※この作品はR-18です。

絶対支配者のコレクション ~弄ばれる女神たち~   作:カイト__

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再会の檻 ~白鳥と黒百合、交錯する絶望~

【序章:予期せぬ命令、かつての敵へ】

プラント最高評議会議長執務室。その空間は、タリア・グラディスにとって、もはや恐怖と屈辱、そして抗いがたい引力を持つ、自身の運命を縛る檻そのものとなっていた。記録係として、あるいはそれ以上の「役割」として、ギルバート・デュランダルの傍らに侍る日々。艦長としての誇りは遠い過去の遺物となり、心は愛憎と依存の複雑な網に絡め取られ、疲弊しきっていた。それでも、彼女はまだ、かろうじて理性の仮面を保っていた。

その日、デュランダルは、珍しく穏やかな表情でタリアを呼び出した。しかし、その瞳の奥には、新たな企みを隠した、冷たい光が宿っているのを彼女は見逃さなかった。

「タリア、君に新たな“視察”任務を命じる」 「視察…でございますか?」 「うむ。現在、我々の管理下に置いている、ある重要人物の“現状”を確認し、詳細なレポートを提出してもらいたいのだ」

重要人物――タリアの脳裏に、いくつかの顔が浮かんだ。しかし、デュランダルが次に口にした名前は、彼女の予想を遥かに超え、そして心を激しく揺さぶるものだった。

「対象は、アークエンジェルの元艦長、マリュー・ラミアスだ」

マリュー・ラミアス――その名を聞いた瞬間、タリアの背筋に冷たいものが走った。かつて、オーブ攻防戦やその後の戦場で、幾度となくミネルバの前に立ちはだかった、あの白い艦(ふね)の指揮官。異なる信念の下、互いに多くの犠牲を払いながら戦った、宿敵とも言える存在。そして、同じ女性でありながら、全く異なるタイプの指揮官。彼女が、プラント軍に拿捕され、デュランダルの管理下に置かれているという噂は耳にしていたが、まさか自分が、その彼女の元へ赴くことになるとは…。

「彼女が…ここに?」 「そうだ。彼女は、貴重な情報源であり、同時に…少々“扱いにくい”捕虜でね。君の目で、彼女の現在の精神状態、そして我々への“協力”の可能性を、冷静に見極めてほしいのだ。元同業者として、そして同じ女性として、君ならば彼女の本質を見抜けるかもしれん」

デュランダルの言葉は、一見理に適っているようでいて、その実、彼の嗜虐的な好奇心と、タリアに対する新たな精神的揺さぶりを隠しているのは明らかだった。かつての敵将が、今どのような惨めな状況に置かれているのか。そして、それを見て、タリア・グラディスがどのような反応を示すのか。それを、彼は楽しもうとしているのだ。

タリアは、内心で激しく葛藤した。マリュー・ラミアスに会いたいか? いや、会いたくない。彼女の現在の姿を見るのは、あまりにも辛すぎる。それは、自分自身の未来の姿を映し出す鏡かもしれないのだから。しかし、これは議長の命令だ。そして、「記録係」としての任務でもある。拒否することは許されない。

「……承知、いたしました。謹んで、任務を遂行いたします」

彼女は、感情を押し殺し、努めて冷静な声で答えた。その声が、僅かに震えていたことに、デュランダルは気づいただろうか。彼は、満足げに頷くと、マリューが収容されているという、要塞内の特別監房区画の場所と、入室権限をタリアに与えた。

【第一幕:檻の中の白鳥、失われた威厳】

重々しいセキュリティゲートをいくつか通過し、タリアは、薄暗く、冷たい空気が漂う特別監房区画へと足を踏み入れた。案内されたのは、その一室。扉には、名前ではなく、ただ無機質な管理番号だけが記されていた。護衛兵がカードキーでロックを解除し、重い金属製の扉が開かれる。

タリアは、息を呑み、意を決して部屋の中へと入った。そして、目に飛び込んできた光景に、一瞬、呼吸を忘れた。

広いとは言えない、しかし最低限の家具(ベッド、洗面台、トイレ)だけが置かれた、殺風景な独房。その中央の床に、一人の女性が、まるで打ち捨てられた人形のように、座り込んでいた。いや、正確には、首に嵌められた革製の首輪から伸びる鎖が壁に繋がれ、行動範囲を制限された状態で、力なく床に座っているのだった。

服装は、薄汚れた、サイズの合わない囚人服のようなもの一枚だけ。長い茶色の髪は手入れもされず、無造作に乱れ、顔はやつれ、目の下には深い隈が刻まれている。そして、その瞳――かつては、強い意志と、深い母性的な優しさを湛えていたはずの大きな瞳は、今は完全に光を失い、虚ろに床の一点を見つめているだけだった。

マリュー・ラミアス。かつて、数々の激戦を潜り抜け、奇跡の艦アークエンジェルを率いた、あの誇り高き艦長の姿は、そこにはなかった。そこにいたのは、尊厳を奪われ、精神的に破壊され尽くした、一人の哀れな女の残骸だった。

タリアは、そのあまりにも痛ましい姿に、強い衝撃を受け、胸が締め付けられるような痛みを感じた。これが、デュランダルの言う「管理下」の現実なのか。同じ女性として、そしてかつて同じ指揮官であった者として、込み上げてくる同情と、そして言いようのない怒り。しかし、彼女は自分の任務を思い出し、感情を押し殺すと、手に持っていた記録用の端末を起動させた。

「…マリュー・ラミアス元艦長。プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルの命により、あなたの現状を視察し、記録するために参りました。ミネルバ艦長、タリア・グラディスです」

努めて冷静に、事務的な口調で語りかける。しかし、声が僅かに震えるのを抑えきれなかった。

【第二幕:無言の対峙、虚無と憐憫の交錯】

タリアの声に、床に座り込んでいたマリューの体が、びくりと微かに反応した。そして、ゆっくりと、本当にゆっくりと、彼女は顔を上げた。その虚ろな瞳が、タリアの姿を捉える。

一瞬、その瞳にかすかな光が宿ったように見えた。驚き、困惑、あるいは…憎しみ? しかし、それもすぐに消え去り、再び深い虚無の色が戻ってきた。彼女は、タリアの顔を、まるで壁の染みでも見るかのように、何の感情も浮かべずに、ただぼんやりと見つめているだけだった。

「……」 「……」

言葉はない。ただ、二人の女性指揮官の視線が、この冷たく殺風景な独房の中で、静かに、しかし重く交錯する。過去の戦場で、モニター越しに互いの存在を認識し、火花を散らした記憶。異なる立場、異なる信念。そして、今、二人は、デュランダルという一人の男によって、全く異なる形で、しかし同じように支配され、その掌の上で踊らされている。

タリアは、マリューのその虚ろな瞳の奥に、かつての彼女の面影――強い意志、深い母性、そして決して屈しない誇り――を探そうとした。しかし、見つけることはできなかった。デュランダルは、彼女の中から、それら全てを奪い去ってしまったのだろうか。そう思うと、言いようのない恐怖が、タリアの背筋を駆け上った。明日は我が身かもしれないのだ。

記録を取らなければならない。客観的に、冷静に。そう自分に言い聞かせながらも、タリアの指は端末の上で震え、うまく動かない。目の前の光景は、あまりにも残酷で、そして悲しすぎた。同じ女性として、これほどの屈辱に耐えなければならない彼女への深い同情と、彼女をここまで追い詰めたデュランダルへの燃えるような怒り。そして、そんな彼に、自分自身もまた抗えずにいるという、自己嫌悪。様々な感情が渦巻き、タリアの心を激しく揺さぶる。

「…何か、言いたいことはありますか? ラミアス元艦長」

タリアは、かろうじて言葉を絞り出した。しかし、マリューは、何の反応も示さない。ただ、虚ろな瞳でタリアを見つめ返すだけ。その瞳は、もはや何も映していないかのようだった。あるいは、あまりにも多くの絶望を映しすぎて、何も見えなくなってしまったのかもしれない。

【第三幕:艦長の「世話」、穢れへの接触】

このままでは埒が明かない。タリアは、意を決し、デュランダルから暗に指示されていた(あるいは、彼女自身が記録のために必要だと判断した)次の段階へと進むことにした。マリューの「健康状態」を確認するという名目で、彼女の体に触れるのだ。

「…元艦長。少し、体を調べさせていただきます。これも任務ですので、ご協力ください」

タリアは、そう言うと、マリューの傍らに膝をついた。そして、記録のために用意されていた使い捨てのゴム手袋を嵌めると、まず、彼女の乱れた髪をそっと掻き分け、首筋に触れた。脈は弱々しいが、確かに打っている。次に、囚人服のボタンを外し、その下の肌の状態を確認しようとした。

その瞬間、マリューの体が、びくりと大きく震え、怯えたような目つきでタリアを見上げた。まるで、また何か酷いことをされるのではないかと警戒しているかのように。

「…大丈夫よ。何もしないわ。ただ、確認するだけ…」

タリアは、できるだけ優しい声で語りかけた。かつての敵将に対して、このような言葉をかける日が来るとは、夢にも思わなかった。

囚人服の前を開くと、その下には何も身に着けていなかった。痩せてはいるものの、かつての豊満さの名残をとどめる胸が露わになる。しかし、その白い肌には、いくつかの痣や、鬱血した痕、そして…白濁した液体が乾いてこびりついたような、生々しい染みが、点々と残っているのが見えた。それは、彼女がここでどのような扱いを受けているのかを、雄弁に物語っていた。

タリアは、息を呑み、胸が締め付けられるような痛みを感じた。同時に、強い吐き気が込み上げてくる。それでも、彼女は任務を続けなければならない。記録のために。

手袋越しの指で、マリューの体をそっと拭っていく。温かいタオルで、肌についた汚れや白濁の痕跡を丁寧に拭い去る。マリューは、最初は体を硬直させていたが、タリアの優しい手つき(それは、おそらく彼女が長い間経験していなかった人間的な接触だったのだろう)に、少しずつ体の力を抜いていく。そして、虚ろだった瞳から、一筋の涙が静かに流れ落ちた。

「……」

タリアは、何も言わず、ただ黙々と彼女の体を清め続けた。胸、腹部、脚、そして背中。その過程で、彼女のプロポーションが、痩せ細ってはいても、依然として驚くほど美しいラインを保っていることに気づく。しかし、その美しさが、かえって彼女の悲劇性を際立たせていた。この美しい体が、どれほど汚され、蹂躙されてきたのだろうか。

体を拭き終えると、タリアは新しい清潔な囚人服(という名の粗末な寝間着)を彼女に着せた。そして、床に置かれたままになっていた、冷たく固まった食事(という名の残飯)の皿を片付けようとした。

「…食べる?」

タリアが尋ねると、マリューは、初めて、微かに頷いた。タリアは、その食事を少し温め直し、スプーンで掬って、彼女の口元へと運んでやった。マリューは、まるで雛鳥のように、小さく口を開け、ゆっくりとそれを食べた。その姿は、あまりにも痛々しく、そして哀れだった。

【第四幕:デュランダルの査察、歪んだ三角関係】

ちょうどその時、予告なく、部屋の扉が開き、デュランダルが現れた。彼は、タリアがマリューに食事を与えている光景を見ると、満足げな、そして嗜虐的な笑みを浮かべた。

「ほう、随分と“仲良く”なっているではないか、タリア。感心、感心。私の指示通り、しっかりと“世話”をしているようだな」 「……閣下」タリアは、立ち上がり、彼に敬礼した。 「して、記録はどうだ? 何か“興味深い”発見はあったかね?」 「…元艦長の健康状態は、概ね問題ないかと。ただし、精神的には、かなり不安定な状態にあると見受けられます」 「ふむ。そうだろうな」デュランダルは、こともなげに言った。「だが、それも計算のうちだ。精神的に追い詰めることで、彼女はより従順になる。それに…」彼は、タリアの耳元に顔を寄せ、囁いた。「…壊れかけの人形を弄ぶのは、格別な愉しみがあるとは思わんかね?」

その言葉に、タリアは全身の血が逆流するかのような怒りと嫌悪感を覚えた。しかし、それを表情に出すことはできない。

デュランダルは、満足げに頷くと、今度は床に座るマリューに視線を移した。

「さて、マリュー。私の可愛いペットよ。今日は、お前のために、特別な“ご褒美”を用意したぞ」

彼は、タリアに目配せすると、彼女が持っていた記録端末を操作し始めた。モニターに映し出されたのは、数日前の、タリア自身がデュランダルに蹂躙され、汚されている映像だった。

「なっ……!?」タリアは愕然とした。なぜ、こんなものをマリューに? 「いい見世物だろう? 君たち二人は、いわば“姉妹”のようなものだ。互いの“成長”を、こうして確認し合うのも、悪くない」

デュランダルは嗤いながら、マリューの反応を観察する。マリューは、最初は虚ろな目で画面を見ていたが、次第にその瞳に、僅かながら感情の色が戻ってきた。それは、驚きか、同情か、それとも…。

そして、デュランダルは、さらに残酷な命令を下した。

「さあ、マリュー。今度は、お前がタリアにしてやれ。彼女が、私にどのように奉仕していたか、よく見ていただろう? その通りに、お前のその小さな口と舌で、タリアを慰めてやるのだ」

「な……! 馬鹿な……!」タリアは叫んだ。 「いや……!」マリューもまた、か細い声で拒絶の意思を示した。

しかし、デュランダルは、二人の抵抗など意に介さず、タリアを押さえつけ、マリューに強要した。二人の女性が、互いの体を、デュランダルの命令の下で、屈辱的に探り合う。涙を流しながら、嫌悪感に身を震わせながら、それでも逆らえない。デュランダルは、その倒錯的な光景を、恍惚とした表情で見つめていた。やがて、彼は自らもその輪に加わり、三人の体が入り乱れる、混沌とした凌辱の宴が始まった。絶頂と嗚咽、白濁と涙、汗と体液が混ざり合い、部屋全体が、濃密な、そして絶望的な匂いに満たされていく。三者の肢体は、互いの、そして彼の白い液体で、これ以上ないほどに汚され尽くされた。

【終章:鏡合わせの絶望、記録されない真実】

どれほどの時間が流れたのか。気づいた時、タリアは一人、あの独房から続く廊下を、ふらつく足取りで歩いていた。デュランダルは、満足して先に部屋を出て行き、マリューは、再び虚無の淵に沈んだまま、汚れた床に倒れていた。

タリアの手には、記録用の端末が握られていた。しかし、今日の出来事を、彼女はどのように記録すればいいのだろうか? 客観的な事実? 揺れ動く感情? それとも、何も書かずに、ただ空白のままにしておくべきか?

彼女は、端末の電源を落とし、ポケットにしまい込んだ。そして、壁にもたれかかり、深く、深く息をついた。鏡があれば、自分の顔を見てみたかった。そこに映るのは、ミネルバ艦長か、デュランダルの側近か、それとも、マリュー・ラミアスと同じ、ただの壊れた人形か。

再会の檻の中で、二羽の白鳥(あるいは、白百合と黒薔薇)は、互いの絶望を映し出す鏡となった。そして、その絶望は、デュランダルという名の飼育係によって、さらに深く、暗い場所へと導かれていくのだろう。彼女たちの体が洗い流せても、心に刻まれた汚濁と、壊れた絆の記憶は、決して消えることはない。プラントの未来という大義名分の下で、今日もまた、声なき悲鳴が、深淵に響き渡っていた。

 

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