自分の責任から目を逸らし続けた浦和ハナコに因果が巡る話 作:roborobo
原作:ブルーアーカイブ
タグ:R-18 アンチ・ヘイト ブルーアーカイブ 浦和ハナコ リョナ 顔面崩壊 スカトロ 尊厳破壊
※オリジナル男子生徒アリ
※説教要素アリ
※リョナ要素あり
※pixivにも投稿しています
「よっ、久しぶり!」
「おう! いやぁ、やっと互いに暇が出来たなぁ……ほれ、もう注文しといたぞ」
賑やかな店内は楽し気な客と忙しそうな店員の声で溢れていた。その声の内に混じる様に、二人の男性がテーブルを挟む形で向かい合う。
キヴォトスの市街地にある歓楽街、そこにある飲み屋で顔を見合わせている二人は昔からの幼馴染だった。
先に座っていた茶髪の青年は、後からやってきた黒髪の青年が座る椅子を指さした。昔なじみの好みを把握しているため、『いつもの』と言って、大人になってから飲みなれたビールを注文した。
「悪いな。ここの所、仕事の方が忙しくてさ。あっちの方、だいぶデカい案件が入ったからそりゃもう、徹夜続きよ」
「あぁ~、やっぱプログラム関係って結構大変なんだなぁ」
「ほんとね、クライアントからの注文がいきなり変更になって……あ、すいませーん! からあげ追加で!」
疲れが顔に出ている黒髪の青年を眺めながら、茶髪の青年は苦笑いした。
苦労しているのだろうな……と。昔から責任感のある事を知っているだけに、仕事でも多くの気苦労を背負っていることが容易に想像できてしまう。
共に小学校を過ごし、互いに青春を送りながら勉学に励み、キヴォトスでも有名校として知られるトリニティに進学した彼らは、学園を卒業後は有名企業に就職。同じ社会人になってからは別々の会社に入ったため、休日も合わず一緒に過ごせる時間はめっきり減っていた。そんな二人が交流できる場所は、同じ仕事終わりの際に入れる居酒屋くらいしかなかったのである。
見慣れた顔だと思っていた。昔から目にしてきた友人の顔は、幼かった顔立ちから顔に刻まれた皺とほうれい線を増やし、その身に刻んできた彼の苦労を物語っているようだった。
二人で昔からの話に花を咲かせながら、共に過ごしてきた青春の話を広げていく。
楽しかったあのころ、学生時代に体験した辛い出来事、刺激的なことを。
共に過ごしたあの日々。決して戻らないけど、かけがえのない日々。それは二人にとって、変わることない思い出だった。
「あー……楽しかったと言えば、さ。ほら! あれあれ! ゲヘナの!」
「……ん、あ~~~~……あれかぁ」
黒髪の青年が答えたことに、茶髪の青年がニカッと笑った。
「……楽しかったよなぁ、あのクソッタレゲヘナのサンドバッグ遊び……」
「あー、やったやった……」
二人の中で繰り広げられる、過去の楽しい一大イベント。ゲヘナの生徒を親友たちで拉致し、好きなだけ遊び狂ったあの頃の思い出。
捕まえた赤い髪の少女は体も心もズタズタに踏みにじられ、毛髪は二度と生えてくることはなく性器を破壊されて子供を産めない体にさせられてしまった。そんな彼女を先輩だと慕っていた黄色い髪の娘も、赤髪に加えた制裁に目玉を引き千切って反応を楽しんだものだ。
二人は顔を見合わせる。あの時に楽しんだ思い出を振り返りながら。
「……やっぱさぁ」
「うん」
視線を交わらせながら、二人で――笑いあった。
「いやぁ~、やりすぎちゃったよね(笑)」
「だなぁ、あそこまでやる必要なかったわwww悪いことしちゃったなwwww」
ゲヘナはクソ、クソッタレのゲヘナはトリニティの生徒として制裁しなければならない。そんなことを考えていたのも、いやぁ、青かったね(笑)と言って笑いあう二人。
今となっては未熟な心を持った人間のやんちゃないたずらだった。あの一件で傷物にされた二人は、二度と社会復帰できなくなって今でも介護を受けなければ立ち上がれないほどになってしまい、今でも一人では排泄行為もままならないのだ。
これらに加えて、彼らが名前としてあげていた『浦和ハナコ』という名前だけで出したスケープゴートにも被害が波及した。彼女は何の関係もないゲヘナの男子生徒たちによって拉致されて、赤髪いや黄色髪の二人と同じように二度と社会復帰できなくなるほどの苛烈な制裁を受けた、らしい。
だけど、それらに関して二人はあまり興味はなかった。あるのは、みんなで過ごした楽しい青春の日々だけ。拷問した二人のゲヘナ生徒の名前なんて思い出せないし、浦和ハナコのその後なんて特に興味はない。だって、子供のころの悪戯には面白かった記憶だけが重要であり、おもちゃにたいして何の思い入れがないのは当然なのだから。
運ばれてきたツマミと酒に手を付けて、ある程度腹が膨れたところで会話を盛り上げていった。
「……いんや、さ。こうして一緒に話せる機会ってあんまりねぇからさ……おまえはさぁ~、すげぇよ~……俺なんかよりぜんぜん頑張ってるんだもん」
「そんな……俺なんか全然だよ。俺は自分でやれる範囲のことをやっているだけさ。誰でもできることを、さ」
なんてことはない、といった顔で黒髪の青年は答えた。ほがらかな顔をして、頭をぽりぽりと掻く仕草は、昔と変わっていないあの頃の面影を感じさせた。
こいつはいっつもそうだよと、心の中で茶髪の青年が呟いた。
「……お前はさ、昔っから苦労人だったよな。いつでもほかのやつらより人一倍努力家でさ」
「んなことないよ。俺は自分のやれる範囲で頑張ってるだけ。俺の苦労なんて、そんな大したもんじゃねぇさ」
だからすげぇんだよ。そう、茶髪の青年はつぶやいた。
努力なんてものはそう簡単に継続できるはずがない。何かを成し遂げる事、何かをやり続けられるものはその時点で大きな才能を持つ者たちだ。
茶髪の青年は、そんな幼馴染を尊敬していた。彼は何も持たない凡人だとは言うが、そんな自分の身の程を知りながらもやれる範囲の事を見極めて、自分が出せる結果を出し続けてきた。
やれないのだからやらないんじゃなくて、やれる範囲でやってみせる。ましてや、やろうともしないなんて絶対にダメだ。それが、幼馴染の言葉だった。
※
「うっし! 次いくぞ次ぃ!」
「おいおい、明日も早いんじゃなかったの?」
「いいのいいの! 次で終わりだから! おーし、いっくぞー!」
ふらふらと心地よい千鳥足。ほろ酔い気分で気持ちの良い彼らは、楽し気に繁華街を練り歩いていく。
誰もが通りすがっていくのを横目にしながら、二人で肩を組み合いながら和気あいあいと歩を進める。居酒屋で飲む楽しさもそうだが、こうして大切な幼馴染と一緒に過ごせるのが何よりもうれしかった。もっとこんな楽しい時間を過ごしたいと、そう思っていた。
だんだんと、だんだんと。彼らの足が周囲の景色を変えていく。喧騒溢れる表の道から、裏通りへと。
「お~? 次って隠れ家的な場所?」
「うん、この前ネットの評判でいいのが見つかってさ」
黒髪の青年の説明に茶髪の青年が関心したように「へぇ~」と呟く。基本的にいつも飲み場所として使っていた店がチェーン店などが主だったから、個人経営がしている店は珍しいと思っていたからだ。当たりはずれのある店よりも、無難なチェーンの方が良い。
だからこそ、信頼できる幼馴染のチョイスは信じられた。次の店は、どんな料理が出てくるのかと心待ちにして――
「……え、あれ……」
ぴたりと、肩を組んでいた幼馴染がその場でぴたりと止まった。
ほがらかな彼の様子が様変わりをしたみたいで、肩を組んでいたほうも「ふが?」と間抜けな声で返事をしてしまう。
何かを見ている……幼馴染が向けている視線の先、そこに有る物を見て茶髪の青年も「あっ」と声をあげた。
「……ホームレス」
裏通りにある、ゴミ捨て場。そこを誰にも見られないようにがさごそとあさっていたソレを目にして、眉をひそめた。
何とも汚らしい風貌だと思った。着の身着のままのスウェット姿で、体そのものを覆い隠すようにぼろぼろのコートを纏っている。寒い時期だから、自分の体が冷えないための対策なのだろう。
あまり見たくない光景だな、と思いながらもちらりとフードのしたにあるものが、その素顔を視界に捉えた途端、これまた奇異な物を見せつけられたようで気分が悪くなった。
汚らしい顔をした、しわくちゃだらけのババァだった。年のころは40か50台くらいの年齢で、見てみれば歯がないのかふがふがしている。毛髪らしきものが見当たらいないあたり、髪の毛が生えてないハゲの婆さんのようだ。
「……おい、いこうぜ」
「……」
「あ、お、おいって!」
これ以上、見てやる必要もないだろうと思い、次の店へ早く行こうと幼馴染を急かそうと思った。
それなのに、幼馴染の方はつかつかと彼女のほうに歩みより、そのホームレスに向かって話しかけようとしていた。
(そんな奴に話しかけるなよ……もしかしてボランティアのつもりか?)
いくら優しいやつとはいえ、こんな奴に接するのはやめてほしい。そう思って肩を叩こうとして――
「――お前、浦和か……?」
幼馴染の言葉を聞いた瞬間、「えっ」と茶髪の青年のほうも呆気に取られた。
声をかけられたホームレスも同じだった。幼馴染のほうに顔を向けて、目を見開きながら心底驚いている。
「あ、やっぱりそうだよ。浦和ハナコだ。みためババァっぽいけど……あ、ほら。よく見ると面影があるもん。へぇー、ホームレスになってたんだ」
「……え、え? マジで? えっ? マジで浦和?」
興味深そうに彼女に話しかけながら、感心するようにため息を零してしまう。
まさか、本当に彼女なのか。卒業して10年以上経ったがここまで人とは変わる者なのか……そう思い、時の残酷さを感じながらも、これがかつて、次期ティーパーティー候補ともされていた彼女だというのか?
「え、え? ていうか何やってんの? 学園を退学したってのは聞いていたけど今はホームレスになっちゃったワケ?」
半ば半笑いで問いただしてくる幼馴染の言葉に、能面のような表情を浮かべていたホームレスが肩を震わせ始めた。まるで、これまでずっと押し殺してきた感情が、今になって噴出したかのように。
「にしてもまぁ、落ちぶれたもんだよなぁ……なんかあった時のためにスケープゴートとして名前を使ったけどさ、まさかこおまで落ちぶれるとはさ」
「っ……!!」
「いやまぁ、でもしょうがないよね。だってキミさぁ――」
「『なにもしてこなかった』んだから」
幼馴染の一言、それが放たれた直後に、押し黙っていたホームレスが手に持ったゴミを投げつけた。
「っっっ゛……!! ぁっ、ぁぁああぁあぁぁ゛ーーーーーーー!! ああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あっ゛ーーーーーーーー!!」
「うわっ! うわうわっ、うっわっ!! ごみ投げてきやがった!!」
ゴミ捨て場にあったゴミ袋が、内容物をぶちまけながら次々に投げつけられてくる。猛り狂った世捨て人が、外聞も恥もなく何もかもを投げ捨てながらばさばさと。
しかし、そこはゴミ。重い物は投げられないのだから、投げつけられてくるのは軽いやつだけ。痛みも何もない抵抗に、それでも少し苛つかせてくるその行為に幼馴染が切れた。
一気に距離を詰めて、真正面からのヤクザキック。腹部に打ち据えられた蹴りが、醜い浮浪者を背後へとぶっ飛ばした。
「ぶっ゛!! ンぅうぅぅ゛~~~~っ!゛!! うぅ゛~~~~~~っ!!!」
「……うっわ、きったねぇ~~~……なんか顔に体液で濡らしてるよ」
「涙じゃね? あとはまぁ、鼻水とか」
いや、どっちにしろ汚いでしょ。と呟く幼馴染。
地面でごろごろと寝転がるソレは、腹部の痛みに悶えて苦しんでいる。こんな浮浪者がいける病院なんてないだろう。いや、そもそも保険証だってないはずだ。
が、そんなことなんてお構いなしに幼馴染は彼女の顔にめがけて蹴りを叩き込んだ。「ぷぐぉっ゛!!??」と豚の悲鳴のようなものが溢れて、だらだらと血と歯が抉れるように飛んでいった。
「ひぇ~~~おっかねぇ~~」
ジッと幼馴染の淡々とした作業を眺めている。もう、決着はついていた。あのホームレスに出来ることなんて、何もなかった。
しかし、屑が逆らってきたことを許せないのか、幼馴染は彼女の頭を踏みにじりながらぐりぐりと靴の裏を擦りつけていく。脚の下でもがもがと悶えるそれを、本当のゴミか何かのように見つめながら。
「ァ゛、あなだ、だちがっ……! いな、いなげればっ゛……!! いまっ、いまごろ゛……! いまごろぉ゛……!!」
「いまごろ? なに? もっとまともな人生を送れてたって言うの? あのさ、人のせいにするのはどうかと――」
「あなだだぢがっっ!! コハルぢゃんをっ゛!! コハルぢゃんぉ゛ぉ゛!!」
擦り切れた喉から聞かされる言葉に、誰?と一瞬で考え込んでしまう。
少しだけ間を置く。おいてから、やっと思い出す。
「……あー! 正義実現委員会の! あのちっちゃいの!」
「あなだだちのぜいでっ!! あの子が! あの子がぁ゛!!」
……それからの話は聞くもつまらない話だった。
どうもあの後、スケープゴートとして利用されたハナコは、赤髪と黄色髪のゲヘナ女子生徒の知り合いのゲヘナ男子生徒たちの手によって報復にあったらしい。
が、どうやらその時に捕まったのはハナコだけではなく、知り合いであるコハルという少女も巻き添えになったのだとか。お前も同じ苦しみを味わえだとか言われて、コハルという子も社会復帰できない程度に拷問にかけられたらしい。
それらを右から左に受け流しつつ、口の中が痛いのか途切れ途切れに彼女は語ってくれた。つまらなそうにあくびをしながら、やっと彼女の話が終わり、言い終えたのかギロリとハナコは睨んだ。
「あっそ」
「ぶぎょっ゛!? ぶごぉぉぉぉぉぉっ゛!!!???」
あ、もういいよね? と言わんばかりのサッカーボールキックが鼻血まみれの鼻っ面に蹴りが叩き込まれた。
苦痛に喘ぐ女の体が、もがもがと地面の上でのたうち回っている。想像以上の痛みが顔に広がっているのか、歯抜けになった口が苦痛で喘いでいた。
しかし、それを幼馴染は許さない。仰向けになろうが顔の横っ面を、時には無防備な腹にめがけて蹴りを叩き込んでいく。
「んぶっ゛!? ぶごぉぉっ゛!! ぷぎょっ゛!? っぶぎぃぃぃぃぃっ゛!! いぃっ゛、っぎぃぃ! いだっ、いだぎぃぃぃっ゛!!」
音を押せば鳴る犬のおもちゃのように。血の混じった空気と共に吐き出される掠れた悲鳴が、容赦なく降り注ぐ蹴りの嵐と共に鳴り響いていた。
じたじたもがもがと身もだえする様は、まさに地を這う芋虫がごとき醜態。その様を何の感慨もなく眺めながら、仰向けになったところを幼馴染がギュッと踏みしめた。
「……あのさ、さっきも言ったけどさ。お前、何もしてこなかったじゃん」
「ぁ、ふが゛っ……!」
「お前ってさ、トリニティでは誰よりもティーパーティーに入れる資格のある人間だったんだよ? お前はトリニティのやり方や組織的な一面がすっごい嫌だった。それはもうわかったよ。でもさ」
力を加えながら乗せていた足を緩めた。次の言葉をしっかりと聞かせるために。
「だったらさ、自分がトリニティのトップに立ってなんとかしようって思わなかったんだろ? お前。『何とか出来る』立場に『なれそう』だったのに」
「……は、ふがっ゛……?」
その言葉に、ハナコの表情が固まる。
「お前はトリニティという学園の内情を嫌っていた。でもお前は、ソレを変えられる立場に近づくことが出来ておきながら、自らの判断で蹴り飛ばしたんだ。変えられるチャンスはあったのに、お前はそれを自分で捨て去ったんだ。それってさ――」
「考えようによっては、お前はトリニティのやり方を無言で肯定していたって事だろ?」
無情なまでの幼馴染の言葉に、ハナコの表情が引きつる。
「ふあ、あぐっ……!! ぢがっ゛!! ぢがぁぁぁぁぁぁ゛っ゛!! わ、わだじっ゛!! わだじはぁぁぁぁ゛! み゛、みんな゛どぉっ!! おなじっ゛!! おなじ、ように、ずごじだがっだっ!! みんなどぉぉぉぉ!!」
「うん、そうだよね。自分だけさえよければほかの連中なんてどうでもよくて、自己保身のために『誰か』がやってくれればいいと責任を誰かに背負わせる。否定しておきながら組織の内情にどっぷりと依存している……お前さ、ほかの連中と自分がなんら違いのない人間だって気づかない?」
「っっっ゛……!! ぁあああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーー゛っ゛っ゛っ゛!!」
狂ったように悶える言葉を吐き捨てながら、恨みと悲しみに満ちた怨嗟の声が木霊した。
声としてはそこまでは大きくない。ただ、必死の形相で叫びながら、喉から血を流しながらの嗚咽は真に迫るものがあった。
「……お前さ、人のせいにするんじゃねぇよ。自分で変えられる機会もあった、自分で何とかする手段もあった。でも、ほかの生徒たちと一緒のままでいたいから、変えることも護ることも自分から放棄した。お前はな、友達よりも自分を守っていたんだよ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーっ゛!! ぁぁぁぁああぁぁぁぁああああああああああぁぁぁ゛!!!!!!」
「……なぁ、お前さ。こんな体たらくでさ」
「――まだ、そのコハルってやつの友達でいられると思ってんの?」
「ンいぃぃぃいぃい゛ぁああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ ゛あ゛!!!!! ごめっ゛!! ごめ゛んなざぃぃぃぃぃっ゛!!゛ ごめ゛ぇぇぇっぇ゛!!! ごめっ゛、ああ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
びたびたと地面の上で跳ねまわる物を詰まらなそうに眺める二人。
もう、これ以上のことは必要ないだろう。こんな何もできない『無害』どころか『害』すらなにもない世捨て人を後にして、二人の青年は次の店へと向かっていった。
※
「……なーんかさ、かわいそうな奴だったよね。彼女もさ」
「……だな」
記憶から消しても消さなくても構わないような女の事を振り返りながら、二人でそっとため息を吐いた。
「自分から変えられる努力を持っておきながら、それを自分から放棄したという選択をしておいて、その結末を迎えたうえであの様だ。自分が上手くいかなかったことを他人に八つ当たりしたところで何にもないのにね」
その言葉を聞いて、茶髪の青年は心の中で頷いた。
だって、知ってるから。自分ではやれないことを、自らの判断で選択肢、乗り越えてきた人間を。そんなちょっぴり尊敬できる自分の幼馴染を横目に、そんな彼を誇りに思いながら共に肩を組んで歩いていった。
「わ、わわっと……どうしたんだよ急に」
「へへ、ねんでもねぇよ。ほれ、次の店は俺が奢ってやるよ!」
「お、いいの? ラッキー」
共に肩を組み、その日は楽しく飲み明かしていく。楽し気な夜の街並みが、二人の友情を祝福しているようだった。