※この作品はR-18です。

【インフィニティ・プリズン】    作:ぷうち☆りん

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エロシーンがちょっと弱いと思ってるんすがね……。


外伝(3〜5話の間)

僕の名前はモーブタ。

まあ……覚えてもらう必要なんてないんですけど。

ドルクニフ様が指揮する第三魔導部隊に所属する一般兵士です。いや、でした……って言った方が正しいのかな?

今、僕らは地下ダンジョンに囚われています。

 

「これで全員か?」

「はい、デザイア様」

 

薄汚れた真っ黒なローブに身を包んだ男の人……?で、いいのかな? とてつもない怪物の姿だった筈のその人にドルクニフ様はひれ伏す様に頭を垂れて膝をついた。

ってあのカッコ……!?

外套の下はおっぱいにベルトの様なものを巻いて辛うじて乳首が隠れる程度、お臍は丸出しのハイレグアーマーという卑猥な格好をしている……!?

恥ずかしさや怒りに震える様子はまるでない。一体ドルクニフ様に何があったのだろう?

 

「わ、私達をどうするつもり!!」

 

僕の右隣で捕縛されていたフェレンさんがデザイアと呼ばれた男の人に食って掛かる。しかし彼は気にする素振りもない。

や、やっぱり食べられてしまうのだろうか!? それともモンスターのサンドバッグにされたり、魔法の実験台にされるのかも!! 不安と恐怖で体が小刻みに震えだす。

 

「それは君達次第だ」

「なんだと!?」

 

厳かかつ理性的な声でデザイアさんは言った。化物の姿になった時はもっと荒っぽい声をしていた様な気がする。

 

「まあ、そう荒ぶるな。開花のジュースでも飲んでリラックスしたまえ。バクシーシ、皆に例のものを」

 

虚空に向かって誰かに呼びかけると、ウサギ耳のあるサイドテールで燕尾服を着た女の人が浮かび上がった魔法陣から現れる。

この人も美人だなあ……おっぱいも大きいし……って何を考えているんだ。我ながら。

 

「はい。本来なら金貨1000枚は貰いたい所ですがデザイア様のプレゼントですからね」

「せ、せんまい!?」

 

 

10年位働いて漸く稼げる額じゃないか!!

この透き通る黄色っぽい液体にそんな価値が!?

 

「ふざけるなあっ!!」

 

部隊一番の力自慢であるゴリオが縄を解かれた一瞬の隙をついてデザイアさんを殴りつけた。だが……

 

「うっぎゃああ……!?」

「あれ? タケシ様って物理反射のパッシブスキル持っていました? ほら、邪魔だ」

 

砕けた拳を抑えながら悶えるゴリオをバクシーシと呼ばれたワーラビッドが石ころでも蹴るかの様に蹴り飛ばす。あんな細い足なのに凄いパワーだ……。

 

「いや、ないな。……恐らく防御力の差だろ。 バクシーシ、お前もなかなかゲーム脳だな。あと俺の名前をバラすな」

「防御力とか言っちゃうタケシ様には及びませんよ〜」

 

パッシブスキル? 防御力? ゲームノウ? デザイアさんは神様って言っていたから神の世界の言葉なのだろうか?

と、言うよりタケシ?ってなんだろう。

 

「貴様らは何者なのだ! ドルクニフ様にその様に低俗かつ卑猥な格好をさせて一体 何を企んでいるのだ!」

 

完全に切れてしまったフェレンさんが唾を飛ばして怒鳴りつける。凄い度胸だ……。

 

「そんな事よりその開花のジュースを飲んでくれます?まあ、トマトジュースになりてえと言うなら私がミキサーになってやっても構いませんが?」

 

え、笑顔が怖いっ!? このワーラビッド……! ええい、ままよ!

僕は意を決して開花のジュースを飲み干す。…………美味しい!! 爽やかな酸味とほんのりと甘い香りが鼻腔をくすぐる。

それになんだか力がたかまってくるようだ。これが開花のジュースとやらの効果なのか!!

 

「ふむ……。食事によってもこの世界の人間は成長するらしいな。ドルクニフのみが例外かと思っていたがそうでもないらしい」

 

デザイアさんはドルクニフ様を見やりながら呟く。

 

「ではこの者らもお導き下さいますか」

「それは彼等次第だな。君達、今の国は好きか?」

 

突拍子もない事を聞かれて僕は面食らった。考えた事もなかった。

僕達は王国で生まれて兵隊として働いてそのまま死ぬ。それが当たり前だとずっと思っていた。

 

「当たり前だ!私はシャヨーノ王国に忠誠を誓った……」

「嫌いです」

 

僕は自分でもビックリする位素直に答えていた。

 

「何故かね?えーと……」

「モーブタです。デザイア様」

 

開花のジュースによるもの……だろうか?いや、違う。僕はデザイア様に恐怖ではなく畏敬の念を感じている。まるで自分の魂までも見透かされている様な不思議な感覚……。

「お、おい!モーブタ!」

 

フェレンさんが僕の肩を掴んで揺さぶるが、僕の心は変わらない。

 

「では改めて問おう。モーブタ君」

 

肉塊と骨で構築された玉座を自ら生み出して、デザイア様はそこに座った。

僕の話を聞いてやろうというのだ。

何故か、嬉しかった。力あるものから生まれて初めてまともに相手をして貰えた気がした。

 

「はい。僕達は王国の奴隷です。生まれてきた意味も生きる理由もない存在です」

「……そこまで己を卑下する事もなかろう。王国の兵士とはそこまで惨めなものかね?」

 

ローブに包まれて顔は見えないがデザイア様の声と口調は優しかった。

まるで堰を切った様に僕は喋りだしていた。 戦功を挙げた僕らが派閥のせいで僻地に飛ばされたこと、いくらモンスターを討伐したところで聖騎士のおまけとして扱われ感謝もされない。報酬も僅かでかつなんだかんだ名目をつけて領主だの執政官だのに持っていかれてしまうこと。

他国との戦争になれば文字通りの捨て駒。

墓碑に名を刻まれることもなく、遺体すら残らない。そんな存在だったことを赤裸々に語った。

 

「貴様……見損なったぞ!この卑劣漢が!」

 

フェレンさん、いやフェレンがサーベルを抜いて僕の顎を切り裂こうとしたが……。

キィン!と高音を立ててデザイア様の玉座から伸びた触手の一本がサーベルを弾き飛ばした。

 

「あのですね。女兵士さん。ここではデザイア様への陳情は止めてはならないってルールなんですよ。それが例え愛の告白だろうとくっだらねえ自分語りだろうとなんだろうと……。殺されてぇかお前?なあ?」

「ひっ……!」

 

バクシーシ様がフェレンの前髪をぐいっと持ち上げて凄まじい凶相を見せて脅しをかけると彼女は竦み上がっていた。

その程度で竦み上がるなら初めから反抗しなければいいのに……。

 

「まあ、待て。我々の力を知らず、ついついものの弾みで剣を抜いてしまったのだろう。若い内は血気に逸るものだ。

それに……。開花のジュースによる軽い興奮状態もあったのではないかな?モーブタ君。君はどう思う?」

 

彼女を貶めればデザイア様の機嫌は一時は良くなるかもしれないが、そんな諂いものをこの御方が信任に値すると見做してくれるだろうか? これは僕へのデザイア様からの試練だ。ごくり、と喉を鳴らして僕は口を開いた。

 

「はい。開花のジュースには精神高揚効果があり、それ故の軽率な行動であったと思われます。僕がこんなに誰かに身の内を話した事がないのにデザイア様にここまで話してしまっているのは恐らくそのせいでしょう」

「だが、私による精神操作の可能性があるのではないかね? 確かこの世界には邪属性により精神操作魔法があると聞いた。君達が互いに憎み合い、殺し合う様をせせら笑い、酒の肴にする様に……とかね」

「それもありません」

「これはまた……断言するとは恐れ入った」

「はい。理由は3つあるからです」

「3つもあるのか……?」

 

デザイア様は吟遊詩人が謳う話を聞き入る酔客の様に促してくれた。でもこの喩えはデザイア様への不敬かもしれない。以後、控えよう。

 

「まず1つ目はデザイア様がその気になれば僕らがそうせざるを得ないようにするもっとうまいやり方をする筈です。例えばこの開花のジュースに周りが皆怪物に見える幻覚剤を混ぜるとか……」

「うわ……虫も殺さない顔してエグい事考えますね……。アンタが一番怪物じゃないんですかねぇ……」

 

バクシーシ様が若干引いていた。

しまった……少し喋りすぎてしまったか!? しかしデザイア様は悠然として話を聞く姿勢のままだった。

 

「それで2つ目は、今デザイア様が仰られていた『確かこの世界には邪属性により精神操作魔法があると聞いた』という言葉から解ります。聞いた、だけではいくらデザイア様でもその類の魔法を使用するのは難しいかと。

……ご無礼をお許し下さい」

「いや、構わんよ。それで、3つめは?」

「デザイア様がお優しい方だからです?」

「……ふむ? 私が何故優しいと?」 

「憚りながら、王侯貴族というものは僕ら平民を虫の様に見下し、無視するものです。ところがデザイア様は遠く、いやはるか未来を見ておられ僕らへ視線を下げる事

はせずとも無視することはありませんでした」

「……ふむ。なるほど。少し持ち上げられすぎて背中がむず痒くもあるが……殆どが君の見立てた通りだ。 大分切れ者の様だな、モーブタ君」

「あ、ありがとうございます!!」

 

褒められた! 生まれて初めて!! 僕は嬉しさで涙が溢れてきた。

 

「私はキミの様な賢いもの、或いは勇気あるものには敬意を払うし協力は惜しまない。優れたもののみ生き残れば良いなどとまでは言わないが前途ある若者の未来が閉ざされるのは忍びない。それで、だ。

君達の中に私に従うつもりのあるものはいるかね?」

 

ざわざわ、と周りがどよめくが僕の答えは決まっている。

 

「僕はデザイア様に従います!」

 

誰よりも早く声を上げるとフェレンが僕を再び揺さぶる。

 

「貴様、正気か!」

「僕は正気だよ。いや、狂っていると言われてもそれが何だ?」

「え」

 

デザイア様が若干驚いているかの様に見えたけれど、気の所為だ。

 

「ああ、念の為に断っておくが私の誘いを断ったからと言って殺すつもりなど毛頭ない。ただ、ここの記憶を消した後に王都に返ってもらう事になる。デスザウルス討伐の際に敵前逃亡を行った事による諭旨解雇という形でね」

「ユシカイコ?」

 

神の国のお言葉だろうか? 僕らにはデザイア様のおっしゃる事の意味がわからない。

 

「あの〜、タケシ様。王国兵士に諭旨解雇なんてありませんよ? フツーに処刑ですよ処刑。流石に平和ボケしすぎですよ」

「ま、マジか。流石中世ナーロッパ……。人権意識なんて欠片もねえな」

 

デザイア様はくだけた言葉遣いをしているがきっとストレスを解消するために道化芝居をしているのだろう。僕には解る。

 

「ん……!んん!要するにだ。私の部下になりたい奴だけ残れと言っている。

それで他には?」

「ほ、本当に?部下になれば殺さないんだな!?」

「そこは私を信用してほしいな。

まあ、即座に決断しろと言っても君達も困るだろう。一週間猶予を与える。

ゆっくりと考えてくれたまえ」

 

そして僕達第三魔導部隊100名はダンジョンの一角にて収容される事となった。

僕としてはすぐにでもデザイア様のお役に立ちたかったのだが、なお良く考えてから判断せよとのお言葉を頂いたので、ここは大人しく従う事にした。

 

ー

 

「これが収容所?」

 

8人部屋どころか個室が用意されているとは思わなかった。 兵舎どころか王都の別邸ばりに快適ではないか……。

 

「な、ワケないでしょ。アホなんですか?」

「ば、バクシーシ……さん!?」

「様をつけろよメカクレ野郎」

 

ピン、とおでこにしっぺを食らってしまった。腫れ上がりはしなかったがかなり痛い。

 

「す、すみません……バクシーシ様」

「判れば結構。それでアンタにはこれを読んでもらいます」

「魔導書……?これは一体?」 

 

僕が何故訝しんだかというと王都の図書館やアイテムショップでも見たことのない類のものだったからだ。赤と黒を基調とした表紙には禍々しい魔法陣が描かれていて、しかも背表紙には目と墓が合わさった様な禍々しい装飾が施されている。

 

「闇属性の書です」

「闇属性? 待って下さい。 この世界にそんな属性はありませんよ」

 

するとバクシーシ様はいかにも不機嫌そうに舌打ちする。

 

「チッ、わかんねえか? この世界にない魔法をこの世界のお前に使えるか確かめたいってデザイア様は考えてんだよ?」

「な、成程」

「ホントに解ってんの?」

 

顎をくい、と持ち上げられながらバクシーシ様に質問された。ワーラビッドだなんてとんでもない。実は兎の皮を被った地竜だと明かされても僕は驚かないだろう。

ともかく、魔導書の頁を開いてみる。

……何だか不思議な気分だ。

読めないのに中に書いてある事がはっきりイメージとして浮かび上がるのだ。

闇とは無ではない。黒とは無ではない。

万理万物と境を異なるものとしながらも、全てを飲み込み、包み込むもの。

 

「ああ……!ああ!そうか!そういうことなのか!……つまり光の反対は闇ではなく無であり、光すら飲み込んでしまうからこそ闇なのだという事なんですね」

「お、おう……目がキマってんぞお前……大丈夫か?」

「ああ、はい。大丈夫です。ありがとうございます、バクシーシ様……!?」

 

がくん、と僕は膝から崩れ落ちた。

副作用とかそういう類のものではない。

知識はあるけれど、それを使える力量(レベル)が今の僕にはまるで足りないのだ。

なんてことだ……。

新しい世界に行ける扉が眼の前にあるのに……筋力が足りなくってドアが開けられない様な惨めさに僕は涙が止まらなかった。

 

「うわ……マジかコイツ。泣いてるよ……」

「いけませんか!」

「いや……悪くはねえけど……。人間ってのはホント良くわかんねーですね……」

 

ポリポリ、とバクシーシ様は頭を掻く。

 

「まあ、アンタには適性があるって解っただけでも成果あり……って解っただけデザイア様もお喜びになるんじゃないですか?

知らんけど」

「はい……! ありがとうございます!!」

「うるせえよ……耳元で大声出すな。

私は耳が4つあるデザインなんだからな?」

「あ……すみません」

「ふん、謝りゃいいってもんでも無いが、まあいいさ。今日はもう休んどけよ」

「はいっ!!」

「いや、気合を入れて休むとかジョークのつもりか?笑えねェからな?」

 

僕は意気揚々とベッドに入り目を閉じた。

夢の中でもデザイア様のご活躍に僅かでも貢献できればいいなと思いながら……。

 

ー

 

「おい、朝だぞ。起きやがれメカクレ」

 

ゴン、とトーキックが僕の後頭部に突き刺さる。目から火花が飛び散った。

 

「ぐ、がぁ……! な、何をなさるのですか!?」

「ああん? テメエがいつまでも寝てっから起こしてやっただけだろが」

 

この人(?)こっちが素なのかなあ……?怖い人だ。

 

「じゃあ、顔洗って着替えてから飯食って修練所に行くぞ。オラッ、さっさとしやがれ」

 

なんだか新兵の頃を思い出してちょっとおかしかった。思えば笑ったのは何ヶ月ぶりだろうか? 僕は顔を洗い、身支度を整えた後に食堂へと向かう。

 

メニューはパンに肉のすり身を焼いたようなものと様々な野菜……それに血液のゼリーの様な何かを挟んだものだ。

これは、何だろう?

 

「まー、なんだ。プルータル様が作ったものだから有り難く食べろよ」

 

筋骨隆々な馬面……というか馬の獣人が僕らにそう言った。

 

「あの……」

「何だよ?言っておくがマズいとか思っても言うなよ? 独得な味ですねー、とか好みが別れる味ですねーとか言うんだぞ」

「ウソを言うとバレるからな。姐さんのパンチを食らったらお前ら人間なんてこれモンだぜ?」

 

隣りにいた牛の獣人が肉のすり身を指さした。

「あ、はい。わかりました」

 

僕は取り敢えず食事を口に運ぶことにした。…………うん、確かに美味しくはない。何というのかな……味が薄い。

 

「なんていうか……都会の味って感じですね」

「ほっほっほ、そうであろうそうであろう」

 

厨房の方からワフク……?だったかな?

そんな装いを着崩した美女が扇で口元を隠しながらやってきた。

 

「わえの料理は栄養満点、身体に染み渡るような滋養強壮効果もありんすえ。デザイア様を饗すのはわえが適任でありんしょう。のう小童」

 

上機嫌な彼女の背後から3体の死霊が現れるのが見えた。闇属性の魔導書を読んだからかな? それに昨日の開花のジュースと同じく力が上がっていくのがわかる。

けど、イメージの門を開くにはまだまだ遠いみたいだ。そんなに甘くはないよね……。

 

ー

 

そして僕は何故か他の兵士達とは別の場所に案内される。

 

「では参りましょうか。私はアークデーモン。階層守護者の方々にははるか力量及ばぬ故に固有の名を持たぬ身でありますがプルータル様が率いる外征部隊の経理、兵站の補佐を任されております。

以後、お見知り置きを」

 

光り輝く二本の角を除けば、貴族の令嬢と言われても疑う余地のない艷やかに腰まで伸びた水色の髪に青褪めた肌の肢体。その身に纏うのは赤黒いドレス。妖しく、それでいて美しく、見る者全てを魅了する様な美貌。だがそれよりも、その魔力の量はドルクニフ様をも容易く凌駕している事実に僕は驚愕する。

これ程力があるのに固有の名は持たないだなんて、プルータル様やバクシーシ様の御力は一体どれほどのものなんだろう……。

 

「デザイア様より貴方の事は伺っております。何なりと私に申し付け下さい」

「は、はい!宜しくお願いします」

「ふむ、やはり貴方には才能があるようです。あの高位の闇属性の書を読んで尚自我を保ち続けているのですから。少し妬けますね」

「申し訳ありません」

 

何故か詫びの言葉が口に出た。

それはそうだろう。数百年、いやもしかしたら数千年もデザイア様に仕えた自分達より僕の様な人間を贔屓する様な扱いをしているのだから。 天使が堕天したのもそんな経緯があっての事……なのだろうか?

 

「いえ、謝る事はございません。全てはデザイア様の御心のままに……」

 

彼女は僕に微笑みかけた。まるで聖母の様だと僕は思った。

 

「さて、早速鍛錬と参りましょう」

 

そうだ。ボーっとしている時間なんてない。人間である僕が皆さんに僅かでも追いつくには努力あるのみだ。

「はい!」

「まずは基礎体力の向上からですね」

 

ー

 

「それで……どうなっている?ドルクニフ」

「はい……♥」

 

デザイアは犬娘に扮したドルクニフに触手をじわじわと這わせながら尋ねた。

ドルクニフに嫌悪の表情はない。まるで薬物中毒者のように蕩けた目でデザイアを見返りつつ尻を振っている。デザイアの触手からは催淫作用のある粘液が大量に分泌されており、それを摂取し続ける限り快楽を与え続けるのだ。

 

「はい♥♥♥デザイア様に頂いた薬や階層守護者の皆様の鍛錬のおかげで部下達のレベルは飛躍的に向上しておりまぁす♥♥♥ んぶうっ♥♥♥」

 

口内に触手を突っ込まれてもなお、デザイアへの忠誠心は衰えない。寧ろそれすらも快感として享受していた。

 

「あぁあぁぁああっ!! ありがとうございますっ♥ ありがとうございますぅっ!!」

「しかし皮肉なものだな。努力が報われるのは現実よりもゲームの世界の方が顕著だとは。少なくとも無駄な努力……というものはまず存在しえない」

 

デザイアはそう呟きながら、冤罪を晴らすため奔走した日々を思い出した。

だが無駄だった。見ず知らずの他人はともかく、嘗てのギルドメンバーも彼を否定した。真実よりも自らに都合の良い願望混じりの醜聞に癒やしと愉悦をもとめる奴等ばかりだった。誰も彼の味方をしなかった。

 

(俺が誇りにしていたもの、信じていたもの。

それは全てゴミだった。 みんな、みんな、ゴミだった。いや……もう、過去の話だ。蠅が集るのは糞山と相場は決まっている……自覚はある。だから俺は正常だ。誰が何を言おうが正常なんだ)

 

臓腑を焼き焦がす様な憤怒を懸命に彼は鎮めていた。

 

「はいっ! このダンジョンは素晴らしいっ! これほどまでに効率よくレベルが上がる場所はありません! それに、デザイア様の寵愛を受けられる機会も多く……! デザイア様の愛を感じられますっ! あはっ! あぁっ! あぁぁあぁぁぁっ!!!」

「そうか……もっともっと、強くなるなり、賢くなるなり、あるいは繁栄なりをしてくれ。そうしてくれればいずれ……」

 

この世界全て『も』嫌になって全てを破壊する時の尖兵になるか、或いは生きている事自体が嫌になった時に自らを倒しうる存在に巡り会えるかもしれない。お前達が俺の理想郷を実現させてくれ。 人生(ゲーム)は詰まるところ不自由を楽しみ終わり方を探すものだから。

自他共に作動しうる復讐装置を納めた恩讐の箱庭(パンドラの箱)。その作成に今の彼は心血を注いでいた。

 

デザイアにはそういう狂気がある。




うらめし、うらめし(ぎゃふん)

ンフィーレアかと思ったらガンギマリになってるじゃねーか!
グレートナーガを瞬殺したのは蠅もたからない糞山にしてやるってNGワードを言ってしまったからなんですねー。
ほら、人って自覚のあるコンプレックスを指摘されると一番キレるでしょ。
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