※この作品はR-18です。

よう実 密約と隷属   作:カイト__

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外5:剃毛の儀式

体育祭の喧騒が、まるで遠い世界の出来事のように感じられる夕暮れ時。太陽は西の校舎の向こうに傾きかけ、その最後の光が、女子更衣室の高い窓から斜めに差し込み、床に敷き詰められた白いタイルの上に、長い、頼りない影を落としていた。空気は、日中の熱気が冷めやらぬ一方で、消毒液と、微かな汗、そしてプールの塩素のような匂いが混じり合い、重く淀んでいる。しん、と静まり返った空間には、時折、どこかの水道から水滴が落ちる、ポタン、ポタン、という無機質な音だけが響いていた。

 

その静寂の中で、櫛田桔梗は、冷たいタイルの上に、硬い感触を感じながら跪かされていた。両手は背中で手錠によって固く拘束され、わずかに動かすだけで、ガチャリ、と鈍い金属音が響く。視線の先、壁一面に取り付けられた大きな鏡には、自分の惨めな姿と、そして隣で全く同じ姿勢を強要されている、もう一人の少女の姿が映し出されていた。

 

堀北鈴音。クラスメイトであり、綾小路清隆にとって、ある種特別な存在(であるように見えていた)。しかし、今の彼女は、櫛田と同じように、自由を奪われ、屈辱的な状況に置かれている。いや、むしろ、その状態を既に受け入れてしまっているかのようにさえ見える。口元は粘着力の強そうな銀色のテープで完全に塞がれ、声を発することはできない。だが、その整った顔立ちは苦痛に歪むでもなく、どこか虚ろな表情を浮かべていた。ただ、長く黒い睫毛が、夕陽を受けて微かに濡れて光っているのが、彼女の内面にかろうじて残る感情の残滓を示しているのかもしれない。

 

堀北の制服用ブラウスは、肩口が少しはだけ、乱れている。スカートは、無造作に腰の上まで捲り上げられ、白いシンプルなパンティーがあらわになっていた。それだけがかろうじて、少女としての最後の尊厳を守っているかのように見える。だが、それも、これから始まるであろう儀式においては、無意味な飾りでしかないことを、櫛田は予感していた。

 

「……また、こんな目に遭わせて…最低よ…」

 

櫛田が、絞り出すような声で、隣の堀北ではなく、彼女たちの背後に立つ男――綾小路清隆に向けて呟いた。声は震え、怒りと恐怖、そしてわずかな同情が混じっていた。

 

綾小路は、答えなかった。彼は、金属製のトレイを近くの長椅子の上に置くと、その上に、いくつかの道具を並べ始めた。アルコールの入ったボトル、脱脂綿、そして、鈍い銀色の光を放つ、一枚刃の剃刀。その光景だけで、櫛田の背筋に冷たいものが走る。消毒液のツンとした匂いが、静かな更衣室に広がり始めた。

 

「前回の続きだ、堀北」

 

綾小路は、ようやく口を開いた。その声は、何の感情も含まない、平坦なものだった。彼は堀北の後ろに回り込むと、捲り上げられたスカートの下から覗く、白いパンティーのゴム部分に、何の躊躇もなく指をかけた。

 

びりり、と布が裂ける、乾いた音が響く。堀北の身体が、その瞬間、わずかに強張ったのが鏡越しに見えた。しかし、それだけだった。彼女は、声も上げず、身じろぎもしない。白い布が取り去られ、彼女の恥丘が、冷たい更衣室の空気に晒される。そこには、前回の「調教」とやらで剃られた後、僅かに生え始めていた数本の黒い陰毛が、まるで敗北の印のように、痛々しく存在していた。

 

「……っ」

 

隣で、櫛田が息を呑み、強く歯を食いしばる音が聞こえた。自分のことではないのに、その光景は、彼女自身の尊厳が踏みにじられているかのような感覚を覚えさせた。

 

「私まで…巻き込むなんて……本当に、最低…!」

 

櫛田は、再び綾小路に向けて、今度ははっきりとした非難の声を上げた。

 

綾小路は、堀北の無毛に近い恥丘に視線を落としたまま、ゆっくりと櫛田の方を振り返った。そして、無言のまま彼女に近づくと、手錠のかかった彼女の手では抵抗できないのをいいことに、その顎を強く掴んだ。

 

「ぐ…っ」

 

顔を無理やり上げさせられ、鏡に映る自分自身と、そして隣の堀北の姿を直視させられる。

 

「これは、お前の本性…お前が目を背け続けてきた、他者を蹴落とし、自分の利益のためならどんな嘘でもつくという本性を、改めて自覚させるための儀式でもある」

 

綾小路の声は、静かだが、有無を言わせぬ響きを持っていた。

 

「ほら、よく見ろ、櫛田。鏡の中のお前を。…これがお前の、最後の『普通の顔』になるかもしれないな」

 

その言葉の意味を完全には理解できなかったが、底知れない恐怖が櫛田の心を鷲掴みにした。

 

綾小路は櫛田の顎から手を離すと、再び堀北の方へ向き直った。そして、まるで手慣れた外科医のように、アルコールを含ませた脱脂綿で、彼女の恥部を丁寧に消毒し始めた。

 

「……指示通りに、剃ってきました」

 

テープで塞がれた口の中から、くぐもった、しかしはっきりとした声が聞こえた。堀北が、僅かに顔を上げて、綾小路を見ている。その声には、以前櫛田が知っていたような、反抗的な色は微塵も消え失せていた。まるで、プログラムされた機械が報告するかのように。

 

「そうか。だが、剃り残しがある」

 

綾小路は淡々と告げると、泡立てた石鹸を、彼女の恥丘に塗り広げ始めた。そして、剃刀を手に取る。

 

堀北は、もはや抵抗する素振りも見せず、むしろ、自ら脚をわずかに開き、彼が処置しやすいような姿勢を取った。鍛え上げられた、しなやかな太腿の内側。そこには、前回刻まれたという、「A」のイニシャル――綾小路の所有物であることを示す印――が、治りかけの傷跡として、微かに赤く浮かび上がっているのが見えた。

 

シュッ、シュッ──。

 

静寂の中、剃刀が肌を滑る、規則的な音だけが響く。綾小路の手つきは、驚くほど正確で、迷いがなかった。堀北は、鏡に映る自分自身の、辱めを受けている姿を、虚ろな、感情の読み取れない目で見つめている。呼吸だけが、わずかに乱れ、肩が小さく上下していた。

 

全ての毛が剃り落とされ、完全に無毛の状態になると、綾小路は再びアルコールで消毒した。その冷たさに、堀北の腹筋が、ぴくりと反射的に震える。だが、やはり悲鳴は上げない。涙さえも、一粒も流さない。

 

「…お前は、もう学んだようだな、堀北」

 

綾小路が、どこか満足したかのように呟いた。

 

「……はい」

 

堀北の答える声は、やはりどこか他人事のようだった。テープ越しの、くぐもった声。

 

「所有者様の…手順に従うのであれば……痛みも、やがては快感に変わるのだと…学びました」

 

その言葉を聞いた瞬間、櫛田の顔が恐怖と信じられないという表情で強張った。

 

「ほ、堀北…さん…? あなた、まさか…本気で言ってるの…?」

 

「驚くことはないわ、櫛田さん」

 

堀北が、ゆっくりと、人形のようにぎこちなく首を傾けて、鏡越しに櫛田を見た。その瞳は、やはり感情を映さず、ただ暗く淀んでいる。

 

「あなたもすぐに……私と同じになる。受け入れてしまえば…案外、楽なものよ」

 

「バカ言わないで!」

 

櫛田の絶叫が、更衣室の壁と鏡を震わせた。

 

「私は、あんたみたいに堕ちたりしない! 絶対に…! きゃあああっ!!」

 

叫び声は、突然の衝撃によって中断された。綾小路の手が、今度は櫛田のスカートを、何の前触れもなく、力任せに引きずり下ろしたのだ。昨日と同じ、白いレースのパンティー。しかし、それもまた、びりり、と音を立てて引き裂かれ、床に落ちた。

 

彼女の下着のない股間には、昨日までの手入れが行き届いた、柔らかなブロンドの陰毛が密生している。それが、冷たい空気と、綾小路の無慈悲な視線に晒される。

 

「やめて…! 触らないでっ!」

 

恐怖と羞恥で、櫛田の脚が、まるで捕らえられた魚のように、バタバタと床の上で空しくはためく。しかし、背中の手錠と、綾小路の存在が、彼女の自由を完全に奪っていた。

 

「こんなの…! 人権侵害よ! 犯罪じゃない!」

 

「犯罪?」

 

綾小路は、手に持っていた剃刀を、今度は櫛田の喉元に、ひやりと当てた。冷たい金属の感触に、櫛田の呼吸が止まる。

 

「お前が、クラスメイトたちの秘密を調べ上げ、それをネタに脅迫し、あるいはネットに暴露していた時は、何だったんだ? それは、犯罪ではなかったのか?」

 

彼の言葉は、静かだが、重い。櫛田の瞳孔が、恐怖と、そして図星を突かれた動揺で、大きく開いた。反論の言葉が出てこない。

 

彼は剃刀を喉元から離すと、先ほど堀北に使ったのと同じように、泡立てた石鹸を、今度は櫛田の恥部に、何の躊躇もなく塗りつけ始めた。

 

「ひっ……! つ、冷たい…! いやっ!」

 

泡の冷たさと、これから起こることへの恐怖で、彼女の全身が総毛立った。鳥肌が、腕や脚だけでなく、腹部や背中にまで広がっていく。

 

「ほら、堀北」綾小路は、剃刀を櫛田の股間に当てながら、隣で静かに成り行きを見守る堀北に囁いた。「新しい姉妹の誕生だ。歓迎してやれ」

 

堀北は、無表情なまま、こくりと頷いた。そして、テープで塞がれた口元から、再びくぐもった声を発した。

 

「…お大事に…桔梗さん」

 

その声には、皮肉も、同情も、何も感じられなかった。ただ、事実を告げているだけのように。

 

「あんたまで…! そんな…! あ゛っ!?!?」

 

剃刀が、肌の上を滑った。その瞬間、櫛田の身体が、まるで感電したかのように、びくんと大きく跳ね上がった。

 

「い、痛いっ……んぐ……! や、やめて……本当に、お願いだから、やめて……!」

 

剃り落とされる陰毛。肌の上を滑る、冷たい金属の感触。そして、時折感じる、チリチリとした痛み。それは、肉体的な痛み以上に、精神的な屈辱感を伴うものだった。自分の最もプライベートな部分が、抵抗できない状況で、他者の手によって処理されていく。

 

剃り残しがないように、綾小路の指が、陰唇を優しく、しかし確実に押し広げる作業が加わるたびに、櫛田の喘ぎは、嗚咽の混じった泣き声へと変わっていった。涙が後から後から溢れ出し、頬を伝って、床のタイルに染みを作る。

 

鏡に映る自分自身の姿――涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔、恐怖に見開かれた目、そして、赤く腫れ上がり、石鹸の泡と剃り落とされた毛が付着した、無様に晒された恥部。その光景に、彼女は耐えきれず、最後の抵抗として、強く顔を背けた。

 

「見ろ、櫛田。現実から目を背けるな」

 

綾小路は、彼女の濡れた髪の毛を無造作に掴むと、ぐい、と力を込めて、再び鏡へと引き戻した。

 

「これが、お前の新しい姿だ。よく見て、脳裏に焼き付けておけ」

 

鏡に映る、変わり果てた自分の姿。もう、クラスで人気者の「天使」の面影はどこにもない。ただ、恐怖と屈辱に支配された、哀れな存在があるだけだった。

 

その時、ウィーン、という低い、機械的な唸り声が聞こえた。見ると、綾小路は剃刀を置き、代わりに、ペン型の、先端に細い針が付いた機械――タトゥーマシン――を手にしていた。

 

「…ペアリング、ですね」

 

隣で、堀北が静かに告げた。その声には、やはり何の感情もなかった。まるで、天気の話でもするかのように。

 

「そうだ。お前には、相応しい装飾だろう」

 

綾小路はそう言うと、タトゥー機を準備する間、堀北は、まるでそれが当然の手順であるかのように、自ら両腿をさらに広げた。彼女の、剃毛されて滑らかになったクリトリスの部分には、小さな金属のリング――ピアス――が、夕陽を受けてきらりと光っていた。

 

(ピアス…? あんなところに…? まさか…)

 

「しょ、所有証明…って、昨日言ってたけど…な、何なの? 私にまで……そんなこと、するつもり…?」

 

櫛田の声が、恐怖で震える。身体に、消えない印を刻まれる。その意味を考えると、気が遠くなりそうだった。

 

「当然だ」

 

綾小路は、タトゥー機を手に、今度は櫛田の正面に回り込んだ。そして、アルコールを含んだ脱脂綿で、彼女の左胸、心臓のすぐ上あたりを、強く擦った。冷たさと、消毒液の匂い。

 

「堀北は右胸。お前は左胸。…これで、お揃いのペアになる」

 

彼は、冷酷に告げた。まるで、アクセサリーでも選ぶかのように。

 

「いや…! やめて! そこだけは…! お願いだから…!!」

 

櫛田は、最後の力を振り絞って懇願した。しかし、彼の決意は揺るがない。タトゥー機の針が、ゆっくりと彼女の胸に近づいてくる。

 

針が皮膚を突き破る、その瞬間。

 

「ぎゃああああああああああああーーーーーっ!!!!!」

 

今度こそ、人間のものとは思えない、甲高い絶叫が、更衣室全体に響き渡った。涙と鼻水と涎で顔はぐしゃぐしゃになり、身体は激しく痙攣する。皮膚を針が繰り返し突き刺し、インクが注入されていく、鋭く、そして持続的な痛み。それは、これまでのどんな痛みとも比較にならない、耐え難い苦痛だった。

 

どれくらいの時間が経ったのか。ようやく機械の唸り声が止み、綾小路が離れていった時、櫛田は、荒い呼吸を繰り返しながら、震える目で、鏡に映る自分自身の姿を見た。

 

左胸。心臓の真上に、黒々としたインクで、シンプルだが、決して消えることのない、「A」の文字が、はっきりと刻まれていた。まだ少し血が滲み、赤く腫れ上がっている。そして、下半身は、完全に無毛にされ、赤みを帯びている。

 

その、変わり果てた自分の姿を、ようやく、櫛田は直視した。

 

「……あ……あ……」

 

声にならない声が漏れる。そして、ぷつり、と何かが切れたように、彼女の身体から全ての力が抜け落ちた。糸の切れた人形のように、彼女は前へと崩れ落ち、手錠で繋がれた両手が、かろうじて床につく形で、その場にうずくまった。もはや、涙も出なかった。ただ、虚無感だけが、彼女を支配していた。

 

隣で、堀北が、跪いたままの姿勢で、そっと櫛田に寄り添うように身体を寄せた。そして、テープ越しに、囁くような、くぐもった声で言った。

 

「……言ったでしょう? 堕ちるのは、案外…楽なものよ、櫛田さん」

 

その言葉は、慰めなのか、それとも、更なる絶望への誘いなのか。今の櫛田には、判断することさえできなかった。

 

カシャッ。

 

不意に、カメラのシャッター音が響いた。綾小路が、どこからか取り出したスマートフォンで、床に崩れ落ちる櫛田と、その隣に寄り添う(ように見える)堀北の、二人の「奴隷」の姿を、鮮明に記録したのだ。フラッシュの白い光が、一瞬、彼女たちの絶望的な姿を、永遠の証拠として焼き付けた。

 

「…さて。次は、共同調教の時間だ」

 

綾小路の、次の段階への移行を告げる、冷たい宣告。その言葉に、堀北が、深く、そして従順に頷いた。櫛田は、もはや何も反応することなく、ただ、固く、固く目を閉じた。

 

鏡の中には、かつてクラスメイトたちが憧れた、優秀で、美しく、そして誇り高かったはずの優等生たちの姿は、もうどこにもいなかった。ただ、所有者の印を刻まれ、尊厳を奪われ、これから始まる更なる調教を待つ、二人の奴隷がいるだけだった。

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