※この作品はR-18です。

真剣で肉欲に溺れなさい!S  燕ルート【完結】   作:寝坊助

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邁進は続く、どこまでも

 

 

 

 

 あれから五年———川神。

 

 空は快晴。

 まるであの歴史的一勝の日を思い起こさせる、雲一つない青空の下で、熱風が吹き荒れる。

 世界に激震を与えた、若獅子タッグマッチトーナメント。激動の時代を生み出した、今から五年前に起きた分岐点であるその大会は、今も続いていた。

 夏の川神武道大会、今年もその日がやってきた。

 若い世代の獅子、王者を決める祭典。

 その熱気に湧きたつ武道館。

 観客達で埋め尽くされた客席には、川神学園の制服を着た生徒達だけでなく、川神の住民、外国からの来客がひしめき合っており、モニター越しからでも伝わってくる声援を送り続けている。

 夏の気温すらも霞む熱気。

 それを一身に浴びる侍達。

 出場する動機は数多あれ、皆目指すものは優勝ただ一つ。一度土俵に上がれば、第三者の介入も思惑も割り込むことは許されない。

 この日、多くのドラマが生まれた。

 苦戦があった、圧倒があった、激闘があった、達成があった、悔しさがあった、感動があった、友情があった、リベンジがあった。

 そこには必ず、勝者と敗者がいた。

 己が武を魂に込めて流した血と汗が、この闘技場に染み込んでいる。その地を踏み締め、栄えある優勝者はここに立つ。

 

 だが、彼女は満足していなかった。

 求めているのは、優勝の先にあるもの。

 エキシビジョンである、武神との試合権。

 苦痛を伴いながらも極限まで鍛えてきた日々は、この瞬間のために。己に課した宿命を果たすべく、硬く握り締めた拳を突き出した。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」

 

「お゛おおおおおおおおおおお!!!」

 

 激闘が天を揺るがす。

 両者の咆哮が混ざり合い、突風が翔る、火花が迸る、拳撃が交わる、轟音を呼ぶ。壁を超えた者同士の攻防は、太陽の熱さえも忘れさせた。

 磨き上げられた技の応酬が一撃ごとに変わり行く中、至高の領域に二人の存在は近づきつつある。

 一撃は重く、一撃は速い。

 一歩も譲らぬ乱舞に、客席から大歓声が上がる。

 ぶつかり合う双方の実力は互角。……いや、微妙に挑戦者が圧されている。

 それも仕方ない。何せ、相手は武神なのだから。

 最強の称号に偽りなく、底知れぬ実力はこうして直接武を交えれば、嫌でも理解させられる。

 

 ———そうか、あの男はこのような理不尽な強さに……何年も挑み続けてきたのだな。

 

 見ているだけと、実際に触れてみるのではまるで認識が違う。

 こうして拳を交わらせてみれば、確かに挑むことなどバカバカしく思える。勝敗は火を見るよりも明らかだと、周囲の認識も頷ける。

 そんな相手に何年も挑み、勝利をもぎ取った男の偉業たるや、ただの一勝と片付けていい“重み”では無い。

 この女の力は圧倒的だ。

 全力を込めた必殺の拳は、いとも容易く受け止められる。そこから攻撃に移るよりも早く、武神の蹴りが挑戦者を叩き潰した。

 しかし、彼女は諦めない。この程度で終わるようなら、ここまで鍛えた意味がない。

 地に伏した身体を跳ね起こし、武神の顎に膝蹴りをかます。

 

「ッゥ……。ククク、いいじゃないかいいじゃないかぁ!この戦い、お姉さんを思い出すぞ‼︎」

 

 武神もまた、負けてなるものかと受けて立つ。

 五年前に味わった敗北、無敗伝説の終わり。

 あの日から腐ることなく研鑽を積んできた最強チート女は、その実力も美貌も磨き上げ、見事にかつての栄光を取り戻した。

 そんな蘇った最強に立ち向かうのは、銀の長髪を揺らす川神学園の女子生徒。OBに胸を借りる、なんて気持ちはさらさらない。

 勝つ、ただ一つの目的を目指し前に出る。

 そして、

 

 

『勝負あり!勝者、川神百代ッ‼︎』

 

 勝敗は決する。

 武神の一撃が腹に直撃し、挑戦者は倒れ込んだ。

 審判を務める川神院の師範代である赤髪の女性が、この試合の勝利者の名を告げた。

 客席から割れんばかりの大歓声。

 挑戦者に惜しみない拍手を贈り、倒れた相手に敬意を表す。

 そして何よりも、武神の勝利を称えた。

 勝利者である武神、川神百代は倒れ伏した挑戦者へ手を伸ばした。

 

「ふっ、強くなったな紋白ちゃん。もう揚羽さんを超えたんじゃないか?」

 

「まだまだだ。我の目標は川神百代、お前をこの手で倒す事にあるのだからな!」

 

「あっはっは!いいなその目!いつだって受けて立つぞ、ライバルよ!」

 

 最強は笑い、ライバルと呼んだ少女を起こし上げた。

 九鬼紋白……。あの可愛らしい幼子が、今ではなんと凛々しい美少女に成長したことか。

 その勇姿、特等席から見守っていた兄は涙を流して感動に咽び褒め称える。

 太陽の下で仁王立つ様は、まさにあの九鬼揚羽の全盛の姿と瓜二つ。武神とぶつかり合えるスタミナ、風神鉄壁の防御力、岩をも砕く拳。あの偉大な女王の妹たる素質を余すことなく受け継いだ少女は、いずれ九鬼を背負って立つ事になるだろう。

 その第一歩が、この最強を下した時だ。

 

 ヒュームのもとで身体を鍛えた。

 

 クラウディオのもとで技術を学んだ。

 

 マープルのもとで知識を育んだ。

 

 従者達からは献身的なサポートを。

 

 家族からは応援と激励を。

 

 苦痛さえ生やさしい鍛錬の日々、何度心が折れそうになったか。

 

 それでも壁を超えられたのは、大好きな姉の無念を晴らさんがため。

 

 いや、今ではその念も薄れたように感じる。

 

 五年もかけて培った全力が破られたのだ。

 

 だからこそ、超えたいという悔しさが強く灯る。

 

 あの男も、こんな気持ちだったのか……。

 

「待っていろ川神百代。次だ、次こそ我が勝つ‼︎」

 

 地に伏しようと、その威厳は消えず。

 打倒武神を掲げる九鬼紋白の挑戦は、続く。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーー

 

 

 

「あちゃー、負けちゃったか〜」

 

「いいところまで行ったんだけどな。流石は百代、また強くなってやがる」

 

 エキシビションマッチが終わり、百代との挨拶もほどほどに紋白はリングから降りていく。

 見事な試合でありながらも、本気で勝ち取ろうとした勝利をもぎ取れなかった少女の背に、とある夫婦は残念そうに労った。

 健闘は讃える。

 しかし、敗北は敗北。

 気丈に振舞ってはいるが、悔しさは拭えない。

 そんな結果に不満を感じているのか、夫婦の足元にいる少女は頬を大きく膨らせていた。

 

「どうした“翼”?そんなむくれて」

 

「おとんの嘘つき。言ってたもん……。紋姉ちゃんが勝つって言ったもん」

 

「負けるつもりで闘技場に上がってない、って言ったんだよ。元気出せって、今日はパフェに納豆かけて食っていいから」

 

「食べ物でかいじゅーされはしない!」

 

「はい落ち着いてー、悔しいよね翼〜」

 

 うがー!と暴れる娘を、どうどうと母が落ち着かせにかかった。

 あれから五年。かつて納豆小町と呼ばれた少女は結婚し、こうして子を授かった。産経婦でありながら、美貌は全く変わらない。むしろ歳を重ねれば重ねるほど、美しさには磨きがかかるばかりだ。

 愛しい娘を抱きしめて、母は夫を見やる。

 次はあなたの番だよねん?と期待を込めて。

 

「ああ、前は引き分けになっちまったからな。次は完全勝利でいくぜ」

 

「勝ってねおとん!ゴー!しょうりー!」

 

「応援ありがとうな、翼」

 

「それじゃあママは、パパにおまじないね」

 

 勝利の想いを込めて、唇を重ねる。

 エネルギーは十分。

 胸にあるのは勝利、それ以外の感情はない。

 愛する妻と愛娘に見守られながら、夫はリングへと降り立つ。まだまだかと待ち構えるライバルと、百を超えた対峙を果たす。

 剣士が姿を現した瞬間、爆発のような大歓声が打ち上がった。本大会でも、エキシビジョンでもここまでの熱気は体感できない。

 二人は今、世界の中心に立っていた。

 

 もう、どーせ武神が勝つなどという声はない。

 

 負け犬剣士と罵る者はいない。

 

 まぐれだ!偶然だ!と文句は入らない。

 

 次はどっちが勝つんだ⁉︎

 

 武神だろ!いいや、剣神だ!

 

 この一戦の結末を、誰もが目を離さない。

 

「えーっと、これで通算何回目だったか?」

 

「さぁ?千回超えてからはもう数えてないなぁ……。ま、前回のようにはいかないけどな。今回は私が勝つ」

 

「抜かせ、前々回は俺が勝った。今回もそうだ」

 

 ニヤリと、武神と剣神は笑う。

 

「今日、俺が勝つぜ」

 

「ああ、全力で戦り合おう……ユウ!!!」

 

 妻と子供に見守られ、松永ユウはその剣を取るのだった。

 

 邁進は続く、どこまでも。

 

 

 

 






ご愛読ありがとうございました
これにより、マジ肉欲シリーズ完結です
きっかけは、百代に逆レイプされたら逃げられねーだろ、とネタで短編として投稿したのですが、まさかここまで続くとは思いもよりませんでした
めっちゃ批判されたり、徹夜で寝不足だったりと色々ありましたが、こうして完走することができました
皆様から頂いた感想と応援のおかげです
誠に感謝いっぱいであります

マジ体力の限界なので、暫く休んでアニメや漫画、エロゲーとか読み漁ってインスピレーションが湧いたら新作を投稿する……かもしれません






あと一話、IFルートに投稿します
これで本当に最後です





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