体育祭の熱気が、まだ校舎のあちこちに燻っているような気配を感じる放課後。しかし、女子更衣室の中は、外の喧騒とは対照的に、シンと静まり返っていた。高い窓から差し込む夕暮れの光は、白いタイルや金属製のロッカーに反射し、どこか現実味のない、非日常的な空間を作り出している。空気中には、日中の汗の匂いと、消毒液の匂い、そして微かなプールの塩素臭が混じり合い、重く淀んでいた。
その空間の中央で、堀北鈴音は、トレーニングウェアのシャツを脱ぎ、汗ばんだ肌をタオルで拭っていた。鏡に映る彼女の姿は、いつも通りの冷静沈着さを保っているように見える。だが、その背後には、壁に寄りかかり、冷ややかに腕を組んで彼女を見つめる男――綾小路清隆の姿があった。
物陰、ロッカーの影に隠れるようにして、櫛田桔梗はその光景を盗み見ていた。指先が、冷たいロッカーの扉の縁に、白い塗装が剥がれ落ちるのではないかと思うほど強く食い込んでいる。心臓が、早鐘のように激しく、そして不規則に脈打っていた。
(なんで…なんであいつだけ、あんな風に…平然としてるの? 私だけが、あんな酷い目に遭って…契約までさせられて…なのに、あいつは…)
嫉妬と、不公平感と、そして説明のつかない焦燥感が、彼女の胸の中で黒い渦を巻いていた。
綾小路が、不意にポケットに手を入れた。櫛田は息を呑む。また、あの小瓶だろうか。何か薬のようなものを使って、堀北を従わせているのだろうか。そう思った。しかし、彼が取り出したのは、小瓶ではなかった。彼は、こともなげに、自分のベルトのバックルを外し始めたのだ。カチャリ、という乾いた金属音が、静かな更衣室に妙に大きく響いた。そして、ベルトを引き抜くと、彼は何の躊躇もなく、ズボンと、その下のボクサータイプの下着を、一気に足首まで下ろした。
彼の、硬く勃起した男性器が、夕暮れの光の中で露わになる。それは、昨日、櫛田自身が屈辱の中で目にし、そして口にしたものと同じだった。
鏡越しに、堀北の目が、その光景を捉えて一瞬だけ驚きに見開かれるのが見えた。だが、その驚きはすぐに消え、代わりに、どこか挑発的で、奇妙な自信に満ちた薄笑いが、彼女の唇に浮かんだ。
「…ふふ。今日も……たくさん、ためてくれたんですね、ご主人様」
その言葉と、その表情。それは、強いられた者のそれではなく、むしろ、これから行われる行為を、ある種の特権かのように捉えている者のものに見えた。
櫛田の鼓動が、ドクン、と大きく跳ね、耳元でガンガンと鳴り響く。目の前の光景が、信じられない。堀北が、ゆっくりと、しかし迷いのない動きで、綾小路の前に跪いた。そして、彼の屹立した肉棒に、まるで貴重な供物か何かのように、唇を寄せた。
先端の、僅かに膨らんだ亀頭部分。そこから、透明な粘液――先走り――が、今にも零れ落ちそうに一滴、滲み出ている。堀北は、それを、まるで熟練した娼婦のように、あるいは、心からの忠誠を示す飼い犬のように、舌先で丁寧に舐め取った。その仕草は、明らかに、一度や二度ではない、慣れたものだった。
「ん……んん……ちゅぱ……じゅる……ご主人様の、この味……落ち着きます…」
堀北の喉が、こくり、と小さく動くたびに、櫛田の腹部の奥底で、まるで熱い鉄の塊でも転がり落ちるかのような、不快で、しかし無視できない感覚があった。鏡越しに見える堀北の表情は、苦痛や屈辱ではなく、恍惚と、わずかな羞恥、そして、自分が選ばれてこの行為をしているのだという、歪んだ誇りのようなものが奇妙に入り混じっているように見えた。
綾小路の手が、彼女の、汗で少し額に張り付いたポニーテールの根本を、無造作に掴んだ。そして、まるでリズムでも取るかのように、あるいは、彼女の奉仕のペースをコントロールするかのように、軽く、しかし確実に、ぐっ、ぐっと引っ張る。
「…堀北。お前は、こいつ(櫛田)より、ずっと飲み込みが早いな」
綾小路が、まるで堀北を褒めるかのように、しかしその声はやはり平坦で、感情が読み取れないまま、言った。だが、その言葉は、隠れて見ている櫛田の胸を、鋭い刃物のように貫いた。
(私より…? 飲み込みが早い…?)
先週まで、あれほど綾小路に反発し、抵抗していたはずの堀北が、今では、こんなにもすすんで、彼の欲望を受け入れ、奉仕している。自分の方が、彼に屈したのは先だったはずなのに。彼に、あんなことやこんなことをされたのは、自分の方が先だったはずなのに。その思いが、どす黒い嫉妬の感情となって、櫛田の体内で腐食していく。
突然、綾小路の腰の動きが、前後にわずかに、しかし速くなった。彼の硬い先端が、堀北の喉の奥を突く。堀北の白い頬が、苦しそうに、しかしどこか甘美に膨らみ、目尻に、きらりと涙の粒が浮かんだ。
「んぐっ!? ご、ご主人様……っ、はぁ…な、中に…だしても……い、いいんですか…?」
苦しげながらも、どこか期待するような響きを帯びた問いかけ。それに答える代わりに、綾小路は、掴んでいたポニーテールを、さらに強く、ぐいと自分の股間へと押し付けた。
「んんんーーーっ!!」
堀北の喉の奥で、何かが迸る、くぐもった音が、更衣室に響き渡った。ごくり、ごくり、と嚥下する音が続く。その一部始終を見ていた櫛田は、自分でも気づかないうちに、自分のスカートの上から、股間を強く押さえていた。そこは、熱く、そしてじっとりと、粘り気のあるもので濡れていた。
「……っはぁ……ぜ、全部…ちゃんと、飲みました…ご主人様」
ややあって、堀北が顔を上げた。口元から、彼のものと彼女の唾液が混じり合った、白い糸が、とろりと垂れている。彼女は、それを、少しも恥じらう様子なく、自分の舌で丹念に舐め取り、掃除するように唇を舐め回した。その仕草は、まるで戦利品を誇示するかのように、どこか優越感に満ちているように、櫛田の目には映った。
ギリッ、と櫛田の歯が、下唇を強く噛み締める。口の中に、じわりと鉄の味が広がった。
その時だった。ふと、綾小路の視線が、物陰――櫛田が隠れているロッカーの方へと向けられた。冷たい、全てを見透かすような視線。
(まずい…! 見られた…!)
櫛田は、慌てて身を竦ませ、ロッカーの影に完全に隠れようとした。しかし、もう遅かった。
「…見ていたな、櫛田」
氷のように冷たい声が、すぐ近くで響いた。背筋が、凍りつくような感覚に襲われる。振り向くと、いつの間にか綾小路がすぐそばに立っていた。彼は、櫛田の腕を、まるで抵抗など許さないとばかりに強く掴むと、無理やりロッカーの影から、更衣室の中央へと引きずり出した。
「きゃっ!」
バランスを崩し、櫛田は床に手をつきそうになる。その様子を、 kneeling 堀北は、乱れた呼吸を整えながら、口元のテープは剥がされたのか、唇の端に嘲るような、あるいは憐れむような、複雑な笑みを浮かべて見ている。
「あらあら、桔梗さん。…そんなところで隠れてないで、あなたもご主人様に躾けてほしいんですね?」
堀北の声は、どこか楽しんでいるかのようにも聞こえた。
「ち、違う! 私はあんたみたいに、堕ちてなんかい――」
櫛田の必死の否定の言葉は、しかし、最後まで続くことはなかった。バッ、と布が激しく引き裂かれる音。綾小路の手が、何の予告もなく、櫛田の着ていたブラウスの胸元を、ボタンごと力任せに引き裂いたのだ。
「―――っ!! ひっ…!」
言葉は、悲鳴と嗚咽に変わった。引き裂かれた隙間から、白いレースのブラジャーと、その下の肌が露わになる。更衣室の冷たい空気が、直接肌に触れ、恐怖と羞恥で、乳首がきゅっと硬くなる。隣では、堀北が、まるで珍しいものでも見るかのように、興味深そうにその様子を観察している。その視線が、より一層、櫛田の屈辱感を煽った。
「…人に見せびらかすのが、好きなんだろう? お前の本性は」
綾小路は、冷たく言い放つと、引き裂かれたブラウスの上から、櫛田の胸――その豊かな膨らみを、まるで熟れた果実でも鷲掴みにするかのように、強く掴んだ。
「あっ……! あうっ…! や、やめて…! こんなところで…!」
痛みと、それに相反するような、不快な、しかし無視できない快感が混ざり合い、思わず甘い声が漏れる。
「あら、桔梗さん、なんだか嬉しそうですね」堀北が、追い打ちをかけるように囁く。「ふふ、私も最初は、嫌だって、泣いて抵抗してたんですけどね…」
綾小路は、櫛田の抵抗を物ともせず、彼女を鏡の前に、無理やり押し付けた。そして、背後から、彼女のスカートを、昨日と同じように、無造作にめくり上げた。パンティーは、やはり昨日引き裂かれたままだったのか、あるいは今日、履いてこなかったのか。下着など、最初からつけていなかったかのように、彼女の下半身は、あっけなく裸になった。
冷たい鏡の表面が、熱を持った尻と太腿の肌に、ひやりと触れる。彼女の体温と、荒い呼吸で、鏡の表面に白い曇りが広がっていく。
「ほら、よく見ろ、櫛田」綾小路の声が、すぐ耳元で響く。「お前が、今、どれだけ惨めで、興奮しているか」
鏡には、頬を紅潮させ、涙で潤んだ目で、苦痛と快感に唇を微かに震わせている自分自身の姿が映っていた。身体は、彼の支配に抗えず、小刻みに震えている。それは、否定しようもなく、興奮している者の姿だった。そして、その後ろでは、堀北が、こともなげにスマートフォンを取り出し、そのカメラを、無慈悲にもこちらに向けているのが見えた。
「や…やめて…もう…撮らないで……お願い…!」
櫛田は、涙ながらに懇願する。この惨めな姿を、記録されるなんて、耐えられない。
「いいや、もっと撮れ、堀北」綾小路は、しかし、堀北に冷たく命じる。「この、自分の本性から目を背けられない、淫乱な女の姿を、しっかりと記録してやれ」
その言葉に、堀北は、心得たとばかりに、スマートフォンの角度を変え、様々なアングルから撮影を始めた。カシャ、カシャ、という無機質なシャッター音が、櫛田の心をさらに抉る。
突然、綾小路の指が、何の前触れもなく、櫛田の裸の秘所を、直接襲った。昨日、教室で弄ばれたばかりの、最も敏感な場所。
「あ゛っ! あうっ…! だ、だめ、そんな、いきなり…早く…んあっ!」
驚きと、強すぎる刺激に、膝がガクンと折れそうになる。鏡に身体を押し付けられていなければ、そのまま崩れ落ちていただろう。彼の指は、まるで彼女の反応を楽しむかのように、クリトリスを執拗に、そして巧みに、早く、強く、刺激し続ける。
「あらあら、桔梗さん、すごく濡れてますよ」堀北が、まるで実況中継でもするかのように、冷静な声で報告する。「もしかしたら…私より……反応がいいかもしれませんね」
その言葉が、櫛田の中で何かの箍(たが)を外した。悔しさ。嫉妬。そして、堀北には負けたくないという、歪んだ競争心。それらが、ぐちゃぐちゃに入り混じり、腹部の奥底で、熱い、黒い渦となって巻き起こる。
「お前も、堀北に負けたくないんだろう? なら、もっと感じてみせろ」
綾小路の指の動きが、さらに速く、激しくなる。
「ちが…っ! 私は…! あんたなんかに…! あ…あああああんっ!!」
否定の言葉とは裏腹に、身体は正直に反応してしまう。強烈な快感が、脳髄を焼き切るように襲い、もはや抵抗は不可能だった。絶頂が、あっけなく、しかし激しく訪れた。櫛田の視界が、一瞬、真っ白に染まる。膝から完全に力が抜け、鏡に身体を預けるようにして、かろうじて立っているのがやっとだった。鏡に映った自分の顔は、口を半開きにし、焦点の合わない目で、恍惚の表情を浮かべ、口の端からは、一筋の涎が垂れていた。
「あらら。もう……お漏らししちゃってるじゃないですか」
堀北が、少し呆れたような、それでいてどこか面白がるような声でため息をついた。
はっとして、櫛田が自分の足元を見ると、スカートの裾と、床のタイルに、黄色い染みが、じわりと広がっていた。失禁。快感のあまり、尿を漏らしてしまったのだ。羞恥心で、頭の中が本当に真っ白になる。これ以上の屈辱はない。そう思った。だが、それ以上に、堀北に、こんな無様な姿を見られ、そして「負けた」という事実が、彼女の胸を強く、強く締め付けた。
綾小路が、不意に、まだ脱力して震える櫛田の髪を、ぐいと掴んだ。そして、無理やり顔を上げさせ、再び鏡に向かせる。そして、彼女の背後で、先ほど下ろしたばかりのズボンと下着を、再び完全に脱ぎ捨てた。
「…さあ、お前の番だ、櫛田。堀北が見ている前で、どれだけ奉仕できるか、見せてみろ」
熱く、硬く膨張した彼の肉棒が、彼女の、濡れたままの割れ目に、ぐり、と押し付けられる。その感触に、櫛田の身体がびくりと震えた。鏡の中の、すぐ隣にいる堀北と、目が合った。彼女は、満足そうに、そしてどこか挑戦的に微笑むと、小さく、しかしはっきりと頷いてみせた。そして、唇が動くのが見えた。声には出さずに、しかし明確に。
(頑張って…『先輩』?)
その、無言の挑発。それが、櫛田の中で最後の何かのスイッチを入れた。
「あ゛っ!! い、入りすぎぃぃっ……! んああっ! んんんっ!!」
その瞬間、綾小路が、体重を乗せて、一気に奥まで貫いた。櫛田の、甲高い悲鳴が、更衣室に響き渡る。昨日よりも、さらに太く、硬く感じる。
激しい、まるで杭を打ち込むかのようなピストンが始まった。その度に、壁の鏡が、ガタガタと音を立てて揺れる。櫛田の豊かな乳房は、冷たい鏡に強く押しつぶされ、苦しいほどに変形する。隣では、堀北が、その一部始終を、冷静に、しかしどこか熱っぽい視線で、スマートフォンの動画機能で収めている。
「んっ…はぁ…ご、ご主人様……あっ、あっ…! わ、私にも…ください……んっ…」
突然、堀北が、甘えるような、媚びるような声を出した。その声を聞いた瞬間、綾小路は、櫛田の中で腰を動かしながらも、片手で、跪く堀北の顎を掴んだ。
「…口を開けろ」
命令。堀北は、嬉しそうに、大きく口を開けた。次の瞬間、綾小路は、まだ櫛田の中に挿入されたままの陰茎の角度をわずかに変えると、一度強く腰を突き上げ、そして、引き抜くと同時に、その先端を堀北の顔面へと向けた。白い、粘り気のある液体が、勢いよく、堀北の顔に叩きつけられるように射精された。彼女は、それを恍惚とした表情で受け止め、顔にかかった精液を、嬉しそうに目を閉じて、自分の舌で唇の周りから舐め回している。
「ありがとうございます……ご主人様…」
その光景。自分は、ただ肉棒を受け入れるだけの存在。堀北は、彼のものを、顔に浴びて、それを喜んでいる。その圧倒的な差。自分だけが、彼にとって特別だと思っていた、愚かな勘違い。だが、現実は、堀北の方がずっと、彼の求める「奴隷」として完成されているのではないか――?
その瞬間、櫛田の中で、嫉妬と、屈辱と、そして奇妙な対抗心が爆発した。
「私にも……! 私にだって、くださいっ!!」
思わず、自分でも信じられないような言葉が、叫び声となって口から飛び出していた。その言葉に、自分自身が一番驚いていた。綾小路が、動きを止め、彼女の顔を覗き込むようにして、残酷に、そして面白がるように、唇の端を歪めた。
「…ほう。よほど、悔しかったんだな、櫛田」
彼は、まだ硬さを保っている自身のそれを、再び櫛田の背後に回すと、今度は膣ではなく、彼女の背中、肩甲骨のあたりに先端を押し付けた。そして、次の瞬間、熱い液体が、彼女の汗ばんだ背中に、激しく、広範囲にぶちまけられた。びくっ、と思わず身をよじって逃れようとするが、綾小路は彼女の肩を強く押さえつけ、それを許さない。
「…全部、舐めろ。背中に付いたものを、自分でだ」
非情な命令。鏡に映る自分は、背中に白い、彼の痕跡を浴び、呆然と喘いでいた。隣を見ると、堀北は既に立ち上がり、綾小路の服(ズボン)を整え、まるで何事もなかったかのように、自分の身支度を始めていた。
(待って…! 負けたくない! あんな女に…!)
「待って…! まだ…まだ足りない…! もっと…!」
櫛田が突然、まだ熱の残る彼の足元に、文字通り這い寄った。震える指先が、彼の、まだ少し汚れたままのズボンの裾を掴む。
「もっと……私に飲ませてください…! 堀北さんより、たくさん……!」
声は、涙と興奮で咽び、舌は、まだ背中から指で拭い取った彼の白い液体で汚れている。その異常な光景に、さすがの堀北も、驚いたように眉を吊り上げた。
「…桔梗さん、ずいぶんと貪欲ですね」
綾小路は、足元に縋りつく櫛田を、興味深そうに、しかしその目は冷ややかに見下ろしている。
「…ならば、証明してみせろ」
「は、はい…!」
櫛田は、躊躇わなかった。彼の股間に顔を押し付け、ズボンに残った、先ほどの射精の際に飛び散ったであろう染みまで、犬のように舌で舐め始めた。塩気と、布の繊維の味、そして微かな苦味が舌に広がる。堀北が飲めなかったであろう部分まで、自分が舐め取っている――その事実が、屈辱であるはずなのに、体の奥底で、倒錯した熱に変わっていくのを感じた。
「…お前、本当にドスケベだな」綾小路が、初めて、心の底から呆れたような、冷ややかな笑いを含んだ声で言った。「そんなに、便器以下の存在になりたいのか?」
「なりたい…! なりたいです…!」櫛田の声は、もはや完全に壊れて、狂気を帯びていた。「私の口を……あなたの、専用のトイレにしてください…!」
自分でも信じられないような言葉が、次から次へと、堰を切ったように溢れ出る。隣で、堀北の表情が、驚きから、微かな嫌悪へと変わっていくのが見えて、それがむしろ、櫛田にとっては歪んだ快感となった。
綾小路は、ポケットからスマートフォンを取り出した。そして、何かを操作すると、その画面を櫛田の目の前に突きつけた。
「…なら、まずこれを全部飲み干して、証明しろ」
画面には、動画が再生されていた。それは、彼が、どこかのトイレの便器に向かって、勢いよく放尿している映像だった。黄金色の液体が、白い陶器に叩きつけられ、泡立っている。
櫛田の目が、絶望と、しかし奇妙な興奮で潤む。
「こ…こんなの……っ」
「無理なら、堀北にやらせるが?」
「い、いえ! 飲みます…! 私が、飲みます…!」
櫛田は、まるで渇望していた水を前にした罪人のように、スマートフォンの画面にへたり込み、液晶に映し出された黄色い液体を、必死になって舌で舐め始めた。
「ちゅぱ……んっ……ご、ご主人様の……お、おしっこ……おいしい、です…」
もちろん味などしない。ただ、冷たく滑らかなガラスの感触があるだけだ。それでも、彼女は必死に、画面上の液体を、一滴残らず舐め取ろうとする。喉の奥で、胃液が逆流してくるような不快な感覚があったが、隣で堀北が、信じられないものを見るような目で見ていると思うと、それがむしろ、彼女をさらに興奮させた。
「…お前、完全に壊れてるな」
綾小路が、再び、今度は本気で呆れたように呟いた。
「はい……壊れてます……もう、あなたのせいで…」櫛田は、涙をぼろぼろとこぼしながら、しかし恍惚とした笑みを浮かべていた。「だから……もっと、もっと、私を汚してください……!」
鏡に映った自分は、スマートフォンの冷たい画面に舌を押し付け、涎を垂らす、狂った雌犬だった。だが、隣の堀北の、明らかに驚愕し、狼狽し、そして微かな軽蔑さえ浮かんだ表情を見た瞬間、櫛田は、生まれて初めて、本物の「勝利」を感じた気がした。
満足したのか、綾小路がスマートフォンをしまった。そして、突然、彼は自分のズボンのチャックを再び開いた。
「…最後の試練だ、櫛田。本当に望むなら、これを受け入れてみせろ」
彼が、膀胱のあたりを手で押さえるような仕草をする。そして、次の瞬間。
ジョロロロロ……!
生温かく、そして鼻をつくアンモニア臭を伴う、本物の液体が、櫛田の顔面に、直接放たれた。熱く、そして思ったよりも濃厚な臭い。目を閉じてしまいたいのに、閉じられない。学校の、掃除が行き届いていないトイレの匂い。それが、今、自分の顔を、髪を、そして口の中を侵食していく。
「んぁっ……! あ、ありがとうございます…! もっと……ちょ、直接おしっこ……もっとください……!」
櫛田は、狂ったように、大きく口を開け、顔面に降り注ぐ液体を、必死になって受け止め、飲み込んだ。喉が、焼けるように痛い。しょっぱく、そして苦いような、強烈な味。それでも、隣で堀北が、完全に青ざめ、後ずさりしているのを見ると、むしろ積極的に、ごく、ごくと喉を鳴らして飲み続けた。
「ごくっ……ちゅぱ……は、はいっ! ご主人様! ぜ、全部……美味しく、いただきました……!」
放尿が終わり、顎から滴り落ちる黄金色の液体を、恍惚とした表情で指で集め、それをまた舌で舐め取るという、パフォーマンスまでつけて。鏡の中の堀北が、もはや声も出せずに、ただ呆然と、そして明らかに狼狽している。
「……き、気持ち悪い……」
ようやく、堀北の唇から、微かに震える声で、その言葉が漏れた。
その、最大限の軽蔑と嫌悪を含んだ言葉こそが、今の櫛田にとっては、最高の、勝利の証となる褒め言葉だった。
綾小路が、満足そうに、小さく頷いた。
「…ふむ。今日の勝負は、櫛田、お前の勝ちだな」
その言葉を聞いた瞬間、櫛田は、床に両手をつき、涙と、涎と、そして尿でぐしょ濡れになった顔を上げ、狂ったような、しかし心の底からの歓喜に満ちた笑みを浮かべたのだった。