※この作品はR-18です。

TS男子大学生の受難 〜メス堕ちしても、君が好き〜   作:キツネリス

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夏樹くん高校時代はサッカー部だったらしいっすよ?知らんけど(本編に一切関係ないトリビア)


第三章『彼女への想い』

 病院までの道のりはまだ遠く、先輩のススメで俺たちは市内を走るコミュニティバスに乗車した。

 バスに揺られながら先輩と隣り合って座っていると、なんとなしに彼女と出会ったときの思い出がふと蘇ってきた。

 

 彼女の名前は望月冬子。同じ大学に通う一個上の先輩だ。

 先輩との出会いはおよそ2年ほど前にまで遡る。あれは俺が大学に入学したばかりで入学したての1年生があちこちのサークルから勧誘を受けるような時期、俺もどうせならちょっとした出会いを求めてどこかのサークルに所属してみようかなあ…などという少々不健全な思いを抱えつつあれこれ見て回っていたある日のこと。その日は妙に暑くて、涼しい場所を求めて学内を彷徨っていた。そしてそのとき読書サークルの勧誘ポスターが目につき、これ幸いと涼む目的を兼ねて主だった活動場所らしい学内図書室前にやって来ていた。

 

 そこはサークルとは名ばかりで所属していた学生はほんの数人らしく、おまけに大半が幽霊部員状態という体たらく…そんな状況下の元、そこで一人寂しく案内役を務めていたのが何を隠そう冬子先輩だ。

 

 一人佇む女性に声をかけるのは少々気まずいものがあったが、一見するとお淑やかで優しそうな顔立ちをした彼女に急速に心を惹かれていく自分もそこには存在した。勇気を出して声をかけてみたときの彼女の柔らかな微笑みは今でもよく覚えている。

 

 そこからは実質先輩との2人きりのサークル活動が始まっていった。最初の方こそ彼女といつも一緒に居たい一心で大して興味もない紙の束とにらめっこする日々が続いていたものの、彼女と感想を述べ合ううちに段々と読書の魅力に取り憑かれていき、そのうちに彼女とよく書店巡りなんかするほどまでに親しくなっていった。

 

 正直心の中では彼女を恋人のように思っていたし、そして実際にそうなりたいと思っている。そのためには、何が何でも俺は男に戻らなくてはならない。元に戻りたい理由の全てが彼女に集約されていた。

 

 

 

「それにしても災難だったね、女の子になっちゃうなんて…」

不意に先輩に話しかけられて、俺は思い出鑑賞タイムから現実へと戻ってくる。

「ホントですよ…ああ早く元に戻りたい……」

「今のままだと服とか、下着とか、困っちゃうしね…」

 泣き言を口にしながらあらためて現状を振り返る。先輩の言う通り、特に問題なのがこれから先着る服についてだ。男と女とでは体つきに明確な差があり、それは当然それぞれの特徴に合わせてあつらえられた衣服にも反映される。

 事実俺は今朝からその明確な違いに悩まされてきた。相変わらずお尻回りはきついし、胸元だって動くたびやたらと揺れてちょっと痛みを感じる場面もあったりする。真面目にブラジャーくらいは用意したほうが無難なのでは?と思うほどだ。 

 とはいえいずれ元に戻れるという状況下で一時的にしか着ない服を買い揃えるというのも抵抗があるし、そもそもそこまで金銭的に余裕があるというわけでもない。

 

「そうだ、私のお古で良かったら少し分けてあげようか?何枚かそんなに着なくなったのがあったはず…!」

「え、ええっ…!?」

 

 先輩の唐突な提案に俺はひどく動揺した。いや、懐事情だけを思えばとてもありがたい話ではあるのだ。だが俺は体は女になってしまったとは言え心は言うまでもなくまだ男のままだから、いきなり女物の服に袖を通すというのもそれはそれで抵抗がある。

 何より先輩のお古という点が一番厄介だ。それは当然先輩が一度身につけたものということになる。……自分の中で良からぬ扉が開きそうな悪い予感がした。

 

「……と、とりあえず、診察終わってから考えます……」

 

 俺は努めて平静を保ちながらそう絞り出すのが精一杯だった。

 

 (それにしても…先輩の着ていた服、かぁ……)

 ふと先輩のまだ見ぬラフな部屋着姿を想像してしまう。いま着ているノースリーブの白いワンピース姿もとても眩しくて綺麗だと思うが、薄いピンクや水色などのパステルカラー主体のパーカーやドルフィンパンツを身にまとった姿もきっと似合うに違いない…などと、ついついくだらないことを考えてしまう。

 思えばこの2年、一切接点のないほぼ同年代の男女というスタート地点を思えば相当気心の知れた仲の良い友人という関係にまでなれたのは我ながら喜ばしいところなのだが、しかしながらまだ恋人とまでは言えない関係性であったのも事実だ。それゆえ先輩が自宅でどんな部屋着を身に着けているのかなんてことは知る由もなく…そうなると、先輩から古着を譲ってもらうという申し出は期せずしてこれまで知らなかった先輩の一部分を垣間見るチャンスであるとも考えられた。

 

 (…………いやいやいやいや、何を考えてるんだ俺は!)

 

 しかしながらすぐさまその邪な考えを俺は軽く首を振って頭の中から追い出す。彼女はあくまで親切心で申し出てくれているのだ。そんな恩を仇で返すようなことは

絶対にしたくない。ここはたとえ窮屈でもこのまま男物の自前品で凌がなくては…そう決意を新たにする。

 

 にわかに生じた葛藤を振り払い現実へと戻ってきたところでふと先輩がじっと俺の顔を見ているのに気がついた。

「…あの、オレの顔……やっぱり変ですかね?」

「えっ?あ、う、ううんっ、違うの、その、ええと……」

 俺の声が怪訝そうに聞こえたのか先輩は少し取り乱したように言葉を濁した後、若干の間を置いて絞り出すような声で答えた。

 

「ご、ごめんなさい、その…女の子になった夏樹くん…とても、綺麗だったから……っ」

 先輩はそう言うと恥ずかしそうにうつむいてしまう。そんな様子を見ていた俺も心なしか顔が熱く火照ってくるような感覚に襲われた。好意を寄せている人に容姿を褒められるのがこんなにも心躍るものだとは思いもしなかった。嬉しさのあまりくすぐったい感覚に身悶えしそうになる。

 

「ね、ねえ夏樹くん…その、今度声録音してもいいかな…?女の子になった夏樹くんの声、その、ハスキーで、とても、カッコよくて……」

 自らの内側に生じた予期せぬ反応に喜びながらも戸惑っていると彼女はさらにそんな俺の心をかき乱してきた。下手をすると男のときより彼女に対して好印象を与えているのではないのだろうか?……男に戻る決意が少し鈍った気がした。

「…ほ、他の人には内緒にしといてくださいね……」

「あ…う、うんっ、絶対内緒にするね…っ」

 先輩のたっての頼みとあっては無碍にもできず、若干顔を引きつらせながらも遠回しにだが了承することにした。先輩にここまで言わせた以上、自分としても少しくらいは形に残るものを保存しておくのも悪くはないか…などと、彼女の綻ぶ顔を見ながら考えてしまう。

 

 

  

「あっ、夏樹くんそろそろ病院前着くみたいだから降りる準備しよっか」

「え……あ、ホントだ」

 先輩の声につられるように前方の電光掲示板に視線を向けると、確かに目的の病院の前にもうすぐ到着予定である旨が表示されていた。俺と先輩はバスが完全に止まるまで待った後、乗車料金の支払いを済ませてバスを降りることにした。

 このときも先輩は未だふらつきがちな俺のことを心配してくれたのか先んじて外に出た後こちらをじっと見ていてくれている。心底ありがたいと思いながらも慎重にバスの昇降口のタラップを一段一段降りていった…のだが。

 

 

 

 一番下の段から地面へと降りるときの段差が思いの外高かったのを俺は完全に見誤ってしまった。ここだと思い地面を踏みしめようとした足がスカッと空を切り、そのせいでぐらりと俺の体がバランスを崩してそのまま前方に投げ出されていく。

 

「う、わ、わ、わああっ!?」

「あ、危ないっ!!」

 

 地面へと倒れていく俺を見るや否や、先輩が咄嗟に前へと進み出て俺の体を受け止めようと両手を広げて身構える。俺も思わず彼女にしがみつこうと気がつけば両手を突き出し彼女の腕の中に飛び込んでいた。そして、多少体勢を崩しそうになったが俺の体はどうにか先輩に受け止めてもらえたことで難を逃れることができた。

 

「ふー…危ないところだっ…た…………?」

 

 

 

 俺は安堵のため息とともに落ち着きを取り戻しかけ…しかしそこで、自分を受け止めた先輩の手が俺の体のとある部位に添えられてしまっていることに気がついた。

 

むにゅう…っ。

 

柔らかな乳肉に先輩の指先が沈みこみ、少しでも身動きをとろうものならその指先に余計に食い込んでいく。俺は思わず心の中で叫んでしまった。 

 

 (お、俺、おっぱい、掴まれてる……っ!!!)

 

 グアーっと顔が急激に熱くなってくるような錯覚を覚え、しばらく恥ずかしさと気まずさにどうしたらいいか分からず硬直してしまう。だがいつまでもこうしているわけにもいかず、それなりの間をおいてようやく俺は自分の力でしっかりと立ち彼女の腕の中から抜け出た。

 

「す、すみません先輩…!」

「う、ううん、わ、私の方こそ、ごめんなさい…」

 

 未だ気まずさが残る中、そっと遠慮がちに彼女の方を見ると向こうもそっぽを向いていたのだが、よく見ると耳まで紅潮してしまっているようだった。

 

 (う、うう…偶然とは言えなんか申し訳ないことしちゃったな……)

 

 先輩に触れられた感覚はまだほんのりと自分の中に残っていて、急激に鼓動の速まった心音がやけに耳にうるさく感じられた。

 その場をどう取り繕ったものか悩みつつもふと時計を確認すると、予約を入れたその時間がわりとすぐそこにまで迫っていた。

 

「や、やば、そ、それじゃオレそろそろ予約の時間なんで受付行ってきますね!」

「あっ、じゃ、じゃあ私、待合室で待ってるからっ…!」

 

 先輩の声を背中に受けながら、俺は小走りに病院の受付の方へと駆けていった。




いつから夏樹くんがラッキースケベを享受する側だと錯覚していた?彼は語り部であり同時にメインヒロインなのです。
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