引きずって若干ふらつきながらも紹介された病院へと向かっていた。

 

 

「それにしても…まさかオレが女の子になっちゃうなんてなぁ……」

 

 

 女体化症候群は、体が成熟してホルモンバランスが安定した成人男性には起こらないとされており、実際そういった症例は今のところ存在しないらしい。報告されている患者の年齢も高くても18歳が最大であったということで、既に20歳を迎えて半年以上経っていた自分はもうこの病気には発症しないもの、もう縁のないものだと安心しきってしまっていた。どうして自分がこんな目に…俺は今まさに自分を苦しめるこの得体のしれない病気を心から恨めしく思った。

 

 

 

「クソッ、体が、重い……」

 

 なんとか出歩ける程度にまでは回復したみたいだが、依然として頭はくらくらするし、そのやけに大きな胸のせいで体は妙に重い。普段と重心のバランスでも違っているのだろうか、歩く度にやけにふらついてしまう。気を抜くと前のめりに転んでしまいそうになるのをどうにか一歩一歩踏みしめて耐えようとするのだが、そうやって力むほどにますます消耗していく感じがする。

 変異した肉体に着る服が適応出来ていないのも動きにくさに拍車をかけた。特に下半身…履いているズボンは全体的にだぶだぶなくせにお尻回りはやけに締め付けられて窮屈でとても着心地が悪いという有様で、歩くたびに尻と布地がきつく擦れる感覚がどうにも慣れない。半袖のシャツも胸が大きいせいで上手くボタンを留められないし、その下に着ているタンクトップはと言えば、脇の下が大きく開いているせいで油断してたら胸がはみ出すんじゃないかと気が気じゃない。あらためて身体の作りが男女間で大きく異なるということを実感させられる。

 数日病に伏したせいで未だ万全ではない体調。そして肉体の突然変異により大きくなってしまった胸と尻と、男物の衣服とが引き起こす極端なまでのミスマッチ…突然降りかかったうざったい非日常が、己の思考を乱し続けて注意力の著しい低下を引き起こす。

 

「うわっ!?」 

 そして様々な要因が重なった結果、俺は運悪く何かにつまづいてしまった。しまったと思ったときには俺の体は一気に傾き始めており、急速に地面が近づいてくる。

 

「わっ、と、と、と…っ!!」

 慌てて前に足を踏み出しなんとか最悪の事態を避けようとするのだがそれも足がもつれて上手くいかない。そしていよいよ体が宙に投げ出され、もうだめだと条件反射で両手を前に突き出し転倒に備えたそのとき。

 

 

 

「わぷっ!?」ふにょん…っ「きゃっ!?」

 

 

 

身体に転倒の痛みが走る代わりに、顔面を幸せが包みこんだ。この世のどんなクッションも勝てやしない、弾力と柔らかさの共存した絶妙な心地良さ。思わずずっと埋もれていたいと考えてしまうほどの至福の空間。埋もれていると鼻腔を石けんの甘く柔らかな香りがくすぐり恍惚とした表情を浮かべてしまいそうになる。

 

 

 

…いや、そんな事を考えている場合ではない。

 

 

 

 蕩けかけた思考を一瞬で現実に引き戻す。冷静に今の状況を整理しないといけない…倒れる間際自分は確かに何者かにぶつかった。そしてその時聞こえた声は間違いなく女性のそれ。そして、自分の顔は今とても柔らかな何かにそれこそ埋もれかかっている。

 

…あらためて振り返ると背筋が凍る思いがした。今自分は見ず知らずの女性の胸元に顔を埋めてしまっているのだ。そうと分かった瞬間脳裏に物々しい単語の数々が次々と浮かび上がってくる。痴漢、警察、訴訟、裁判……そんな語句の羅列に社会的な死を予感させられてしまう。

 

 

 

 

「あの…大丈夫、ですか?」

「ん…っ、す、すみませ……」

 

 

血の気が引いていく感覚と共にこの世の終わりを想起させられていたところを、こちらの身を案じてくれているような優しげな声が間近に響いてようやく我に返る。その声色から少なくとも痴漢扱いされてはいないだろうと思い内心安堵しながら返事をしかけて…そこではたと気がついた。

 

 

 

 (待てよ…この声、ひょっとして……)

 

 

 その声には聞き覚えがあった。大学生活始まって以来それこそ毎日のように耳にしてきたと言っても過言じゃない、透明感に溢れ優しげに響いてくるウィスパーボイス…俺の耳が狂っていなければ、彼女の声を他の誰かと聞き間違えるなんてありえない。なぜならそれは、今俺が密かに恋する相手だから…。

 俺は失礼を承知で彼女の肩を掴み、体勢を崩して寄りかかってしまっていた体をどうにかこうにか起こした後自分の力であらためてしっかりと立った。胸元に埋もれていたせいで若干の酸欠状態に陥りかけていたところから落ち着きを取り戻すと共に深呼吸をひとつ。そうすることでようやく目の前に立っている相手の顔がはっきりとよく見ることができた。

 くりくりとした垂れ目、丸みを帯びた小鼻、ぷるんと潤いのある唇…ほのかに茶色がかった艶々の長い髪を肩まで伸ばしたその人は、間違いなく俺の思った通りの人物で。

 

 

「先輩……!やっぱり冬子先輩だったんだ…」

 

 

よく知る相手の顔を見た安心感のせいか俺はホッと胸をなで下ろし…そして自然と彼女の名前を口にしていた。

 

 

「?………えっと…どこかで、お会いしたことありましたか…?」

 

 

 しかしながら返ってきた反応はなんとも他人行儀で、ちょっと余所余所しさすら覚えるほどだ。その人は確かに俺のよく知る相手だったのだが、向こうにはこちらの正体に気がつく様子は一切見受けられない。

 

 

 当然のことだろう、なにせこちらは以前の姿を喪失して女になっているのだから。顔つきも体も何もかも別人なのに分かるわけがない。

 

 自分を誰だか分かってもらえない事態に俺は途方に暮れそうになったが、はっと思い出したようにポケットに手を突っ込み、大学から支給されている学生証を取り出して見せた。そこには顔写真が載っている、それも当然男のときの俺の。

 女になってしまった今、この小さなカードだけが『オレ』が『俺』であることを証明してくれる。

 

 

「先輩、これ見てください。オレです、倉橋夏樹です」

 眉尻を下げて力のない笑みを浮かべながら自分の学生証を自分の顔のそばにかざして見せた。初めこそ何のことか分からない様子できょとんとした顔をしていた彼女も少しの間をおいて事の次第をおよそ理解したらしく、すると次の瞬間彼女は驚愕に目を見開いた。

 

「え、えっ…!?…ほ、本当に夏樹くんなの…?」

「あーっと…信じられないでしょうけど…正真正銘、本物です」

 彼女の言葉に対して俺はどことなく弱気に返事をした。これがフィクションの世界なら、ここぞとばかりに自分しか知らない彼女の秘密なんてものを披露して瞬時に信頼を得るところなのだが…あいにく今の自分にそんな気の利いた情報はない。

 

「そ、それで…体は…大丈夫なの、夏樹くん…?」

「あ、あはは……あんまし、だいじょばないです」

 冬子先輩は続けて俺の身を案じるように声をかけてきながら、心配そうに憂いを帯びた眼差しでこちらを見てくる。俺はなんでもないと言いたげに笑ってみせながら自ら茶化すように答えたが、事実心身共にとても大丈夫だなどと言える状態ではなかった。

 

 女体化症候群はこの社会では一般常識のようなもので、人々の間に広く認知されていることでこうして今のように多少の混乱はあれどすぐに落ち着いて事態を受け入れられるよう一定の配慮が成されている。行政による手厚い保護施策…これがなければ今ごろ俺は、自分を倉橋夏樹だと思い込んでいる謎の一般人女性なんて扱いを受けて怪しい目で見られかねない。そう思うと別の意味で背筋が寒くなる思いがした。

 

 

(それにしても…)

 

 

記憶の中での彼女は俺よりも背が小さくて、いつも見つめ合えば俺は彼女を見下ろす立場にあった。それが今は、まったく同じ高さにお互い視線が通ってしまっている。当たり前だが彼女の背丈が急に縮むわけはない。ならば縮んだのは当然俺の方、ということになる。

 胸があるだのナニがないだのと慌てたときとはまた違う、静かに染み渡ってくるようなその実感に俺は内心すっかり落ち込んでしまっていた。

 例えこれが元に戻ることのできる一時的な変化であったとしても、やはりこうしていざ実感してしまうと一抹の寂しさを感じずにはいられない。

 

 

 (早く病院に行って、治療してもらわないと…)

 

 

 とはいえ落ち込んでいてもしょうがない。逆に考えれば元に戻る見込みがちゃんとあるのだ。となればこんな風に一喜一憂して時間をいたずらに浪費している場合じゃない。

 

「えっと、それじゃそろそろ…病院行かないとなんで、これで…」

「ま、待って夏樹くん!そんなにふらふらなのに一人で行くなんて危ないわよ…!そ、そうだ、私が一緒に行ってあげる!ね、一緒に行きましょ?」

 横をすり抜けて先を急ごうとした俺の手を次の瞬間先輩に掴まれ引き止められた。

 

 その瞬間ドキンと胸が高鳴るような感覚に俺は思わず息を呑んだ。突然の予測し得なかった事象に脳が反応を示すまで結構な間が空いてしまう。

 嬉しい申し出ではある。が、先輩にだって何かしらの予定があっただろうに俺の都合に付き合わせてしまうのは忍びないと思うところでもある。

 

「で、でも…」

「夏樹くんは大切な後輩でかけがえのない友達だもの、ピンチのときには助けてあげたいって思うじゃない?」

 

(先輩…そんなに俺のこと……心配してくれて…)

 

 それは異性に向けられた好意ではない。あくまで先輩と後輩として、そして親しい友人としての親切心から来る言動なのは言うまでもないことだろう。

 それでも、彼女と知り合ってからおよそ2年間、密かに想いを寄せていながらも未だ告白できず親しい友人止まりでいた自分にとってはこうして今手と手が触れ合ったという事実だけでもう天にも昇る気持ちだ。

 そして彼女が自分を犠牲にしてまで同行を申し出てくれたことは、今の自分にとってはとてもありがたい申し出でもある。先輩の柔らかな微笑みが身にまとっている白いワンピースと合わさってとても眩しかった。

 

「あ、ありがとう、先輩…」

 実際このまま一人で病院にまで向かうのは相当厳しいというのも身を持って体感していたため、遠慮がちにではあるが俺はお礼を言って彼女の好意に甘えることにした。

 

「ううん、気にしないで」

 先輩は手を繋いだまま俺の隣に並び立つとにっこりとして微笑んだ。その可愛らしい天使のような笑顔をした彼女とこうして手を繋げていることはとても嬉しかったが、反面それが自分が女になったせいで実現したことなのだと思うと複雑な心境でもあった。




冬子先輩の見た目はおっとり系お姉さんと幸薄系幼馴染を足して2で割った感じです。伝わんのかこれ
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