美しき排泄──アナルを晒したストイック美女のゼリー排泄実演講義 作:鬼金目なむか
静かに閉ざされていたセミナールームの扉が開いた。
スマホ画面の向こう側の存在が、コツコツとヒールを響かせながら颯爽と姿を現すと、会場全体の空気がざわめいた。
「すっげぇ美人……」
「やば……ホンモノだ……」
栗色のロングヘアが揺れるたび、光沢がきらめき、モデルさながらの美しい歩みが視線をさらう。
スーツのジャケットの下には、彼女が扉を開ける前に着用したビッグシルエットのTシャツが覗き、そのアンバランスさが恵那の魅力を引き立てていた。
伊吹恵那がセミナールームの扉を開けてたった数秒。たったそれだけの時間で受講者たちの高揚はMAXに達していた。
だが、彼女が教壇に立って正面を向いた瞬間、再び空気が張り詰める。
画面の向こう、一方通行で眺めていた非現実的な存在がこちらを認識している。今ここにいる自分たちがどうしようもなく「当事者」であることを突きつけられる。
彼女はそんな受講者たちの気配をすぐに察知した。
恵那はオーディエンスを見渡し、にこっと目を細める。
「皆さん、こんにちは。『排泄マナー講師』の伊吹恵那です」
凛とした声がセミナールームに響いた。
彼女は一瞬間を置き、真剣な話をこれからするぞというように眉根を寄せ、
「最初に言っておきますけど、わたし、む~っちゃくちゃ緊張してます」
と困ったように笑った。
「だから……一回みんなで深呼吸しましょうか」
「…………」
客席は沈黙している。受講者たちの表情はわずかに弛緩していたものの、まだ居住まいが定まらない様子だった。
恵那はそれを瞬時に察して、
「はいはぁい! 深呼吸いきますよ。せーの、ほら吸ってぇ~!」
と強引に進めた。
おずおずと顎をあげて息を深く吸い込む受講者たちを見て恵那は満足げにうなずく。
「ふふっ、そうそう。では今度は…………吐いてぇぇーーっ。…………そう、いい感じです!」
ささやかな共同作業によって、場の緊張が少しずつほぐれていく。
──と、恵那は彼らの視線が自分のTシャツに注がれているのを感じ取った。
「……あ、コレやっぱり気になります?」
彼女は微笑みながら、スーツのジャケットを軽く広げ、Tシャツの文字を指し示した。
そこには見事な楷書の筆文字で、大きく「美しき排泄」と書かれていた。
「これわたしが作っちゃいました。字もわたしが書いたんですよ? このTシャツ、皆さんの反応が良ければ、ウェブで販売しようと思ってますし、このあと着て帰ろうと思ってます」
おどけて言う恵那の言葉に、緊張していた受講者たちから小さな笑いが起きる。恵那も、にいっと笑顔をつくる。
「でも……」
意味深な間。
「……やっぱりこれから『実演』するには肌隠しすぎですよね」
そう言うと、彼女はジャケットとTシャツを脱ぎ捨身てた。
セミナールームがざわめく。
恵那がTシャツの下に着ていたのは、ノースリーブのクロップドトップのシャツ。
彼女の引き締まったウエスト、なだらかな畝をつくる腹筋、その陰影のグラデーションに彩られた肌が露わとなり受講者たちの視線を釘付けにした。
まるで彫刻のようなプロポーションは、彼女が日々自分を研ぎ澄ましてきた証そのものだった。
視線を浴びながら、まるで注目から力を得たように──彼女は静かに微笑んだ。
◆
教壇に立つ恵那は、受講者たちの顔を見渡しながら、少しリラックスした様子で話し始めた。
「今日は、排泄マナーについてお話ししますが……その前に、少しわたし自身のことをお話しさせてください」
教室は静かに集中し、彼女の言葉に耳を傾けている。
「わたし、小学生の頃からひどい便秘に悩んでいたんです。お腹が張って、いつも気分が悪くて。学校に行っても、全然集中できなくて……本当に辛かったです」
彼女は少し苦笑し、続けた。
「肌荒れも酷くて、自信を持てない時期が長かったんです。中学生の頃には、便秘がさらに悪化して、痔にまでなってしまって……。皆さんも、こういう経験ある方、きっといらっしゃると思いますが、本当に辛いですよね」
彼女の体験に共感するように、受講者たちが小さく頷く。
「でも大学で排泄に関する研究や論文を読んで、初めて正しいやり方があると知ったんです。それまでは、とにかく『出すために頑張る』ことが全てだと思ってました。食物繊維や水分、運動――これが大事って。でも実は、出し方そのものがすごく大事だって知って、目から鱗でした」
そこで恵那は懐古するように目を閉じる。
「インスタのコメントでも、よく『まずは出る状態に持っていく方が重要じゃない?』っていう質問をいただくんです。もちろん、その通りです。でも、出す時のやり方も同じくらい重要なんですよ。わたしはそれを自分で体験して、身をもって知ったんです」
そう言うと、恵那は慈しむようにそっとお腹に触れる。
「正しい姿勢で排便すると、腹圧を無理にかける必要がなくなります。肛門や直腸に無理な負担をかけず、便がスムーズに出るようになるんです。これが実は、便秘を悪化させないためにも大事なことなんですよ。少しでも楽に出せるなら、その方がいいですよね」
恵那はここで間を置き、「さて!」と顔をあげて受講者たちに視線を向ける。
「ところで皆さん、普段どんな姿勢で排便しているか、考えたことはありますか?」
急な問いかけに受講者たちは少し戸惑いながらも、数名が手を挙げる。
「前かがみ……かな」
「私は背筋を伸ばして」
恵那はうんうんと鷹揚に頷いたあと、「…………」と沈黙しつつもその瞳が何かを語りかけるように見えた瞬間、
──ただ、ニコッと微笑んだ。
それはとてもお茶目でかわいい老若男女だれでも恋してしまいそうな笑顔であったが、受講者たちは心臓を撃ち抜かれて顔を赤らめながらも、肩透かしを食らったような空気になった。
だがそれも恵那の思惑通りだった。
「要するに、排便の姿勢にも個性があるんです。だから、それを知るのはすごく面白いんですよ」
そう言うとふふっと笑う。
そして──
「楽に排泄できる具体的なやり方については少し後で、詳しくお話しします。あ、実演を交えて、ね」
恵那は茶目っ気たっぷりに歯を見せて笑い、ウィンクした。
真面目な雰囲気で話していた美人が突然こういうことをすると相当な破壊力を生む。
実際、何名かの受講者は動揺してガタッと椅子を揺らしたし、別の何名かは膝の上で手をぎゅっと握りしめ顔を赤くしていた。
「今はまだ基本的な話ですが、少しずつ、どうすれば快適に排泄できるかを学んでいきましょう」
恵那は楽しくてたまらない、というふうにまた笑った。