揺籃の魔法少女 作:ほむほむぷでぃんぐ
私の背後に立っている推定魔法少女は鋭い声で私に問う。
「それで、魔女を従えて結界から出て来て、あなたは何者なの?」
どうやら、私は魔女と行動を共にする良からぬ輩として捉えられてしまっているらしい。私の願いは他の魔法少女との対立を招くという点でも不味かったようだ。
「えっと、私はただの魔法少女で、願いの内容のせいでこうなってるだけなので、魔女をけしかけて人を襲わせようとかは考えてないですよ?」
私がそう弁明すると、背後に立つ魔法少女はそれが信じるに値するかどうか考えているのか、黙り込んだ。それから少しして、私に問いかける。
「···じゃあ、あなたは何を願ったのかしら?」
「『魔女の力が欲しい』です。魔法少女になったのも昨日の事なんですけど、その時に魔女の結界に迷い込んで、絶体絶命の状態だったので、勢いでそんなことを願ってしまって…………今はちょっと後悔してます」
私がそう答えると、彼女は先程とは打って変わって、申し訳なさそうに謝る。
「そうだったのね。ごめんなさい、私が間に合わなかったせいで……」
「別に、謝らなくていいですよ。一人が全部どうにかするのには限界がありますし、私の運が悪かっただけです」
「……そう、あなたは優しいのね。もう動いていいわ」
その口調はすっかり険が取れて優しいものであった。誤解が解けて助かったとは言え、そんなにすぐに信じて良いものなのだろうかと、私は心配に思いつつも、彼女から許しを得たので、地面に転がったままであったグリーフシードを拾ってから立ち上がり、彼女の方へと振り向いた。
そこには、白いブラウスの上にブラウンのコルセットを付け、黄色い布地にブラウンの縁どりがされたスカートを着用した魔法少女がいた。頭には羽付きの茶色いベレー帽、黄色い部分がパンプスのようにも見えるロングブーツを履いおり、金髪のツインドリルというクラシカルな印象を感じさせる容姿である。
彼女の名前は巴マミ、『まどマギ』では、まどかやさやかの先輩魔法少女として活躍し、お菓子の魔女との戦いで、
彼女は振り返ったこちらの姿を見るや否や、顔色を変えた。
「あなた、ソウルジェムが真っ黒じゃない!」
そう言われて、自分の胸元に飾られたソウルジェムを見ると、戦闘前とは比べ物にならない程濁っていた。さすがに魔女になるほどの濁りではないが、これには私も驚かされた。
私はグリーフシードを使おうとしたが、その前に誤解を防ぐ為に予め言っておくことにした。
「あ、グリーフシードを使いますけど、これも私の願いによるものなので、驚かないでくださいね」
「え、ええ」
彼女が頷いたので、私は手に持っていたグリーフシードを自らのソウルジェムに当てた。グリーフシードはソウルジェムの濁りを吸収していく。やがて、穢れを取り終えると、グリーフシードはソウルジェムに溶けるかのようにして飲み込まれた。
巴マミはそれを見て呆気に取られていたが、敵対的な反応が無いのを確認した為、私は変身を解除した。彼女もまた、何も言わずとも変身を解除する。
「えっと、そんなものを取り込んで大丈夫なのかしら?」
「それは私もちょっと気にしてます」
「そうなのね……」
出てきた質問は尤もなものであった。けれど、魔法少女となったからには避けることは出来ない。出来ることなら何とかして安全を確かめたいものである。
そして、私達二人の間に沈黙が訪れた。彼女が私に他にも色々と聞きたそうな顔をしていたので、それを聞かれるのを待っていたのだが、一向に切り出されない。誤解から敵対的に接してしまったり、私の特異性に対する困惑などによる気まずさがあるのかもしれない。このままでは何も進まないので、私から切り出すことにした。
「あの、私の名前は東雲あみって言います。あなたの名前は?」
「···私は巴マミよ。よろしくね、東雲さん」
本当のところ彼女の名前は知っているが、初対面の人が何故か名前を知っているというのは不気味に思われるので、確認も兼ねて名前を尋ねてみたが、やはり本人のようだ。
「じゃあ、巴先輩ですね。私、魔法少女になったばかりなので、色々教えて貰えると嬉しいです」
そう伝えると、効果覿面で、彼女は満面の笑みを浮かべた。心做しか、目も輝いているような気がする。
「もちろんよ! それと、下の名前でいいわ」
「マミ先輩、ですね」
「ええ!」
魔法少女の後輩が出来たのが余程嬉しいのか、マミ先輩は舞い上がっている。まぁ、それも仕方ないというものだ。確か、彼女は中学生という身で、事故で両親を亡くしていて、魔法少女という自分の秘密について打ち明けられる友人もいなかったので、その寂しさから解放されるとなれば喜びもひとしおなのだろう。
彼女が実力のあるベテラン魔法少女だとしても、中身は普通の女子中学生なのだ。それ故に、不安定な心を正義の魔法少女としてのアイデンティティによって支えており、魔法少女の真実を知ったことによって、最悪の形で暴発することになるのだが。
「マミ先輩、私友達を待たせているので、一旦連絡先を交換して、また今度会いませんか?」
「もちろんいいわよ、楽しみにしてるわね、はいこれ」
マミさんがスマホを差し出したので、私は手早く登録を済ませる。
「では、また会いましょう、マミ先輩」
「ええ、また、東雲さん」
私はマミ先輩に手を振ってから、待たせてしまっている二人の元へと急いだ。
「ごめん、待たせちゃった」
「ううん、大丈夫だよ」
「そうだぞー、まどかとたっぷりイチャつけたし」
戻ってくると、二人はそのままの場所で待ってくれていた。そこそこ待たせてしまったが、二人は特に気にしていないようで、私が謝ると、さやかはまどかを抱き寄せて揶揄った。
「そうだったんだ、羨ましい」
「でしょー?」
「嘘だからね?あみちゃん」
それに私が乗ると、まどかは慌てて否定をする。それを見てクスリと笑う。揶揄われたまどかは頬膨らませた。
「もー」
そんな何気ない会話が私にとっての幸せで、私はこの日常が続けばいいと、切に願った。
そろそろR18感を出していきたいところ。
気が乗ったら続く。