※この作品はR-18です。

鵺の陰陽師 えっちな方まとめ   作:なめたけ伯爵

9 / 9

キャシーさん、人気投票3位おめでとう!!!

酒カス幻妖sのキャシーと白沢が身体の相性求めて男漁りして迷惑かけて陰陽寮から苦情が来たので、とても身体の相性がいい学郎が面倒みてあげてる世界の話です(????)

流れに任せて書いてたら、なんか夜島家の性事情がやばい事になった。ヒロインズはもっと怒っていい。


バニーでのエロってむずい。バニー感、どこ……?


十五夜、酔いどれ兎どもが気ままに跳ねて、愛されて

 

 

 

 

 

 十五夜の晩、俺様は白沢と並んで縁側に腰掛け、酒の入った杯を片手に、普段よりもいくらか明るく見える庭をぼんやりと眺めていた。

 

 雲ひとつない夜空の真ん中には、馬鹿みてぇにでかい満月が浮かんでいて、その白い光が庭木の葉や石畳の輪郭を普段よりもずっとくっきりと浮かび上がらせ、植え込みの隙間や軒下に溜まった影まで薄青く染めている。昼間の熱をすっかり失った夜風が庭を抜けて縁側まで吹き込み、酒でじんわり熱を持った頬や首筋を撫でていくものだから、別に風流を気取るような性格でもない俺様ですら、こういう夜も悪くねぇな、なんて柄にもないことを考えてしまうくらいには気分が良かった。

 

「綺麗じゃのぉ」

 

 隣で白沢が、いかにも年寄り臭い声音でしみじみと呟く。

 

「だなぁ」

 

 適当に返事をしながら杯を傾けると、冷えた酒が舌の上を滑り、喉の奥をひやりと撫でながら腹へ落ちていき、直後には逆にじわりとした熱が身体の内側から広がってくる。

 

 ん~、今日開けた酒は当たりだな。香りもいいし、変な癖もない。何より、こうして外でだらだら飲むにはちょうどいい軽さだ。

 

「もう一杯」

 

「自分で注げ」

 

「よいじゃろ、そっちの方が近いんじゃし」

 

「はいはい。分かった分かった」

 

 白沢が当然のように差し出してきた杯へ酒を注ぎ、その流れで自分の分も継ぎ足す。とく、とく、と静かな音を立てながら透明な酒が杯へ満ちていく。月明かりを映した水面が小さく揺れるのを眺めていると、もう何杯目だったかなんてどうでもよくなってくるし、そもそも俺様たちにとっては、何杯飲んだかなんて数えたところで大した意味もない。

 

 俺様たちは幻妖だ。

 

 本気で酔いを飛ばそうと思えば、体質を少し弄って身体を晩酌前の状態へ回帰させれば、それだけで大抵の酔いなんて消し飛ぶ。だが、せっかくの十五夜だってのに素面のまま澄ました顔で月なんか眺めてちゃ面白くねぇし、それに明日は別に朝一から何かしらの仕事を押しつけられる予定もない。なら、たまには頭を鈍らせて、下らないことを下らないまま楽しむ夜があってもいい。

 

「くぅ~~っ」

 

 白沢が杯を一気に空にし、そのまま満足そうに喉を鳴らしてから、ごろんと縁側へ寝転がる。長い銀髪を板張りの上へ扇みたいに広げ、片膝を立てたまま空を仰いでいる姿には、普段から一般陰陽師に得体の知れないLevel4だの戦闘指南役だの鬼教官だのと言われている威厳なぞ欠片もない。

 

 だらしねぇ。

 

「良い夜じゃなぁ。酒も美味いし、月も綺麗じゃし、こういう日は何も考えずに飲むに限るのぉ」

 

「さっきから月が綺麗しか言ってねぇな、お前」

 

「それ以外にいうことがないからのぉ。代わりに主が言ってみろぉ」

 

「あ~……」

 

 改めて言われると、酔いが回って惚けた頭じゃ特に思いつけない。

 

「……確かにねぇな」

 

「じゃろー?」

 

 くすくすと勝ち誇ったように笑う白沢が妙に腹立たしい。

 

 俺様も柱へ背中を預けながらもう一口だけ酒を含むと、頭の奥には薄い膜が一枚かかったみたいな心地よい鈍さが広がり始めていて、思考の角も取れ、普段なら一度飲み込むような言葉までそのまま舌へ上ってきそうな、ちょうどいい具合になってきた。

 

 こうなると、逆にこのまま酒を飲んで寝るだけというのが妙にもったいなく感じてくる。

 

 腹は満たされているし、酒も十分に入っている。風は気持ちよく、気分も上々。

 

 身体の奥には、何かもう一つ馬鹿なことをやりたいような、じっとしているのが惜しいような、酒に浮かされた落ち着かなさが熱となって少しずつ溜まり始めていて、ならもう一つくらい何か楽しいことを足したところで罰は当たらないだろう、なんて考えが自然と浮かんできた。

 

「なあ、白沢」

 

「なんじゃ」

 

 寝転がったままこちらへ顔だけ向けてきた白沢に、俺様は杯を指先でくるくる回しながら、ほとんど思いつきのまま口を開いた。

 

「ヤりにいくか」

 

「よし、のった」

 

 早ぇよ。こいつ、さては何も考えてねぇな?

 

 さっきまで縁側にだらしなく寝転がっていた白沢が、俺様の一言を聞くなり勢いよく上半身を起こし、酒で少し蕩けていた目まで分かりやすく輝かせていた。

 

「そんで、誰とじゃ?」

 

「誰って、まぁ学坊だろ。この間、適当に男引っ掛けて身体の相性確かめて、なんてことをやって、しこたま怒られたばっかだろ」

 

「……小童たちに説経されるのは当分勘弁じゃしのー。……うーん、それが良いかぁ」

 

 幻妖である俺様たちは、今でこそ普通に人里を歩き、飯を食い、酒を飲み、人間どもに混じって好き勝手に暮らしているが、それも鏖討伐への協力だの、陰陽寮との取り決めだのといった色々な事情が積み重なった結果として、向こうがある程度こちらを黙認しているから成立しているだけの話なわけで。当然、何をやっても許されるわけじゃない。一般人や陰陽師に余計な迷惑をかければ、すぐさま討伐対象として見られることだってあり得るし、そうならないためにも、俺様たち自身が最低限の線引きを守る必要がある。……ま、そんなお行儀よくなんて出来やしないから、時折ラインをちょっとばかし超えちゃいるが。

 

 その辺も含めて、いつの間にか俺様たちの面倒を見る役回りを学坊が引き受けるようになっていた。嫁さん達はちょっと不服そうだったけどな。

 

 ちょっと前までは俺様たちの方が戦い方を教えたり尻拭いをしてやったりと面倒みてやってたはずなのに、気づけば今じゃ俺様たちがあいつの世話になる側ってなっていて、随分と立場が逆転したもんだと思う。

 

 というか、改めて考えると学坊にはとんでもなく損な役回りを押しつけている気もするが、まあ、嫌なら嫌って言うだろ。多分。

 

「じゃが、あやつはまだ起きとるのか?」

 

 白沢がふとそう言って首を傾げた。

 

「あー」

 

 言われてみれば、今が何時なのか把握していない。月はもうかなり高い位置まで昇っていて、虫の声以外には人の気配もほとんど聞こえないから、それなりに夜も更けているんだろうが、酒を飲み始めてから何時間経ったかなんていちいち覚えてるわけもねぇ。

 

「じゃあ聞いてみっか」

 

 そう言って片手を上げて盡器を起動すると、指先から令力が流れた瞬間、目の前の空間が熱を持った水面みたいにぐにゃりと歪み、縁側の先に広がっていた庭の景色が輪郭を崩しながら奥へ沈んでいく。その中心にぽっかりと穴が開き、滲むように別の場所の光景が浮かび上がった。

 

 別に今すぐ身体ごと移動する必要はないし、起きているかどうか確かめるだけなら顔が入るくらい開けば十分だ。

 

 俺様は縁側に座ったまま少し身を乗り出し、その小さな転移門へ頭だけを突っ込むと、空間を隔てる境目を抜けた瞬間、それまで耳に届いていた虫の声がぷつりと途切れ、鼻先に漂っていた夜風と酒の匂いも消えて、視界が一瞬で切り替わった。

 

 向こう側に見えたのは、もう何度も見慣れた学坊の部屋だった。ちんまりとした机に一人分の椅子、その周りには書類や本が無造作に積まれていて、どこを見ても一人暮らしの男の部屋といった具合なのに、その一角だけは妙に様子が違う。そこには、三、四人が横になってもまだ余裕がありそうな、馬鹿みてぇにでかいキングサイズのベッドが鎮座していた。

 

 そして、その小さな机の前には学坊本人が座っていて、何かしらの書類に目を通しているらしく、片肘を机へつき、眉間へ軽く皺を寄せながら紙面を追っていた。

 

 こんな時間まで真面目に仕事してんのか。相変わらずだな。

 

「学坊」

 

「うわっ!?」

 

 後ろから声をかけると、学坊の肩がびくりと大きく跳ね、その勢いのまま椅子ごとこちらへ振り返った。

 

「キャ、キャシーさん!?」

 

「おう」

 

「びっくりした……。せめて普通に入ってきてくださいよ」

 

 胸元へ手を当て、本気で驚いたらしい学坊が息を吐く。んな大げさな。

 

「今から行く」

 

「はい?」

 

「俺様と白沢で夜這うから、待ってろ」

 

「…………」

 

 俺様の言葉に学坊がぴたりと静止し、開きかけた口はそのまま、目だけがこちらを見た状態で、何を言われたのか頭の中でもう一度確認でもしているように数秒ほど動かない。

 

「……えっと」

 

「だから、夜這い」

 

「えぇ……今からですか? 何時だと思っ――」

 

「学郎ぉー! 起きとるかー!!!!」

 

 後ろから白沢の声が飛んできたかと思ったら、次の瞬間には俺様の横から無理矢理顔を割り込ませてきた。小さくしか開けていない転移門へ二人分の顔を突っ込もうとしたせいで、頬同士がむぎゅりと潰れ、しまいには白沢の長い髪まで俺様の鼻先へ張りついてくる。

 

 狭ぇって。

 

 そんな俺様たちを見た学坊が、さっきまで驚いていたはずなのに、今度は露骨に呆れた顔をした。

 

「師匠まで……」

 

「折角の十五夜じゃからな」

 

「十五夜と夜這いに何の関係が……」

 

「じゃ、そういうことだから」

 

「え、いや、ちょっと待っ――」

 

 話が長くなりそうだったので、そのまま転移門を閉じた。

 

 起きてんなら問題ねぇ。少なくとも寝込みを襲うわけじゃないし、これから行くこともちゃんと伝えた。最近はその辺うるさいからな、合意は大事だ。うん。

 

 夜這いという言葉の意味が崩壊している気もするが、そこは今さら気にしたところで仕方ない。

 

「さて」

 

 残っていた酒を飲み干しながら、俺様は自分の格好を軽く見下ろした。このまま行ったっていいが、せっかくの十五夜に普通の格好で押しかけるのも少しつまらない。十五夜、満月、月といえば――まあ、兎だろう。

 

「……バニーで行くか」

 

「お、いいのぉ」

 

 折角だ。久々に箪笥の肥やしになっているあの衣装を着てやるか。以前、人気投票だか何だかで用意された桃色のバニー衣装。

 

 なんで人気投票の結果でバニー姿になるのかって? 俺様に聞くな。知らん。鵺に聞け。

 

 まぁ、ちんちくりんの俺様が着てもしょうがない衣装だと思うが、学坊のやつ、こういうコスプレとかが好きだかんなぁ。なんだかんだいって男の性というものには逆らえないんだろう。

 

「で、お前は?」

 

「何がじゃ?」

 

「いいのぉとか言ってたが、バニー衣装。あんのか?」

 

「…………」

 

 白沢が止まり、ほんの一瞬だったが明らかに目が泳いだ。

 

「あー、そういや、お前十八位だったもんな。無くて当然か」

 

「はーーーーー!?」

 

 露骨に声が一段上がる。

 

「ありますーーーーー!!! さっすが、三位様はいう事が違うの!! じゃがな、儂ほどの女ともなれば、どえろいバニーの一着や二着くらい当然――」

 

 そう言いながら白沢は勢いよく立ち上がり、自分の荷物を漁り始めた。あそこまで自信満々に言うんだ、まあ何か出てくるんだろうと思いながら眺めていると、最初に出てきたのはこいつが普段着にしているジャージで、その後も何着か似たようなジャージが続き、ようやく違うものが出てきたと思えば、前にリゾートへ行った時に着ていた競泳水着。そして最後に白沢が荷物の奥から引っ張り出したのは、夏祭りで使っていたホワイトゴーストのコス衣装だった。

 

「…………」

 

「…………」

 

 そこでようやく白沢の手が止まり、俺様も黙ったまま足元へ積み上がった服を眺める。ジャージが数着、競泳水着が一着、ホワイトゴーストが一着。どう見てもそれ以外に大した衣服は見当たらない。

 

 それでも諦めきれないらしく、白沢はもう一度鞄の奥へ手を突っ込んで底を探り、今度は横に置かれていた別の荷物までひっくり返し、最後にはさっき自分で出した服を意味もなく持ち上げてその下まで確認し始めたが、当然ながら、バニー衣装が突然湧いて出てくるはずもない。

 

「……これは無ぇだろ」

 

 流石に俺様も口に出した。

 

「……後学のために、何を言いたいのか聞いておこうかの」

 

「俺様たちもさ、一応いい歳した女なんだから、バニーとは言わねぇが、もうちょっとなんか……あるだろ」

 

「ぐっ……!」

 

 思った以上に綺麗に刺さったらしく、白沢の眉間へ深い皺が寄る。

 

「つーか、何百年も生きておいて本当にこれしか持ってねぇのか?」

 

「社会人やっとった時はもうちょい、こう、色々あったんじゃ!!」

 

「今がこれじゃ意味ないだろ」

 

「……そ、それは……その、最近は戦闘指南以外で外に出ることもないし、それも人牢解除すればいつもの恰好になるしの……。そんなら、服なんぞ着られれば何でもよいじゃろーって、ジャージばっかり買ってしもうて……」

 

 言い訳を重ねるほど声が小さくなっていく。こいつがここまで露骨に敗北感に打ちひしがれているところなんて滅多に見られねぇし、普段ならもう一、二発くらい煽ってやるところだが、流石にこれ以上同じ女としてちょっと可哀想になってきた。

 

「わ、儂に名案がある!!」

 

 突然、何かを思いついたらしく白沢が顔を上げたが、その手には競泳水着とホワイトゴーストの衣装が握られている。嫌な予感しかしないまま見送ると、そのまま部屋の奥へ姿を消し、数分後には勢いよく戻ってきた。

 

「どうじゃ!」

 

 その姿を見た瞬間、俺様は何と言えばいいのか分からなくなった。

 

 競泳水着の上からホワイトゴーストの衣装を被り、さらに頭にはどこから出したのか兎耳まで載せている。

 

 何で全部足すんだよ。

 

「……どうじゃ」

 

「…………」

 

「よ、妖艶なバニー美女じゃろ?」

 

 腰へ片手を当て、反対の手を頭の後ろへ回し、やたらそれっぽいポーズまで取って誤魔化そうとしている。だが、その程度でどうにかなるような問題じゃない。バニーに競泳水着にホワイトゴーストと、もう属性が渋滞してんだよ。どれか一つにしろ。

 

「お前がそれでいいなら、俺様はいいけど……」

 

「なんじゃ、その目は!」

 

「白沢、お前は頑張ったよ」

 

「哀れまれとる!?!?」

 

 小さくため息を吐き、俺様も自分の衣装へ着替える。

 

 桃色のバニースーツへ身体を通し、腰回りの位置を整えてから肩へ桜の紋様が散りばめられた着物の羽織を引っかけ、最後に鏡の前で兎耳の角度を少し直して全体を確認する。衣装自体を着るのは随分久しぶりだったが、背格好の変わらないお陰で特に変なところもないし、鏡の中へ映った姿を見る限りでは、まあ悪くない。

 

 そこで何気なく横を見ると、相変わらず珍妙な格好をした白沢が立っていた。

 

「なんじゃ」

 

「いや」

 

 衣装の完成度だけなら、どう考えても俺様の勝ちだ。だってのに、こいつはそんな糞適当な組み合わせのくせして、身体つきだけは腹立つくらい男受けする。すらっと伸びた脚に、きゅっと括れた腰。それに対して胸も尻も遠慮なく大きくて、身体へぴたりと張りついた競泳水着を内側から押し上げるように、女らしい凹凸をくっきり浮かび上がらせている。

 

 その上から羽織っている白布も、普通なら少しくらい身体の線を隠してくれそうなもんなのに、こいつの場合はまるで役に立っていない。胸元では大きく張り出した膨らみに押し上げられて布が横へ引っ張られ、表面には細かな皺が幾重にも走っているし、そこから一度きゅっと窄まった腰を越えれば、今度は丸く張った尻に裾ごと持ち上げられて、後ろ側の白布まで肉付きに沿うように深い皺を寄せている。

 

 隠すどころか、むしろどこが細くて、どこに肉がついているのかをわざわざ強調しているようなもんだ。前から見ても後ろから見ても、男が好きそうなところだけが嫌になるくらい分かりやすく主張していて、こんな訳の分からない格好のくせに、身体の良さだけで妙に成立して見えるのが余計に腹立つ。

 

 俺様だって、自分の身体が嫌いなわけじゃない。細いのも、小柄なのも、これはこれで悪くねぇと思ってる。けど、こうして隣に白沢みたいな、いかにもなのを並べられると話は別だ。その無駄についてる脂肪を少しくらいこっちへ寄越しやがれ。

 

 ……くそが。衣装じゃ圧勝してるはずなのに、なんで俺様が負けた気分になってんだよ。

 

「ちっ」

 

「なぜ、舌打ちを!?」

 

「……気にすんな。よし、行くか」

 

「う、うむ!」

 

 それ以上考えるのも腹が立つので、俺様は再び盡器を起動し、今度は人ひとりが余裕を持って通れるだけの大きさまで転移門を広げた。空間が大きく歪み、その中心がさっきと同じ学坊の部屋へ繋がっていく。

 

 ただし、先ほど机の前に座っていたはずの学坊はもう立ち上がっていて、こちらが行くと言ったせいだろう、何かしら部屋の中を整えていた。俺様たちはそのまま遠慮なく転移門を潜る。

 

「おー、学坊。来たぞ」

 

 そう言いながら部屋の中へ足を踏み入れたところで、ふと、さっき転移門越しに覗いた時とはベッドの様子が変わっていることに気づいた。いつものシーツはそのままなのに、その下には見慣れたペットシーツが何枚か重ねて敷き込まれているのが透けて見える。ベッド脇には畳んだタオルが数枚、そのさらに脇には未開封の水が何本かまとめて置かれていた。

 

 さっき俺様が「夜這うから待ってろ」と言ってから、まだ大して時間なんて経っていない。それなのに、学坊はもう何が必要になるのか分かっているらしく、こっちが何も言わなくても一通り揃えてやがる。

 

 随分とまあ、手慣れたもんだ。

 

「おお、気が利くのぉ、旦那様は」

 

 白沢も同じことに気づいたらしく、妙に感心した声を上げる。

 

「俺様たちの教育の賜物だな」

 

「いつ俺が教育されたんですか……」

 

「筆をおろしてやった時だろ」

 

「筆をおろしてやった時じゃな」

 

「……ぐっ」

 

 明らかに返答へ困った学坊が何とも言えない顔で視線を逸らす。その反応が面白くて眺めていたが、逃げるように動いた視線は白沢の姿を捉えたところで、今度はぴたりと止まった。

 

 俺様もつられて横を見る。

 

「……えっと、師匠、その恰好は一体……」

 

「バニーじゃが?」

 

「ど、どこがですか?」

 

 学坊の声には、からかいでも呆れでもなく、本当に分からないという純粋な疑問しか含まれていなかった。

 

 白沢はそんなことにも気づかず、自信満々に頭の兎耳を指差す。

 

「ほれ、可愛らしいうさ耳があるじゃろ?」

 

「耳だけですよね!?」

 

 白沢はむっと頬を膨らませ、年甲斐もなく可愛らしい顔で学坊を見上げた。

 

「男とあろうものが、ぐちぐち細かいのぉ」

 

 そう言うなり、手に持っていた酒瓶を口元へ運んでひと口だけ含み、そのまま学坊の胸元をぐっと掴んだ。

 

「んむっ!?」

 

 何をするのか察する暇すら与えず、白沢が覆いかぶさるように唇を重ねる。

 

 口に含んだ酒をそのまま流し込み、逃げようとする顔まで片手で押さえつけたまま離そうとしない。やがて学坊の喉からくぐもった声が漏れ、肩の力が少し抜けたところで、ようやく満足したらしく唇を離した。唾液の橋が光る糸となって二人の間に張り、白沢はそれを舐めるように舌先で啜りながら、得意げに笑った。

 

「んー、さて、どうじゃ? 儂の恰好は?」

 

 再度確認するように、白沢が学坊を覗き込む。

 

「……ハイ。トテモ、ウツクシイ、バニースガタダト、オモイマス」

 

 見事なくらいカタコトになった返事を聞いて、白沢は満足そうに何度も頷いた。

 

「うむ。分かればよろしい」

 

 滅茶苦茶だろ、こいつ。

 

「じゃ、次俺様な」

 

「えっ」

 

 なに驚いてんだ。白沢だけにいい思いさせるわけねぇだろ。

 

 白沢の手から酒瓶をひったくり、俺様もひと口含む。学坊の腕を引いて体勢を崩させ、その場へ座らせると、首へ腕を回してぐっと引き寄せ、そのまま唇を塞いだ。

 

「んちゅっ♡……」

 

 最初は軽く、啄むような接吻から。唇の表面を柔らかく吸い上げ、隙間から漏れる息を感じながら、ゆっくりと圧をかけていく。学坊の唇の形を確かめるように、何度も角度を変えて重ね合わせ、やがてその隙間へ舌先を差し込んだ。

 

「ん……♡」

 

 学坊の口内は、まだ白沢の残した酒の香りが微かに漂っていた。俺様はその中へ舌を這わせ、歯茎のざらつきを撫で、頬の内側の柔らかな粘膜を探る。口の中を隅々まで巡り、白沢の舌が触れたであろう場所を丹念に舐め上げていく。

 

 どうせ俺様の小さな舌じゃ奥まで届きやしないんだ。それならそれで、届くところを俺様に染めてやればいい。

 

 舌をできる限り奥へ伸ばし、上顎をくすぐるように撫で、歯茎の際をなぞりながら、欲張ってさらに舌を押し込んだ、その時だった。

 

「ん……む゛っ゛っ゛♡♡♡」

 

 それまで大人しく受け入れていた学坊の舌が、不意にこちらへ被さってきた。

 

 俺様の舌を捉えて絡め取り、上から押し潰すように吸い上げられる。俺様の舌はあっさり逃げ場を失った。驚いて身体を揺らした瞬間、逃げるつもりなんざないってのに腰までぐっと掴まれ、動きを封じられた。

 

 こいつっ!! 白沢の時は良いようにされてたくせにっ!!!

 

 滲み始めた視界の先には、さっきまでの遠慮も、困ったような顔も、こっちの好きにさせていた大人しさも、もうどこにもない。表情そのものは静まり返っているのに、その眼差しだけは、そこまでするならもう逃がす気はない、とでも言いたげな獣欲に染まっていた。

 

「んっ……んぅ、むっ……! ちゅるっ。れるっ」

 

 学坊は俺様の小さな舌を根元から包み込むように、自分の舌を絡ませてくる。小柄な俺様の口の中は、すぐに学坊の舌でいっぱいになり、溢れた唾液が唇の端から零れていく。腰を掴まれたまま身動きもできず、されるがまま、その感触を受け止めるしかなかった。

 

「んむ……♡ はぁ……♡ ん、ちゅ……♡ ぅ……♡」

 

 息を吸うのもやっとで、鼻から零れる呼吸は途切れ途切れ。学坊の舌が動くたびに口の中を満たされ、酸素を求めるように胸が大きく上下する。それでも唇を離してはくれない。さらに深く、さらに深くと唾液を交換しあうたび、まともな思考まで白く塗り潰されていく。

 

「ちゅる……♡ れる……♡ ん、ぅぅ……♡ はぁ……♡」

 

 やがて俺様の舌が解放され、唇がゆっくりと離れる。糸を引いて繋がっていた唾液がぷつりと切れた途端、身体から一気に力が抜けた。

 

 腰も膝も甘く痺れているせいで、とてもじゃないが自力で立てやしない。そのまま学坊の胸元へ倒れ込み、温かくて少し硬い胸板へ額を預けたまま、荒い息を繰り返す。口の中は火傷でもしたみたいに熱く、痺れるような甘い感覚が頭の芯まで残っていた。

 

 その時、羨ましそうに、横から「ゴクリ」と喉を鳴らす音がした。

 

 きっと白沢だ。

 

 俺様があっさり骨抜きにされてんのを見て、自分も混ざりたくなったんだろう。

 

 学坊はそんな白沢の様子にも気づいたのか、俺様をそのまま片腕で抱きかかえ、もう片方の手で白沢の手首をそっと握った。

 

「師匠もこっちに」

 

 低く静かな声に促されると、白沢は一瞬だけ返事に詰まった。

 

「……う、うむ」

 

 さっきまでの威勢はどこへやら、小さな返事がすぐ横から返ってくる。続いて衣擦れの音がして、ほんの一拍遅れて白沢の足音がついてきた。

 

 返事はあれだけ仰々しいくせに、手を引かれれば素直なもんだ。

 

 俺様たちはそのまま揃ってベッドまで連れていかれ、俺様は学坊の膝の上へ、白沢はそのすぐ隣へ座らされた。

 

 ようやくおっぱじめる気になったか。

 

 そんな期待を込めて恐る恐る学坊の顔を見上げると、こっちの考えてることなんて全部お見通しみたいに、にこりと笑う。

 

 そして伸ばした手の先にあったのは、俺様でも白沢でもなく、さっき俺様たちに飲まされた酒瓶だった。

 

 あ、いやな予感。

 

「んむっ……♡」

 

 仕返しです、と言わんばかりに、今度は学坊が酒瓶を手に取り、無言で喉を潤した。白沢と俺様が飲まされたのと同じように、口の中に冷たい酒を溜め込み、そのまま俺様の顎を掴み、角度を固定する。

 

「んむっ……ちゅぷっ……♡」

 

 唇が重なった瞬間、学坊の口内に溜め込まれていた酒が溢れ出し、俺様の口の中へと流れ込んでくる。冷たい液体と共に、学坊の舌が荒々しく割り入ってきた。歯列を無理やりこじ開け、溜まった酒を掻き混ぜながら、口腔全体を隅々まで押し広げるように暴れ回る。

 

 酒の冷たさと舌の熱さが入り混じり、唾液すらも巻き込んだ淫靡な水音が鼓膜の奥で響き渡る。俺様は大人しく首を後ろに反らせることしかできない。学坊の舌が俺様の小さな口の中を舐り、何もかもこいつのものへと塗り替えていく。

 

「ちゅぅ……んちゅるっ……♡ ぷはっ……♡ ちゅぷぅ……れるっ……♡」

 

流れ込んできた酒はあっという間に口いっぱいまで溢れる。それでも喉は鳴らさず、学坊の舌に好き勝手掻き回されるまま、飲み込むのを堪え続ける。次第に収まりきらなくなった酒が唇の端から零れ、唾液と混ざった雫が顎を伝い、ぽたり、ぽたりと落ちていった。

 

 やがて、顎を支えていた指先がほんの一度だけ喉元を撫でる。

 

 その合図を待っていたように、溜め込んでいた酒をこく、こくと飲み下していく。何度も喉を鳴らし、ようやく最後まで流し込んだ頃には、胸の奥は息を求めてひどく痛んでいた。頭の芯まで酸素が届いていないみたいに痺れて、意識の輪郭がじわじわとぼやけ、視界までぼんやりと霞み始める。

 

 唇が離れ、顎を固定していた指の力も解ける。それと同時に、ガクンと力なく頭を垂れた。俺様は涎で濡れた顎を上げることもできず、ただ俯いたまま息を荒げていた。

 

 胸元には熱が籠もり、バニー服の下では乳首が痛いほど尖っている。荒い呼吸に合わせてその先端が布越しに擦れるたび、鋭い快感が走って背筋がぞくぞくと震えた。腰の奥はきゅうと締まり、鎖骨の窪みには汗が溜まっていく。秘部も脈打つように熱を帯び、学坊に触れられるのを待ちわびる疼きが、行き場もなく身体の奥で燻り続けていた。

 

 そんな俺様の反応を確かめるように、学坊が一度こちらを見下ろす。それから何事もなかったように、今度は白沢へと視線を移した。

 

 俺様には、もうそっちの様子を確かめる余裕なんてない。ただ、すぐ横から聞こえてくる白沢のくぐもった声と、視界の隅で何度も小さく跳ね続ける脚を見れば、あいつも俺様と似たような目に遭っていることくらいは分かった。

 

 そして、すぐに俺様の番が来る。

 

 俺様と白沢は、交互に。

 

 何度も、何度も。

 

「ちゅぷっ……んちゅ、れるれるっ……♡ ぷは、ちゅぅぅ……んむぅ……ちゅるっ……♡」

 

 アルコールが身体の奥へ染み渡るたびに、熱がゆっくりと広がっていく。キスのたびに頭がくらくらと揺れて、思考が甘い蜜みたいに溶けていく。勝手に力が抜けた腰を小さく震えさせながら、学坊の膝の上で身をくねらせてしまう。白沢の方も、隣で甘い吐息を漏らしながら学坊にしな垂れかかり、その身を委ねているのが分かった。

 

 快楽の海へ、ゆっくり、ゆっくりと沈んでいく。まどろみは深くなり、意識の端がとろりと霞んでいく。

 

 でも、意識が落ちることはない。

 

 学坊に教え込まれ、躾けられた身体が、学坊を退屈させまいとでもするように、勝手に幻妖の復元能力をじわじわと巡らせている。

 

 あれだけ煽っておいて、目の前の男を満足させずに潰れるわけにはいかない――そんな風に、俺様の雌の部分がそう判断しているみたいだった。

 

 酔いを完全に飛ばすほどではない。ただ、意識を奪われず、まだちゃんと反応を返せる程度に。熱も酔いもほどよく残したまま、落ちかけた意識だけをゆっくりと引き戻してくる。

 

 そのせいで、俺様たちは酔いに浸ったまま、この快楽に溺れ続けていた。

 

 

◇◆◇

 

 

 気づけば、俺様たちはベッドの上で四つん這いになり、尻を高く突き出すような格好にされていた。

 

 直前の記憶はもうどっかにいっちまった。

 

 何をされて、いつ体勢を変えられたのか、そのあたりはもう霧がかかったみたいにぼやけている。だけど、とろけた頭の奥に、股布を横へずらされ、学坊の指を受け入れた瞬間だけは鮮明に焼き付いていた。

 

「ぉ゛……っ♡ ふ、ぅ゛……♡♡ んっ、や、やめ゛……♡♡ ぁ、ぅ゛っ……♡ ぉ゛ぉ……っ♡♡♡」

 

 両腕で必死に身体を支えねば、ベッドへ沈み込んでしまいそうになる。腰が小刻みに、いやらしく震えるのを、自分ではもう止められない。シーツの上には、何回分かも分からない雌潮で大きな水溜まりができていて、太腿の内側を伝った熱い雫がぽたり、ぽたりと落ちるたび、その表面に小さな波紋を広げていく。

 

 学坊の指は、今もなお容赦なく、しつこく動いていた。剣だこで硬くなった指先が、熱く腫れ上がった柔肉の壁を押し広げ、すっかりバレてしまっている敏感な雑魚い部分を抉るように、ゆっくりと撫で上げてくる。

 

ぐちっ♡ ぐちゅっ♡ ぬちゃっ♡

 

 淫らな水音が部屋中に響き渡り、羞恥と快感が同時に背筋を駆け上がる。

 

「んぅ……っ゛♡ ぁ、ぉ゛……っ゛っ゛っ゛♡♡♡ ……っ、ふ、ぅ゛……♡ イっ、たの……わかんだ、ろっ……♡ ぁぁ゛っ……♡♡ ぅ゛、ぐぅ……っっ♡」

 

 抗議の声は、甘い喘ぎに飲み込まれてどこかへ消えていく。もうこれ以上絶頂くのは無理だと頭では喚いているのに、身体はまるで言うことを聞いちゃくれない。腰は跳ね、背中は大きく反り、もっと深く、もっと強くとせがむように、膣口をその手へと自分から押し付けてしまう。膣内はすでにぐちゃぐちゃに濡れ果て、根元まで咥え込んだそれに甘く吸い付き、奥へ奥へと誘うように絡みついていた

 

 すぐ隣からは、白沢の押し殺した声も途切れ途切れに聞こえてくる。

 

 あいつも、相当ひどい目にあってるらしい。

 

「ふ……っ♡ ぅ、ぉ゛……♡♡ が、がくろうっ♡♡ んっ、ぁ……きゅ、きゅうけ……ぃ、ぃっ♡♡ や……ぁっ……♡♡ ひとやす、みぃ゛……た、たのむ゛っ♡♡♡」

 

 その文句を無理やり黙らせるみたいに、再び奥を強く抉られた瞬間――俺様たちは、揃ってまた絶頂に達した。

 

「「ぉ゛、お……っ゛゛♡ ぁ、ぁぁっ……♡♡ ん゛、ぅ……♡ だ、だめ……ぃ、く、くる……っ♡♡♡ ~~~~ぃ゛ぅっ……っ゛♡♡♡」」

 

 指を締め出すほどに膣内がきゅうきゅうと激しく締まり、熱い潮が勢いよく吹き出す。頭の芯まで白く痺れるような快感が走り、視界が弾けるように明滅する。両腕の力が抜けたせいで、体勢を保つことが出来ず、とうとうシーツに顔を埋めてしまった。腰が勢いよく跳ね上がり、両足がピンと張りつめる。

 

 それでも、学坊は指を止めやしない。

 

 逃げた腰を追うように手のひらをぴったりと押し当て、さらに深く追い立ててくる。限界まで張りつめた足がぷるぷると震えて、腹がぴくぴくって痙攣して、助けて♡ って言ってるってのに、全くお構いなしだ。溢れた蜜を掻き出すように動きを変えながら、俺様たちを休ませる気などないと言わんばかりに襞の一つ一つを丁寧に擦りまわし責め続けてくる。

 

 その執拗な指使いが、また身体の奥から甘い痙攣を引きずり出してくる。一度収まったはずの震えがすぐにぶり返し、もう何回目かも分からない絶頂の波に、ただ身を委ねるしかなかった。

 

「師匠たちのやらかしをもみ消すの本当に大変なんですよ」

 

 向こうも酒が回り始めたのか、いつものように目が据わり、一段と低い声で説教じみた愚痴をこぼし始める。やらかし――きっと、俺様たちが一般人を性欲のはけに使ってたことについてだろう。性の向くままに捕まえた男を搾り取って、精を啜り尽くして遊んでいた。

 

 話は変わるが、幻妖ってのは、人の身を模す時、それぞれで見た目は異なれど完璧な人間として誕生する。

 

 だってそうだろ? わざわざ雑な作りにする必要もねぇんだから。だから、俺様たちはそんじょそこらの男のことなんて、適当に腰振ってりゃどうだって出来る。女慣れしてなさそうな童貞君や、自信たっぷりって感時のヤリチン野郎まで。適当に射精させて、ちょっと気持ちよくなって、ぽいってな。

 

 だってのに、こいつは。こいつには勝てやしない。いいようにされてしまう。それは、学坊が幻妖との相性が格段にいいからなのか、それとも、俺様たちがこいつの事を――なんて変な思考が周り始めた時だった。

 

「聞いてますか?」

 

 俺様たちが何の反応も示さないと見るや否や、そう言って指の関節を曲げ、ぐっと指の腹を膣壁へと深く押し当ててきた。そうして、幾度か優しく撫で回し指をなじませたと思えば、曲げた指をそのまま引っかけるようにして、勢いよく引き抜きやがった。

 

 馬鹿!! 反応する余裕がねぇんだよ!!! 分かんだろ!!!!

 

「「―――――っ、っ゛っ゛っ゛♡♡♡」」

 

 俺様たち二人は、その指の動きに合わせて、またも膣口から飛沫をまき散らす。

 

 そうして学坊の気が済むまで、何度も絶頂地獄を繰り返し、そのうち、俺様たちはとうとう膝から完全に力が抜けた。身体を支えきれずに、そのままぐったりとベッドへ崩れ落ちる。もう起き上がる気力もない。頬をシーツに押しつけたまま浅い呼吸を繰り返し、そのたびに息へ混じった弱々しい声だけが、布に吸われるようにくぐもって漏れた。

 

 汗と体液を吸ったシーツが、べちゃりと貼りついてくる。少し身じろぎするだけで湿った布が肌を引っ張り、その生温い感触がやけに気持ち悪かった。

 

 すげぇ気だるくて、心地の良い気分に俺様は浸っていた。このまま犯されたいところだが、いったんこいつに聞きたいことがある。

 

「……んっ♡ んん゛っ!! あ゛ーなんだ、学坊。ちょっといいか?」

 

「こんな時に何ですか?キャシーさん。俺もそろそろ限界なんですが」

 

「いや、ただ、シロ坊たちにもこんな風にヤってのかって」

 

「いえ? みんなには優しくしてますよ?」

 

 優しく、だと。俺様たちにはこれだけ激しく、苛烈に、散々無理やり絶頂させといて、あいつらには優しくか。何だか腹が立って、頭に血が上る。沢山絶頂して、ぷるぷる震える足でげしげしと学坊を蹴る。力なんて入ってないわけもないので、鍛えられた学坊の身体に跳ね返されるだけだ。

 

「いたっ、痛いですって、キャシーさん」

 

「痛ぇわけねぇだろ。てめぇ、おい、こら」

 

「いや、その」

 

「あ゛? なんだ?」

 

「キャシーさんたちがこういう風に犯せって」

 

「俺様たちが? いつ?」

 

「……筆をおろして貰った時です」

 

 マズイ、マジで記憶にない。――いや、まぁ、あの時、確か、こいつが初めてで、緊張してる顔が可愛かったから、つい、好きにしろ。だとか、もっと激しくしろだとか、女を絶頂かせれねぇやつは駄目だ、だとか……あ゛ー、確かに言ってんなぁ。

 

 てか、こいつ、その時のを馬鹿真面目になぞってたってのかよ。

 

「……がいい」

 

「キャシーさん?」

 

「シロ坊たちにしてるのでいいって言ってんだ!!!」

 

「代葉さんたちとのように……、それってその」

 

「少しくらいは、俺様たちにも優しくしろ。あいつらとしてるみてぇに……そんくらいいいだろ」

 

「……代葉さんたちに、それはライン超えって言われたら一緒に怒られてくれます?」

 

「やだよ、ばーか♡」

 

 精一杯の悪態を返した直後、そんな俺様の身体を、学坊がゆっくりと仰向けに返す。

 

 急に視界が開けた。

 

 天井の照明がちかちかと滲み、ひどく眩しい。思わず目を細めても、白い光が瞼の裏まで刺さってくるようだった。涙で滲んだ視界がさらにぐにゃりと歪む。

 

 学坊はそのまま俺様の前へ膝をつく。布擦れの音と共に、露わになったものが俺様の視界へ飛び込んできた。

 

 薄黒く変色した、立派な陰茎。最初に筆をおろしてやった時は、薄肌色で可愛らしい色合いで、まだ未使用ですって匂いを漂わせていたってのに。嫁さんたちと俺様たちを散々いじめ抜いたお陰か、今では逞しくそそり立ち、黒ずんだ皮膚に血管をくっきりと浮き出させ、先端からは先走り汁を溢れさせていた。根元から先っぽまで一本の芯が通ってるかのように硬く張り詰め、まるで生き物のように熱を放ちながら脈動している。

 

 学坊はそれを、俺様の腹の上に押し付けてきやがった。

 

 熱い。じりじりと焼けるような熱が、おへその辺りから一気に広がっていく。びくびくと震える感触が、薄い皮膚越しに子宮にまで伝わってきた。腹の肉を押し潰す重みが、抗いようのない事実を叩きつけてくる。こいつが、これから自分の中に入ってくるんだ。臍を優に超えて、ここまで犯すんだぞ、と言わんばかりに、重く、熱く、存在を主張してくる。

 

 俺様は息を呑み、自分から腰を少し上げた。すりすりと腹にその熱い棒を擦りつける。早く♡ 早くっ♡ と急かすみたいに媚びを売ってしまう。膣口がひくひくと収縮し、まだ触れてもらえてない膣奥が、今度こそここも滅茶苦茶にしてくれと訴えるみたいにむず痒く疼いてくる。情けないことに、さっきまで散々苛められて、もう無理だと悲鳴を上げてたってのに、久々にこれを目の当たりにした途端、身体は浅ましくも指なんかじゃ物足りないと訴え始める。膣内では、行き場のない痙攣だけが空しく繰り返されていた。

 

 熱い肉竿が、ゆっくりと下へ滑り落ち、膣口へと押し付けられる。ぴたりと亀頭が触れた瞬間、俺様は思わず背筋を反らせた。まだ何も入っていないのに、ただ触れられただけで膣口がびくびくと震え、待ち焦がれていたかのように蜜が溢れ出る。

 

「ひっ、ぅ゛……っ♡ ん゛、ぐ……っ♡♡ あ゛……ぁ、はぁ……っ♡ お゛、ぁ……っっっ♡」

 

 肺の中の空気が全部押し出されるみたいに、濁った喘ぎが喉の奥から迸った。大きく膨れ上がった亀頭のカリが、窄まった膣口を無理やりこじ開け、肉を掻き分けながら押し入ってくる。何度味わっても、この最初の圧迫感には絶対に慣れやしない。

 

 入り口を押し広げ、柔肉を内側からめくり上げるように食い込んでくる。白濁とした甘蜜が粘ついた音を立てて溢れ、太腿を伝ってシーツをさらに汚していく。

 

 カリの縁が膣襞に引っかかり、じわり、じわりと確実に侵食していく感触が、脊髄を灼くように走る。子宮がすでにその重みを予感して、奥で今か今かと小さく痙攣を始めている。息を吸い込もうとしても、喉が詰まったように空気が入ってこない。

 

 亀頭が膣壁を擦り上げながらじわじわと最奥へと進み、膣襞を一本ずつ確実に押し潰していく。カリの凸凹が肉の溝に引っかかりながら進む刺激が、全身を焦がすほどの快感となって駆け巡る。

 

 ぐぐぐっっっと、肉がめくれ上がるような感覚と共に、亀頭がとうとう膣奥にある子宮口へ到達した。小せぇ俺様の膣は、学坊のを根元まで受け入れるには浅すぎる。だというのに、いっぱいいっぱいになった膣内をさらに奥へ押し上げるように腰を押し当てられる。子宮口が、硬い先端に潰され、ひしゃげていく。腹の中が張り裂けそうな圧迫感に、目の前が白く弾けた。なのに身体は、我が物顔で膣内を荒らすそいつに感謝でもするみたいに、膣壁をきつく締めつけてくる。

 

 自分の中が、完全に形を変えられていくような感覚。

 

「ん、ぅ……っ♡ ん゛、ぅ……ぁ……っ♡♡ ふぁ……っ♡♡ はぁ、はぁ……ん、ん……っ♡♡」

 

 俺様の息が落ち着くまで、じっと身体を動かさずに、そして、俺様の目尻から零れ出る涙を指で拭いながら、耳の裏に指を伸ばして優しく撫でて、少し困った表情を浮かべていた。

 

 こいつの嫁さんの中で一番小さい澪坊ほどもないこの身体。きっと、いつもこいつは、この時にキスで落ち着かせながら、だとかしてんだろうな。

 

 正常位だとそれすらもさせてやれない、そんな俺様自身の小柄な体躯が今だけは少し憎たらしい。

 

 代わりにと、俺様は学坊のもう片方の手を取って、そして、その指を口にくわえる。これで代わりになるかなんて分かりやしないが……と少し卑屈になった時、腹の中にじっと居座っていた、学坊の肉竿がぴくりと小さく跳ねた。

 

 なんて、分かりやすいやつだ。

 

 唇で指をきゅっと吸い上げ、舌で先端を転がす。歯を立てないように気をつけながら、根元までゆっくりと迎え入れ、口腔全体で温めてやる。学坊の指先が、舌の裏側を軽く掻くように動くと、俺様は思わず喉の奥で小さく呻いてしまう

 

 ぬめる水音を精一杯立てて、指を口の中に出し入れする。まるでこいつのをしゃぶっているみたいに、淫らに唇を窄め、吸い上げ、舐め回す。唾液が指に絡みつき、つやつやと淫靡に輝く。それを見下ろす学坊の目が、さらに暗く、深く、熱を帯びていくのがわかる。

 

「ちゅっ♡ ちゅぅ、ちゅぷっ♡ ん~っ゛♡♡ れぅ、っ♡ れろ、れろ……ぉっ♡♡♡」

 

 唾液が溢れ、指と唇の間から零れて、顎を伝って落ちる。それを学坊が親指で拭い取り、再び俺様の唇に押し付けてくる。舐めとるようにして、その指を受け入れ、舌で絡め取る。指をしゃぶる動きと同時に、学坊の腰が小さく揺れ始めた。

 

「もう、大丈夫ですよね?」

 

 もう我慢ならないといった様子だ。へっ、ちょろいもんだぜ。

 

 俺様は小さく、本当に小さく、コクリと頭を縦に振った。

 

 瞬間、学坊の目が危険な色を宿す。まるで獲物を見定めた獣のような、そんな視線に俺様の背筋がぞくりと震えた。腰を掴む手の力が強まり、ぎゅっと肉が食い込む。

 

「……それじゃあ、動きますね」

 

 囁くような声が、耳元で低く響く。それが合図だった。

 

「ぉ゛……っ♡ っ゛、ぁあ゛ーーーー……っ゛っ゛っ♡♡♡ ん゛、ぅ゛……ぉ゛っ♡♡」

 

 腹の中が圧迫され、内臓が押し上げられるような、身動きの取れない満たされ方。目の前が真っ白になり、喉から漏れる声が意味をなさない叫びに変わる。

 

 じっくり馴染まされて、学坊の陰茎にぴったりと吸い付くようにしていた膣肉が裏返るように抉りだされる。未練がましく、離れていこうとする鈴口に向けて、ちゅー♡ って子宮口がキスを落としていた。全部が全部、学坊の形を覚え込まされている。膣内の襞のひとつひとつが、彼のものになっていく感覚。

 

 肉がぶつかる音が、部屋中に響き渡る。けれど、それはいつものように獣のように激しいものなんかじゃない。学坊の動き一つ一つに、こいつから滲み出る執着と愛おしさが伝わってくるみたいで、胸の奥がぎゅっと熱くなる。

 

「ふっ……ぐ、ぅ゛……っ♡ ぁ、お゛……っ♡♡ ん、ぐ……っ♡ ふ、ぅ゛……ん゛っ……♡♡」

 

 深く突き入れられて、子宮口を押し上げられては、今度はゆっくりと引き抜かれる。膣襞が一枚ずつ、こいつの無駄にデカいカリ首に引っかかりながら引き剥がされていく感覚に、思わず腰が浮き上がってしまう。けれど、逃げようとする腰を、学坊の手が優しく支えて押さえつけてくる。

 

「キャシーさん、ここ……気持ちいいですか?」

 

 膣内の敏感なところを、亀頭で優しく撫で回され、確かめるように押し上げられる。腰がくねって、答えになるような声が漏れる。

 

「んっ、ふ……♡ ぁ、あ゛……っ♡ さ、ささやいて……くんな゛っっ♡ く、くそ……っ゛♡♡」

 

「キャシーさんがこうしろって言ったんですよ。それでどうなんですか?」

 

「ぅ゛……っ、ぁ♡ そ、そこ……っ♡ き、きもち……っ♡ も、もっと……っ゛♡♡」

 

 恥ずかしいことに、そんな風に自分からおねだりしてしまった。学坊が小さく笑い、もっと丁寧に、念入りに、何度も何度も同じ場所をねちっこく擦り上げてくる。そうして、俺様の反応を探りながらも、浅い抽送と深い抽送を交互に繰り返し、膣内の隅々まで気持ちよくなる場所を探り当てて、そこを重点的に可愛がってくれた。

 

 とっくの昔に全部知ってるだろうに律儀なやつだ。ていうか、これ、このセックスは非常にまずい。……シロ坊たち、こんなのをずっとされてたのかよ。そりゃ、毎晩盛ってるわけだ。

 

 指をしゃぶるのも忘れて、ただ与えられる快感に身を委ねる。学坊の腰の動きに合わせて、俺様の身体も揺さぶられ、ベッドがきしむ音と肉のぶつかる音が混ざり合う。もう何も考えられない。ただ、奥から押し上げられる快感に、必死でしがみつくしかない。

 

 学坊の息が切なげに荒れ、額にはうっすらと汗が浮いている。普段は涼しい顔をしてやがるくせに、今ばかりは余裕をなくして、快感に耐えるように喉の奥で低く唸っている。こいつの限界も近いんだと、そう思っただけで、俺様も、もう、もう限界だ。腹の中が熱く、熱くなって、今にも弾けそうになっている。

 

「はっ、はっ……ぁ、あ゛……っ♡ い、いい……からっ♡ だ、だせ……っ♡♡♡」

 

 射精を乞うように腰をくねらせ、膣内をきつく締めつける。学坊の喉が低く鳴り、腰を深く、奥深くまで押し込んできた。子宮口に熱いものが押し付けられる感覚と同時に、そこから堰を切ったかのように火傷しそうなほどに熱を持った精液が、勢いよく注ぎ込まれてくる。

 

 びゅく♡ びゅく♡♡♡ びゅくううう……っ♡♡

 

「ぉ゛……っ♡ あ゛、あ゛あ゛……っ♡♡♡ ん゛……ぅ……あ……っ♡ ふ、ぅ゛……ん、ぁ……っ♡♡♡」

 

 深く沈められた亀頭の先から、焼け付くような学坊の子種が容赦なく注ぎ込まれていく。亀頭に子宮の入口が密着し、一滴残らず受け止めようと歓喜の収縮を繰り返す。膣内が学坊のものでぴったりと埋め尽くされているせいで、溢れ出るはずの絶倫馬鹿の精液が逃げ場を失い、逆流する暇もなく、そのまま子宮へと押し込まれていく。小さな胎が限界を超えた熱で膨らみ、その内側からせり上がる圧迫感に、どうしようもなく息が詰まってしまう。

 

「はぁぁぁぁっ♡ あ゛ぁぁ……ぅぅぅっ♡ んぐぅぅ……っ♡ ぉ、ぐっ……やけっ゛、っ、あ゛っ♡」

 

 腰が何度も跳ね、内側が搾り取るように強くうねる。腹の奥には重い熱だけが残り、身体の芯までじわじわと染み込んでいく。 やがて激しかった脈動が少しずつ弱まっていくと、張りつめていた身体から力が抜けた。深い充足感とともに、快楽の余韻へと身を委ねていく。学坊の所有の証が、自分の最も深い場所にまで刻み込まれている――その事実に甘い愉悦が込み上げ、意識はゆっくりととろけるように遠のいていく。

 

 ……ちょっと、ちょっとだけな?ほんのちょっとだけ気持ちよかったし、学坊の胸にキスでもしてやるか。

 

 そう考えて学坊の腕を引こうとした、その時、瞬く視界の端に影が落ちる。

 

「キャシーばかりずるいぞ……♡」

 

 白沢だ。

 

 へとへとになった身体を起こし、這いずるようにして俺様たちの隣へ寄ってくる。銀の髪は汗に濡れて頬へ張りつき、普段の澄ました顔はどこへやら、情欲に濁った目でただ学坊を見上げている。

 

「んちゅ……♡」

 

 白沢は横から学坊へ縋りつくように身体を寄せ、その首筋へ唇を滑らせる。甘えるように吸いつきながら、片腕を学坊の身体へ回して抱きつき、空いた手の指先は胸元に残したまま、学坊の乳首を弄ぶように執拗に撫で続ける。

 

「あ゛っ゛……ちょ、てめ……ぇっ゛……♡」

 

 俺様の小言は、そのまま空気にほどけて消えた。

 

 今良い雰囲気だっただろ、邪魔すんな、○○○○○野郎!!!

 

 すり寄ってくる白沢の頭を優しく撫でながら、学坊は腰を深く沈める。すでに溢れんばかりの精で満ちた子宮口へ亀頭をぴたりと据え、ゆっくりと円を描くように腰を巡らせる。行き場をなくした熱が、せき止められたまま奥深く沈んでいく。小さく何度も腰が揺らされるたび、注がれた精が子宮壁を内側から撫で、重く膨らんでいく感覚が下腹の奥で波立っていた。やがて肉竿が一際大きく痙攣し、最奥に最後のひと吹きを吐き出してから、余韻を引きずるように少しずつ引き抜かれていく。ずるりと擦れる感覚に、膣壁が名残惜しげに吸いついて離れない。栓を失った陰唇が余韻に震えながら開閉し、収まりきらなかった白濁がどろり、どろりと溢れ出し、内腿を伝って垂れ落ちていく。

 

 白沢が学坊の股間に顔を寄せる。

 

 俺様の愛液に塗れた学坊の陰茎を、白沢は静かに舌で舐め上げた。混じり合った熱と湿り気を、根元から先へとゆっくりと這わせるように舌を動かし、俺様の痕跡を丁寧に拭い取ろうとしている。滴り落ちそうな愛液をすくい上げ、余さず舌に乗せていく。

 

 ちらりと俺様へ視線を向けたまま、鈴口へと唇を落とす。

 

 柔らかな唇がそっと包み込み、残っていたものを優し気に吸い上げた。俺様のものだったのを、白沢がこうして丁寧に清めていく光景が、まだ余韻に浸っている意識の端に刻まれる。

 

 こいつ、後で覚えてろ。絶対、お前のも邪魔してやる。

 

 なんて怒り心頭になったものの、深い絶頂の余韻に蕩けきって、身体は全く動きやしない。

 

 学坊が、白沢を膝の上に抱き寄せる。正面から向かい合うように、白沢は学坊の膝にまたがった。学坊の身体が白沢の背中によって隠れ、銀の髪が揺れる。学坊の手が白沢の腰を支え、優しく導いていく。

 

 白沢の細い背が、学坊の胸へすっぽりと収まる。汗ばんだ肌に銀の髪が張りつき、腰がゆっくりと沈んでいくたび、繋がったままの二人のあいだで、粘つく水音が静かに漏れ出す。さっきまでの獣じみた激しさとはまるで違う、ねっとりと甘いリズム。白沢の白い太腿が学坊の腰を挟み、爪先がシーツを握っては緩め、揺れるたびに、結合部から白濁が糸を引いてこぼれ落ちる。学坊の手が白沢の尻を包み、浮き上がる腰を押し戻すように、深く、確かめるように繋がりを刻んでいく。

 

「んぅ……っ♡ の、のお……学郎……っ♡ ふ、ぅ……ぁ……っ♡♡」

 

 白沢が、喘ぎを抑えきれない様子で言葉を零す。腰が上下に動き、甘い声が漏れるたびに、学坊の手が白沢の背中をゆっくりと撫で回す。指先が背筋を辿り、時折、腰の窪みを優しく押さえつけるように支えながら、白沢の動きに合わせて導いている。

 

「なんですか?師匠」

 

 二人の顔が近づき、唇が重なる。柔らかな感触が重なり合い、白沢の背中が大きく震える。学坊の手が白沢の腰を抱え込み、より深く沈み込ませるように優しく後ろから力を加える。白沢の身体が小さく跳ね、息が熱く交じり合う。

 

「儂とも……ん、ちゅ……っ♡ 夫婦に……ぁっ、ふぅ……なろう、な……っ♡ んん、ちゅ……いいじゃろ……っ♡」

 

 いや、こいつマジか?

 

「そういうのは酔ってないときにお願いします。そしたら、ちゃんと考えますんで」

 

 こいつもマジか?

 

「……んっ、ふ……いやじゃ……っ♡ ちゅ……っ、ぅ……んっ♡」

 

「じゃあ、駄目ですね」

 

「んぅ……っ、ちゅぷ……♡ ……はずいじゃろ……っ♡ こんな年に……ふ、ぁ……なって……っ♡ ん、ちゅう……っ♡」

 

「こんな年って……維朱さんと同じくらいじゃないですか」

 

 数十歳、多くて数百歳の差を同じ……? まぁ確かに悠久の時を生きる俺様たち幻妖にとっちゃ、その程度誤差といえば誤差なんだが……。

 

「あいつは……ぁっ、ふ……万年お花畑の……ん、ちゅ……ぁ、ん……恥知らず女じゃから……ふ、ぅ……ノーカンじゃ……っ♡」

 

「それが維朱さんの可愛いところなんで」

 

「ん、ちゅ……ぷは……っ♡ な、なら、儂は可愛くないってことじゃな……っ♡ ん、ちゅ……っ♡ んんっ、ぅ……ちゅぷ……っ♡ そういうことなんじゃな……? ……んっ♡」

 

 拗ねた口調のはずなのに、その語尾はとろけて、聞いているこっちの耳の奥で甘く痺れる。儂にも可愛いって言えと、ねだる様な、縋るような声色。

 

「師匠にも可愛いところはありますよ」

 

「んぅ……っ、ちゅ……♡ ほんとか……っ♡ ん、ちゅう……っ♡ ふふ……っ♡ ん、ちゅ……ぁ……っ♡ 後で、さっきのは無しは許さんぞ……ぉっ♡ んんっ、ちゅぷ……っ♡」

 

 途端に、その声音がふっと明るくなる。嬉しさを隠しきれないのが、語尾の端々から露骨に滲んで、濡れた響きになって漏れ出ていた。銀の髪の下に見える白沢の足が、心底嬉しそうに、小さく揺れている。

 

 そうして、白沢が、しなだれかかるように学郎の胸へ身を預ける。抱きしめられながら、腰が小さく揺らしている。学坊の腕が白沢を優しく抱き締め、背中を撫でるように撫で回す。背中を撫でる淡い刺激に、甘い声と、重なり合う息遣いが聞こえてくる。白沢の身体が熱を帯び、学坊の胸に顔を埋めるように寄りかかりながら、ゆっくりと腰を動かし続けている。

 

 合間合間で、また二人の唇が重なる。言葉を紡いでいた唇が塞がれ、白沢の声が、途中で飲み込まれて消える。そのたびに、言葉の代わりに零れる息だけが、湿った音を伴って漏れていく。唇の端から、唾液の混じった小さな音が、繋がったままの腰の動きに合わせて、途切れ途切れに響く。

 

「んぁっ……あっあ゛っ♡ あっ゛、ぁっ゛♡♡♡ ふ、ぅ……っ、学郎……っ♡ ん、ちゅ……ぁ、あ゛……っ♡♡ ん゛、ぅ……っ♡♡♡」

 

 なんだこの空間、邪魔する気になれねぇ……。俺様もはたから見たらこんなんなってのか?

 

 白沢の腰が、不意に大きく跳ねた。学坊の腕がその背を強く抱き寄せ、最奥まで沈み込んだまま、動きを止める。次の瞬間、繋がったままの奥へ、熱いものが勢いよく注ぎ込まれていく。白沢の全身がびくびくと震え、銀の髪が乱れ、喉の奥から甘い悲鳴が漏れた。学坊は白沢の背を撫でながら、最後の一滴まで絞り出すように、ゆっくりと腰を押し付け続けていた。

 

 射精の余韻に浸る白沢は、学坊にしがみついたまま、離れようとしない。ぐったりと脱力しているくせに、腕だけはしっかり回して、学坊の頬に擦り付けている。銀の髪が汗ばんだ肌にべったりと張りつき、すぐそばにある学坊の耳元に向けて、まだ切れ切れの甘い息を零している。まるでこのまま二回戦へと突入しそうな雰囲気だ。

 

「はい、お前の番は終わり」

 

 俺様は白沢の肩を掴んで、べりっと引き剥がす。名残惜しそうに伸ばされた手を振り払って、ぽいっとシーツの端へ転がした。

 

「あーーーっ……!」

 

 そのまま、目の前の拙僧無しの胸をぐっと押してベッドへ押し倒す。仰向けになったやつの上に、膝を曲げて跨る。俺様の影が、ちょうど学坊の顔の上に落ちた。

 

 二回も射精したはずなのに、こいつのものは、まだ硬く張り詰めたままだ。先っぽからは、さっき吐き出したばかりのものが、まだぬらぬらと光っている。その屹立へ、膣口をぴたりと押し当てる。触れあった瞬間、熱がじかに伝わってきて、下腹の奥がきゅっと縮んだ。思わず、腰がわずかに浮く。

 

 折角のバニーなんだから、兎っぽいことでもしてやっか。

 

 顔の横で両手を兎耳のようにぴんと立てて、わざとらしく揺らしてみせる。頭のうさ耳と、手で作った耳とで、合わせて二対分。そのまま腰を浮かせては落とし、浮かせては落とし――ほら、ぴょん♡ ぴょんっ♡

 

 腰を落とし、浮かすたび、亀頭のカリがぴったりと締まった膣口を、ぬぽ♡ ぬぽっ♡ と浅く出入りする。硬い先端に押し広げられながら浅く沈み、浮き上がれば、離れていく学坊のカリに膣口がきゅうきゅうと吸い付いて離れようとしない。入口の縁がカリのくぼみを舐めるように擦れるたび、じれったい快感が腹の底へとろとろと溜まっていく。物足りなさに、内側の襞がもっと深くを欲しがって、勝手にうねった。

 

「んっ……♡ ぁ、あ゛……っ♡♡ ふ、ぅ……ん、ぁ……っ♡ ぉ、ふ……ぅ゛……っ♡♡♡」

 

 ぴょん、ぴょん、と跳ねるたびに、甘い声が喉の奥から零れていく。

 

「学坊、知ってっか? ん、ぅ……っ♡ うさぎってのはな、ふ、ぁ……っ♡♡ 偉い方が毛づくろいしてもらうらしいぜ。……ほら、ん、ちゅ……っ♡ こうやってな♡♡♡ んっ゛、ぅ♡」

 

 身を折って、覆いかぶさるような体勢で、学坊の胸板にキスを落とす。ちゅっ♡ と一度吸い付いて、もう一度。ちゅう……っ♡ と、舌先で乳首を転がしながら、腰は入口で止めたまま、焦らすようにゆらゆらと揺らしてやる。うさ耳が頭の上でしなって、俺様の視界の端で揺れる。

 

 さっきの、甘ったるいのも悪くはなかったが……俺様的には、こっちの方が好みだ。

 

 ほら、我慢してんじゃねー。お前の方がうえだぞー♡ 俺様のことを好きにしていいんだぞー♡♡

 

「やっぱ、こっちの方が好きなんじゃないですか」

 

「うるへー……ん、ちゅ……っ♡」

 

 学坊の手が、俺様の尻に伸びる。がしっ、と掴まれて――次の瞬間、勢いよく、叩き落とされた。膣内へ一気に押し入ってくる。浅い焦らしを全て上書くみたいに、根元まで一息で貫かれて――

 

「――――っ、ぁあ゛っ……♡♡♡ ん゛、ぐ……っ、ぉ、お゛……っ♡♡ ふ、ぅ……っ♡♡♡」

 

 悲鳴に似た喘ぎが、喉の奥から突き上げられるように迸った。

 

 

◇◆◇

 

 

「つー感じでな、学坊とは熱い蜜月を過ごしてました。はい、これで満足だろ?」

 

 深夜の何時だったかは知らん。

 

 夜更けまで散々ヤり合って、そのまま満足するだけ満足して眠りについたせいか、次に目を覚ました時には学坊の腕の中だった。部屋の中は窓から差し込む朝の光でうっすらと明るんでいて、隣からは規則正しい寝息だけが聞こえている。隣を見れば白沢もいつの間にか目を覚ましていたらしく、俺様と目が合うなり何やら悪戯っぽく笑ったものだから、どちらからともなく寝こけている学坊へちょっかいをかけ始めた。

 

 満足げに力なく萎えている陰茎を意味もなくつついてみたり、首筋へキスを落としてみたり、白沢なんかは相変わらずべったりと身体をくっつけたまま離れようともしない。そこまでされても寝坊助野郎は眉一つ動かさず、時折鬱陶しそうに身じろぎするだけで目を覚ます気配はなかった。

 

 さすがにこのままずっと寝床に転がっているわけにもいかないので、未練たらしく学坊へまとわりついている白沢を引き剥がし、そのまま大浴場まで引きずっていった。湯を浴びて昨晩の汗やら何やらを綺麗さっぱり洗い流し、少し熱めの湯船に浸かってぼんやりしている間も、白沢は時折何かを思い出したように頬を緩めていた。

 

 浮かれすぎだろ、こいつ。

 

 風呂から上がって廊下へ出る頃には、屋敷の中もすっかり朝の空気に切り替わっていた。キッチンに併設されたダイニングへ近づくにつれて、とん、とん、と小気味よく鳴る包丁の音や、鍋の蓋が触れ合う音が聞こえ始め、それに混じって焼き魚や味噌汁の匂いまで漂ってくるものだから、散々身体を動かした後ということもあって急に腹が減ってくる。

 

 今日は朝飯なんだろな、なんて考えながらダイニングへ入ったところで、一瞬にしてそんな呑気な考えは吹き飛んだ。

 

 じとっとした幾つもの視線が、俺様と白沢の全身に突き刺さる。

 

 ……ははっ、バレてらー。

 

 まあ、昨日あれだけ好き勝手して、それはもう沢山の嬌声をあげてたんだから、そりゃバレていて当然っちゃ当然なんだが。

 

 くいくいっと手招きをする四衲の前まで行って腰を下ろすと、にこにこと笑っているくせに目だけは全然笑っていない顔が真正面にくる。

 

 さて、僕らのガー助と昨晩は何をしてたんですかねー、と。

 

 口に出さずとも、だいたいそんなところだろう。

 

 口を濁したところで後が面倒なので、俺様は昨晩のあれやこれやを適当にかいつまみながら白状していった。白沢は隣で段々と居心地悪そうに身体を縮こませている。

 

 そもそも、こうやって学坊とシた翌日に事情聴取みたいなことをされるのも、今となってはほとんど恒例行事になりつつある。嫁さん達だって俺様たちと学坊の関係そのものには一応納得しているし、普段なら適当に文句の一つ二つ言われて終わる話だ。

 

 ただし、今回は少々事情が違う。

 

 昨晩は学坊と、それはもう散々いちゃついて、沢山甘やかしてもらったわけで。散々愛だ何だと囁かれて、その場では俺様も白沢もいい気にさせられていたわけだが、今になって思えば、あいつが初めの方に心配そうな表情をしていた理由も分からなくはない。

 

 いくらでも誤魔化そうと思えば誤魔化せるんだが、現在進行形で夜島家に居座って飯まで食わせてもらっている身としては、完全に黙っているのもそれはそれで寝覚めが悪い。

 

 というわけで。すまん、学坊!!!

 

「そ、それと……あ」

 

「あ?」

 

 四衲の目が僅かに細くなる。

 

「愛してます、キャシーさんって言われたり……。な? 白沢!!!」

 

「な゛っ!?!?」

 

 白沢が弾かれたように俺様を振り返り、このタイミングで話を振るな、とでも言いたげな目で睨みつけてくる。

 

 いや、お前も同罪なんだから、知らん顔すんな!!!

 

 と、そこでさっきまで食堂に響いていた音がぴたりと止んだ。包丁の音も、食器を並べる音も、鍋を動かす音も聞こえない。

 

 何となく嫌な予感がして傍のキッチンへ視線をやると、料理をしていた連中まで手を止めてこちらへ聞き耳を立てている。改めて目の前へ視線を戻せば、学坊の嫁さん達は揃いも揃って綺麗な笑顔を浮かべているのに、どう見てもその額には青筋が浮かんでいた。

 

「ま、まぁ……そうじゃの」

 

 観念した白沢が小さく頷く。

 

 しばしの沈黙が続き、ばさりと布の擦れる音がして、誰かがエプロンを脱いだ。

 

「キャシーさん、白沢さん。朝ごはん出来てるんで先に食べておいてください」

 

「お、おう。……お前らは?」

 

 聞くまでもないような気もするが、とりあえず聞いてみる。

 

「後で。……もしかしたら今日は部屋にこもって出てこなくなるかもしれないんで、そしたら適当に片づけておいてください」

 

「あー……仕事先に休みの連絡いれとこうか?」

 

「助かります。……行こ?」

 

「学郎君に天誅だ~~~」

 

 物騒な掛け声とともに、嫁さん達がぞろぞろとダイニングを出ていく。その背中を見送りながら、俺様は思わず胸を撫で下ろした。

 

 ……き、肝冷えたぜ。全く。

 

 別に怒られてるのは俺様じゃないんだが、あの人数に笑顔で囲まれるとさすがにちょっと怖ぇ。

 

「……儂も行っていいかの」

 

「あ?」

 

 横から聞こえてきた言葉に白沢を見る。

 

「いいわけねぇだろ。……あ゛」

 

 そこまで言ってから、昨晩こいつが口走っていたことを思い出した。

 

 夫婦になりたい、とか何とか。

 

 酔ってるからって、何言ってんだこいつ、くらいにしか思っていなかったが、今の反応を見る限り、どうやら冗談で言ったわけではなかったらしい。

 

「お前、もしかして……あれマジだったのか?」

 

 白沢は答えず、ぷいっと俺様から顔を背ける。ただ、その頬だけは分かりやすいくらい赤く染まっていた。

 

「……ど、どうせいつ終わるか分からん生じゃろ? なら、一度くらい家庭を持ってもよいなーって」

 

 昨晩みたいに浮かれた調子ではなく、どこか言い訳するようにぼそぼそと口にする白沢を見ていると、どうやら思っていたよりも本気らしい。

 

 俺様は少しだけ考えてから、腕を組んで椅子の背へ身体を預けた。

 

「いっちゃなんだが、結構問題のある物件だろ、あいつ。嫁は多いわ、他人の面倒ばっか見て自分のことは後回しにするわ、放っとくと平気で無茶するわ……。どこがいいんだ?」

 

「目と表情……。あと、そのな……小娘たちといちゃついとるの見て、いいのぉって」

 

「……そこ?」

 

「なんじゃその顔は!!! てか、おぬしもちっとくらいは考えたことくらいあるじゃろ!!!」

 

「ねぇよ」

 

 学坊とか。うーーーん…………いや。改めて考えてみても、やっぱりねぇな。

 

 誰かと夫婦になって、一つ屋根の下に暮らして、毎朝同じ食卓を囲んで、帰る場所を一つに決める。そういう生き方が悪いとは思わないし、実際こうして学坊たちを見ていると楽しそうだなと思うことくらいはある。

 

 ただ、俺様自身がそこへ入りたいかと聞かれれば、たぶん違う。

 

 誰かが騒いでいる声を適当に聞き流しながら軒先で日向ぼっこして、気が向けばふらっとどこかへ出かけて、面白そうなことが起きれば勝手に首を突っ込む。行きたい場所へ行って、帰りたくなったら帰って酒に溺れる。

 

 そのくらい適当で自由な方が、俺様には性に合っている。

 

 学坊たちの家族ごっこを少し離れたところから眺めて、ときどき混ざって好き勝手引っ掻き回すくらいがちょうどいい。

 

「お前がなんて反応されても俺様の知っちゃこったねぇが、さっさと行ってこい。邪魔だ、邪魔」

 

 白沢は少しの間だけ俺様の顔をじっと見ていたが、やがて照れ臭そうに口元を緩めると、小さく頷いた。

 

 まあ、万が一盛大に玉砕してここに居づらくなったとしても、その時は酒くらい付き合ってやる。それくらいなら、腐れ縁としてやってやってもいいだろう。

 

 椅子を勢いよく引いて立ち上がった白沢が、そのまま嫁さん達を追って廊下へ駆けていく。途中で一度だけこちらを振り返ったかと思えば、何を言うでもなく、そのまま角の向こうへ消えていった。

 

 一人残された俺様は小さく息を吐き、ようやく目の前の食卓へ視線を戻した。

 

 焼き魚に味噌汁、卵焼き、煮物、炊きたての飯。それ以外にも細々とした皿がいくつも並べられていて、ざっと見ただけでも十人分近い量がある。

 

 ……くえねぇよ、こんな量。どうせ、いつもの感じならあいつらは当分戻ってこないだろう。三食に分ければいけなくもないが、さすがに朝昼晩ずっと同じ飯ってのも嫌だし、余った分は適当に保存しておけばいいか。

 

 箸を手に取り、とりあえずまだ湯気の立っている味噌汁を一口啜ると、少し濃いめの出汁と味噌の香りが寝起きの身体に染み込んでくる。

 

 ダイニングへ差し込む朝日が床を明るく照らし、その向こうでは、さっき出ていった連中の声が廊下の奥から微かに聞こえてくる。

 

 相変わらず、朝っぱらから騒がしい家だ。もう少しくらい静かに出来ねぇのかねぇ。

 

 なんて、呆れながら味噌汁をもう一口啜る。

 

 ……まあ、静かになったらなったで、それはそれで気味が悪そうだけどな。

 

 俺様は誰も座っていない食卓の向こう側へ視線をやり、しばらくしてからふと思いつく。

 

 ……後で、学坊に精のつく飯でも差し入れてやるか。

 

 

 

 

 

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