モモンガ様「仲間がいたよ!」(嘗てのギルメンの皆を思い出しながら)
タケシ「全てを許そうアイン・ルクレツィア……。俺は初めから誰も信用しちゃいねェからな……」(嘗てのギルメンに売られた)
どこで差がついた……慢心……環境の違い。
シャヨーノ王国の王都ダイブマッキにある聖王教会では急遽会合が開かれていた。
一堂に会した者達は皆、海千山千の兵ばかり。
そんな中で困惑と緊張により、ジーベンとタケシは汗をたらたらと流していた。
「な、な、なんだかオラ達には場違いな所さ来てしまったみてえで……」
「そ、ソッスネ、ハハァ……」
昨日の大富豪で打ち解けたかと思えばタケシは相変わらずのコミュ障で乾いた笑いしか出てこない。
(バカ! 俺のバカ! もう少しジーベンちゃんをリラックスさせる様な事言えよぉ……なにがソッスネ、ハハァ……だ!)
そんなタケシの様子にジーベンも少し困った表情を浮かべる。
(ああ〜ジーベンちゃんに失望されてしまった。俺はいつもこうだ……)
なお、これはタケシの認知が歪んでいるせいであり、実際は失望などしていない。
寧ろ聖王の生まれ変わりである(とされている)タケシに対して無礼がないようにと必死に自分を律しているのだ。
だが悲しいかな、その思いは全く伝わっていない様であった。
ともかく教皇フィアネスが音頭を取り、話し合いを始める。老齢でありながら血色は良く、聖職者然とした振る舞いと貫禄を見せていた。刻まれた皺は魔導書さながらの叡智を感じさせた。
「では会議を始めよう。議題はかの悪魔王デザイアについてじゃ。なんでもノドカナ村に突如現れたそうではないか。のう、アイン」
アインと呼ばれた少女はこくり、と頷きかの悪魔王とやらについて語り出す。
「はい、私はノドカナ村にて件の悪魔王に接触し、そしてミカ、ジーベン、そしてタケシ殿と共にその使徒らしき怪物二匹と相対しました」
「ほーお、でアインちゃん。その使徒ってのは強いのかい?」
「それは……」
「そりゃもうマジヤバ」
アインを遮るかのようにミカが質問に答えた。尋ねた中年の聖騎士、髪は茶髪を無造作にして無精髭を蓄えつつももみあげはきっちりと刈り揃えたいかにもな昼行灯な風貌をしていた。
「へぇ、お前さんが言うなら相当なモンだろうね。んで? どんな見た目だったんだい?」
「えっと、ゴスロリかと思ったら急にがバーッとデカくなったかと思えばピカーっと目を光らせて、ガッシャーンって尻尾を振るってさー! タケちゃんが来てくんなかったらあーしら今、ここにいなかったかもって感じ、マジ感謝だし!」
身振り手振りで興奮気味に話すミカを見て、周囲の面々は驚きに包まれていた。
あの勇猛果敢なミカがここまで相手を誉めそやすとは余程の事があったに違いない。アインも同意見なのか同意するように首を縦に振る。
(あ、そこは公平なんだ……。アインさんは俺の事嫌いなんだろうけど公私はしっかりつけるタイプなんだ)
これもまた誤解である。アインは別にタケシを嫌っているワケではない。
とはいえ、その誤解を解く術はない。そもそもタケシ自身が自分が嫌われていると思い込んでいるのだから。
「何を言っているのかさっぱりですわ。 貴方も聖騎士ならばもう少し淑女としての嗜みと言うものをお持ちなさい」
そんなミカを嗜めるのは金髪の縦ロールが目を引く、見目麗しくも気の強い高慢そうなご令嬢じみた女性であった。縦ロールもそうだが胸元も相当に自己主張が激しい。
「と、言われてもドラちゃん。あーしはこういうキャラだし」
「私はドラゴン娘ではございませんわ! 失敬な!!」
(口から火を吐きそうな勢いなんですがそれは大丈夫なんですかね……)
タケシはドラちゃん、恐らく名前の法則性からして第三の聖女であろうドライ・ルクレツィアをそれとなく眺めていた。その視線に気付いたのか、ドライはキッとタケシを睨む。
「何ですの。この無礼者。私をジロジロと見つめて……私の顔に何かついているとでも?」
気も強いが当たりも強い。アイン、ツヴァイ、そしてこのドライ。王国の聖女は基本的に烈女揃いなのだろうか? いや、ジーベンという例外もいるが。
「いや、目と鼻と口が……」
「貴方、私をバカにしておりますの?」
ミカには効果覿面であった邪神ジョークもドライには逆効果の様だった。
「そんな事より本題に戻ろう。ボクらは今後その悪魔王デザイアとやらにど対処していくんだい?」
「あ、その……それ、なんですが……」
「何かな?」
話を戻そうとする片方の目を隠したぱっつん黒髪セミロングの少女剣客にタケシは年下相手であるのにおずおずとしながらも、話を切り出した。
「その、悪魔王デザイア、もといディーサイドに俺達だけで戦うのは厳しいと思います」
「? デザイアではなくディーサイド? それがかの悪魔王の真名なのかな」
「ま、可能性は高いんじゃないかい? 真名と年齢を隠すのは何も仮面舞踏会の貴婦人方ばかりじゃないって事さ」
「ハハァ……センパイ……オモシロイスネェ……」
流石にデザイアのままでは転生したプレイヤーに情報アドを握られてしまう。 そう判断しての発言である。 昼行灯然とした先の中年騎士がとぼけた様子で言うがタケシを除いて誰も反応しなかった。『今マジメな話してんだからスルーしとけよ』という空気をひしひしと感じた。
「それで、タケシ殿にはなにか秘策がおありかな?」
フィアネスがそんな空気を打ち消そうとしてか、タケシに問いかける。タケシは少し躊躇いながらも、意を決して話し出した。
「えー、あー、その……。まずはですね。
他の国と連合なり、同盟なりを組んでですね……挙国一致でディーサイドに立ち向かうというのは……どう……ですかね?ハハァ……」
(自分から相手勢力の難易度を上げるなんて俺もつくづく変な星の下に生まれちまったもんだよ……)
タケシは内心でため息をつきつつも、オーソドックスな提案をしてみた。
「貴方、顔だけではなく頭も悪い様ですわね」
「え、ええ〜!?」
ドライがじろり、と夢想家を見る様な目を向けてきた。タケシは愚鈍ではないがディベートには滅法弱い。たじろぐタケシにドライは言葉を続けた。
「そのディーサイドなるものがいかに脅威であろうと他国に実害はまだ出ておりませんわ。寧ろ悪魔王と誼を通じて王国を挟み撃ちにしようとする勢力が現れる可能性も大いにありえるでしょう? 貴方、諸国を渡り歩いた割にはそうした情勢分析が出来ていないのね。これでよく今まで生きて来られましたこと」
「前半はともかく後半は余計だよ。
ここは誰かを吊し上げて恥をかかせる場所じゃないんだ」
「うむ……」
意外にも先の片メカクレ少女剣客がタケシを擁護し、傍らの赤胴色の肌を持つ筋骨隆々たる初老の男性、まさか聖女ということもないだろうから聖騎士であろう人物を頷いた。
(うおお……! なんか庇ってくれたぞ! この子いい子だ! 好きかも……)
「フン、事実を言ったまでですわ」
だがドライはツンケンとした態度のまま、意見を引っ込めようとしない。
「まあ、二人とも落ち着きなよ。あたしはタケシの意見に賛成だね。ドライ、サヤ。アンタらは確かに強い。一人でも十分戦っていけるってあたしがハッキリ認めてやるよ。けどね、一人より二人、二人より三人でやった方がうまくいくものだって世の中にはあるって事を知った方が人生は楽しく暮らせるよ」
(つ、ツヴァイの姐さん……!!)
ついつい涙が出そうになる。聖女達の中にあって常に第一線に立つ彼女はやはり一味違うようだ。
「ま、そういう事だな。獣人国や帝国はともかく公国や共和国辺りには一応使者を送った方がいいんじゃないですか? なんなら俺やガンケンの爺様が使者の役目を果たしてもいい」
「うむ……」
「そういってアンタ、またサボろうとしていないかい? スタローン」
どうやら昼行灯騎士はスタローンという名前らしい。ツヴァイの言葉に彼はポリポリと頭を掻きながら苦笑する。
「はあ〜……ガキの頃から全然変わってないんだから」
「お前さんは大分変わったけどな」
「大きなお世話だよ!」
何故か夫婦漫才が始まる中、当面は悪魔王ディーサイドの動向を見守りつつ各国への交渉を視野に入れるという事で会議は終わった。
(は〜……疲れた。疲れたという言葉しか出ない位に疲れた……)
「ほんだばタケシ様。オラもノドカナ村までご一緒しますだ。不束者ですが今後ともどんぞ宜しくお願ぇしますだ」
ジーベンはまるで嫁入りでもするかのように深々と頭を下げてくる。
思わずタケシは恐縮してしまった。
「あ、はい。こちらこそよろしくお願いいたします」
「違う違う! タケちゃん! そういう時は『お前は俺が守るぜ……』くらいバシッと決めないと! んー……決めた! あーしも暫くノドカナ村に住む事にしたし!
2人のこの先も気になるけど、あのお団子頭にもリベンジするのにムシャシュギョーしないとだし!!
あのお団子頭ディーなんとかの妹なんでしょ? タケちゃんはディーなんとか、あーしがあのお団子頭をぶっ飛ばす感じ!
これってなんかバトル漫画っぽい因縁ぽくなくなくない?」
拳の乱打ばりのマシンガントークにタケシは圧倒され、ただ「はい」と相槌を打つしかなかった。
「じゃ、そういうワケだからこれからヨロシクね! タケちゃん!! ジーちゃん!」
「はい。ミカ様が来てくださったら百人力だす」
ジーベンは素直にミカを迎えるがタケシの心中は複雑であった。あまりにも王国サイドに肩入れしすぎではないか、と。
しかし同じ釜の飯を食う、というのはこういう事なのか、と妙な納得も覚えていた。
(ミカもジーベンちゃんも悪い人じゃないんだろうが……ちょっとだけやりにくいんだよなぁ。ま、俺は誰かと仲良くなれるようなキャラでもないんだけどさ……。
だから人形に自分を賛美させて嬉しがっているのかって? 嬉しいし楽しいに決まっているだろ。 したり顔で愛やら友情やら道徳やらをボクシングのグローブにするんじゃねえ。 孤立無援どころか裏で手を組まれた挙げ句袋叩きにされた経験もねえくせに囀るな)
スイッチが入ったようにタケシの機嫌が急に悪くなった。
彼にはこうした拗らせた一面がある。
その凍てついた心の真芯が解ける日はまだまだ遠い様だった。
それはともかく……だ。
「お待ちなさいタケシとやら」
先の令嬢聖女、もといドライがタケシを呼び止めた。
「えと、何でしょうか」
「何でしょうか、ではありませんわ。貴方、ロベルトを一喝で失神させたそうじゃありませんの」
腕組をするとそのたわわな胸が強調さる形になり、タケシは慌てて目を逸らす。
「はあ……その、まあ……」
「一応アレでも私の従者……もとい聖騎士を辱めた責任は取って頂きますわ」
(面倒くさいなあ……)
なんだ、金かマジックアイテムでもせびろうというのか。とタケシは思った。七大聖剣如き幾らでもくれてやる。不機嫌かつ疲労困ぱい状態のタケシにはそんな思考回路になっていた。
だがドライが発したのは意外な言葉だった。
「私と手合わせしなさい」
「えっ」
「貴方の実力はこの目で見ておりません。そして貴方がどれだけ強かろうと、私がそれを上回っている事も証明してみせましょう。貴方に拒否権などない事は承知しておいででしょうね」
なんとも強引な話である。国王のユーグレンといいこの国の貴族というものは人の都合を考えない人種が多いようだ。
「はあ……わかりました」
「フン、最初からそう言えばいいのですわ。私は貴方に負けたりはしない。ロベルトに勝った程度で図に乗らない事ですわ」
「あ、あわわ……」
ジーベンは他人事ではいられない様子でツヴァイになんとか取りなして貰えないかと目で訴え掛けた。しかし……。
「仕方ないねえ。じゃあアタシが審判と立ち会いをしてやろうじゃないか」
ジーベンはがくりと肩を落とすのみであった。
ー
そうした次第で王国の訓練場は俄に騒ぎとなっていた。それはそうだろう。
新参の聖騎士候補、それも聖王の生まれ変わりと噂されるタケシと新鋭の武闘派聖女、ドライ・ルクレツィアとの世紀の一戦が行われようとしているのだ。
「はいはい。一口銅貨10枚だよ〜」
「俺はドライ様に10口!」
「俺は5口だ!!」
「僕は……100口!!」
月給どころか貯金まではたいてスタローンが仕切る外ウマに乗ろうとする兵士達にアインは嘆息した。
士気が乱れているというか聖女や聖騎士の存在によりすっかり怠け癖がついている風にも見える。兵士達の鎧に傷らしい傷や汚れがまるでないのもその証左といえよう。
「どーするジーちゃん? あーしはタケちゃんに賭けたいんだけどノドカナ村でお小遣い全部使っちゃったんだよね〜……。
あー、やっちゃった……」
「はあ……。だども賭け事はいけねえ事ですよ。オラの父さん方のご主人様も、それで田畑を手放したらしいだす」
「ありゃま……」
と、2人が会話に興じている中。
「参ったな〜。ドライちゃんに集中しすぎて賭けになんねえぜ」
賭けを締め切ったスタローンは手帳を確認しながらそうぼやいた。だが、ぼやくと言うには顔つきは余裕綽々だ。
「じゃあ幼馴染の誼であたしがケツを持ってやろうか?」
「おいおい勘弁してくれよ〜……」
折角の上がりを持っていかれては敵わないとスタローンは頭を掻きながら苦笑する。
するとそこにサヤと呼ばれた先の剣客少女がやってきた。手には金貨の袋を携えている。
「お? サヤちゃんも乗るかい? キミなら特別に今からでも受け付けるぜ」
「ありがとうございます。それでは……」
金貨の1枚か2枚でも遊びで賭けるのだろうと悠揚に構えていたスタローンであったが盆にどさり、と金貨特有の重量感溢れる音を立てて袋まるごと置かれた。
「サシウマでタケシ殿に全額」
「……いや〜……ごめんなサヤちゃん。サシウマはやってないんだわ。上限は100口。それでいいかい」
「では、それで」
ー
「貴方はどの様な武器を? 私はこれを使いますが……」
ドライが持ち出したのは先端に十字架の様なあしらいがされた十文字槍である。
【インフィニティ・プリズン】では見たことのない武器である。
(七大聖剣とやらとは違う武器か……? いや、槍だから剣じゃねえだろ!!)
タケシはセルフツッコミを入れつつ、とりあえず武器を用意した。用意したのはまさかの小盾であった。
「どういうおつもりですの? 噂の弓はどうしました?」
「いや……まあ……。模擬戦であんなの使えないでしょ。加減が効かないからあなたが死ぬよ? 普通に」
タケシの雰囲気が変わった。どうやら対戦になると人格が変わるタイプらしい。だからPVPを嫌っていたのかも知れない。PVPに於いて相手の精神攻撃は基本中の基本である。この模擬戦は道場試合でもスポーツでもないのだから。
「あら、自信家ですこと。我が爆雷の異名に相応しくその傲慢さ、私が砕いて差し上げますわ!!」
ツヴァイの合図を待たずしてまずはドライから仕掛けた。女豹の様な姿勢を取って槍を背負うかのように構えながらひゅう……と息吹を一つ。
(突進系のスキルを使うつもりか?)
【万理解析】のスキルを発動させるとタケシの瞳が金色に輝き、ドライの発動予定スキルを解析する。
(ライトニング・ショット? たしか光属性の初歩魔法だったか。いきなり大技かますフリをして崩しも入れてくるとは……戦い慣れしてやがんなあ)
空気が雷により膨れて弾ける轟音と共に雷光弾が数発、十文字槍の穂先からタケシめがけて飛んできた。威力はさほどでもない。相手への命中と行動阻害に特化させたものだ。
「キエェェェッ!!!」
ほぼ同時に、淑女のものとは思えない絶叫と共に四白眼となったドライが槍を突き出して飛びかかってくるかの様に突進してくる。
【魔獣跳躍】(ビースト・バウンド)と呼ばれる槍スキルの中でも破壊力に秀でたもので、使用者の敏捷性を大幅に上昇させるのみならず、相手に対し接触時に急所の有無にかかわらず大ダメージを与える。
「身内に使う技じゃねえな、ドライ・ルクレツィア。まあ……いい」
タケシは槍の先端を小盾にて滑らせる事で直撃を回避した。が、この一撃で終わるならば爆雷の異名を持つには至らない。
すぐに十文字槍の横薙ぎがタケシに振るわれたが屈む事で髪先にかするに留まった。
だが、そこで終わりではない。
タケシが頭を上げると同時、今度は浴びせ蹴りが振るわれた。しっかりと踵の足甲に雷光が宿っている。
「おっと」
まさにシャッ、と開かれるカーテンの様な俊敏なバックステップで回避しながら小盾をブーメランの要領で投擲する。
「甘いっ!!」
ドライは槍を巧みに使って小盾を弾き返そうとしたが、小盾の影に隠れたタケシの拳がドライの顎に寸止めされる。
パリッ、と拳と顎の間に静電気が走った。
「ほい。一本。オンラインの格ゲーなら二本先取が相場だが……まだやるかい?」
ドライの顔が屈辱と羞恥、憤怒でみるみる赤く染まった。
「このっ……! ドライ・ルクレツィアを甘く見るなっ!!」
ドライは乱れ突きを繰り出すが、その全てが空を切る。
(ほー……全ての軌道が解るだけでなくよけるやり方も解ると身体が自然に動く感じだ。相手だけがスローに見えるっていうか……バトル漫画でいうゾーンに入る
ってやつかね……)
「くそ……当たれえぇぇ!!」
「そうカッカするなよお嬢さん。文字通り、ワンショットライターになってるぜ? 息も上がっているしさては火力特化型ビルドだな?」
「ほざけえっ!!」
と、ドライは安い挑発に乗ってしまうまでに自分を見失っていた。初撃で仕留める自分の戦闘スタイルを初見で看破されたという焦りもあった。そのせいか上体のバランスが崩れた所に槍をカン、と弾かれた挙げ句に払い腰を見舞われた。
どざあっ、と土埃を上げて地面に叩きつけられたドライは文字通りに一敗地に塗れてしまった。
「くっ、う、うぅ……!!」
ドライは泣き喚くまではしなかったが悔し涙を浮かべていた。
「調子こいて悪かったな。こういうやり方じゃないとアンタに一撃を見舞われて押し切られたかもしれねえと思ったんでな。
あの【魔獣跳躍】を見た時な。正直ヒヤリとした」
手を差し伸べつつタケシはドライを褒めるような調子で彼女の武勇を褒めた。
するとドライの顔がまたしても真赤になる。それは羞恥によるものだが憤怒と恥辱によるものではなかった。
するとまだらながら拍手が巻き起こる。
賭けに負けた兵士達であったがドライを罵倒するのではなく互いの健闘を称え合うように乾いた音を鳴らしていた。
「……次は、負けませんわ」
「おう。いつでも来い」
そう言ってタケシとドライは握手を交わした。ツヴァイはうんうん、と満足そうに
笑みをたたえていた。
爽やかな空気が訓練場を包んでいたが、その中で一人のみ笑わずにいた者がいる。
誰あろう教皇フィアネスその人であった。