※この作品はR-18です。

散弾銃とスモーキング・トーク   作:スナエ

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番外編。


海に行こうぜ!

「海に行きたいな」と、貝瀬直がぽつりと言った。

 それを聞いた諏訪洸太郎は、すっとスマートフォンを取り出し、同い年のグループチャットにメッセージを送る。

『直が海行きてぇとよ』

『海か、いいな』

『行こう』

『このメンツで休めるのか?』

『ソッコーでバラすな、洸太郎』

 目の前にいる貝瀬は、諏訪を睨んだ。

 ボーダーのA級の隊長ふたりとB級の隊長とチーフエンジニアとメディア対策室勤め。全員で休むのは骨が折れたが、結局は叶った。

 そして、当日。諏訪の運転で、浮かれたアロハシャツの5人組は海へ向かう。

 海が見えるや否や、助手席の貝瀬が窓を開け、「海だ!」と騒いだ。

 

「潮風だな」

「しょっぱいな」

「テンション上がってきた!」

「貝瀬って、火属性の癖に海が好きなんだ」

「オレは、水属性も兼ねてんの!」

 

 木崎は木属性だの、風間は風属性だの、寺島は雷属性だの、諏訪は水属性だの、やんややんやと話し合う男たち。

 

「おい、着いたぞ、おめーら」

 

 諏訪の合図に、皆が静まり、車の外に出た。

 晴天の下。波の音がする。

 

「よーい、ドン!」

 

 貝瀬がそう言い、走り出した。

 

「ずりーぞ!」

「負けるか!」

「すぐ追い付く」

「負けでいいや」

 

 それぞれのペースで海へ向かう。

 一番乗りは、風間だった。ビーチサンダルのまま海に浸かり、敗者たちを待ち受ける。

 次に、木崎。その後に、諏訪。そして、貝瀬と寺島。

 

「メディア対策室勤務とエンジニアが勝てるワケねぇんだよな!」

「寺島、棄権しました」

「ノリが悪いよ、寺島くん」

 

 全員で足だけ海に入った頃には、久し振りに目にする大自然に、少し感慨深くなった。

 その後、浜辺にレジャーシートを敷き、荷物を置き、泳ぎに行く。

 

「洸太郎~。ブイまで競争な。泳ぎなら負けねぇ」

「いいぜ。負けたら、飯奢りな」

「オーケー」

 

 貝瀬と諏訪は、本気の水泳を始めた。

 木崎と風間は、マイペースに泳ぎ、寺島は浮き輪に乗って漂っている。

 

「元気だな、あのカップル」

「そういえば、そうだったな、あのふたり」

「カップルって、ああいうもの?」

「さあ」

 

 3人は、遠くなっていく貝瀬と諏訪を眺めながら話した。

 ふたりの勝負は、引き分け。帰りは、仲良く泳いで来た。

 

「なんで、んな体力あんだよ?」

「おまえこそ、なんなんだよ。ヤニカスがよ」

「てめーもだろうが!」

 

 ぎゃーぎゃー言いながら、戻るふたり。

 

「おーい、飯の時間だぞ」

「貝瀬、了解」

「おう」

 

 皆で海の家に向かい、各々メニューを選んだ。

 

「カレーもラーメンも、なんでこんなに美味そうに見えるんだろうな?」

「海の家マジック」

 

「いただきます」を言い、5人は昼食を摂り始める。

 休憩を挟み、着替えてから、車で旅館に移動した。

 窓際の謎のスペースを見てから、諏訪が言う。

 

「温泉行こうぜ」

「行こう行こう」

 

 貝瀬、他3名も同意し、露天風呂へ行く。

 潮をさっぱり洗い流して、全員で湯に浸かった。

 

「最高~」

「酒飲みてーな」

「オレは飲めねぇ」

「おまえは、ハブだハブ」

「ひっでぇ!」

 

 けらけら笑い合う貝瀬と諏訪。

 

「でも、真面目に貝瀬は酒抜きだからね」

「そうだぞ」

「甘やかすなよ、諏訪」

「シバくぞ。誰が甘やかすか」

 

 そんなこんなで、風呂上がりに浴衣を着て、部屋に帰った。

 

「あとは、何もしないでも飯出てくんだろ? 最高~」

「主婦か」

「風間、コイツ、袋ラーメンそのまま食うんだぜ」

「貝瀬、最低限の調理くらいしろ」

「うるせー! アレは、バリバリ食うのがいいの!」

「貝瀬の食生活が心配になってきたな」

「ほらな? 完璧食生活のゴリラもそう言ってる」

「寺島くん!」

 

 貝瀬は、助けを求めてみたが、寺島は無視して、お茶菓子をもぐもぐ食べている。

 

「孤立無援!」

 

 貝瀬は叫んだ。

 時間まで、思い思いに過ごし、夕食が運ばれてくる。

 海鮮丼と天ぷらと味噌汁。食べ終わったら、かき氷を持ってきてくれると言う。

 

「いただきます」

 

 皆、席に着き、料理を食べ始めた。貝瀬以外は、ビールも飲む。

 

「うめー!」

「美味いな」

「美味い」

「美味しい」

「はいはい、よかったね」

「不貞腐れんな」

 

 仲間外れの貝瀬は、ウーロン茶を飲んだ。

 食後は、様々な果物が盛られたかき氷が届く。

 

「甘いもの最高!」

「甘党は相変わらずか」

「コイツが淹れたココア、全員飲め」

「なんだそれ?」

「貝瀬直スペシャルに文句あんのか? 洸太郎」

 

 賑やかに時は過ぎていった。

 そして、早々に酔い潰れた風間を布団に寝かせ、4人は他愛ない話をして過ごす。

 木崎が、「そろそろ寝るか」と言ったのを合図に、皆で寝支度を始める。

 全員が眠った夜夜中。貝瀬は悪夢に魘された。

 そして、冷や汗を流して飛び起きる。

 

「はぁっ……はぁっ…………」

 

 口元を押さえて、音を立てないようにした。

 

「直」

 

 それでも、おまえは見付けてしまう。

 貝瀬は、隣の諏訪に申し訳なくなった。

 

「少し話そうぜ」

「うん…………」

 

 ふたりで窓際の椅子に座り、煙草に火を着ける。

 

「落ち着いたか?」

「ああ。悪い……オレ…………」

 

 何も、こんな時にまで魘されなくてもいいのに。

 貝瀬は、自分を情けなく思った。

 

「悪くない奴が謝んな」

「そう、だな……」

「愛してるぜ、直」

「はは。ありがとう。オレも、おまえを愛してる」

 

 貝瀬は、ようやく、いつものように笑う。

 それを見て、諏訪は安心した。

 しばらく、ふたりきりで無言の時を過ごし、寝直すことにする。

 

「おやすみ、直」

「おやすみ」

 

 軽くキスをしてから、布団に戻った。今度は、朝まで目覚めないで済んだ。

 

「はよー」

「おはよう」

 

 それぞれ身支度をして、朝食を摂り、三門市へと帰るために車に乗る。

 

「よかったな、海」

「そうだな」

「来年も、また来ようぜ」

「おう」

 

 来年も、この5人で海に行こう。

 先のことは分からないけれど、そんな希望持って帰った。

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