エロシーンはどうしたエロシーンは。
話が進まないんだもん。
もしも、モモンさ〜んとタケシが会ったら。
ナーベ「何故貴方はその様な姿をしているのです?」
(交渉ロールファンブル)
アカンこれじゃ漆黒と聖騎士の全面戦争になるゥ!
「皆のもの、時が来た!」
ネズミですら顔を背ける腐敗臭に満ちた地下下水道に造られた悍ましい祭壇にて、その声は響き渡った。
「これより我らは『大命詩篇』を紡ぐ!
あの暴君ユーグレンが支配する王都を貧民より解放するのだ!」
声の主がそう宣言すると、その場にいる全員が歓喜の叫びを上げた。
人は正義の中にいたいのだ。
そして、声高らかに叫ぶ彼らの瞳には、確かに悪徳と圧政に苦しむ人々の姿が映っていた。この瞬間、彼らは正義の為に立ち上がった革命軍となったのだ。
「……同志よ。今一度問おう」
その男は静かに言った。
「我らの目的はなんだ?」
静かで落ち着いた声音だった。しかし、そこには有無を言わせぬ力強さがあった。
「誤りを糺すためだ!」
「そうだ!! 聖王の存在自体が間違っていたのだ!! あいつらは自分達の行いが正しいと信じて疑っていないんだぞ!? そんな傲慢な連中に何故世界を任せなければならない!」
「間違いを糺さなければならない!」
「我々は正しくなるために戦っているのだ!!」
彼の言葉を皮切りに、場にいる者達はそれぞれの主張をぶつけ合い始めた。
彼等の中で聖都を支配する聖王に弓を引くことに疑問などあり得なかった。何せ彼等が信じているのは正義であり、歴史ではないからだ。彼等は在ることよりも思う事に従う輩であったのだ。
「そうとも。故に我等は悪魔王ディーサイド様に乞い願う。 この偽りに満ちた世界を糺して頂き、本来あるべき世界に戻していただくために!! 故にこれよりこの王都で流される血は必要悪……いや、絶対不可侵な善なのだ!!」
彼等はこの瞬間、正義ではあるが善ではなくなった。
いかに公明正大であろうと、高潔であろうと無差別の犠牲を是とした時点でそれらはもう厄災と同一の存在である。
そんな彼等にディーサイド……もといデザイアが力を貸すはずなどはない。
だが、何もなりすます輩は電脳世界の住人ばかりではなかったらしい。
『良かろう。このディーサイドがお前達を新たな支配者として君臨させてくれようぞ』
おおーっ!! と忽ち歓声の声が上がる。
大山が鳴動したのかと誤認したネズミ達は皆、信徒達の足元から逃げ回るが気がつくものはいなかった。
先程まで熱を持って言い争っていた者達は一斉に手を上げて喜びを露わにする。まるで餌を求めて集る蟻のような光景であった。
ー
(は〜、これで漸く帰れる)
胸を撫で下ろす思いでタケシは安堵していた。 ドライ・ルクレツィアとの模擬戦を終え、タケシが修練所を出るとミカとジーベンが出迎えてくれた。
「流石タケちゃん! まじリスペクトじゃん!」
「お疲れ様でしただ」
「あ、うん。マァ……ネェ……ハハァ」
タケシはいつもの調子に戻っていた。
彼にとって他者とは『敵』か『敵じゃない』かのどちらかしかないからだ。味方は恐らく【頑迷孤籠】の階層守護者位のもの。
だから『敵じゃない』ものとの関わりには慎重になる。『味方』ではないのだから誤解されても理解されなくても何とも思わない。 少しは変化したがタケシはそういう男だった。
「いやー、お疲れさんタケシ君。
キミのおかげで一稼ぎさせてもらったよ」
次に労って来たのはスタローンとかいうツヴァイ・ルクレツィアの護衛聖騎士であった。じゃらじゃら、と銅貨の入った革袋を腰にぶら下げている辺り先の模擬戦の賭けの胴元になっていたのだろう。
と、言う事はタケシの実力をすぐに見抜いたという事になる。なかなかの食わせものらしい。
「そ、ソッスカ……ハハァ……」
「そんなワケで今日は俺の奢りでキミの歓迎会をやろうって話をしていたんだ」
(頼むからやめてくれ!)
と、言い出せないのは新参の哀しさであった。『敵じゃない』ものを自分から『敵』にする必要もない。人間不信を拗らせているがそうした利害関係の算盤はきっちり弾けるのがタケシの強みと言えた。
ー
そして開催された歓迎会の場所は以前にバクシーシと立ち寄ったレストランであった。
「それではジーベンちゃんの新たな護衛聖騎士になったタケシくんとジーベンちゃんの前途を祝してかんぱーい!」
「かんぱーい!!」
ミカ、ジーベンは未成年なので果実水であるが、他の面子はビールやワインで乾杯している。
「ぷはぁっ!やっぱり仕事の後はこれに限るぜぇ! 生き返るわぁ〜!」
「アンタ、今日は何の仕事もしてないだろうがこの宿六!」
スタローンのとぼけた言葉にツヴァイが辛辣なツッコミを入れていた。しかし宿六とかさながら倦怠期の夫婦みたいな会話ではあるまいか。
「所であなた」
「あ、あなたぁ!?」
突然声を掛けられたのと、ツヴァイとスタローンの下町夫婦じみた雰囲気にあてられたせいかついタケシは動じてしまう。
「……何をそんなに驚いているのか理解できないのだけれど」
「は、はあ、つい」
「なにがついなの?」
当に鬼嫁、もとい鬼詰めであった。
なお、アインは怒っているわけではない。
壊滅的にコミュニケーションを取るのが下手なのだ。
「そんな言い方はやめなってアインちゃん。 そういう時は『貴方のことをもっと知りたいの〜ん♥』とか言ってタケシ君の手でも握ってやりゃいいのさ。そうすりゃ大抵の男はイチコロってモンよ。あっはっは!」
「よしなって! 気持ち悪いんだよバカ!」
「……うむ」
わっはははは! と他の聖女や護衛聖騎士達が笑って場が盛り上がる度にタケシは疎外感を感じずにはいられなかった。
所詮どこでも異邦のもの。弾かれものの笑われ者。
深刻な認知の歪みによって生じたその負の感情の赴くままに『自分は正しい!』あるいは『俺は被害者なのだから何をやっても許されるんだ!』という独善と怨念を無差別に振りかざせる程他者の痛みに無頓着ならばどれだけ楽であっただろうか?
だが彼の精神はどこまでも繊細であり野の花を踏みにじる、或いはドライフラワーにして額縁に飾って愉悦に浸る様なものではなかったのだ。
「あなたのこと、もっと知りたいの」
「え、ええ〜……?」
そんなタケシにアインは問う。
しかし無表情な上に睨みつけるかの様な微動だにせぬ眼差し。その上棒読み。
しかし、嘘偽りはない。
「……知りたいのは?」
「ええ。貴方がどんな武器に適性があるのか、どんな魔術を使えてどんな戦法が得意なのか……。今後協働していくにあたってその情報の共有は必須よ」
((い、色気がない……硬い!!))
周りは気ぶるどころではなくアインの職業軍人さながらの徹底ぶりに呆れながら、ジーベンはほっ、と安堵する様な気持ちで眺めていた。そんな彼女を気ぶりとお節介焼きにおいては随一のミカが見逃す筈もない。
「ん? ん? んん〜? ジーちゃん? なんかホッとしてない?」
「そ、そったら事はねえっす! オラはただ、お二人がケンカしとるワケではねえって事が解って安心しただけでぇ……」
飲んでもいないのに顔を赤くしてあわあわと手を突き出すジーベンにミカはいよいよ勘づいた。
「ええー? ホントにござるかぁー?」
「ほ、ホントにホントだすって!!」
と、場が盛り上がっている中……。
「大変だあー!」と一般市民の格好をした男が慌てて駆け込んで来た。このタイミングで一体どうしたというのか? タケシは当然首を傾げるがそれは他の者達も同じであったようだ。
「ん〜? どうしたい? ヒック」
スタローンは酔いが回っているのかトロンとした瞳でその駆け込んできた市民を見やる。
「き、聞いてくれ! 街に悪魔が現れだしたんだ!」
顔面蒼白で息をせききって男はスタローンに訴えかけた。
隙を見てタケシは『万理解析』でその市民の状態を確認する。
しっかり状態異常・恐怖と表示されている辺り嘘ではないらしい。
「ふむ……」
スタローンは顎に手を当て2、3度擦ると胸ポケットから緑のポーションを取り出して一息に飲み干した。
「これとパーティで今日の稼ぎはトントンか……悪銭身につかずってな。タケシ君よ。悪いんだが今日の二次会はキャンセルになりそうだ」
「ですね」
昼行灯ながら夜を照らす役割は喪ってはいない。スタローンの顔つきはすっかり歴戦の聖騎士のものになっていた。
そして、タケシもその例外ではない。
人間は嫌いだが助けないとは言っていない。彼は自己矛盾を内包していたがそれでも彼は人間だったのだ。
ー
「ぬうぅん!!」
「どりゃあっ!」
その大岩に手足が生えた様な体格の聖騎士ガンケンとこれまた女性離れした体格のツヴァイが前衛を固め、悪魔たちを打ち砕いていく。ウォーハンマーとモーニングスター。無骨にして一際巨大な両手武器である筈のそれをガンケンは腕一本で、しかも器用に使いこなしている。
ツヴァイはというと、あの不動の大剣を軽々と振り回している。しかし曰く付きの武器であるから隙も硬直も大きい。
幾度か敵の反撃を貰うも自己再生の魔術で事なきを得ていた。
しかし傷は治っても体力や生命力は消耗する筈なのだがツヴァイにその様子はない。
人並み外れたタフさを有しているのかあるいはタレントかスキルのおかげかもしれない。いずれにせよ強力なコンビであることは間違いないようであった。
「据え膳食わぬはなんとやら……。さて、勝利のお膳立てと行こうか?」
そんな二人をサポートしているのは護衛聖騎士の一人であるスタローンだ。
飛刀を2人の隙間から悪魔達の弱点に軽々と的中させていく匠の技はタケシとしても目を見張るものがあった。しかし何より彼の凄いところはそんな細かい芸が出来ることのみではなかった。
「見えてるぜ!」
相手の魔法発動に対し飛刀から術式を声で発動させて阻害に成功している。
状況は限定されるもののこの強みはデザイアの【魔素支配】と比較してリチャージの必要がない。【インフィニティ・プリズン】の世界にはなかった技術や武技の存在にタケシは少なからず驚愕し、同時に興奮していた。戦いながらもタケシはその光景に見入ってしまう。そんな余裕を見せるくらいには戦況は安定していると言えた。
「やるう! スタローンおじさん! あーしも負けてらんないし!」
自分よりもはるかに大きな悪魔を相手取ってもミカは果敢に突っ込み、細身の双短剣を縦横無尽に振るってその悪魔の肉体を瞬く間に斬り裂いてしまう。それはタケシの目から見ても惚れぼれとする程の太刀筋であった。
そんな彼女に襲いかかろうとした悪魔であったがアインの【光楼牢覇】に阻まれる。
「どっせーい!!」
その【光楼牢覇】を双掌打にて即席の壁に変え、打ち込んだ後ですぐにその衝撃を用いて別の敵に突撃、強烈な連撃を放つ。これもタケシにとっては新鮮味のある光景だった。
彼はこの通り人間は嫌いだが人間の磨き上げた武技は好きという厄介な男なのだ。
「な、何なのだ貴様らは……」
「何って、聖女だけど?」
「まあ、人よりちょっと強いおっさんだよ」
たじろぐレッサーデーモンにツヴァイとスタローンが笑いかける。
悪魔にとって、人間とは単なる獲物であった筈なのにこの有り様は何だ。
世界には猫や雀もいれば虎や梟もいる。
それを知るには魔界はあまりにも狭すぎたらしい。
「で、ディーサイド様!?」
教団の教祖は眼の前の現実を受け入れられず狼狽するしかなかった。
何故、正義が負けるのか。あり得ない。
間違っている! こんな世界は間違っている! 間違いは糺されねば!!
彼は結局最後まで評論家であり、幕外の存在。世界から弾かれた蚊帳の外の生き物にしかなれなかった。
そんな彼が一縷の望みを託すのは一本の短剣であった。
「この命! 悪魔王ディーサイド様に捧げまする! 何卒! 何卒!! この間違った世界に裁きををををっ!!!」
心臓に自らその短剣を突き刺すと、男の体は塵となって消滅した。まるで最初からそこには何も無かったように……。
だが塵が魔法陣を形成した直後、魔法陣の中に炎が渦巻く巨大な門が現れる。
「タケちゃん! こっからが本番だし!」
「え? あ、ああ……」
タケシは困惑していた。悪魔王ディーサイド……それは自分の本来の姿であるデザイアの偽名(の様なもの)であるのだ。
それが何故現れるというのか。
まさか、自分以外にこの世界に転生したプレイヤーが動き出したのだろうか……。そう思い、タケシは周囲を見渡す。
「来るぞ! 構えよ!!」
「あいよ」
そんなタケシに構わず、ガンケンとツヴァイは身を引き締める。アインも当然の如く構えを取る。
そして現れたのは高位の悪魔である。
黄色い肌に6枚の翅を持ち両腕にカギ爪、蠍の尾を持つ大悪魔。
「これは……!?」
「我こそは悪魔王ディーサイド!
我が名の下に全ての王国の民に死を齎すものなり」
「……けんな」
アインが悪魔王ディーサイドの姿に訝しんでいるその傍らでタケシは震えていた。
そのタケシの表情は憤怒の悪魔と言われればそうだろうと誰もが納得してしまう程に歪んでおり見る者に恐怖を与えるだろう。
他の聖騎士からは死角になっていたためにアインからにしか見えなかったのは幸いであった。
(この顔が彼の一面だと言うの……?
これでは……まるで……!!)
聖王ではなく魔王の生まれ変わりではないか。とアインは錯覚しかける。
「ふざけるなあーっ!!」
「!?」
その刹那、タケシがあらん限りの大声で叫ぶと共に魔法陣が展開され、2人の姿は消えた。
「こ、これは……!?」
「奴さん。俺達一人一人を嬲り殺しにするのにどっかに転送させたのかもな……。
待ってなタケシ君」
スタローンが大凡の状況を掴むとがさごそ懐からマジックアイテムを取り出そうとするがアインの手がそれを阻んだ。
「アインちゃん。二次被害を恐れるのはわかるがそいつはあまりに酷ってモンだぜ?」
「その必要はないわ……彼は強いから」
その顔には信頼というより恐れの色が伺えた。何よりあの一瞬。タケシが怒りに支配されかけたあの時に感じた威圧感だけでアインはかつてない強さを感じていた。
なんで急にキレたんですか?
オバロでいうとこれ
ザコ悪魔「我が名はウルベルト。我が名において帝国民を皆殺しにする!」
そりゃモモンさ〜んとヤルダバオトはブチギレですよ。
夢のタッグ成立ですよ。