獣人男の子ガウ君、女ご主人様に可愛がられる 作:ユーリンちー
私の名前は出雲(いずも)。真優香さんの同じ会社で働いていて、後輩にあたります。
少し前、獣人の男の子がなんとこの会社に入ってきたらしい。しかも、その獣人は先輩が飼っており、なんと忘れてきたお弁当を持ってきたとのこと。にわかには信じがたい話だけど・・・気になった私は、先輩に声をかけた。
「真優香先輩、獣人を飼ってるって本当ですか?」
先輩は、顔がぱぁっと明るくなって笑顔で応える。
「本当だよ〜!狼の獣人っ!ガウっていうの〜」
「お、狼ですか・・・それでその、ガウ君?ってどんな子なんですか?」
先輩は手を祈るような形で握り、ウキウキで話し始めた。普段から明るい人だなぁとは思ってたけど・・・。
「ガウ君は〜・・・♡いつも朝起こしてくれて〜、美味しいご飯作ってくれて〜、お掃除に・・・」
「ちょっ!ちょっと待ってください!先輩!料理!?お掃除!?」
「えっ?そうだよ?どうかした?」
「どうかしたって・・・」
そんな事ができる獣人なんて聞いたことがない・・・!私は昔獣人を飼いたいと思い、それらに関する情報を蓄えてきたからわかる。
獣人は基本知能が人間よりも低下おり、散歩などはもちろんリードをつけてあげないとすぐにどこかへ行くし、お風呂も一人でできない。あまりにひどいとトイレの場所すら覚えずその場でしたり、言葉もまともに喋れない者もいる。家事をするなんてもってのほかだ。そして、獣人の値段は外見ももちろん関係するが、主にその知能の高さで決まるが・・・先輩のは・・・。
「先輩・・・その子・・・いくらで買ったんです?」
「ん〜とね、確か・・・三?」
「さ、三!?」
丸が何個あるかは、これを見ているあなたのご想像にお任せします・・・。確かにその値段なら納得・・・いや、でもやっぱり疑わしく感じるぅぅ・・・。そんな子がいたらとっくに国の上層部の人間がすぐに買ってると思うし・・・。こうなったら百聞は一見にしかず、直接先輩の家に見に行こう。
「先輩・・・その、私明日休みなんで、よかったら見に行ってみてもいいですか?」
「いいよ〜?出雲さんはいつもお仕事手伝ってくれるしっ!見せてあげる!でも、明日私は普通にお仕事だから・・・ガウ君に伝えておくね!!」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
※※※
翌日、先輩からもらった住所が書かれた紙を元に、家に向かった。
「ここが・・・先輩の家・・・大きい・・・・・・それに、この家に獣人が・・・落ち着け・・・!私・・・!」
私は昂る気持ちを深呼吸して抑え、インターホンを押した。すると・・・ガウ君と思われる声が応えた。
「は〜い、どちら様ですか?あ、もしかして!ご主人様・・・じゃなかった。真優香さんの後輩さんですか?」
「あ、えと・・・!はい」
少しすると、家の扉が開かれた。玄関の前に立っているのは可愛らしい見た目の男の子・・・それに、ピクンと揺れる大きめのケモミミ・・・、ふわふわな尻尾は感情を表すように左右に揺れている・・・。間違いなく獣人だ・・・。
「どうぞ!上がってください!」
「お、お邪魔します・・・」
ガウ君が一歩進むたびに揺れる尻尾を目線で追いかけながら、リビングへ案内される。座って待つように言われたので、両手を小さく弄りながら座った。床を見るとガウ君の毛が一本すら落ちていない・・・綺麗に掃除されている。
すると、テーブルがなったので顔をあげると、甘そうな白いケーキと苦そうな黒いコーヒーが置かれていた。
「どうぞ、お口に合うといいですけど・・・」
「ありがとうございます・・・いただきます・・・んっ、美味しいです」
「嬉しいです!練習しておいてよかった・・・!」
嬉しそうに尻尾を振るガウ君。かわいい・・・。・・・・・・ん?練習?
「あの・・・このケーキってもしかして・・・?」
「はい、僕が作りました!」
製菓までできるとは・・・料理ができるとは聞いてたけれどここまでとは思わなかった。
それから、少しガウ君とおしゃべりを楽しんだ。
「施設に引き取られていた時は何してたんですか?」
「え〜と、お勉強とか、お外で少し遊んだりとか・・・色々ですね」
「そっか・・・」
ガウ君が施設にいた時のこと・・・。きっと、周りの知能指数が低くて喋れる子があまりいなかったのだろうか・・・。私は急いで話題を変えた。
「先輩・・・真優香さんは?どうですか?」
「ご主人様ですか?ご主人様は、とっても優しくて・・・明るくて・・・僕に元気を分け与えてくれる人です・・・!」
先輩の話を持ちかけた途端、顔を明るくさせた。なんだか似ているなぁ・・・。尻尾を大きく揺らして、耳をピコピコと揺らす姿がなんとも愛らしい・・・。
「あの・・・お顔、赤くないですか?」
「え?あぁ、いや・・・これは」
「・・・?本当に大丈夫ですか?無理してないですか?」
ガウ君はズイッと顔を近づけてくる。近い・・・!近すぎる・・・!獣人とは思えない程の警戒心の無さ・・・!触りたい・・・!誘惑に負けた私は、悪い心が少し働いた。
「あ・・・あ〜・・・確かに、少し体調悪いかもです・・・」
「ほんとですか!僕に何かできることはないですか?」
「え〜と・・・ガウ君の、触らせて貰えば元気になる・・・かも・・・?」
「触る?何をですか?」
「み・・・耳と尻尾・・・?」
「え・・・?」
いい感じの理由が全く思いつかず訳のわからないことばかりを言ってしまう・・・。こんな理由で触らせてくれるわけが無い。もうガウ君はすごい不思議そうな顔してるし・・・。
「う〜ん・・・それでよければ・・・どうぞ・・・」
「えっ・・・?本当ですか・・・?」
まさか本当に触らせてくれるとは思わなかった・・・ガウ君は、目を瞑っていつでも触られてもいいように準備をしている。私は、その表情を見て胸の高鳴りが大きくなるのを感じる。
「じ、じゃあ・・・触りますね?まずは、耳から・・・失礼します」
「は・・・はい・・・んっ・・・」
憧れの獣人・・・今からその子の耳を触れる。私は、割れ物を触るかのように優しく触れた。手に綿毛のようなふわふわな感触が伝わる。
「すごいふわふわ・・・お手入れ、ちゃんとされてるんですね・・・」
「・・・え、えぇ、耳と尻尾の手入れは・・・んっ、ご主人様にちゃんとしなさいって・・・はっ、言われて、ますから・・・」
耳から伝わる感触を、少しくすぐったそうな声をあげながら我慢しているのがわかる。このまま尻尾を触ったらどうなってしまうのか・・・。
「し、尻尾も!失礼しますね!」
「まっ、二つ同時は・・・んぅ・・・♡くすぐったいです・・・」
あぁ・・・可愛い・・・。このままずっとこの感触と反応を楽しんでいたい・・・。いやもう、このまま押し倒してそれから・・・。って、何考えてるの私は!!私は衝動を抑えてすぐに手を離した。
「あっ・・・おしまいですか・・・?」
「えっ・・・えぇ、はい・・・もう、元気になりましたから・・・!そろそろ、おいとましますね!」
モフモフされるのを中断されて少し残念そうな顔をするガウ君をみてると、いよいよ私は抑えが効かなくなりそうなので帰ることにした。帰り道の途中、なんだか恥ずかしくなって顔が熱くなる。
「もう・・・!何やってるの〜私は・・・獣人、しかも先輩のペットにあんな事しちゃって・・・!バレたらさすがの先輩での怒るよね・・・!?」
私は自分の頭を抑えてた手を離し、しばらく自分の手を見つめた・・・。
「ガウ君・・・・・・また、会いたいな・・・」
私は、手を優しく握り少し早足で家に帰った。