露出に目覚めた女のコが図書館で全裸になってしまう話です。
経緯についてはこちら→https://syosetu.org/novel/371304/

リクエストありがとうございました!
ギフトファイルとして、あとがき付きの印刷用PDFデータを添付しました。

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狂った私は、図書館で裸になる

 人というのは、ほんの些細なキッカケで変わってしまうものらしい。ユウちゃんとの教室での何気ない 嘲笑(わら)い話――けれど、いつの間にか私は嘲笑う側から嘲笑われる側になっていた。

 いまの自分がおかしいのはわかっているし、いまなら引き返せるとも思う。なのに――むしろ引き返したくない。それほどまでに、いま見ている景色は魅力的で――そう、ほんの些細なキッカケが、私の日常をドキドキに変えてくれた。

 何気ない学校からの帰り道――ただ、ひとりで帰っているだけなのに――誰もいないかな――誰も、見てないかな――? ただそれだけのことで――私の胸の奥でカチリとスイッチが入ったのがわかる。熱く高鳴って収まらない――!

 もし、そこの曲がり角から誰か出てきてくれたら思い留まれる。そんな、他人任せなことを考えながら――けれども、誰も出てこないことを期待しながら――私は、スカートの中に手を入れる。そして、中のパンツを――ぎゅっ、すっ、すっ――スカートの裾を超えてしまったらもう止められない。膝から下は、むしろ支えてないと落っこちちゃう。それを靴の踵に引っかからないように足から抜き取って、脱いだものを手の内にぎゅっと握り込む。生地から伝わる温もりと、温もりが失われていくお尻――それをもっと、もっと、先に進めたくて――私はカバンを開けるとパンツを押し込む。そして、再び背負い直したら――

「はぁ……あぁ……♪」

 これだけでもお股がスースーするのに、こうしてくるりと翻ったら――

「あはぁ……♡」

 いま、前からも後ろからも見えちゃったんだろうなぁ、私の――何も穿いてないお尻とアソコが。

 けれど、そんな一瞬では満足できず、自らスカートを摘んで上げて――!

「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ……♡」

 こんなところ、誰かに見られたら――あぁ……見られちゃったら――! 決して見せたいわけじゃない。けれど、想像してしまう。お友だちに、先生に、お母さんに――私がこんなところでこんなことをしているのを見られたら――! ううん、決定的な瞬間を見られなくても、もしユウちゃんとかと出会って、一緒に帰ろう、なんて誘われたら――私のパンツはカバンの中――友だちの隣で、私はノーパンのまま――!

「はぁ、はぁ……ふふ、ふふふ……♡」

 ユウちゃんは知らない――私がパンツ穿いてないこと。もし、風が吹いてスカートが捲れちゃったら――バレちゃったら――私――私――!

 そんなことを想像していると、スカートを引っ張り上げている手につい力が入ってしまう。見られちゃいけないところ――恥ずかしいところを、自ら見せ開かしながら。

 

 どうやら、世間では私みたいな人のことを『露出狂』と呼ぶらしい。『露出』の『狂』――つまり、私は狂ってしまったようだ。狂ってしまった人が何を考えているかなんて、普通の人にはわからない。私も、普通の人だった頃にはわからなかった。けれど、狂ってしまったいまだからわかる。こんなにも楽しすぎるから――露出狂というのは狂わずにはいられないんだって。

 

       ***

 

 休みの日には決まって着るお気に入りの服がある。袖のない前開きのワンピース――だって、一番脱ぎやすいから。

 こうして部屋の中で裸になっていると……最初はちょっとドキドキしたんだけどね。これについてはすっかり慣れてしまった。だから、私がいまドキドキしているのはこれからのことを考えているからであって。

 裸のまま、私はワンピースを羽織る。その一枚だけを、素肌の上に。そして、何も持たず――本当に、何も持たず部屋を出て――知らず知らずのうちに、ドアノブは静かに、ゆっくりと。だって、ボタンを留めていないから――胸からおヘソ、お股までチラチラさせちゃってるから――家の中であっても、お母さんとかが見たらビックリさせちゃうだろうから。けれども、運良く家族は奥のダイニングの方みたい。そこの扉を一枚隔てた、ダイニングに。

 だから私は――やっぱり足音は立てないようにして――玄関まで来てしまった。もしいま、誰かが外から帰ってきたら――そんなことを考えたいけど、残念ながらいまは休みの午前中。お姉ちゃんもお父さんもまだ寝てる時間だ。……やっぱり、ありえないことにはドキドキしない。だからか――元々そのつもりだったけれど――私はそのまま靴を履いて、そして――

「いってきまーす」

 その挨拶はなるべくいつもどおりに。けれど、心臓はバクバクで――! 慎重に扉を開けると外に向けて耳を澄ます。いくつも重なる車が走る音――布団を叩く音――夜と違って昼間はいろんな音が詰まっている。けれど、廊下を叩く足音だけは聞こえないから――!

「は、はぁ……あはぁ……♪」

 よ、良かった……誰もいない――! だから私は、外からドアを閉めると身体の真正面をチラチラさせながら――むしろ掴んで広げて――それどころか、ワンピースの肩を背中の方まで滑らせて――!

「ふふふ……はぁ、はぁ……ふふふふ……♪」

 マンションの柵は細い格子だけなので、遠くから見えてしまうかもしれない。私がこうして裸で歩いているのを。胸を、お股を――はぁ……お尻ももっと出したいなぁ。できればもう、このまま床に脱ぎ落としてしまいたい――危うい思いが込み上げてくるも――それができるのは真夜中だけ。すぐにガチャガチャ、と同じフロアで扉の音がしたから、私はスっと服を戻す。これなら――出てきた人が後ろだったこともあり、前の様子は絶対にバレない。こうして、まだ服に恥ずかしい隙間が開いていることは。

 このまま振り向いたら大変なことになっちゃうんだろうなー……なんてドキドキしながら、私はエントランスの方へと急ぎ足で向かっていく。そういう想像は、想像だからこそいいのであって。そういう想像を楽しむには誰かの目があったらいけないから。

 

       ***

 

 ワンピースのボタンは五つある。ずっとこのまま外を歩いていけたら気持ち良さそうだけれど――マンションのエントランスから出たところで、私はボタンを留めざるを得なかった。道路は普通に人も車も行き来してるからね。けど――一番上のひとつだけ。そこさえ留まっていれば――あとは下の方を手で閉めておくだけで一先ず大丈夫だから。ずっとお腹のあたりを押さえている変なコみたいだけど、一度すれ違ったくらいならわざわざ気にする人もいない。誰もいなければ服を開いて、誰かが来れば閉じて――開いたり、閉じたり――私の休日のお散歩はそんな調子だ。

 そして、今日の目的地――図書館に到着。最近少し離れたところに新しくて大きな図書館ができてしまったので――そのうえ、そっちにはマンガも置いてあるのに、こっちは真面目な文字だけの本ばかり。おかげで、そもそもこっちには読みに来る人もいなくて――開館したばかりの朝ならなおのこと。

 古い建物ってこともあって、フロアに監視カメラは殆どない。せいぜい出入り口とカウンターくらいのものだ。なので、相変わらず私は上だけ留めて下はヒラヒラ――手で押さえていたところも、正面に誰もいないとわかればすぐにヒラリと。アソコをチラチラ見せながらこういうところを歩くのは……やっぱり気持ちいい♪

 この図書館にはよく小説なんかを読みに来ていたからか、そのときの習慣で私は一階の児童書コーナーの方へと向かっていた。正面奥の壁には本棚。右の壁にも沿って本棚。フロアの中央には五重の本棚が横たわっている。これだけ本棚があれば隠れる場所には困らない――といいたいところだけど、ここの本は子供が読むということで、残念ながら棚の高さも子供丈。これじゃあ上から覗き放題。さらに、左の方は壁ではなく窓。椅子とかが用意されている、いわゆる読書スペースだ。隠れるどころか危険すぎる。

 けれど、そこには近づかなければいいわけで……それと、本棚は低くともそれなりには隠せるしね。私はスカートの裾を、するり、するりと持ち上げたりして。えへへ……お尻丸出し♪

 ……あ、そうだ。下の方の本を探すフリをしながらこうしてしゃがめば……念のために周囲を確認。窓の方もテーブルの足があるから大丈夫……!

 

 ――パラリ。

 

「あ、あ、あ……♡」

 やば、やば、私……私……っ! 膝がガクガクして腰がヒクヒクして――! すぐ床に落としたワンピースを着直した!

「はぁ……はぁ……あはは……♪」

 す、す……すごいことしちゃったなぁ……本当にちょっとだけ……ほんの数秒だったけど……私……図書館で裸に……なっちゃったんだぁ……♡

 ……ん? 棚板と本の隙間……ああ、この棚って両側から本を並べられるようになってるけど、その間に背板みたいのはないみたい。覗き込まなきゃ見えないけれど、覗けば向こう側の様子もわかる。

 これなら――!

 しゃがんだまま、私は児童書コーナーの外を確認する。うん、誰もいない。だから――

 ――するり。

「は、は……あぁ、あぁ……♡」

 ま、また裸になってる……! しかも、こんなに長く……誰も……来ないよね……? まだ……来ない――

「はぁ……はぁ……♡」

 全身を図書館の空気が撫でていく――高鳴る胸も――お股の間も――! あぁ……こんなの……気持ち良すぎる……!

 これだけでも気持ちいいのに――もっと気持ちよさそうなことを思いついたら、それを試してみずにはいられなくて――! そもそも、窓が気になるのはここが一階だからだ。

 なら……ふふ、ふふふ……♪ 私はワンピースのボタンをひとつ留める。ここから階段に向かうには、人のいるカウンターの前を通らないといけないから。

 

 三階――大人の読む難しい本が並ぶフロア――ここに来るのは初めて――ではないけれど、やっぱりあんまり来たことはない。

 部屋の広さは変わらないはずなのに――天井まで届きそうな本棚の威圧感と――そもそも、貸出カウンターがない分置けるスペースは広いのかもしれない。

 階段室から出てすぐのところは読書スペース。この机も一階よりひと回り大きい。そして、奥まで続く大きな本棚が――六つも。ただ、窓がない。正面左右の三面とも本棚だ。これにはちょっと拍子抜け。さらには、一階と棚の向きが違うから、階段からまっすぐ奥まで見通せちゃう。こんなところで脱いだりしたら――バレちゃう……? それとも……ギリギリ……? 階段に一番近い通路は奥まで見えるけど、一番遠いとこなら角度的に……手前の方しか……うん、少なくともここからは見えない。

 だったら――!

 大人の読書スペースをぐるりと避けて、私は一番奥の通路へとやってきた。両側にそびえる安心感と、後ろに抜ける危機感――両極端が入り交じるマーブル模様の中、私は再び自分の服に手をかけて――

「あ……はぁん……♪」

 吐息に混じって変な声が出てしまう。夜のマンションでお散歩していたときと同じような。だから、私は……いま、楽しんでいるのだと思う。

 ワンピースを小脇に抱えて、奥へ、奥へ。裸のまま、こんなにいっぱい歩いてるだなんて――しかも、誰かが来るかもしれない図書館で――!

 けど、奥へ入れば入るほどに安心感の方が大きくなってくる。だんだん物足りなくなってくる。だから、一番奥に来たところで、仕切りのような四つの本棚を横目に見ながらテクテクと――

「……わ」

 階段だぁ……♪ 階段が見える……だから、階段からも見えちゃうんだよね……? 誰かが上ってきたら、すぐに。

「はぁ……はぁ……っ」

 こ、こんなの危機感の方が強すぎる……! だ、ダメだよ……危機感が大きすぎると……どんどんドキドキして……もっと……ドキドキしたくなっちゃうから……っ♡

 ここは……見通しが良すぎる――なのに、自分からもっと見えやすい……階段の方に近づいて……! もしいま、誰かがこの階に上がってきたら――くるりと振り向いてパッと服を羽織ればいい。そのくらいの段取りは考えて、私はこんなことをしている。

 なのに――すでにとんでもなくヘンなこと――イケナイことをしているのに――さらにヘンなこと―もっとイケナイことばかり思いついてしまう。まるで、どこかの誰かが私に悪さを吹き込むように。

 たまたま目についたナントカ全書――何の本かはわからないけれど、とても分厚い本。それをヨイショと引き抜いて、そこに持っていたワンピースをくしゃっと丸めて詰め込んで――

「あはは……あはは……♪」

 もう、私の手に服はない。なのに、そこから後ずさるように――重たいハードカバーを両手で持って、私は、そのまま……そのまま……!

 どこまで行けるかな? どこまで歩いていけるかな? 服を……置きっぱなしにしたまま……どこまで……!

 やっぱり見られたらヤバイのは正面だから、私は階段の方を向いたまま後ろ歩きで。お腹に抱えた本――それが地肌に触れるのが……普通じゃなくてドキドキする……♡ せっかくだから、胸に当てて――

「ふぅんっ♡」

 ドキドキしてるところだからか、お腹よりもっと……ドキドキする……!

「はぁ、はぁ、はぁっ、はぁ……っ!」

 私、いま……すごく……ヘンなこと……ヘンタイなこと……してる……っ! 図書館で素っ裸になって……胸に本をスリスリして――

 

「ッ!!?」

 

 それは反射的な行動だった。階段の方に人影が見えた気がして――その瞬間、私は思わず、そ(・)こ(・)か(・)ら(・)逃(・)げ(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)……!

 背表紙が並んでいる通路から見えないよう棚の側面に隠れたけれど……服、服……! そっちに……!

 だ、誰が来たんだろう……? 女の人なら、まだ……? ううん、そういう問題じゃない。こんなところ……こんなところ誰かに見られたら……!

 とにかく、どの通路に入ってきたのかを確認しよう。ここの棚も一階と同じように背板がなく、隙間から反対側が見えてしまう。だから、もし別の通路に入ってくれたからといって油断はできない。私は四つん這いになりながら、恐る恐るいま来た方を覗き見ると――!

「!!!」

 よ……よりにもよって……私が服を隠した通路に……! どうしようどうしよう……っ! 私自身が見つからなくても、服の方が見つかって、忘れ物だと持っていかれたら……!

 もしそうなったら……ど、どうにか閉館時間まで隠れ通して……ううん、夕方には閉まってしまう。そんな時間じゃ裸のまま帰れっこない。だから……うん、もし、服に気づかれちゃったら……覚悟を決めよう。正直に話して……そしたら……何事もなく返してくれるかな。それとも……

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 半分以上、怖い。けれど、わずかに別の感情があるのは、まだ見つかってないから。もし見つかったら――“もし”――そんなことを考えていられる余裕もあるから。

 とりあえず、這うようにして服を隠したところの裏側へ。ここの一番下の段から覗き込めば、向こう側に立つ人の足くらいはわかる。少なくとも、その辺りにはいないみたい。

 間に背板がなくて本当に良かった。こっち側から本を抜けば、向こう側の服を回収できる。

 けど――安心すると、危険が欲しくなる――我ながら、本当に頭がおかしい。本の位置だけはきちんと覚えて――そのまま、少しずつ、階段の方へ。そしたら、長く並んだ本棚の中腹くらいのところにジーンズのズボンが棚板との隙間から見えた。しっかりと太いし、きっと男の人……。バレたら……バレたら……!

 ジーンズのズボンはしばらく右へ左へとウロウロしながら本をゴトゴトと取っ替えしていたみたいだけど、何冊目かのときにすっと向きを変えて――

 ……ほっ。ようやく目当ての本が見つかったんだー……――って、このまま階段の方に向かわれたら、この位置丸見えなんですけどーっ!?

 もう服を持っていかれる心配はない。だから、立ち上がって全速力で。最初に隠れた側板のところまでやってくると――ちらりと覗き見。遠くに階段の方へと向かう男の人の背中が見えた。

 だから、私は――その後ろ姿を見送る。隠れていた本棚からヒョイと身を乗り出して。これだけ離れてればすぐに襲われることもないだろうし――もしあの人が振り向いたり、引き返してきたら――そんなことを考えながら――考えながら――!

「……はぁ……」

 下の階へと人の姿が見えなくなったとき――私は緊張の糸が切れたみたい。ペタンと床に尻餅をついて、私は大きく息をつく。

 あー……お外でヘンなことはいっぱいしてきたけど、いまのはこれまでの中で一番のピンチだったかも。隠れるのがもう少し遅かったり、服を持っていかれたり、男の人が本を探しているうちに裸のまま追い詰められたり――何かひとつでも失敗していたら、私の人生は終わっていた。

 なのに――

「……はぁ……♪」

 ギリギリだったからこそ――これまでの中で一番リアルにカンじられたような気がする。もし見つかってしまったら……本当にいろんなことを考えた。いろんな可能性を考えた。間近に迫ってくるキケンのことを。ひとつ解決しても、また別のキケンが迫ってきて……幸運がひとつでも欠けていたら私は――想像していた通りになっていたかもしれない――!

「はぁ、はぁ……♡」

 このドキドキは、むしろ気持ちいいもの。そんな熱気の中で、私は座り込んだまま――両足をパッカリと階段に向けて開く。両手も後ろに突いたまま。もし次に誰かが来たら――裸どころか、恥ずかしい割れ目までも見られてしまう。こんなの、ヘンなことしてください、って歓迎してるようなものだ。

「あはは……あははぁ……♡」

 すごい……私、すごいことしてる……っ! けど……だからこそ……もっと、もっと目立つところで……!

 私はふらりと立ち上がって――ふわふわと小走りで――階段の方に向かって――!

 とはいえ、さすがにこのまま階段を下りたりはしない。

「……ふふっ」

 読書スペース――机や椅子が並んでいるから、覗き込まなければ――その下に全裸の女のコが蹲ってるなんて思わないだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ……♡」

 けれども私は下から覗き込んで――誰か階段から出てこないか見張っている。もし出てきたら、奥の方の本棚の方へと履いながら逃げよう。あとは、さっきみたいにしのぎきればいい。……さっきのは運が良かっただけなのに、すっかり調子に乗ってるなぁ、私。

 だからこそ――私はつい立ち上がってしまった。誰か来たらすぐにしゃがむつもりで。なのに、私は椅子を引いて――ぷにん。

「あ……あはぁ……♡」

 わ、私……あぁ……私、すごいことしてるぅ……♡ 裸のまま、椅子に座って――こんな体勢じゃ、予定通りに隠れられない。なのに――なのに――

 なのに。

「はぁ、はぁ……♪」

 お尻の感触は学校の椅子を思い出させる。もし、自分の席に座ったらこんな感じなんだろうなぁ……。硬くて、冷たくて……だからこそ、気持ちいい……♪ もしノーパンで登校したら……そ、そこまでしなくても、学校でこっそり脱いじゃったら……きっと、こうなのだろう。それこそ、授業中に……!

 ……ってさすがにそれは現実味がなさすぎて想像できない。けど、放課後ひとりで、こっそりなら……!

 想像できることは、私のワクワクをどこまでも高めてしまう。もっと、キケンなこと――もっと、開放的なこと――それを、私は思いついてしまった。またしても――さっき本棚に服を隠すようにそそのかした誰(・)か(・)が囁いたのだと思う。それを聞いただけでドキドキしてしまうのだから――そんなの、自分ではもう止めようがない。

 

 ワンピースは着直して、本も戻して、私は一階へと下りてきた。もちろん、留めてるボタンはひとつだけで。

 相変わらず、館内は閑散としている。まだ開いてから三〇分も経っていないということはあるけれど。

 そして、再び児童書のコーナーへ。けれど、用があるのは本の方じゃない。その奥にある読書スペース――四人がけのテーブル席が四つに、窓際にはふたりがけの背もたれのないクッションベンチがふたつほど。そんなごく普通の一角を見ただけで息が熱くなっていくのは――やっぱり私が狂ってしまったからなのだろう。

 窓から一番遠くて背を向けられる席に座れば――外はエントランス前の広場だ。誰かがやってくれば、私の姿は真っ先に見られてしまう。けれど――私の考えが間違ってなければ――!

 あんなピンチを乗り越えた直後だからこそ、私の中に不安はない。あるのは、ドキドキとワクワクだけ。光の差すこの場所で唯一留まっていた襟元のボタンをポンと外すと、スルリと肩を抜いていく。そして、背もたれにふわりとかぶせるようにかけた。この一瞬だけはさすがにヤバイ。だって……窓の外から私の裸は丸見えだもの! なので、ここだけはちょっと急いで。駆け込むように私は座る。木製の椅子に。

「……はぁ……♪」

 私の後ろには透き通った窓ガラスが――その向こう側には図書館入口前の広場が――! 私はただ座っている。けれど、他のみんなはこんな格好だなんて気づきようがない。上着を掛けた女のコが――まさか、何も着ていていないだなんて――! スカートどころかパンツも何も穿かず、木の椅子にお尻をペタリと着けて――胸もお腹もお股さえも――何も隠さずに――!

「……えへへ、えへへ……♪」

 ドキドキして、ニヤニヤが止まらない。こんなところに、裸で座ってるだなんて。けど、同じ座るなら、本くらい持ってきたほうが良かったかな。裸で読書――あぁ……想像しただけで……ドキドキ♡

 もっと気持ちいいときめきを求めて、私は普通に席を立つ。裸のまま、普通に。

 すると、そのとき――

「っ!」

 ……自分でいうのもナンだけど、これまでいっぱいキケンなことをして、ピンチもいっぱい乗り越えてきた。今日のピンチは、その中でも一番だったけれど。それと比べれば――

 私が見たのは窓の外――図書館へとやってくる男のコ――普通に考えれば、すぐにワンピースを掴んで本棚の陰に隠れ、いそいそと着込んでしまえばいい。

 でも、それでは終わってしまう。ドキドキが、終わってしまう。見つかったらどうなっちゃうんだろう、というドキドキが。あの男のコに、私の姿を見られたら……どうなるか。ビックリして……図書館の人に言いつける? それとも……写メ撮られたり……それこそ、その場で……エッチなことされちゃったり……?

「……はぁ、はぁ、はぁ……♡」

 だから私は――一先ず本棚の陰でしゃがんでいる。ただし、ワンピースは席に置いたまま――裸のまま――大丈夫、座席は入り口から見て一番奥だから――もし、あの男のコがまっすぐそこへと向かっていくようなら今度こそ服を回収しなくてはならないけど、そうでなければ――

 本棚の裏で少しずつ、私は身体を起こして――自分の胸元と、棚の上を交互に見比べながら。

 そして、膝がピンと伸びたとき――!

「……ぁ……はぁ……♡」

 このまったりとした吐息は安心からか、それとも……快感からか……♡ 私は立っている。裸で、図書館に。フロアの外からもここは見渡せてしまうけれど、この本棚の高さなら逆にこちらからも見える。よくよく考えてみれば、遠くまで見渡せるのに身体は五列の本棚が隠してくれるのだから、こんな好都合な場所はない。

「えへへ、えへへ……あはぁ……♪」

 すごい……やばい……! 裸のまま本を探すフリなんかして……しかも、服はあっちの椅子に掛けてあって……! ヤバいよ、こんなの誰かに見られたら……ヤバすぎる……!

 そしてついに――男のコが本棚の方へとやってきた! けれど……私は不自然なくらいに落ち着いている。ううん、取り乱したりはしていないけれど……ドキドキだけはしてる。だって、来るのがわかっていて待っていたんだもの。一番奥の通路で本を探すフリをしながら。

 五列ある通路のうち、男のコが入ったのは手前から二番目。結構離れてるから、私が裸なことなんて気づいてなさそう。そのまま通路を横断して 一番奥(ここ)に向かうようならヤバかったけど――もしかしたら、続き物を借りに来たのかもしれない。そのコの足取りに迷いはなかった。

 これなら……もっと……! 私は駆け出したいのを抑えて急ぎ足で。男のコが本を探している本棚を挟んだ反対側に……!

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ♪」

 も、もし、男のコが本棚から身を乗り出したりしたら……! そんな怖いことを考えつつも、棚の隙間から覗かれても大丈夫なように少しだけ距離を取って。けど、少しだけ……ちょっとだけ……! もう少し、もう少し――

「…………ッ♡♡♡」

 わたっ、私……私……っ! いま、男のコのすぐ目の前で……! 本棚を挟んで、本当に手を伸ばせば届く距離で……! 素っ裸……っ! 胸も……お股の割れ目も……全部……全部……っ! 両手はお尻の方に回して。自分の裸を、男のコに全部見せるように……! これ……これ……っ! すごいっ、すごいっ、すごいっ! わた、私……すごいこと……しすぎて……き……きも……気持ち……♡

「…………っ♡♡♡」

 気持ち良すぎて一瞬だけ頭が真っ白になって――ガクンと膝が折れた。私の身体が緊張に耐えきれなくなったみたい。こ……こんなの、めったにないよ……。ここまで……気持ちよくなったことなんて♡

 幸い、男のコが怪しむ様子はないけど……はぁ、はぁ……いま、見つかったら……動けない……かも……。でも、相手も同じくらいの子供だし、黙っててってお願いすれば――そんなことを考えながら、尻餅を搗いたまま足を閉じることもせず……男のコが覗いてくれるのを待っているわけじゃない。ただ、覗かれたところを想像しながら……驚いている男のコの様子を想像しながら……!

 けれども、想像のとおりになることはなくて――物色を終えたと思われる男のコの足がカウンターへと向かっていくのが棚の隙間からチラチラ見える。その間に私も動けるようになったので、よいしょと立ち上がって――追いかけるようにフラフラと。そして、棚の陰から身を乗り出すと男のコの背中に向けて――はぁ……これ……ものすごくドキドキするなぁ……♪ 何かの拍子に振り向かれたらおしまい――そんな、極上のキケン――あぁ、こんなの……ハマっちゃいそう……♡

 少しして、貸出手続きを終えた男のコが図書館から出ていく。その間、私はずっと裸のままだった。けれど、これに慣れたりはしない。……ううん、少しは慣れたかな? けど、ドキドキが収まることはない。こういう、バレたらヤバイ場所で裸になるのは……何度繰り返しても気持ちいいっ!

 だから、今度こそ――読書スペースで全裸読書を――!

 さっきは何を借りてたのかなー……なんて男のコのいたあたりに行ってみると、二〇巻中十三から十八巻がすっぽり抜けているので、きっとこれなんだろう。さっきの男のコが好きな本――どこの誰だかは知らないけれど、その一巻を手にとって――

「はぁ、はぁ……あぁん……♪」

 うわぁ、私、ヘンタイだ……! 図書館で裸になって、男のコの読んでた本で身体中を撫で回して……胸を、お尻を……それに……アソコを――

「あっ」

 わ、わ、何で!? おもらししたみたいにヌルっとしてて――けど、おもらしみたいに流れてはいかなくて――表紙はビニールコーティングされてるからあとで拭いておくとして……やっぱりドキドキは収まらないから。本は両手でお尻の方に回して――恥ずかしいところを全部見せながら、私は自分の席へと戻ってきた。

 けど――

 椅子に手をかけたところで――私は――座らなかった。もっと、座ってみたいところがあったから。ヤバイのに……こんなのヤリすぎだって、わかっているのに……ッ!

 目の前は床から天井まで窓ガラス。その向こう側は綺麗なタイル張りの広場。植木もあまりなくて、さらに向こうの道路まで見えてしまう。そんな景色に向かって、私は……私は……!

 ポスン――今度の席は私のお尻を優しく受け止めてくれる。窓際のクッションベンチ――そんなところに、私は――!

 小さく縮こまって膝を閉じていたのは最初だけ。すぐに――足を大きく開いて――恥ずかしいところがちゃんと見えるように――それに、本を開いて高く掲げて――顔にピッタリとくっつけるように――胸も――隠さず見せつけるように――!

 もちろん、文字なんて読んでいられる状況じゃない。わずかに目元だけ本の上から覗き込んで――! 外からは明るい朝の太陽が差し込んでくる。そんな爽やかな光が私の胸を――そしてお股を――すべてを見せつけるように照らしている。

 建物の外からは、いまのところ誰かが来る様子はない。誰かが来ればすぐにわかる。だから……だから……!

 一方、館内の方にも気を配る。私の知らないうちに入っていた人が、児童スペースの前を通らないか。チラチラと周囲を窺う度に、自分が裸であることを実感させられる。

 ……あ、いま、遠くの道路をバイクが通り過ぎていった……。私のうちはマンションの五階だから、こういう楽しみ方は初めて。

「はぁ、はぁ……はぁ……♪」

 さっきみたいに誰か来たら……えへへ、誰か来たら……こうして顔を隠していたらもし写メを撮られても……それに、図書館の人に言いつけようとしても、それより先に服を着ちゃえば私が裸だった証拠なんて……あ、先に写真撮られたらそれが証拠に……私、図書館に来られなくなっちゃうかも……それどころか、警察がうちに来て――

「はぁ……あはぁ……はぁん……♡」

 楽しい……楽しい……気持ちいい……っ♡ ヤバイことになるってドキドキが……すっごく身近にカンじる……! ドキドキが止まらなくて……私は顔を隠していた本さえ置いてしまった。誰か……誰か、来ないかな……♪ スマホさえ……スマホにさえ撮られなければ……見られちゃっても……ちょっとだけなら見られちゃっても……! ……あっ、通りに人が……行き過ぎちゃった……。次の人……も、来ないかー……。ホントに不人気だなぁ、この図書館。けど、だからこそ、こんなことができるのであって……。

 ……あ、あの人……あぁ……っ、こっちに向かって来て……! 見えてる? 見えてない? 気づいてる? 気づいてない? 少なくともスマホは構えてないから……はぁ……はぁ……っ! もっと……もう少し……もう少しなら……もう少しならぁ……っ! そんなことを考えながら、私の指が探すのは、さっき置いたばかりの本。あぁ……私、身体を隠すつもりはないんだ――撮られそうになったら、顔だけ隠して身体隠さず――恥ずかしいところは、全然隠さず――胸の乳首も、それに――お股の――お股の――……っ!

 

「っ!!?」

 

 ヤバッ!? ナニコレッ!? ソファに……こんなシミが……! ドキドキしてモゾモゾしてたら何か冷たいな、と思って下を見たら!! おもらし!? なんで!? 気づかないうちにこんなにもらせるものなの!?

 さ……さすがにヤバイでしょ! 何かもう図書館に申し訳なくなって……というか、裸になってる時点で相当申し訳ないんだけど、それとこれとは申し訳なさが違うというか!

 気持ち良かったドキドキは一気に吹き飛んでしまい、私は慌てて椅子に戻ってワンピースを着込む。今度は全部のボタンをしっかり閉じて。あー……パンツ穿いてなくて良かったー……なんて間抜けたことを考えながら、私はバタバタと読書スペースを後にする。図書館から出るとき、やって来ていた人――オジサンだった――とすれ違ったけれど、別段意識された様子はなかったので、どうやら窓の中の私のことは気づかなかったらしい。

 

 ひとり来た道帰りながら、私は自分にドン引きしていた。はぁ、思わずそのままにして逃げてきちゃったけど……さすがに、バレるよねぇ……しばらくあの図書館には行けないかも。

 何より……さっきは本当にどうかしていた。まさに、『狂っていた』と呼ぶに相応しい。だって、男の人が来ていたのに、見られても……顔さえ撮られなければ大丈夫、だなんて。おもらしのおかげで正気に返れたけど、それがなければ……きっと見せつけていたに違いない。私の恥ずかしいところにオジサンの視線を受けながら――それからどうなるのかな? 写メ撮られる? 通報される? ――そんなことを考えながら、恥ずかしいところを、ずっと――それで、顔を覚えられて、それで――!

「……あはぁ……♡」

 ダメだ。さすがに今回のことは反省しようと思っていたのに、今度こそヤバイことになるんじゃ――そんな予感についときめいてしまう。だから私は、ひとつだけ心に強く誓った。本当にヤバイことになってしまったら、もうこのドキドキを楽しむことはできなくなるから――絶対に、その一線だけは超えてはならない。

 そんなことを考えながら――まだ家にも着いていないのに、私はワンピースのボタンに指をかけていた。

 


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