言うほど入っているか?
あれから一週間、僕は闇魔法を習熟しながらアークデーモン様のもとで修行に励んでいた。基礎体力作りは終わり、アークデーモン様からの実戦的な訓練に励んでいる。
「はっ!!」
アークデーモン様は手首から闇の靄で出来た鞭剣にて僕に刃を振るう。
明らかに手加減してくれている筈なのだが……速さも軌道の変化も僕の想像を遥かに超えている。
僕はその鞭剣を必死に避けながら、反撃の隙を伺う。しかし、そんな余裕などある筈もなく、アークデーモン様の鞭剣は僕の首を狙ってくる。
「どうしました? 逃げてばかりでは勝てるものも勝てませんよ」
「くっ……!」
僕は即座に身を屈めてアークデーモン様の鞭剣の一撃を躱すと、その体勢から闇の刃を放つ。
だが……。
「【抵抗】(レジスト)」
彼女は詠唱もなく魔法を発動させる。
パリン! と闇の刃はアークデーモン様の肌に届くことなく、空中に壁に叩きつけられたガラス瓶の様に容易く打ち砕かれてしまう。彼女には基礎魔術に於いて溜めが必要ない。これが上位種の力なのか……!?
そこにシュルっと鞭剣が巻き付き……。
僕の視界がぐるん、と周り真赤に染まる。
ー
「はっ!?」
「はっ!? じゃねーよ!」
治療室で目覚めた僕の後頭部にバクシーシ様からの強力なトーキックが目覚まし代わりに炸裂した。凄く痛い……。
「お前なあ、いい加減やられ過ぎだ!
治療する私の身にもなれよ」
「はい……」
バクシーシ様のお怒りも最もで僕は我が身の情けなさに項垂れる。
「で、どうなんだ? デザイア様に仕えるって結論でいいのか?」
「はい! それは勿論です!! けど……」
「けど? 何だよ?」
こんな実力もない僕をデザイア様が採用してくださるだろうか……。寧ろアンデッドになった方がデザイア様のお役に立てるのではないか、という不安が頭をもたげる。
「まさかお前、デザイア様にアンデッドにしてくれ、だなんて抜かすつもりじゃねえだろうな? オイ?」
「ど、どうしてそれを!?」
僕は思わずギョッ、とバクシーシ様の顔を見る。バクシーシ様は呆れ果てた様な眼差しで僕を見ていた。
「あのなあ。デザイア様はお前らに即戦力なんか求めていねえし、況してモルモットにして楽しむ様な趣味もねえんだよ」
「そ、それは……?」
一体どういう事なのか、と僕はバクシーシ様の言葉を待つ。
「あの御方はな、お前らを『人間』として扱いたいんだよ。自然湧きする様な駒(モンスター)じゃなくてな」
「人間……」
皮肉なものだ。生まれてから権力者の理屈や都合に翻弄される駒でしかなかった僕をデザイア様は一個の人格を持つ『人間』として扱ってくださると言うのだから。
「僕はデザイア様のご期待に応えられるでしょうか……」
「お前の事情なんて知るか。お前はお前のやりたい様にしろ。あの御方に気に入られるかどうかはお前のこれから次第だ」
「分かりました。もう一度、アークデーモン様との鍛錬の許可を願います!」
「イヤだって言ってもそうさせるつもりだったよ。あとな、良いことを一つ教えてやる。お前の今の顔つき、メカクレだった時とは別人だぜ。壁を越えようとするヤツ、越えようともしなかったヤツ。
舞台に上がろうとするヤツと下りようとするヤツとじゃあ話もできねえ位に差がついちまうモンなのさ」
そうだ! 僕はまだ舞台に上がってすらいないのにへこたれているヒマなんて今の僕にはない! バクシーシの言葉はトーキックよりも腑抜けていた僕の頭をシャッキリと目覚めました。
「ありがとうございます!」
僕は治療室のベッドから飛び降りると、そのままの足でアークデーモン様の元へ駆けた。
「また来たんですか? 懲りませんね」
「はい! もう一本お願いします!」
「……全く打てば響くような小気味よい返事をする人ですね。貴方は」
アークデーモン様は呆れた様な、でもどこか楽しそうな表情で僕を迎えてくれる。その笑みは僕を一人前の戦士として認めて下さっている証の様に感じられた。
ー
そして翌日。
ドルクニフ様の部下だった100人の内90人程が集められた。
ボロボロなのは僕を含めて3人位だった。
フェレンさんやゴリオに傷らしい傷もなく、僕は自分の弱さに打ちひしがれる。しかし今更落ち込んでいるヒマもない。僕は胸を張って堂々とこの場にいるべきなのだ。
「カーネイジよ。10人ばかり足りないようだが……」
デザイア様は少し不機嫌そうだった。
それもそうだ。デザイア様の偉大さも慈悲深さも理解できないだなんて……。何と愚か者たちなのだろうか。
「はい……このまま虜囚の辱めを受ける位ならばと自ら命を絶った様です」
「愚か者めがぁっ!!」
カーネイジ様が淡々と告げた次の瞬間、デザイア様は怒気を顕にした。空気が振動し、まるで身体が鉛になってしまったかの様に重くなる。
「はっ!? はっ!? はっ!?」
僕はまるで心臓を誰かに掴まれたかの様に息苦しくなり……何とか堪えようとしたのだけれど……。そのまま床に崩れ落ちる。
「む……。すまなかったな君達」
デザイア様はすぐに僕ら全員範囲回復魔法を施してくださると呼吸が楽になり、身体の重さも取れる。僕らは慌てて立ち上がる。
「カーネイジよ。その者らの遺骸はあるのか?」
「はい、念の為とオチムシャが保存しております。我が不手際をお許し下さい」
「いや、私の方こそ声を荒げて悪かった」
ともかく、カーネイジ様の命によりその遺体の悉くが集められる。
一体どうするのだろう……?
と、僕が固唾を飲んでいるとまさに神の奇跡
が目の当たりにされる。
「【完全蘇生】(ファビュラス・リザレクション)」
デザイア様は指先に光を集める様に手を翳すと遺体の群れに向けて光球を放った。
光が消えた後には何事もなかったかの様に生き返った元兵士達の姿があった。
「……」
唖然として言葉が出ない僕の隣でゴリオやフェレンさんも目を丸くしている。他の兵士達も同じ様な表情をしている。
僕らは死後数日経った者を一人で、それも即座に蘇らせるという伝説級の奇跡をこの目で見たのだ!
「自ら死を選ぶとは何事だ。貴様達には家族や子供はいないのか」
「お、おります……」
しかも聖王教会の蘇生と違い、すぐに喋れる位に生命力が回復している。恐る恐ると質問に答える壮年の兵士の額から一筋の汗が流れ落ちた。
「ならばその家族は悲しむのではないのか。それともお前達は自分が死んでも誰も悲しむ者はいないとでも思っているのか?」
「う、うぅぅ……」
デザイア様の言葉には深い慈愛と強い憤りが混ざり合っていた。彼の言葉は僕の胸をも締め付けた。僕にはもう誰も残っていないから悲しむ人がいないのだけれど……でも誰も悲しまないなんて事はない筈だ。
「本来ならば許し難い事だが、貴様の家族に免じて許す。 王国から脱走兵として追われるのが恐ろしいのならば幾ら路銀をくれてやる。それで家族ともどもノドカナ村に落ち延びるがいいだろう」
と言ってデザイア様は亜空間に触手を突っ込むと金貨入りの袋を兵士の前にどさりとおく。恐らく100枚以上は入っている。
僕ら兵士の給料1年分位の額だ。
「あ、ありがとうございます!」
「さて、他に辞退したいものはいるかな? 気後れや躊躇はしなくともよい。神に誓って私は報復などせぬよ」
デザイア様の言葉に僕の背筋がゾクゾクする。こんな凄い力を持った方なのに何て器の大きい御方なのだろう……。
お仕えできるかどうかはまだわからないのに僕の胸に熱いものが込み上げてくる。
「……実は婚約者が」
「ふむ、家庭を持つのは大事だからな」
「……実は冒険者になりたくて」
「未知の探求か。素晴らしい事ではないか。ギルドに何名か知り合いはいる。紹介状を書いておこう」
「……ワシは畑を耕す位しか取り柄がないので」
「そうか。ならばノドカナ村で畑を持つといい。秋になったら君の畑を見に行くのを楽しみにしているよ」
「……自分は商いがやりたくて」
「ほほう。君は今、麦はどこが安いか知っているのか。この通り家は大所帯でね。是非この辺りの相場をご教授願いたい」
……なんて方だ! 僕らの志望や事情を全て肯定してその上で解放してくださるのだ。僕の生きる目的が今、はっきり見えた!
樹海が開け、木々の間から朝日が差し込む様な眩しさに僕は目もくらむ思いだった。
「それで、モーブタ君だったね。君は?」
デザイア様の問に僕の答えなど決まりきっていた。
ー
「残ったのは10名程か」
……なんて奴等だ。話にならない。
こんなにも仕えがいのあるデザイア様を前にしてたかが人間ではないという理由だけで断るだなんて……!!
「騙されないで皆! この男は私達を解放すると言って始末するに決まっているわ!」
「そこは私を信用してくれとしか言えないな」
とんだフェレンさん、いやフェレンの言いがかりに対してデザイア様はあやす様に優しく言葉をかける。
「できるものか! この魔族め!」
とゴリオも叫ぶ。何なんだ! こいつらは! デザイア様の温情が分からないのか?
「ならば聞かせてもらいたいが、君達を虐げる国王はどうだ?
我が身と親族のみを第一とし、民を虐げ、苛政を敷き、拡大路線による過度な外征で国庫を圧迫し、重税と兵役を課す。
ニホン……おっと、この世界ではそういった存在は魔族と呼ぶのではないかね?」
「ううっ……」
デザイア様の正論の前にフェレンは唸る。そして今度はゴリオが反論する。
「俺達人間の歴史で魔族が何か良いことをしたことがあるのかよ!?」
「ふむ、人間の歴史において魔族がしてきたことといえば悪事が殆どだな」
デザイア様はゴリオの言い分を素直に認めた。思わず僕が差し出がましくも弁護しようとしたがデザイア様の側を固めるバクシーシ様に目で静止させられた。僕は歯がゆい気持ちで事の推移を見守った。
「お前達魔族が人間を蔑んできたのがそもそもの問題じゃないのか!? 魔族の理屈なんて俺達には分からないよ!」
ゴリオは吠える。しかし、デザイア様は動じなかった。まるで彼の中にある蟠りと呪詛を祓うシャーマンの様にじっと耳を傾けていた。
「ああ、それも事実だな。しかしその反対も然り。君達は魔族を蔑んできた。その罪は互いが互いに背負っている。お互いに拳を握り固めてばかりでは手を繋ぎ合う事は永遠にかなわないぞ?」
「う、ううぅ……うおぉぉぉ……!!」
ゴリオは四つん這いになりながら咽び泣いた。フェレンも呆然としている。その様子を見て僕は胸が痛んだ。彼らもまた苦しんできたのだろう。しかし、それをデザイア様へ矛先を向けるのは違う……。
しかしデザイア様の温情は遂にゴリオの頑なな心を包みこんだ様だ。
「おれ……、俺みたいなヤツでも……お役に立てますか?」
「勿論だとも」
デザイア様は玉座から立ち上がるとゴリオの肩と手を取ってポンポン、と背中を優しく叩いた。ゴリオはおいおいと泣き続けていた。まるで生まれたての赤ん坊の様に。
「ど、どうかしているわ! モーブタ! ゴリオ! 貴方達は騙されているのよ!! 利用されて捨てられると言うのが何故解らないの! おかしいわ!」
フェレンの喚き散らす様な怒鳴り声に僕は憐れみを覚える。変わろうとしないもの、救われようとしないもの、救おうとしないものは例えデザイア様でも救う事はできないのだ。
「おかしいのは君だよ。フェレン」
「な、何ですって!? 王国で将来を期待をされ、聖騎士見習いまでに至った私がおかしいというの!? 私はお前とはステージが違うのよ! 取り消しなさい!」
ああ、バクシーシ様が仰っていた言葉の意味が今なら良く解る。
『壁を越えようとするヤツ、越えようともしなかったヤツ。舞台に上がろうとするヤツと下ろうとするヤツとじゃあ話もできねえ位に差がついちまうモンなのさ』
フェレンは変わろうとしていない。それどころか変わろうとしている僕やゴリオを敵視してくる。そんなフェレンを哀れに思い、僕は声をかけた。
「フェレン。君はもう少し素直になるべきだ。君の考え方は間違っている」
「うるさいわね! 私は間違ってなんかいないわ!!」
「……デザイア様。どうかフェレンと一騎打ちの機会をお与え下さい」
僕はデザイア様へと嘆願した。僕の言葉に驚きを見せたデザイア様は僕に向き直る。
「いいんですかデザイア様? こんなアホ女さっさと始末した方がいいと思うんですけどね。シュラやメガデス辺りに引き渡します?」
「……バクシーシ。私への陳情を止めてはならぬと言ったのは他ならぬお前ではないか。幕僚とはいえ朝令暮改を是とする様な振る舞いは慎め」
「は、はいっ」
ギラリ、とローブに隠された顔から眼光が凶星の様に輝き、バクシーシ様は慌てた様に口を噤む。その様子にフェレンもゴリオも呆気に取られていた。
「モーブタよ。君がフェレンの間違いを正してやりたい気持ちは分かる。しかし、フェレン自身が変わろうとせねば意味がない。本当にそれが可能だと思うのか?」
デザイア様の言葉に僕は力強く頷いた。
「はい、可能です。フェレンは強い。ですが彼女は自分の力を過信しています。僕なら彼女の驕りを打ち砕くことが出来るでしょう。そして彼女自身も変わることができるはずです」
「宜しい。いの一番に私への忠義を向けてくれた君の陳情を無碍にはできん。しかし、この勝負。少々不公平ではないか?」
「不公平……ですか?」
確かに。僕はデザイア様より異世界に伝わるという闇の魔術に関する叡智を与えられ、みっちりとアークデーモン様からの訓練を受けた。訓練前の僕とフェレンの差は歴然としていたが今の僕とフェレンの実力に開きはない……筈だ。
ー
そして僕らは今『頑迷孤籠』の地下9層の訓練場にて一騎打ちをする事になった。
フェレンの手には光り輝く聖剣が握られている。
「バカだバカだ……とは思っていたけれどここまでバカだとは思っていなかったわ。
わざわざ自分から勝てる機会を捨てるだなんて」
「……」
今の彼女は力に呑まれている。恐らくデザイア様から貸し与えられたあの剣の力を自分の力だと錯覚してしまっている。
「女、いや、フェレンと言ったか。
戦士の決闘の前にその様な無作法は目に余る。慎め」
審判を勤めてくださる『武神』シュラ様はフェレンに対して厳しい目線を向ける。その水も滴る様な美丈夫ぶりに反してその禁欲的で修験者めいた雰囲気は見るものを圧倒させる。その姿はまさに『武神』の名にふさわしい佇まいだった。
「五月蝿いわね! 魔族風情が騎士の真似事なんてするんじゃないわよ!」
しかし、フェレンの態度は変わらなかった。シュラ様は目を閉じ、何も言わなかった。
「さあ……始めるわよ。断っておくけど魔族についた裏切り者を殺しても罰する法は王国にはないのよ?」
酷薄な笑みを浮かべて彼女はレイダーエッジを構える。もう勝ったつもりになっている……。彼女はこんな女だったか? いや……本性が露わになっただけなのか?
「では……始め!」
シュラ様が開始の合図を告げると同時に僕はフェレンから距離を取る。
「死ねっ!!」
まるで女魔……と言ったらアークデーモン様に失礼だな。怪物そのままの表情でフェレンが跳躍した。その右手にあるのはレイダーエッジ。斬り伏せた者の生命と保持するアイテムを奪う初撃必殺の凶器である。
……だが、遅い上に斬撃の軌道は単純。
アークデーモン様の鞭剣が巣を守る雀蜂ならさながらフェレンの斬撃は餌を運ぶ黒蟻の様だ。
フェレンの斬撃を躱すのは容易だった。彼女はレイダーエッジの力、自分の力を過信し過ぎその目は濁り、秤の機能を失っていたのだ。僕は彼女の脇を抜けながら一閃する。闇の刃が彼女の膝に突き刺さりバランスを崩して倒れる。
我ながら呆気ない位に勝負はついた。
「いいぞー! モーブタ!!」
ゴリオが僕に声援を送ってくれるだなんて夢にも思わなかった。
変わろうと思えば人は変われるんだ。僕はそれをゴリオが体現している様に感じた。
そして僕自身も……。
「く……。くそ! こんな事があってたまるか……!」
「そこまでだ! この一騎打ち、モーブタの勝ちとする!!」
シュラ様の宣言を受けて観客席側は歓声を上げる。こんなに誰かから評価されたのは初めて思わず僕は皆に頭を下げた。
と言っても今までの理不尽から目を背けたり目をそらすためのものではない。純粋に誰かに感謝を表したいと思ったからだ。
(あ……有り得ない……! 私は選ばれた人間なんだ……! こんな魔族の使い走りに負けるなんて絶対に認めないわ!)
その時の僕はフェレンからの殺気に気づけなかった。そう、ルールを定めるのが人間ならばルールを破るのも人間なのだ。
ドスッ! と脇腹をレイダーエッジが刺し貫くと僕は地面へ叩きつけられる。
「うぐっ!」
(こんな……こんな……こんなところで……!)
身体を捻ってレイダーエッジから逃れようとするが痛みは和らがない。僕は口から血を吐き出した。
「フェレン! 貴様あっ!!」
ゴリオが怒りを露わにしながら駆け寄ってくるのが見える。僕は手をかざしてゴリオを押しとどめようとするが腕が動かない。
そして……。
ー
「……はっ!」
「はっ! じゃねーよ! 何回私に手間をかけさせりゃ気が済むんだバカタレ!」
ガンッ! とまたしても目覚めるや否や後頭部にトーキックを食らって僕は目覚めた。少し痛い。
「あいたたた……」
「たくっ、デザイア様もこんなバカヤローに【完全蘇生】なんか使う事はねーのになあ……」
バクシーシ様は呆れた様に肩をすくめ、アークデーモン様は困った様な顔をしていた。
「全く、私が鍛えたと胸を張った矢先にあの始末。デザイア様の前でとんだ大恥を晒してしまいましたよ……」
「す、すみません……」
僕は申し訳なさと油断してしまった自らの不甲斐なさに涙を堪えるのに必死だった。
「全くなあ。コイツときたら『どうか! どうかモーブタをお救い下さい! 我が身と引き換えにして下さろうとも構いません!』ってラブコメみてーにデザイア様に縋って泣きついたんだぞ? 見てるこっちが恥ずかしかったぜ」
バクシーシ様の言葉にアークデーモン様が頬を赤らめて俯く。
(え、ええ……!? あ、アークデーモン様の様な方が僕なんかのために!?)
嬉しさを通り越して驚くよりなかった。
「まあ、いいや。モーブタ。お前は明日からウマーマンの下でアークデーモン共々獣人国行き荷馬隊の護衛として働く事になったからな? 周りには愛想良くしろよ」
「は、はいっ」
僕は返事をするや否やバクシーシ様は治療室から出て行った。
アークデーモン様と僕の二人が治療室に残されて少し気まずい空気が流れる。
「あの……本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「……いえ……。いえいえ」
僕が謝るとアークデーモン様は何か言い淀んでいるようだった。
「あの、本当に申し訳ありませんでした。ご迷惑をおかけしてしまって」
「いや……本当に……謝罪しなければならないのはこちらの方です」
「えっ……?」
アークデーモン様が何故そんな事を言うのか僕には理解できなかった。
「君がフェレンとの勝負に勝つ事は想定できていました。しかし……フェレンがルールを破ることまでは想定できていなかった……」
「いえ、僕の方こそ迂闊でした。フェレンがそんな事をするなんて……」
何だかお互いに謝って変な気分だ。
「では、そろそろ始めましょうか」
「え?」
一体何を、かと思う間もなく僕の唇とアークデーモン様の唇は重なり合った。舌先から甘い蜜のような味が口の中に広がっていく。その味はデザイア様に頂いた闇の魔術とは違った甘美な味わいだ。
「デザイア様の御力で今の貴方は生命力が過剰な状態にありますから……発散する必要があるのですよ♥」
「は、発散……」
その言葉の意味が解らない程僕は子供ではない。文字通りに悪魔の誘惑であった。
「あ、あの……」
「ご迷惑でしたか?」
「い、いえっ!? そうではなく……!
僕はその……」
かあっ、と顔が熱くなる。アークデーモン様は僕の様子を窺うと妖しくも淫らな笑みを浮かべて僕の頬を撫でる。
ドレスをするり、と脱皮するかの様に脱ぐと青い肌が露わになる。不気味だとは露ほどにも思わなかった。むしろその瑞々しい肌は吸い付く様で僕は思わず見惚れてしまった。そして果実さながらにみずみずしく、大きく実った乳房に、名剣の束のようにくびれた腰のラインから豊かな臀部にかけての曲線美は完璧に近い女性美を体現していると言っても過言ではなかった。
「お気に召しましたか♥」
そう言って微笑むアークデーモン様の姿はまるで女神のようだった。僕は恥ずかしさと興奮で頭がどうにかなりそうだった。心臓の音が聞こえてきそうなほどドキドキしている。今すぐにでも彼女の身体を貪りたい欲求にかられるが堪える。
「あ……あの……僕はまだ童貞なものでして……」
「うふふ♥光栄です♥では私が女魔との交わり方を教えてあげます♥♥♥」
ぞくぞくとする艶めかしい声色に僕は身体が震える。アークデーモン様の舌先が僕の耳をくすぐると、背筋がぞくりとする。それは決して不快なものではなく甘く痺れる様なものだった。
僕は矢も盾もたまらず彼女になだれ込むと抱きしめた。僕は初めて感じる女の柔らかさを味わう様に貪った。この行為がどれだけ愚かなものであるかなど知った事ではなかった。ただただ彼女と一つになりたいという思いだけが募っていく。
「んんっ♥♥♥」
「あ、アークデーモン様……!」
「アークと呼んで下さいな♥僭称ではありますが二人きりの時ならばお咎めもなしでしょう♥」
僕は彼女の胸に顔を埋めながらその果実にむしゃぶりつく。柔らかな膨らみに顔をうずめ、舌を這わせた。彼女の甘い吐息が耳をくすぐる。そして僕は夢中で乳首を吸い上げるとアーク様は嬉しそうな声で喘いでくれた。
「んぅ♥♥♥ ああ♥♥♥ もうこんなに……♥♥♥」
くちゅ……♥と湿った音と共に彼女の太腿を愛液が滴り落ちていく。彼女も僕との行為に興奮しているという事実が僕の理性を吹き飛ばしていく。
そして僕は彼女の蜜壺へと自らの愚息を突き刺した。荒々しく彼女を貪りたくなる衝動を抑えてゆっくりと優しく愛おしむ様に彼女を揺らすと彼女は甘い声で応えてくれる。
「はあ……♥あっ♥んあっ♥お上手ですよ……♥♥♥モーブタ♥♥♥」
「あ、アークさんっ!!」
僕は堪らず彼女に抱き着いた。彼女の柔らかい肌が僕の身体に吸い付いてくる。汗ばんだ肌同士が擦れる感覚が心地よい。僕は夢中になって彼女の唇を奪うとそのまま彼女を犯す様に腰を振り続けた。
「あっ♥♥♥ ああっ♥ あたるっ♥♥♥
わたしのっ♥♥♥ おなかのおくっ♥♥♥
あなたのがっ♥♥♥ あたるうぅ♥♥♥」
シーツを掴んで腰を僅かに浮かせた彼女に、ウェーブがかったロングヘアが汗塗れの肌に絡んでいく。ぷるん♥ぷるん♥と弾む胸はさながらメトロノームさながらのタイミングで僕の欲情を掻き立てる。
自然と腰の動きは加速する。彼女が喘ぐ度に僕は彼女をもっと鳴かせてやりたい衝動に駆られた。そして彼女の腰が震えると同時に彼女の奥で僕は白濁液を吐き出した。
「あああああっ♥♥♥ い、いくっ♥♥♥
弟子チンポで♥ イクうぅ──っ♥♥♥」
ぶるり♥♥♥と身体を震わせて達した彼女を抱きしめながら僕は余韻に浸った。彼女の甘い香りが鼻腔を刺激する。彼女の身体はまるで生き物のように僕の身体に絡みついてくる。僕は彼女の中から引き抜くと彼女は物足りなさげな表情で僕を見つめた。
「あ、あの……。アークさん……」
「はい♥♥♥」
「き、今日はどうもありがとうございます」
「こちらこそ♥♥♥ また発散して差し上げますから♥♥♥」
アークさんの言葉に、吐き出したばかりなのに僕の下半身が熱を持つ。まだまだ僕達の夜は続くのだ。
ー
『ああっ♥♥♥モーブタ♥♥♥いいっ♥♥♥』
『あ、アークさんっ!! また……っ!!』
二人の師弟、いや男女が交わり合う様が邪神の褥にある映像装置に映し出されている。
「お、おおっ♥♥♥ またっ♥♥♥
アイツ♥♥♥ サルみたいにアークデーモン相手に腰を振って♥♥♥ ひゃあああっ♥♥♥」
デザイアが人化したアバターのタケシに背を向けながらバクシーシは自ら跨り腰を振り続けている。
「し、師匠相手に盛りやがって♥♥♥
恩をアダならぬチンポでっ♥♥♥返すとは♥♥♥ ひっ♥♥♥ ひい〜っ♥♥♥」
タケシの剛直で貫かれるバクシーシの腹は彼のペニスの形が浮き出る程だ。
「そういうお前は、主のチンポをバイブ代わりにして身内のハメライブで盛っているけどな……」
半ば呆れ気味だが興奮していないかと言えばそうではなく、まるで大蛇がのたうつかの如くに彼のペニスを飲み込むバクシーシの秘部と揺れ動く臀部が猥褻極まりなく、タケシを興奮させた。
「あひっ♥ もしかして嫉妬ですかあ♥
ちっちゃ♥♥♥ デザイアの時は大物ムーブしときながらっ♥♥♥ タケシになったらチンポ以外は小物まるだしっ♥
ざあこ♥ざあこ♥ざこマインド♥♥♥」
月見て跳ねる兎の様に映し出されるモーブタとアークの痴態に合わせて跳ねるバクシーシはタケシに挑発的な言葉を投げかける。
「好き放題に言ってくれるなあ。じゃあ、ザコマインドの鍛錬としてたっぷり付き合ってもらうとするか」
「ああ♥♥♥ そ、そうですね♥♥♥ じゃあ♥♥♥ ご主人さま♥♥♥ わらひのお腹に♥♥♥ せーえき♥♥♥ いっぱい♥♥♥ らしてくらひゃい♥♥♥」
そう言いながらバクシーシはタケシの精を求める。タケシは彼女の言葉に応える様に彼女に激しく突き刺した。
ばじゅん♥と結合部から汗と愛液の混じった飛沫が跳ねる音が響く。腰を振り乱す二人の結合部は愛液と精液が混じり合い白く泡立っていた。
「おおっ……! 締まる……!!」
「んひいっ♥♥♥ イグッ♥♥♥ タケシ様の♥♥♥ ザコマインドちんぽ♥♥♥ でも♥♥♥ あらひ♥♥♥ イク♥♥♥ イック♥♥♥♥♥♥おおおーっ♥♥♥」
ぷしゃあ♥♥♥と潮を吹きながらバクシーシは絶頂を迎えた。タケシも同時に果て彼女の胎内へ大量に射精する。
「ふう……。 まあ何だ。あいつらに目溢しするのはこの世界の人間と悪魔の間で子供が出来るかの実験の一環だ」
「はーっ♥ はーっ♥ お、おぉう♥
いきなり……賢者モードになられてもお♥♥♥ コメントに困るんですけどぉ♥♥♥」
ぐるん♥と身を捩じらせてバクシーシはタケシによりかかり彼の胸板に頬ずりする。タケシは彼女の頭を撫でるとバクシーシはうっとりとした表情を浮かべた。
「まーたまた♥♥♥ お優しいですね♥♥♥
私達のことを♥♥♥ 大切に思って下さっているんですよね♥♥♥」
タケシの胸に顔をうずめて甘えるバクシーシの姿はまるで子兎のように愛らしかった。
ー
そして時同じ頃。
「では、我々はこれにて。夜道ですが今宵は満月ですからカンテラの必要はありませんわよね。1時間ほど歩けばノドカナ村に出るでしょう」
地上に転送されたフェレンに中華の道士服を纏うお団子頭の少女、イモータルが扇で口元を隠しながら、視線を合わせることすら汚らわしいという風な視線を向けながら去っていった。治癒はしてやったのだから貴様の様な人でなしには十分だろう。とでも言わんばかりの態度であった。
(下等な魔族が……! けれど座標は記憶できた)
フェレンは内心で毒づく。あの忌々しいモーブタに負けるばかりか、情けをかけられ恥までかかされた。怒りと屈辱で頭が沸騰しそうだった。
ノドカナ村から王都に戻り、聖騎士団に直訴してあのダンジョンに舞い戻り、必ず奴らを始末してやる。
そしてその手柄で聖騎士を叙勲され、何れは……。と都合の良い妄想に耽るフェレンは気づかない。今まさに背後から何者かが迫りくる事に……。
ザクッ!!
まさに一瞬であった。首筋に牙が突き立てられ、血液と力が失われていく感覚に意識が覚醒した。
「ぐ、あああーっ!?」
何とか一本背負いの要領で何者かを投げ飛ばしたものの、寧ろ相手が率先して投げられた形を取ったらしい。宵闇であるのに傘を差したゴスロリ少女がふわり、と優雅に着地する。
(血と力を吸われた……!? 早く……治療……!? 教会で……回復……!! ポーション……腕……!? どこだ……!!)
バラバラに四散しそうな意識で思考が纏まらない中、フェレンはゴスロリ少女に見覚えがあった。確かダンジョンの最下層で『デザイア様』と呼ばれていた存在の近くで控えていた幕僚の一人だったはずだ。そのゴスロリ少女は口元に血を滴らせながら薄ら笑いを浮かべていた。まるでこれから起こる晩餐会を期待するかのように。
「ふーっ♥♥♥ 食前酒にしてはまあまあ……と言った所ですわあ♥♥♥」
うっとりとした顔で自らの血液の味の感想を述べられても溜まったものではない。
(だめ、だめだ……! 逃げなきゃ……! 逃げなきゃ……!! 殺される……!!)
フェレンは身体に残る最後の力を振り絞って村に向かって走り出す。だが足は絡みつくように動きは鈍くまるで彼女を嘲笑うかのようだった。
(なんで……こんな……っ!!)
走っても走っても距離は伸びず、寧ろ少しずつではあるが間隔が狭まっていく。焦燥感から呼吸が乱れ、心臓が破裂しそうな勢いで収縮する。
「はあっ……はあっ……!!」
「そうそう♥ 頑張って♥♥♥」
「!? う、あ、ああ〜〜〜っ!?」
目が眩みかけたその時、何故か目の前にゴスロリ少女がマラソンのゴール地点であるかのように待機していた。
すっかり恐慌を起こしたフェレンは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら迷路の実験につきあわされるモルモットの様におろおろ狼狽え、ふらふらになりながらも少女に背を向けて逃げる。
逃げ道がある限りモルモットは戦う意思を持つ事はない。
ゴスロリ少女、もとい吸血鬼獣ポスタルはそんなフェレンを可笑しそうに眺めていた。彼女が逃げ惑う姿は滑稽で可愛らしくて……愛らしかった。
(ああ♥ なんて無様で可哀想なのかしら♥
そんな貴方を喰らえるだなんて……なんて……なんて、素晴らしい夜なのかしら♥ デザイア様に感謝致します♥♥♥)
「い……やた……やだぁ……たく、ない……うえ……おえぇ……」
遂にどさり、と地に倒れ伏し吐瀉物を撒き散らしたフェレンの目から光が失われていく。彼女にすれば僅かでも生き残る可能性を上げるために鎧も剣も、肌着も脱いで身軽になったが、皮肉にも面倒な身ぐるみ剥きをせずに助かった、とポスタルは鼻を鳴らした。
「聞こえているかどうかわかりませんが……デザイア様の言葉をそのままお伝えしますわ♥
『生まれには貴も賤もなし。汝の欲するままを成せ。されど卑しく、劣悪なる者には死を』
貴方のモーブタとやらに対する卑劣な振る舞いにデザイア様は珍しくお怒りですわ……。だからね、もう貴方は助からないの」
文字通りの死の宣告。フェレンは絶望に打ちひしがれる。死への恐怖と絶望が彼女の精神を蝕んでいく。涙でぼやける視界の先にはポスタルがいた。
彼女はとても楽しそうに笑っていた。
それはまるで獲物を前にした捕食者のような笑顔だった。
「が…! じでっ……!? いだっ!? いだいのっ!! ごろじでぐだざあ゛い゛……」
「いけませんわあ♥ 皮の下の脂が一番美味しくて♥♥♥
死にかけの乙女の血液が一番芳醇なのですから♥♥♥
はああっ♥♥♥ あまぁ〜〜い♥♥♥」
この上ない恐怖と痛みはこの悪夢が終わって欲しいという願望に代わり、フェレンの思考と生命活動はそこで停止した。
ナチュラル凌遅刑(検索しないでね)とかお前は鬼か。
吸血鬼だったわ……。
ポスタル「私は……残酷ですの♪ へ?スクロール?
こんな美味しいものを? まるで理解できませんわ」
デミえもん「他所のNPCの所業とはいえ趣向はともかく、甚だ理解に苦しみますね……(呆れ)」
って言われそう。
ゴージャス☆アイリンかフェンブレン。好きな方を選んでね。
ポスタルのカルマ値は当然−500
デザイア(何もそこまで……)
デザイアのカルマ値は+100 邪神のくせにやや善。
ポスタルとパーティー組めないじゃん(なお魔王の軍旗で対策済み)
タケシだと+200