若獅子タッグマッチトーナメントの優勝者には、スポンサー九鬼財閥からの数々の豪華賞品が送られる。
それこそ、全てを売却すればとんてもない零が並ぶ程の桁になるのは間違いない。武道家でない一般人までもが出場していたのも、これによる誘惑も一因だ。
しかし、優勝者であるユウにとっては無用なもの。元より、得たいものは優勝でも名声でも金銭でもないのだから。
長年追い求めてきた勝利の二文字。この刃が彼女の意識を刈り取った時点で、ユウは満足していた。
だが、それは少し前までの話。
ただ勝利を追い求めていただけの水城ユウはもういない。今の彼にはそう……恋人がいるのだから。
耳にこだまするのは波の音。
不規則に、だが心地の良いリズムを刻み、胸がすく心地の良さを感じさてくれる。
通り過ぎる潮風が気持ちいい。長年に渡って酷使し続けた肌が、筋肉が、細胞が弛緩していく。
気の休まる穏やかな時間が、鍛錬の日々を終えた実感を思い知らせてくれる。
そう、今ユウがいる場所は砂浜だった。
見渡す限りに海が広がり、波の音が絶えず聞こえてくる。
そこに混じる、彼女の声が。
「おっまたせー!」
声がした方向に顔を向けると、そこには水着姿の恋人、松永燕の姿があった。
爽やかな白いビキニはの健康的な色気を引き立て、身につけたその姿はまるで天使そのもの。眩いばかりの笑顔と愛くるしい姿に、胸の高鳴りが止まるところを知らない。彼とて健全な男子高校生。可愛い恋人を目にして、心を揺らさないわけがない。
そんなユウの心の動揺を知ってかしらずか、燕はがしりと腕を組み、頭を肩に乗せてみせた。
「ふふん、どうだユウくん。燕ちゃんの水着姿だよん?黙ってないで、何か言う事があるんじゃないかね?」
「……ぇ、ぁ……そのなんだッ……」
「ステイステイ。そんな典型的なウブな反応は心臓に悪いってば。気取った言い方しなくていいから、シンプルな感想をどうぞ」
「可愛い!綺麗だ!似合ってる!好きだ‼︎」
「ッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
挑発的な顔から一変、一瞬にしてそのニヤついた笑みは真っ赤に染まり、ユウの肩をどついた。
嬉しさ半分、恥ずかしさ半分。
言葉にできない気持ちを振り払うかのように、その場で足をばたつかせる。
ドストレートなのも、時には考えものだ。挑発のつもりが、それはそれとして燕の魂にクリーンヒットをかます。
シンプル、故に高威力。大好きな恋人に、真正面から大声でそんなことを言われれば、顔を伏せて蹲るのも通り。
(おのれユウくん!普段の強キャオーラとギャップのありすぎる恋愛初心者っぷりが、こうも強烈だとは……‼︎)
壁を超えた剣豪で、
武神・川神百代さえも破った、
今では世界最強の侍と言われる水城ユウが、
顔を真っ赤にして、女にタジタジになっている姿を誰が想像できようか。
そう、水城ユウは生粋のチェリーボーイだ。
幼少に経験した敗北から始まった、勝利に全てを捧げてきた鍛錬の日々。女性経験などあろう筈もない。
この癖、川神百代を筆頭に同学年の矢場弓子と葉桜清楚、同じ剣士である後輩の黛由紀江、二年Sクラスのマルギッテ・エーベルバッハ。九鬼家メイドのステイシー・コナーと李静初、更には教師の小島梅子まで。
無意識に多くの女から想いを寄せられているという、とんでもないモテ男。しかも本人に自覚がないと言うのがなんとタチの悪いことか。
そんな激戦区を勝利したのが、松永燕である。
捉えた魚は絶対に逃さない。
このウブっぷりを利用し、自身の魅力を最大限に発揮し見せつける事で、更にメロメロの虜とする。
そして、交際における男女間の上下関係も上に立ち、絶対的な地位を確立するという計画を立てていた……はずなのだが。
ウブ、それ故に出力は最大。常に純度百パーセントの好意をぶち込んでくるため、受け身が全く取れない。
惚れた弱みという、決して消えぬウィークポイントがダイレクトアタックされているこの高揚感。
幸せに精神が乱れ、本来の計画がズレていく。
「お願いだからさぁ。それ、気持ちもうちょい威力を抑えられないかなぁ?」
「は?好きな女に好きって言ってるだけだろ?」
「んもぉー!だからそういうとこなんだってばぁ‼︎」
そのコテンと傾ける頭!
演技ではない、無垢な瞳!
同年代で高身長のくせに、まるで年下を相手にしているかのような、この純粋無垢な仕草!
「ユウくんは私を萌死させるつもり⁉︎」
「その言葉、そのままそっくりお返しするぜ」
そんな慌てふためく彼女のリアクションも愛おしい。
ユウは微笑みながら言葉を返すのだった。
このビーチに第三者がいたら、誰もがこう思った事だろう———
「ンだよ、あのバカップル。おい李、向こうの自販からコーヒー買って来てくれ。飛び切り苦げぇやつ」
「職務放棄ですよステイシー」
「いいじゃねーかよこんぐらい!甘すぎて全身から糖分吐きそうだぜファック!」
いた、第三者が。
満天の空、その中心で輝く太陽。光と熱の恵みが降り注ぐ九鬼家が保有するビーチ。
オープン前のリゾート地最初の利用権、それが優勝者に与えられる景品の一つであり、その案内人に抜擢されたのがこの二人。
金髪ツインテールの美女、ステイシー・コナー。
黒髪クールビューティー、李静初。
海日和の高温の中、見るだけで暑苦しいメイド服に身を包み、二人は浜辺でこれでもかと惚気合う恋人達の様を見せつけられていた。
「どうやら、私達が入る余地はないみたいですね」
視線を再び、二人にやる。
絵に描いたような睦まじさだ。
水城ユウとはそれなりに交流はあったものの、李もステイシーもあんな笑顔を見たことがなかった。
「私では、あの笑顔は引き出せません」
「ファーック!面白くねぇなぁ、もうちょい悔しそうにしろってんだよ」
「そういうステイシーこそ、歯軋りが煩いですよ。あなただって、ユウに気があったくせに」
「うっせ!……くそ、これならもっと早くから口説いとくんだったぜ。あんないい男」
「付き合いが長い川神百代ですらダメだったのですから。どの道フカ能ですよ、フカい仲になるのは」
「お、ちょっと涼しくなったな」
などと軽口を叩きながらも、その目は薄らながらも羨ましそうに彼の方へ向けられていた。
「本当に、おめでとうございます」
ただ、少し……我儘を言えるなら。もしも、私とユウが結ばれる可能性もあったのかもしれない。……こう思わずには、いられないものだ。
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「それぇーい!」
「うぶぁ⁉︎……おま、いきなり!」
掌で掬い取った海水を思い切りぶっかける。
陽光の反射する雫が弾け、熱い肌が冷めていく清涼な爽快感。出来上がった水も滴るいい男を見下ろし、どうだ参ったかと燕は笑う。
「ふっふっふ、恋も水かけも油断大敵なのだ。ほらほら、いつもの戦いのキレがないよん?」
「恋人の前で戦闘態勢なんて取るかよ!」
「…………ふぇ?」
「ぁッ、今だオルァ‼︎」
思わぬカウンターに、動きが止まる。
じわじわと紅潮していく頰がむず痒く、そこへびしょ濡れになったユウが、仕返しとばかりに海水を手で掬ってやり返す。
「しまッ、おぼぼぼぼぼ!!?」
煽った代償は大きく、見事にやり返された。
しかも、ただ水をかけられたのではない。それはちゃぶ台返しの要領で、掌だけでなく腕全体を使った豪快な水飛沫。
かかると言うより、この大きさは飲まれるだ。
人一人覆い被さる程の水の塊に、いとも容易くバランスを崩した燕は無防備にひっくり返った。
「ハッハァ!お前こそいつもすばしっこさはどうしたんだよ?……お?」
返事がない。
普通ならもう既に起き上がってもいい頃なのに、一向に波に飲まれた箇所から燕の顔が浮上してこない。
荒立った波が平静を取り戻し、波打ち音が安定しても、松永燕は海面から姿を表さなかった。
「燕?……おい、まさかやりすぎたか⁉︎つば———」
と、その時だ。
ドボンッ‼︎と足元から大きな水柱が立ち上がる。
下から上へと打ち上がった水流に足を取られ、今度はバランスを崩したユウの方が海面に叩きつけられた。
「ここだよーん!」
「ごぼぼぼぼぼぼ!」
軽快な声が真上から落ちてくる。起きあがろうにも、足を掴まれて水面から顔を出すことができない。
見事にマウントを取り返した燕は、掴んだユウの足を持ち上げて、起き上がらせないよう自在に操る。
「溺れたと思わせて真下へ移動!甘いよユウくん、私の真骨頂は相手の油断をつくことをわすれちゃったのかな?」
「テメっ、つばめ……⁉︎」
「さぁて、悶絶させられた逆襲タ〜イム。まずはその海パンを剥ぎ取ってしんぜましょう!」
「ッ、バカ!やめろ‼︎」
咄嗟に、ユウは掴まれていないもう片方の足を突き上げて、巨大な水柱を打ち上げた。
流水の勢いが燕を引き剥がす。彼女の手から解放されたユウは、今のうちにと急いで距離をとった。
頭からずぶ濡れになり、砂と海藻が張り付いた顔を拭いながら離れる様は、意外な程に本気の焦りが浮かんでいた。
「はぁッ……はぁッ……はぁッ……‼︎」
(ぇ、なに今の反応?ちょっとマジだったよ?)
戯れではなく、あれは本気の逃げだった。
見られたくないものを必死で隠す、戸惑いと焦りの感情を、燕の眼力は見逃さなかった。
川神百代との戦闘ですら見せたことのない、別種の感情による昂り。
現に今も、過剰な程に海パンを握り締めて引き上げている。あからさまな秘匿は、隠し事の証明でしかない。
キッと、振り返ったユウが眼光鋭く燕を見やる。
「次やったら、お前の水着も取るからな」
「ぇ、やだ……ユウくんたら本当にエッチ」
「俺達以外誰もいねーだろが」
「いやいるよ!ステイシーさんや李さんも!それにまだオープン前なだけで、通行人もいるし!ユウくん、私の裸が誰かに見られてもいいの?」
「絶対に嫌だ。でもそれと同じだ。お前だって、誰かに俺の股間見られちまうの嫌じゃないのか?」
「あ〜、うん。なるほどね、よく理解しました。……あれ?そうなると、私だけになら見られてもいいってことだよね?誰もいない、二人っきりの時なら」
「………………………………………………………」
「……おや?ユウくん?おーい」
「……………………………メシの時間だ。行くぞ」
(ちょっとちょっとちょっとちょっと、何今の間⁉︎)
無言で浜辺へと戻っていく恋人の背中を凝視し、燕は恋人の隠された秘密を確信するのだった。
無言とは肯定に等しい。
もごもごと動く口が、怪しさを引き立てる。
逸らした目が、完全に黒であると証明していた。
松永燕の中に、小悪魔が顔を出す。
いったい何を見られたくないのかな?興味と好奇心によって吊り上がっていく口元を掌で隠し、細めた瞳が標的をロックオンする。
(ふっふっふ、とりあえず今は受け入れたフリをして〜、バカンスを楽しもっか。お楽しみは、お・へ・や・で・ねん♪)
ニシシッと、頭の中で今後の策略を練りながら、燕も後を追って海から上るのだった。
そこでは、既に昼食の準備が出来上がっていた。
砂浜を少し歩いた所に設置されたパラソルと二人の分の椅子。大きなテーブルの上には、一般のお宅ではまず目に出来ないであろう豪勢な料理の数々がこれでもかと乗せられた。
串に刺された牛肉、小海老のフリッター、大きなグリルで焼かれた魚介類。目にも鮮やかな新鮮な海の幸が所狭しと並んでいる。
まるで、砂漠を彷徨い歩いてきた旅人を出迎えるような美食の数々。流石は九鬼財閥。取り揃えられたものは全て一級品、一般家庭の出である二人にとって思わず萎縮しそうになるものだった。
「これ、食い方の作法とかあるのか?」
「ねーよ。ガブっと豪快にいけ、ガブっと」
「そっすか。そういうことだ燕、その納豆戻せ」
「えー、なんでぇ?」
「お前、時と場合ってもんを考えろよ……」
「う〜む、彼氏の言うことだし仕方ないなぁ」
渋々と、燕は納豆を仕舞った。
聞きはするものの、その本心では納豆を手放すつもりは毛頭ないようだ。若干納得がいっていなさそうに、唇を尖らせている。
納豆をこよなく愛する生粋の納豆愛好家。
アイデンティティの一つをダメ出しされ、一目見ただけでわかる不満の表情に、ユウは小さく息を吐いた。
「悪かったよ、ほら」
言葉と共に、燕の目の前に差し出されたフォーク。その先には、こんがり焼かれたグリルが刺さっていた。
よく味付けされているであろうそれは、とても香ばしい匂いを漂わせている。
お詫び、そういいたげに口を開けるよう促してくる恋人の瞳。
燕の視界に映るありとあらゆる全てが、これまでの不満や鬱屈とした気持ちを吹き飛ばした。
女の視線や男女感における体裁等、その他全てが思考の海から消え去り、代わりにこみ上げてくる幸福感。
こう言うことをナチュラルにしてくるから、私の彼氏はたまらない。ニヤける顔を包み隠さず、差し出された料理に口を近づけた。
(……美味しい)
さらに頬が緩む。
舌で感じる幸せの味、鼻を抜ける香ばしい匂い。
料理もそうだが、このシチュエーションそのものの味わい深さが五臓六腑に染み渡る。にやける顔を元に戻す方法すらも忘れ、幸福感に身を委ねていると、目の前の彼の顔もどこか嬉しそうだった。
「美味いか?」
「ん〜❤️生涯忘れることのない美味しさ!納豆無しでも、これはこれで……。食が進みますなぁ!」
お返しとばかりに、今度は燕が料理をユウに食べさせる。
「はい、あ〜ん!」
「あ〜……」
周囲の視線も忘れて、幸せの味を噛み締めながら、二人はバカンスを謳歌するのだった。
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九鬼財閥のリゾート施設の目玉は、なにもビーチだけではない。山と海、そして川。自然を贅沢に使った一大テーマパークを売りとしている。
たった一日では巡り尽くせない娯楽の楽園。
その中でも、やはりビーチと並ぶ人気を誇るのが湧き上がる自然の恵み———温泉であろう。
「ん〜、極楽極楽!」
ちゃぷん、とお湯が揺れる。
波紋が広がっていく無色透明の湯に肩まで浸かり、至福の表情を浮かべる燕。熱が、効能が身体の芯まで染み渡っていく。
まだ幼さを残した顔立ちながら、そのスタイルは女性としての魅力を十分に備わっていた。
できるだけ大自然の中を思わせるように改築された温泉施設で裸体を晒す開放感。
身も心も洗われて安らいで行く感覚が、極楽を感じさせる。その温泉を堪能しているのは、燕一人だけではない。
「ロォ〜〜〜……ック、こりゃ生き返るぜぇ」
「ステイシー、だらしがないですよ」
「つーお前も、堪能してんじゃねぇかよ。サンキューな松永燕、あたしら誘ってくれて」
「いいんですいいんです!見られるだけってのも気が滅入るんで。特に李さんは、大会でユウくんのパートナーだったんですし。これぐらいご褒美ないとバチが当たりますよ!」
(ステイシーさんは流石のナイスバディ。李さんはバストでは私の方が軍配が上がるけど、スレンダーさと曲線の美しさは見事……)
と、いいつつも。この状況を利用して、二人の身体的特徴を観察する。
ベクトルは違えども、二人とも十分に男を誘う美貌を兼ね備えている。別に下心ではなく、これも立派な情報収集だ。
(モモちゃんも含めて、この人達も未だにユウくんのこと諦めてないっぽいんだよねぇ)
松永燕と水城ユウが交際していると分かっていても、そこは川神の女達。肉食系を通り越して、捕食系、暴食系、悪食系といった概念が女の形をしている生粋のハンター。
武においても恋においてもそれは同じ。一度狙った獲物は他人のものであろうとも、諦めと言う二文字が辞書に刻まれることはない。
特に百代に至っては、ただでさえ燃え上がっていた恋心が業火となって勢いを増している始末。
あれは捕食者の目だ。
略奪を考えている眼光だった。
当然、燕は我が彼氏を信じている。他の女に靡くような、性根の腐った雄ではないと。
だがそこは策略家、松永燕。万が一、億が一の可能性を考慮して対策は今の内に立てておく。
死に物狂いで手にした男なのだ。
他の女に渡してなるものか。
「ユウく〜ん!そっちどう?」
『ご〜く〜ら〜く〜』
なんと気の抜けた返事だろうか。
塀の向こう側から返ってきたそれは、どんな敵でも斬り捨ててきた剣士とは思えぬ間の伸びた声だった。
燕としては、できることなら本当は混浴がよかったが、海で見たあの慌てようから見て、男女別という選択を取った。
何かあるという確信。それを暴くのは、バカンスの最後の楽しみにとっておこうという策略を腹に。
「ファ〜ック!いつでもどこでもイチャつきやがって、ちったぁこっちの気も考えろってんだガキ共めぇ」
「ステイシー、あなた酔ってますね?」
「うるへぇこれがよわずにあられるかぁ!そりゃああたしだってなぁ、ぐんじんになっらときにゃしぬかくごできてたんらぜぇ?でもよぉ、こうしていきのこっていいおとこゲットできりゃあなぁ〜とかおもうわけよ!」
ゴキュッ、ゴキュッ……と喉を鳴らす音。
川神水の入った瓶を、盃に入れるまでもなく、そのままラッパ飲みで豪快に飲み干していく。
アルコールは入ってないが気分で酔える川神水。
この開放的な空間もあって、ステイシーはとっくに出来上がっていた。このまま酔うにつれて、愚痴もヒートアップしていく……と思われた。
次第に、その勢いはどうしてか衰えていく。
「いろいろいたなぁ〜、こきょーでワイフがまってるとかぁ〜。このせんじょうでいきのこったら、あいつにこくはくするとかぁ〜。みんないいやつらだったんだよぉ、それなのによぉ〜、あたしだけよぉ〜」
「はいはい、もう分かりましたから。飲み過ぎですよステイシー。上がりましょうね」
「ぢくじょー、あのせんじょーにあたしがいりゃあてきこくのやつらなんざぁ〜……こうしてやったのによぉ!ファ〜〜〜〜ック‼︎」
「ちょ、ステイシー⁉︎」
どこから取り出したのか、全裸の筈の彼女の両手いっぱいには、大量の手榴弾が。
息を呑む一同。
李でさえ、目を見開き慌てて止めに入る。
しかし、完全に酔っ払った心に傷を負った元軍人は、それらを惜しげもなく温泉の真上に放り投げた。
瞬間、爆発音と水飛沫が辺りに広がった。
「あぁ〜〜〜〜〜〜〜ッ‼︎」
大自然が巨大な轟音に揺れる。その衝撃は女風呂を中心とし、男風呂との境界である塀をも破壊した。
被害は男湯にも及んだ。
「んぁ?なん……だぁこりゃぁぁぁぁぁあ!!?」
湯に浸かり寛いでいたところに、突然として雪崩れ込んできた手榴弾の雨。
完全に虚を突かれた男の悲鳴が上がる。
見事な造りだった安らぎの場は見るも無惨な形となり、男湯と女湯を隔てる塀も消え去り、完全に元の原型とはかけ離れた光景へと成り果てた。
「けほ、けほっ……ぁ、ユウくん大丈……ぶ?」
男湯の惨状に、女湯から顔を覗かせる燕。
こんなことで大事に至る程、やわな男ではないことは理解しているが、恋人として安否を問う。
そこには……
「なんだったんだつば……あ」
衝撃に干上がったお湯。
吹き飛んだタオル。
打ち上げられた恋人。
当然、その姿は全裸であり……予期せぬ衝撃により、その裸体は眼前の元に晒されていた。
「……え?」
そして松永燕は目撃す。
水城ユウに生えた大自然の奇跡———火山を。
ユウ「優勝商品のバカンスのことなんだけど、燕と一緒に行っていい?」
石田「別に構わんぞ。そもそも、俺は修行で行くつもりなどないからな」
的なやり取りで、優勝商品のバカンスに燕を誘ったという経緯です