プレアデス監視塔五層『ケラエノ』
「やっぱ用もなきゃ近づきたくもねえ場所だな。おっかねぇ」
「そんなこと言いながらあーしに会いに来てくれたクセに、お師様ったら恥ずかしがりやなんスから~」
「いや近い、近い」
黒のポニーテールに恥部を申し訳程度に隠した、半裸に近い恰好の痴女がシュバルツにしがみつく。
「アナスタシアは命を粗末に扱う奴らとは違うと思っちゃいたが、お前が取り憑いてたんなら納得だ。なぁ、『エキドナ』」
「……つまるところ君は、アナではないボクに用があるということでいいかな?」
シュバルツが見下ろすのは、外見も声もアナスタシア。
しかしてその正体は、彼女の体を借りている人工精霊エキドナである。
塔への挑戦を進言したのは、アナスタシアではなく彼女だったのだ。
「お前がこんな所に来ようなんて言い出さなきゃ、『最優』もあの弟たちも死なずに済んだんだ。言い訳くらい聞こうじゃねぇか」
「君がそれを言うのか。あの攻撃の瞬間の君の挙動、どう見てもこれから起こる事態を想定したものだった。加えてその女性、シャウラの君への態度。もしかしなくても、君は塔の中にいたシャウラとあらかじめ示し合わせて、私達を一網打尽にした、と考えた方が自然だと思うんだが。違うのかい?」
エキドナが、事の真相を推察する。
「いいや違う。俺はこのあっぱらぱーの賢者モドキと知り合いなんかじゃなかったし、示し合わせてもいなかった。俺は、あの場で生き残る為に最善を尽くしただけだ」
事実である。
シュバルツは初見でシャウラの射撃に全く反応できず
彼はただ、アナスタシア陣営に対して、狙撃の情報を
「もー、あっぱらぱーは心外ッス! あっしは言いつけ通り、来るもの皆ぶっ刺しただけなのに!」
「お前が喋るとややこしくなっから、ちょっと黙っててくれる?」
シャウラを見るものとは打って変わり、シュバルツが軽蔑するような目でエキドナを睨み、吐き捨てる。
「あいつらを殺したのはお前だ、エキドナ。お前が皆を巻き込んで、こんな所まで連れてきた。お前の見通しの甘さが皆を殺した。それが全てだ」
「……それを本気で言っているとしたら、たいした役者だね。おおよそ正気の沙汰とは思えない」
「お前だけには言われたくねえよ」
カチャリ。
「……奴隷の首輪」
「当然持ち主は俺な。カララギの人間にとっちゃ、見慣れたモンだろ?」
アナスタシアの体に首輪がかけられた。しかし、彼女に憑依するエキドナが関心を寄せるのは、首輪をかけた人物の方で。
「なぜ君が。……いや、彼らと共にあった時点で、繋がっていたことは明白だったか」
「そうですね。私は初めから、シュバルツ様の忠実な肉奴隷なのです」
彼女に奴隷の証を繋いだのは、『クルシュ』だ。
目の前の令嬢もまた、対象に隷従を強制する『ミーティア』を首に巻いている。
『クルシュ』を庇ったフェリスはその後すぐに蘇生し、負傷した仲間の治療を行った。そのおかげでシュバルツ側は全員無事。
対してアナスタシア側の生存者は、アナスタシアとミミのみ。
「ちょっ、あーしを差し置いて肉奴隷作るとか、どーいうことッスか!? 断固抗議するッス!」
「あー、シャウラ。今真面目な話してるから、ちょっとあっちで遊んでてくれ。な?」
「そういう命令は卑怯ッスよ! でも…久しぶりのお師様の命令! 何であれ心が弾んじゃうのが、乙女の悲しい性ってやつッスねえ」
塔の上から狙撃を行っていた、アナスタシアの家族を凶弾に散らした張本人がすごすご退散していく。
「なるほど、わざわざこんな首輪まで用意したとすると、君はボクたちを生かしたまま利用する算段のようだ」
「勘違いするな」
「うぐ……!?」
おもむろに、アナスタシアの体からマナが抜けていく。
「ひぃぃぃはぁぁぁ! やるぜ! やってやるよ! そのクソ憎らしい王選候補のオドが涸れ果てるまで!」
その下手人が、シュバルツの後ろで咆哮する。周囲のマナを略奪する『貪欲の魔眼』。その異能が、アナスタシアの身体に向けられる。
「あいつをぶっ壊してくれた礼だ! 全部全部、奪い尽くしてやるぜぇっ!!」
「っ!?」
生物がみな持つマナの器、オド。
喪われたオドは決して戻らない。喪失による身体の障害も、また。その能力は、生まれつきゲートに欠陥を持つアナスタシアにとって、天敵とも呼べる。
「このサルム、いやウォルフは、アナスタシアのために特別に連れてきたんだ。取り巻きどもがどんなに騒ごうが、遠隔でマナを接収するウォルフの前には跪くしかねぇんだからな」
エキドナは戦慄する。シュバルツは誰も知らない筈のアナスタシアの体質を調べ、彼女の命を人質にとったのだ。
「おとなしく従えば、アナスタシアは生かしてやる。その代わり、お前は死ぬけどな」
♢
プレアデス監視塔第四層『アルキオネ』・緑部屋
「……お前、復讐でもするつもりか?」
塔での用件を済ませ、小休止していたシュバルツの顔を、女が覗き込む。
「まさか。復讐などする理由がありません。むしろ、感謝さえしていますとも」
「あ?何をだよ」
至近距離で微笑を浮かべる『クルシュ』に、疑念を深めるシュバルツ。一方で、奴隷の証を身に着ける緑髪の女は、大して臆した様子もない。
「分かりませんか? あなた様は、生きる道を示して下さったではないですか」
「そんなことした覚えは」
「犯して、虐めて、気持ち良くして頂きました」
「——」
令嬢は己が陵辱された事実を、さも良い思い出のように語る。
「酷くて、最低で、気持ち良くてたまらなくて。前の私のことも、王選のこともどうでもよくなって。屋敷の方も、フェリスも、プリステラの人々も、アナスタシア様たちも、皆を裏切って。そんな下劣で卑俗な『私』にして下さって、本当に感謝しているんです」
「……感謝してるとは思えねぇ言葉選びだよな」
「まあ、事実ですからね」
苦笑する『クルシュ』の声には、喜色が滲む。
「で、俺に感謝してる『クルシュ』さんは、何しに来たんだ?」
「それは勿論…………ご主人様へのご奉仕ですよ♥」
そう宣言した
胸元を緩め、身を包む乗馬服を紐解いていく。
衣類が足元に脱げ落ち、入念に封じていた魔性の香気が部屋を侵食していき、
「ちょっ!? 待っ! ストップ!ストーップ!!」
思わず目を閉じるシュバルツ。
だが男の子らしく、チラリと細目を開けてしまう。
そこにあったのは——男好きする要素の詰まった、『クルシュ』の裸体。
二度の『変貌』を経た、まさに『色欲』の申し子。
くっきり分かれた谷間の中央からは、ボディチェーンが腹部や鼠径部に広がり伸びる。高貴な白い肌に比し、下品な金色の鎖が令嬢の玉体の淫靡さを際立たせる。
正直に言って、まともな装束ではない。
「シュバルツ様の所から買ったんです。お気に入りなんですよ♥」
「そ、そりゃお買い上げどうも。俺はこんなもん売れるなんて思ってなかったけどね…」
「では、どうぞご堪能ください♥」
動揺するシュバルツを他所に、彼の手が『クルシュ』の胸元へと引き寄せられる。
モミュウ♥
「~~ッ!!」
あまりの柔らかさ、乳首と手のひらの接触部に感じる湿り気。男の両手で掴んでも余りある広大さ。
指が沈みできた皺が、もっと揉んでと懇願してくる。
生来の美貌を権能によって限界突破させた、究極の性奴隷。その玉体を嬲る権利を、男はその手に得たのだ。
………ゴクリ。
シュバルツの理性が殺されてゆく。
数多の死を経験した彼にとっても、初めての体験だろう。
初物の勃起が止まらない。脳は目の前の女をはね退けろと指令を出すも、肉体が言う事を利かない。
仕方ない事だ。彼女に距離を詰められた時点で、全ての雄は無条件に尻尾を振ってしまうのだから。
「お、おい、『青』はいいのかよ」
辛うじて意志の糸を束ね直し、乳房を男に差し出す令嬢に問いかける。
「フェリスなら分かってくれます。それに、フェリスを裏切ってするせっくすって、とっても最低で…、とっても気持ちいいんですよ♥」
「……はっ、終わってんな。こんな姿が支持者の皆さんに見られたら終わりだろうな。謝罪会見じゃ済まねぇのは間違いない」
「ええ……♥ 皆さん、どんな顔をしてくれるでしょうか……♥」
「そこで興奮しちゃうの!? 性癖がキツ過ぎて、逆にちょっと落ち着いたわ!」
時にして一年以上。肉欲の日々に無垢な心と清い体を浸した結果、今の彼女は自身の破滅を想像して嗤える女になった。
この異常性癖の色狂いが、あのクルシュ・カルステンその人とは。
「まあ。シュバルツ様が私をこんな風にしたのでしょう? 責任、とって下さいませんか?」
『クルシュ』が反論する。
ここまで壊れてしまったことに対し、シュバルツにも思う所が無い訳ではない。
しかし、
「ごめん。俺、純愛スキーでさ。NTRじゃ抜けないんだよ」
「…………ねとられ?」
「代わりと言っちゃなんだけど、また別の機会にすげー最低で気持ちいいこと、させてやっからさ。もうちょい待っててくれよ、な?」
「シュバルツ様は、私とせっくすしたくありませんか?」
「いやいや、『クルシュ』さんみたいな綺麗な人に誘われたら、大体の男は「おっふ」ってなるよ。ただこういうのはちょいと経験が少なくて、…ゴメン、今の無しで」
「だったら一度、体験してみませんか? 案外ねとられ?も良いものかもしれませんよ?」
「やめて! 俺にそんな素質あって欲しくない!」
その間にも、シュバルツの衣類にかけられた手が進み、
「————あら、随分と楽しそうね」
音もなく現れたのは、真顔のエルザ。
口ぶりとは裏腹に笑みはなく、仰向けで勃起逸物を晒すシュバルツと、彼に抱き着く全裸にチェーン姿の『クルシュ』を見下ろす。
「セーフ!! ナイスディーフェンエルザッ!! 愛してるぜー!!」
「首輪を使えばいいのではなくて?」
「そ・れ・だーー! 無我夢中ですっかり頭から抜けてたー!」
『クルシュ』にかけられた奴隷の首輪についての指摘に、ハッとするシュバルツに対し、『クルシュ』はクスクスと笑う。
彼女はシュバルツから離れ、緑部屋の出入り口へ向かう。
「ではまたの機会に。——先ほどのお話、約束ですからね?」
「ああ、約束するよ。必ず、国一番の舞台を用意してやる」
情婦が去った緑部屋に残されたのは、勃起をいそいそと隠す情けない男と、彼の共犯者。
「いつの間にか餌やりが上手くなったものね、色男さん?」
「う、ウス…。嫌味だと分かっててもぐうの音も出ねぇ…」
「出発の準備ができたから呼びにきたのよ。あの賢者さんも連れて帰るのよね?」
「そうだ。あいつらはきっと役に立つ。役に立たねぇなら——その時は好きにしろ」
「あら、嬉しいことを言ってくれるのね」
三階層『タイゲタ』ならびに、塔の試験には挑戦しない。
「本当はここに来ること自体、オメガのやつに渋い顔されてんだ。これ以上深追いするつもりはねぇよ」
オメガは、監視塔へ手を出すのは止めるよう再三主張していた。
それでもシュバルツたちは、アナスタシア陣営のためにここまでついて来たのだ。これ以上彼女の機嫌を損ねるつもりは無い。
「今回はわりかし楽な仕事だった。……犠牲を容認すれば、こんなに上手くいくもんなんだな。」
「人は、自分の命ひとつにしがみつくのが精一杯な生き物よ。それを下手に欲張れば、余計に苦労して当然でしょう? そんな当たり前のこと、ようやく気付いたのかしら」
「……耳が痛ぇな」
まさか、殺し屋に人のなんたるかを説かれるとは思っていなかった。
こうして一行は監視塔を後にする。
帰りのメンバーは『クルシュ』、フェリス、護衛剣士二名。そしてシュバルツ、エルザ、メイリィ、スフレ、ウォルフとプーカ、シャウラ。
——捕虜、アナスタシア、ミミ。
〇サルム(ウォルフ)&プーカ
優しいサルムと冷酷で非情なウォルフ、二重人格だった男。メルティの『躾』に加担させられサルムは壊れ、ウォルフだけが遺された。監視塔の穢れたマナを過剰吸収するとただでは済まないがメルティの為なら躊躇わない。ウォルフにとってもまた、彼女は可愛い妹なのだから。プーカはそんな彼を見捨てず、今も傍に居続ける。
彼らの活躍はSwitchゲーム「Re:ゼロから始める異世界生活 偽りの王戦候補」にて。
進行度
Lv .9快楽のためなら何でもする変態隷奴公爵
隷従・被虐・露出嗜好
ボディチェーン下着・淫紋ペイント