高嶺の花なクールギャルは、何故か俺にだけ当たりが強い。いい加減限界なので催眠かけてブチ犯す事にした。 作:無様キング
[須藤視点]
「ん……疲れた……。」
身体を伸ばして椅子の背もたれに寄りかかる。一人だけの教室で自主勉なんて、久々……。
いつも自室か塾の個室で勉強してたから、誰もいない教室でこうやって過ごすのがこんなに集中出来るだなんて知らなかった………。
これ、癖になりそ……。
ただ今回範囲広めだから、作業量多いのだけが少しめんど…………まぁ、これも受験の為だから……。
「………………。」
…………今日、黒田の様子がおかしかった気がする。
いつもよりどこか落ち着いていたというか、あいつが私の命令に一つも文句言わず素直に従うとか有り得ない。
絶対少しは眉をひそめたり、口答えしたりする筈なのに……。
元々物静かなタイプではあったと思う…………けど、あいつがあんな冷たい態度取ることなんて滅多にない……………。
…………それに、何より私の事をずっと見てた。
あの時の眼差し、今までに見たことがないくらい真剣で…………………… やっぱり昨日の事……まだ怒ってるわけ……?
「……別に、私が悪い訳じゃない……。」
…………精一杯の強がり。
独り言だから口に出来る、自己保身の都合の良い論理……今の私、きっと凄く情け無い。
─────でも、相手が黒田じゃなかったら……こんなにずっと悩む事なんて、無かったのに。
「………………っ。」
そもそも、鬱陶しいのは黒田の方……。
同じクラスで、同じ通学路……。
そんな些細な偶然が重なった所為で、毎日あんなウドの大木みたいな男を視界に入れなきゃいけないなんて…………本当に最悪。
…………それなのに。
(─────あのまま倒れてたら……間違いなく私、怪我してた……。)
昨日起きた事実が頭の中で反復され続ける。
…………助けてくれた事に感謝しないといけないのは分かってる……。
あの時の立ち位置で、私を咄嗟に支えられるのはあいつしかいなかった事も理解しているつもり……。
(大怪我してたかもしれない)
良い人らしい、模範的な対応だったのは誰の目から見ても明らかで……黒田はただ終始、紳士的に行動しただけ。
私が素直にさえなれば、それで済んだ話なのに……。
………………………でも。
それでも……素直にはなれなかった。
…………なれる訳がない。
だって、それは……。
「………ダメ、こんなの。」
頬杖をついた手に力が籠もる。
唇を強く噛み締めて、漏れそうになる感情を抑え込んだ。
「きっとこれは一時の気の迷い、明日には元通り……。」私は自分にそう言い聞かせながら、机の上に広がる参考書やノートを片付け始めて、煩い雑念を脳裏へと仕舞い込もうとする。
このままここに居ても意味ない……。
どうせ余計な事ばかり考えて、頭が痛くなるだけだから……。
──────ギィィッ……。
不意に、図書室のドアが開く。
◆
「ほら須藤、鍵持ってきたぞ。」
本当に、タイミングの悪い人……。
こっちの悩みも知らないで能天気な顔した黒田は、その無駄に威圧感のある図体でズカズカと図書室の中に入って来る。
…………来るのは分かっていたけど、物音に少しビックリしちゃうとか……。 まるで私が馬鹿みたい……。
「驚いたよ。こんな時間まで自主勉とか、お前案外真面目……なんだな。」
「……別にこれくらい当然。……というか、私の事不真面目だとでも思ってたわけ?最低……。」
「い、いや……。そういう意味で言ったんじゃなくて……っ。須藤ってオシャレだし、もっと遊んでそうなイメージあったからさ……勉強もしっかりやる方なのかなって思っただけで……。」
……あ、焦ってる。
ちょっと面白いかも。
「……冗談だから。こんな子供騙しの軽口を本気にするなんて、黒田って単純すぎ。」
「なっ……!単純ってお前……っ。」
打てば響く、その言葉通りのお手本の反応。
どこまでも不器用で素直なこの男は、私の言葉一つに二転三転表情を変える。
普段、参考書相手に眉にシワを寄せた仏頂面が嘘みたいに、今は必死に言葉を紡ごうとして、その様子は少しおかしい。
……とはいえ、今朝のもの鬱げな表情は一体何だったんだろう。
今の黒田はそんな影なんて微塵も感じさせない、どこか吹っ切れた晴れやかな顔をしていた。
「……まぁ、いいよ。 それより、早く戸締りするからそこどいて。」
「…………いいけど。」
「……? 珍しいな、素直に従ってくれるのか?」
「……別に、今日くらいは言うこと聞いてあげようと思っただけ。」
そう言って私はカウンター席の方へと移動する。
本当は私なりの感謝の気持ちだけど……そんな事絶対に言わない。
……絶対調子に乗るに決まってるから。
──────ブーッ!ブーッ!ブーッ!
唐突に、室内を不快なバイブ音が駆け巡る。
明らかに蒸気を逸した通知音の連続が、黒田のポケットの中から鳴り響いていた。
「……っ、うるさ……。なにその通知音……っ、早く消してよ……。」
「わ、悪い……っ。」
スマホを取り出した黒田は慌てて画面を操作して、音の発信源を止める。
……こんなに連続して鳴らしてるとか、マナー違反にも程がある。
──────ブーッ!ブーッ!ブーッ!
「……っ、くそ……っ。は…………?なんで止まんねぇんだ……!しかもよりにもよってこんな時に……っ。」
…………図書館の端でこそこそと黒田がなにやら悪戦苦闘している。
それも微かに……だけど確かに苛立ちを滲ませた声色で。
……やっぱり、おかしい。
黒田は慌てたり動揺する事は多々あれど、明確な苛立ちを見せるなんて事……少なくとも私の前では一度だって見せた事がない。
あんな顔で……乱暴に振る舞う事なんて一度もなかったのに……。
「ねぇ。」
「……っ。あ、あぁ……!いや、ホントごめんな……!ちょっとスマホ壊れちゃったみたいでさ……!通知鳴り止まなくて……掃除も全部俺がやっとくから、須藤はやっぱり先帰っててくれ……!」
「……それ、貸して。」
「……え。」
……それは、一瞬の出来事。
私の手が、反射的に伸びていた。
「…………貸してって言ってるんだけど。」
「い、いや……これはダメだ!」
「……っ!」
──────────バッ!!
咄嵯に、手を払われた。……拒絶された。
いつもならあり得ない行動に、思わず呆然としてしまう。
「あっ……。」
黒田も、自分の行動に驚いているみたいだった。
でもそれ以上に私が困惑している。
コイツがこんなにやましい顔して隠し事をしているのを見た事がないから。
……一体、何を隠そうとしているの……?
「………………そう。逆らうんだ、黒田の癖して私に。」
私は黒田の顔を静かに見据えて、ゆっくりと口を開く。
……微かな、だけど確かな静かな怒りを込めて。
「──────いい度胸じゃん。」
◆
ただただ無性に、腹が立つ。
産まれて初めての感覚に、私はただ奇妙な浮遊感と現実味の無さから生じる衝動に身を委ねる事しか出来なかった。
「……ッ!!須藤……!近い……ッ!!近くないか…………!?」
「抵抗したければすれば……? 私の身長じゃ、その上に掲げたスマホにはどうやっても届かないんだし……。私からすればこうやって身を寄せて必死に背伸びするしかないから、そうしてるだけ、なんだけど……。」
「だからって……!!」
「あ、勿論変な真似したら許さないから……。 黒田だって高校生のうちに問題とか、起こしたくないでしょ?」
図書館の片隅。
詰め寄る私から逃げるように、一歩ずつじりじりと後ろに下がり続けた黒田は、行き先を失い壁際まで追い詰められてしまう。
さっきの乱暴なやり方を後悔したのか、一向に抵抗せずにただ自分のスマホを上に掲げて、私の手が届かないようにガードし続けるだけしか行っていない。
どこまで行っても『良い人のフリ』、したいんだろうか……。
ここに来てまだ紳士面なんかしても意味ないのに……。
(──────何頭にきてんだろ、私…………。)
────我ながら、馬鹿みたい。
つくづくそう思う。
たかがスマホ画面見せるのを渋られただけ…………。 こんな風にムキになる必要なんてどこにもない。 この男のスマホの中身に、興味なんて湧く筈など有り得ないのに…………。
なのに躍起になって、こんな目と鼻の先にまで近付いて。
…………ま、まるで私が黒田に、何かをせがんでるみたいな体勢で。
「………………〜〜〜っ///」
………………でも駄目。
絶対ここで引いちゃいけない。
このまま引いたら、きっと私はかけがえのない何かを失うような気がしたから。
だから私は、意を決して黒田との距離を更に狭めていく。
「…………いい加減観念して。」
「……ぐっ!! ダ、ダメだ……! これだけは意地でも見せられない……!! てか……須藤、一旦落ち着け……!! これ以上近づいたら……っ!!」
「なに……? そっちが勝手に意識してるだけでしょ……。 キモ……。 それとも何……? ────私にスマホ見られたらマズい理由でもあるわけ?」
「────っ。」
その瞬間、黒田の顔つきが確かに変わったのが分かってしまう。
────今思えば、恐らくこの一言が黒田に一線を越えさせてしまった原因だったんだと思う。
「ぇ……っ。」
(なに……その表情……っ。 怖い……。 なんかいつもと違って……っ。)
だけど、その事に気づいた時にはもう何もかもが手遅れ。
もう逃げ道も一切ない、間抜けな
「──────はぁ。 ……ああクソ。 もうどうでもいいわ……。 こっちもいい加減我慢の限界なんだよ…………!」
「え……。」
黒田はスマホの画面を手早い動きで数度タップする。
そうすると、奇妙なモスキート音が部屋中に鳴り響いた──────。