マガジンの新連載を見てセルフ反省。
まあ、エロは描きたいから描くんやけどなブヘヘヘ
場所はノドカナ村よりだいぶ離れたシャヨーノ王国は王都ダイブマッキ。
その大聖堂にてロベルトは治癒を受けていた。
「【総合治癒】(ゼネラルヒーリング)」
眼前の茶髪の少女、身なりは聖女にして顔立ちは整っているのだが小柄でどことなく農村で羊飼いでもしている方が様になっている様な純朴、或いは野暮ったい雰囲気の彼女が聖女と謳われる存在ルクレツィアである。
蒲公英の様な黄色い光がロベルトの身体を包み込むと砕けた顎と裂けた口がみるみる癒えている。
「いやー、なんにしても治るケガで良かっただす」
そしてこのお国言葉である。とはいえ春の木漏れ日の様な笑みを湛えている彼女は本当に心から安堵している様に見える。
「……どうかこの事はルクレツィア様には他言無用にな」
「ルクレツィア様って、どのルクレツィア様だすか。オラも一応聖女ルクレツィアって事になっとるだすけども」
きょとんとした顔でルクレツィアはロベルトに尋ねる。聖女ルクレツィアとは実の所固有名詞ではない。王国が奉ずる至高神の啓示により王国を導く役目を負った超常の力を持つ乙女の総称である。故に王国の各地でルクレツィアの名を冠する少女達が生まれているのだ。
「あ、アイン様にだっ!!」
「はえ〜、アイン様にだすか? 解りましただ」
アイン・ルクレツィア。氷の様に透き通る水色の髪と蒼い瞳を持つ美少女であり、峻厳にして寡黙。ルクレツィア達の中でも一際人気も高く、皆の憧れの的である。
「それに比べてお前はどうなのだ! ジーベン! 出来ることと言えば回復魔法程度か! この無能がっ!」
「す、すんません……」
ロベルトの増長、ここに極まっている。
回復魔法程度、とどの口が言っているのか? 顎を砕かれたとは信じられない位に完治しているのにこの口ぶり。
貴人とはつくづくやってもらって当たり前。尽くしてもらって当たり前と、人からの恩義を解さないものである。
こんな男が聖騎士なのだからシャヨーノ王国の衰退と人材不足は深刻といえよう。
しかしジーベンは悲しいかな貧農の生まれ。清貧と従属を美徳と言い繕われ聖女という名に相応しくあれ、と制度化された奴隷として生きてきた彼女にとってそれが当たり前であったし、それを不幸とも思っていない。
「ほじゃけんど……ロベルト様をこったらベコベコにできるってば、……どったらモンスターだったんだすか?」
「ぐぬ……! そ、それはだな……!!」
ロベルトは答えに窮した。まさか王国に於いては下等なる存在、獣人に一撃で打ちのめされたなどとは口が裂けても言えない(実際に裂けたが)
「の、ノドカナ村に現れたデスザウルス……いや、ぐ、グレートナーガだっ!!」
「は、はえ〜……! グレートナーガ……って何だすか?」
少女はきょとんとした顔で目をぱちくりさせながらロベルトに問う。これを無知と責め立てるのは酷に過ぎる。彼女は貧農の生まれであるが故、10になるまで殆ど教育らしい教育を受けていないのだ。で、あるのにこの善性。
ある意味でデザイアが抱く人間の根源は悪なり、という思想信条へのアンチテーゼであった。
「バカめ! 貴様は何も知らないのだな!」
「すんません。学がないもんで……。ツヴァイ様から読み書きは教わってはおるんですけども」
「もういい! お前と話していると頭がおかしくなる!!」
ロベルトはこの様に狭量にして尊大な男である。
ジーベンが当に伝承にある聖女そのままの慈愛の化身であった事は不幸中の幸いであった。
「それは大変だべ! そんだばオラの回復魔法でロベルト様の頭を直さねばなんねーだ!」
「頭なら既に治っている!! チッ……まあいい! グレートナーガと言うのはこの国の地下にいるという龍の事だ!」
「ドラゴンだすか? 王国の紋章にあるヤツだすかね?」
ジーベンは首を傾げる。
「違う! あれはサラマンダーと言ってトカゲの様な見た目をしているが、ドラゴンとは比べ物にならぬ雑魚だ!」
「へえ〜。王様方はザコを祀っとるんだすか。優しい御方だすなあ〜」
「何故そうなる!! 大体貴様はだな……!!」
「ひえ〜、すんませんでしただ!」
またガミガミとロベルトはジーベンに説教を始めようとするが、ふわり、と身体が浮き上がった。浮遊魔法を使ったワケではない。何者かがゴミでも拾う様に彼の首根っこをクレーンの様に持ち上げたのである。
「何を弱いものイジメをしてるんだい。このバカモヤシは」
ロベルトを諌めたのは赤い髪を短めに纏めた女傑であった。身なりは聖女であるが腕まくりをしたその腕はまさに筋骨隆々をそのまま地で行くもの。その体つきは冒険者、ないし歴戦の戦士を思わせるものであった。彼女はツヴァイ・ルクレツィア。王国最強の聖女にして随一とされる武技と膂力の持ち主である。
「ツヴァイ様! ロベルトさんはなんも悪い事をしていねえだす」
「ホントかい? アンタはちょっと、いや大分人が良すぎるからねぇ……」
「は、離せ! この地竜女め!!」
流石にこの世界にゴリラは存在しない様で地竜という言い方をするらしい。とはいえ地竜とは似ても似つかぬ頑健ながらも女性らしさもしっかり残しているのだが。
「ジーベン、このバカモヤシは私が預かるから心配しないで良いよ」
「解りましただ! ロベルト様、またケガすたらオラのところに来るとええだす」
散々貶されながらもニコニコと手を振りながらジーベンはモップの様に逆さで引きずられるロベルトを見送った。
「相変わらず優しいのね、貴方は」
「ああいうアホボンにはガツンと言ってやんなきゃダメだし。アンタは焼肉カルビかって位つけ上がってダレるし」
入れ替わる様に聖堂の奥から噂のアインと共に護衛らしき女騎士がジーベンの人の良さを諌めるかの様に声をかけた。
護衛らしき女騎士は身なりはロベルトのものと然程変わらない辺り彼女も聖騎士であろうことは明白だった。
しかし、亜麻色の髪をウェーブ型に伸ばし、宗教勢力特有の狭量さは見られず寧ろ奔放で自由な雰囲気が彼女からは発せられていた。
ふたりとも、小柄なジーベンより頭一つ程背が高く中背。
アインは少々慎ましい肉付きだが聖騎士の胸や尻、太腿の肉付きは大分豊かなものであった。
「アイン様にミキ様! お久しぶりだす! アホボンって何だすか?」
「アホのボンボン。つまりテンでイカさないタコって事。あれ? あーし、ちょっと上手いこと言ってなくなくない?」
「はあ……」
ミキのギャル丸出しの姦しさに対して、アインは静かに佇んでいた。その視線はジーベンに向けられている。
(そんな堅苦しい挨拶は私達の間では不要よ。それに私の事は呼び捨てで構わないのに)
アインは見た目は峻厳な霊峰の如く孤高、という形容詞がさながら王冠とマントの様に思える程に彼女にピタリと当てはまるものの、中身自体は年頃の乙女と違いはない。
「そんな挨拶はいらないわ」
だが、この通りアウトプットがまるで機能していない。即ちデザイアもといタケシと同じくコミュ障である。
そのため酷く誤解されやすい性分であり、ジーベンも例に漏れず孤高にして自他に厳しいカリスマの化身、そう思っていた。
(はえ〜……、アイン様はいつも落ち着いてて素敵だべ。オラもアイン様みたいに大人になりたいだすなあ)
「す、すんません」
「なせ謝るの? 謝る必要はないわ」
(ああっ! 違うのジーベン! そういう意味じゃないのよ! 私の事を嫌いにならないで……!)
アインは焦燥に駆られたが、しかし言葉足らずな彼女にフォローする術はなく、ただただじっ、と佇むのみ。すると。
「硬いなー! 硬い硬い! アイちゃんってばカチカチ山のたぬきさんすぎ! もっとあーしみたいにテンアゲしなきゃさー!」
「怒ってなんていないわ。普通よ」
「でじま?」
ミキはギャル特有の言葉は良くわからないが何を言いたいのかはわかる独特の言い回しでアインに話しかける。
その態度はアインにとっては長らく抱えていた社会からの孤独感や疎外感を確実に晴らしつつあった。
「そんで、ロべっちのアホボンは誰にやられたん?」
「なんでも、グレートナーガちゅうドラゴンに顎を砕かれたっちゅう話でしただ。恐ろしい話だべ」
そして話題はロベルトの話題になる。
「グレートナーガ? 何それ? 外人? 歌?」
「グレートナーガ……。厳密には龍族ではないわ。地を這う虫の魔族が瘴気により突然変異した種族よ」
「へー! アイちゃんてばバリ博識じゃ〜ん! マジパないし! で、どの位強いん?」
「そうね……。討伐できうる冒険者や戦士のレベルはパーティーの平均レベルを換算して凡そ30〜40といった所かしら。ロベルトのレベルは確か40そこそこ。一人で相手取るには少し荷が勝ちすぎた様ね」
「ダッサ……。アホボンてばセーキシのくせにシュギョーをサボりすぎだし!」
ミキはジト目かつ口を尖らせてロベルトに辛辣な評価を下していたがアインは同意見らしく咎めることはしなかった。
「そうね。とは言えグレートナーガは確かレベル50オーバーのモンスターだから、ロベルトは命があっただけでも幸運ね。まあ、運も実力のうちというけれど」
(けれどあの辺りの辺境を警護していたのはドルクニフ・サベージの筈。権力闘争の余波で僻地に飛ばされたと聞いたけれど。そんな彼女なら失地回復に躍起になっても不思議はないのに特に報告がないのは奇妙ね)
「そーなんだー! じゃああーしの運なら天下無敵マヂ最強じゃん! だってジーちゃんやアイちゃんとマブになれたんだもん!」
(あなたは運も何もあらゆるスペックが桁違いよミキ……。私が自惚れてお山の大将になってしまう前にあなたに会えて良かった。上には上がいるって解ることができたもの)
ニカッと太陽の様な笑みを浮かべるミキの笑顔はまさしくギャルの鑑と言えるだろう。しかしその実力は規格外にして破格。この世界において彼女に並ぶ者は、殆どいない。ミカのレベルはなんと前人未踏の97。
伝説の聖王や魔王よりも頭一つ抜けて高い数値である。おそらく地上に彼女よりレベルの高いモンスターや人間は存在しない。
そう、地上には……だが。
「けれど不思議ね。グレートナーガの主な攻撃は腐食のブレスの筈。打撃の類はないでもないけれど、ロベルトが昏倒するほどのダメージを与えられるとは思えないのだけれど……」
「じゃあさ、行ってみない? そのノドカナ村にさ! 百円は一万円に退かず! だっけ?」
アインが訝しげに思案しているとミキが提案を持ちかける。堂々と自分の世界の通貨を話し出す辺り強さは規格外だが大分脇が甘いらしい。
(言葉の意味は良く解らないけれど……。
何事も自分の目で確かめないと当てにはならない、と言うことかしら……?)
アインは翻訳能力にも長けていた。
「そうね。ロベルトの仇討ちという訳ではないけど、私も興味があるわ」
「だよねだよね! ジーちゃんもいこいこ! キモキモテイカーおじ達の治療なんてあのジジイに任せればオッケーっしょ! ユーキューキューカってヤツ? それ使えばいいし!」
「だ、だども……」
あのジジイとはルクレツィア達聖女、そしてロベルトら聖騎士を束ねる教皇フィアネスの事である。その権威はもはや王国のみならず諸外国に広まり、今や『白帽の大王』やら『影の国王』などとまことしやかに囁かれている始末であった。
「私は構わないわ。ジーベン、貴方も来なさい。見識を広めるいい機会だわ」
(だからそうじゃなくてえ! 私は貴方と一緒に旅行したいってどうして言えないのかしら……!)
「へ、へいっ」
(アイン様がオラみてえな蓮っ葉な田舎者にお目ばかけてくださって……。ありがてえ事ですだ。断ったらバチが当たるべ!)
アインはアインなりに必死にコミュニケーションを取ろうとしているのだが、どうも空回りしている様だった。
「そうと決まればレッツらゴー! 」
こうして三人娘は噂のノドカナ村へと旅立ったのである。
ー
一方その頃……。
「なんだこれは……」
デザイア、もといタケシは困惑の最中にあった。 ピュアトレント達はメイドとして一人前になり、温泉宿も無事建築できた。
それはいい。 が、とんでもないものがある。それは、宿のバルコニーに顕示されたグレートナーガを消し飛ばすタケシの姿を示した絵画とファトゥムの聖母像を模した彫刻。
曰くこの地を荒らし回る恐獣デスザウルスと邪竜グレートナーガを退治した炎の聖女ファトゥムと雷の勇者タケシを讃えたもの。
炎の聖女は火の鳥を持って瘴気を払い、雷の勇者は雷鳴の弓を持って両者を討伐。
グレートナーガの身はこのノドカナ村の地にムシャムシャの実の種となり大いなる実りを齎し、デスザウルスの死骸は大地の底でマグマへと変化し温泉となった……。と、ガイドブックに書いてある。しっかりと著者名にコハクと記されていた。
「いかがですかタケシ様!」
村長とドルクニフは恥じる事も怖じる事もなくタケシに感想を求めた。だが、タケシの表情はというと……。
(か、勘弁してくれよぉ〜!!)
どうしてこんなことに、と頭を抱えていた。デスザウルスを倒したのはカーネイジの筈なのに自分が倒した事になっている始末だ。
「素晴らしい作品ですな! この村の英雄譚に相応しい出来栄えでございますぞ! 」
「ええ、ええ! これこそ英雄様の御業! 」
「これで皆安心して暮らせるというもの! ファトゥム様バンザイ! タケシ様バンザイ!」
(ファトゥムはともかく何で俺まで祭り上げられてるワケ? 俺、ちゃんとファトゥムの加護で強くなっただけって言った筈だぞ……!)
残念ながらタケシはコミュ障であったのでその言葉は謙遜だということにされた事に気づかなかった。
「あ、あの、本当に俺は大したことやってないんで。ちょっと弓をポン、とね? 村長さんも、ほら、その、み、見られましたよね……?」
遂に日本語まで怪しくなってきた。しかし村長とドルクニフはそんな事は気にせず、タケシを褒め称える。
「ええ、はっきりと。それにしても見事な腕前でした。当に神の稲妻が悪しき邪竜を文字通りに打ち砕いたかの如く!
儂はまさにあの神話に立ち会うために生まれてきたのだと今、確信しております!」
(うわあ……村長さんの目がキラキラしてる……。目がキラキラしてるじいさんって殊の外、キツいなあ……。
いや、そもそも雷鳴は地面から天に向かわねーし! ヴァジュラブラストを選んだのは失敗だった……!! もっと目立たない武器にすべきだったのに……ついカッとなってやった……反省しているってか!? バカ! バカ!!)
デザイア教に続いてタケシ教が発足しそうな勢いに彼はたじろぎながらもなんとか弁明する。
「いや、マジで、ホントに……。アレはたまたまでして……弾だけに……はは、ハハァ……」
「おお、なんと謙虚であらせられる。流石は救世主様。聖魔神に愛され、ファトゥム様の寵愛を一身に受けるお方。この村、いや世界の未来は安泰ですな」
「全くその通り! 我等は今こそデザイア……こほん。ファトゥム様が仕える聖魔神とその使徒たる皆様をあがめ奉りて、より一層の信仰を捧げましょう!」
「おおーっ!!」
「…………」
ドルクニフがいつの間にデザイアを邪神から聖魔神と呼んで音頭を取り、村民もほぼ全員が歓喜に沸き立っていた。
(ま、まずい……。下手をすると王国との全面戦争に発展しかねない。ここはなんとか熱狂を抑えるために何かをしくじるしかない! けどカーネイジやファトゥムに失望されたくないしなんかこう……上手いこといかないかなー!?)
何とも後ろ向きな英雄もあったものだが、タケシは拗らせ系ぼっちなので仕方がない。
すると伝書鳩ならぬ伝書鴉がドルクニフの肩に止まる。無論ただの鴉ではなく、魔力によって造られた擬似生命体である。
「む? これは……。ふむ、なるほど。……失礼、タケシ様。明日、聖騎士ミキ、聖女アイン・ルクレツィアならびにジーベン・ルクレツィアの3名がこの地のグレートナーガ討伐に来るとの事です」
ドルクニフは即座にタケシへと報告する。
(明日!? これまた急だな!! しかもグレートナーガはもう倒してる……下手すると向こうのメンツを潰したとかなんとかで抗争コース……ままま、まずい!!)
負けるつもりはないがまだまだ判明していない情報が多すぎる。下手をすると元プレイヤーやらひょっとしたら異世界転生者が介入してくるかもしれない……。思考のドツボにハマりかけたタケシは緊急手段を取ることにしたのであった。
ー
場所は温泉宿カモネギ亭は大和の間。いわゆるVIPルームと呼ぶべき場所で、タケシはファトゥムとドルクニフを呼びつけて明日の作戦会議をすることにした。
「と、言うわけで。ドルクニフ、ファトゥム。俺は明日グレートナーガの怨念がなんやかんやして復活したドラゴンゾンビに化けて現れるからさ。テキトーに話を合わせてくれ。聖女の子達とは端から見てなんかいい勝負だったな〜。って感じにするから」
「いいえ」
ファトゥムはきっぱりと拒んだ。
外行きの全年齢衣装ではなく、普段着……乳暖簾とガーダーベルト付きビスチェといったどこが聖女だ。と言わんばかりの姿であった。
「私もファトゥム様の意見に賛成です。何故聖女如きをそこまで恐れるのですか。我等信徒を憂いての事ならば心配ご無用。デザイア様のためならば命を捨てる覚悟など既に終えております」
こっちもこっちで臍出し乳ベルトハイレグアーマー風防具という悪の女幹部スタイルのドルクニフが追随する。
(いいえの一言に意味がこもり過ぎ! それ、絶対お前の意見だよね!!)
タケシは危うくツッコミを入れたくなるが辛うじて抑えた。
「とは言うけどな。ここで聖女を倒したとしても得られるものはなく失うものの方が多い。俺もまだこの世界について知らんことが多すぎる。故に今は耐え忍ぶ時。分かるだろう?」
「いいえ」
またしてもきっぱりとファトゥムは言いきる。頑固一徹という鋼の忠誠と信仰心にタケシは困ったように眉根を寄せた。
『私は聖女が如何なるものか存じ上げませんが、少なくともこの世界の人間はさほどの脅威と思いません。それにデザイア様の御身を守るためならこの身を捧げる所存。たとえこの場でデザイア様のお怒りに触れようとも後悔はありません』
「私もです」
さらさらと綺麗な文字でファトゥムは筆談し、ドルクニフも筆談に応じた。
『ですが、デザイア様がどうしてもと仰るならば条件付きですが私は従います』
「お、おう……」
一体どんな条件が来るのかとタケシは不安になる。だがその不安はすぐに解消された。不安ではなく驚愕だが。
『夜が明けるまで私を愛してくださいませ』
「おお……それは名案。不肖このドルクニフも賛同いたします!」
「……」
タケシはチン黙、もとい沈黙……。
いや、絶句した。この階層守護者と現地協力者……スケベすぎる!! タケシが呆れ果てていると、ファトゥムが恥ずかしそうに頬を赤らめながら言った。
「……はい♥」
(人の心を読むなぁ!! えーい!!
毒を喰らわば皿までよ!! いやファトゥムのどこが毒なんじゃい! ぶっ飛ばすぞ!)
「ああ分かった! 俺も腹を決めた!! 二人まとめて相手してやるぜ!!」