2パターン考えた、どっちにしようかな〜……どっちも投稿しよ
そんな感じで、百代パターンで
「チッ、ここでヤらねぇのかよ。つまんねーな」
悪意の目がつまらなさそうに歪む。
スマホに取り付けられた写真機が、物陰の暗闇から二人の愛し合う姿を捉えた。
掲げている男は、心底くだらなさそう唾とともに吐き捨てる。
「なぁ、流石にこれやばくね?」
「バカ言えよ。あんな上玉諦め切れるか。これであいつらの情事撮って、脅してやるんだよ」
流石に、これは……。という抗議も、リーダーと取り巻きの声によって塗り潰される。
男の持つスマホの画面には、先程の燕とユウが熱い口付けを交わした写真が映されていた。
相手に夢中でなんて無防備なのだろうか。武人と言っても、所詮は盛りのついた男女でしかない。
だが、これだけでは脅す材料になり得ない。
もっと恥ずかしい、誰にも見られたくない姿を写真に収めることで、それを脅しにあの美少女を従わせる。
これから行う淫靡な未来を頭に思い浮かべ、男は舌なめずりをした。
「武士娘つっても、所詮は女だろ。一度気持ちいい想いを体験させてやれば、すぐに向こうから腰を振るさ」
「あんな奴の雑魚チンで満足できるわけねぇからなぁ。俺らが最高の快楽を味わわせてやろうぜぇ」
「どーせなら、あいつ縛って見せつけるかぁ⁉︎」
「セコイ手で武神に勝ったことになってるやつだしなぁ。実力もちんこも大したことねぇよ」
「ほっほぉ〜、そりゃあ凄い。言うだけあって、さぞかしご立派なブツ持ってるんだろうなお前ら」
闇夜にこだまする男達の下卑た笑い。
その中に、別の声が混じった。
凛とした女のもの。だが、下手な男なんかよりも勇ましさと力強さを孕んだ声は、空気を一変させた。
笑いが止まる。
夏場だと言うのに、肌寒さに鳥肌が立つ。それはまるで、心臓を鷲掴みにされるような冷たい感覚。
彼らは武道家ではない。背後から感じるナニモノかの存在は、男達のそんな矮小な本能であろうとも感じ取り、警鐘を鳴らす程に強大だった。
危機感に踊らされ、一斉に振り返る。
網膜がその姿を捉え、脳が認識し、思考が理解した瞬間、全員の声が失われた。
彼女が誰かなど、名乗られなくとも分かる。
なぜここに?そんな疑問すら浮かんでくることなく、恐怖心が心を支配する。
「どぉーもぉー、川神警察でーす」
そんなチンピラ達とは正反対に、背後の女———川神百代は不敵に笑った。月明かりに照らされる美女はなんと絵になることか、同時に鬼神の如く恐ろしいく見えた。
自分らを見下ろす双眼に、殺意も怒りもない。
この程度の小物に向ける感情など、害虫を見つけたような、そんな程度でしかない。
「お兄さん達、こんなところで盗撮はいけないなぁ。全く、祭りだからってハメを外しちゃいけないぞ」
「か、かかかかかかか……!!!?」
「ちゃんと喋りやがれ、ったく。軟弱な男共め」
呆れ気味に腰に手を当てる武神に、男達の口から情けない悲鳴が上がった。
睨まれるだけで、脚が震え動くことができない。まるで蛇に睨まれた蛙だ。
無論、それは比喩であり、本当に百代が蛇の睨みを効かせたわけではないのだが、そう感じてしまうほどに彼らは恐怖していた。
一秒後か、二秒後か、それとも今か。生殺与奪の権は百代にあり、気分次第で自分達は一瞬であの世に送られる。
燕のこと、ユウのこと、先程まで頭の中を占めていた妄想は消え去り、威勢などどこへやら、全身を震わせて許しを請う。
「ち、違ッ……違います!おおおおおおお、俺達は正義の鉄槌を下そうと思っただけです!」
「盗撮が正義だぁ?」
「あのセコイ奴を失墜させようと思ったんだ!あんなヤラセで、武神の無敗伝説を汚したクズ野郎を!」
「そうですそうです!川神さんだって、本当は納得してないんでしょ?人気取りの為に負けたことにされて!」
「だからどうか、どうかお見逃しを!」
「そうかそうかぁ、私の為かぁ〜」
うんうんと納得するように頷く。
アスファルトに頭を擦り付け、懇願する彼らのことなど気にも留めず、赤い瞳がスマホに向けられる。
画面に映るのは、親友と初恋の男がイチャついている光景。それを目にすると、一息……こだまする粉砕音。
「ひぃぃぃぃぃぃ‼︎」
奪われるどころか、触れられてすらいない。一人でにスマホがただの破片と化したことに、悲鳴を上げて腰を抜かすばかり。
目から気を放ちスマホを破壊した彼女の顔は恐ろしいほどに———無だった。
綺麗な薔薇には棘があると言うが、この光景こそ棘の鋭さを体現しているだろう。
「お前らの目から見て、私がヤラセなんて許容する女って認識なのはよぉ〜くわかった」
無知であることは、こうも愚かなことか。
何も映さない目玉。
自分本位な妄想しかできない頭。
不快な言葉しか吐かない口。
何もかもが不必要なものに見えて仕方がない。
地雷も地雷。
かつて武の頂点に立った女の逆鱗に触れた。それすらも理解していない男達の顔面に、武の神罰が下される。
「歯ぁ、食いしばれ。行き先は、多摩大橋の河川敷……頭冷やして来い‼︎」
死なない程度に。
気絶しない程度に。
しっかりと激痛を感じる程度に。
治るまで痛みが継続する程度に。
治った後も痛みがフラッシュバックする程度に。
一年ぐらいはまともに食事できない程度に。
それぐらいの力加減を込めて思い切りぶん殴る。千切れるような感覚とけたたましい粉砕音を耳に届けた。
夜空に走る流れ星、なんて例えは勿体無い。
羽虫のように夜空へ消えていった愚集を見届けて、百代は不愉快に鼻を鳴らした。
こんなことで怒りが収まるはずもないが、小物に費やす時間が勿体ないので、さっさと立ち去ろう。
「こういう雑魚しかいないから、ユウを諦めきれないんだよな〜」
そんな理想と現実を比較して、絶賛傷心中の美少女は深い溜息を吐き出す。
心底勿体無いことをしたと後悔がのしかかる。
それでも、この選択を曲げる気はない。
戒めに殴った頬に手を置く。
それだけ譲れないものが、ここにあった。
「ったく、二人とも夢中になりやがって。時と場合を考えろっつーの」
まぁ、私も同じことしただろうけど。
そう一笑し、夜空に輝く星々を眩しそうに見上げて、祭りの方へ去っていくのだった。