※この作品はR-18です。

散弾銃とスモーキング・トーク   作:スナエ

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※同性愛蔑視を想起する表現

番外編。


SOS

 映画を見ていると、不意に男女のベッドシーンになることがある。

 俺の恋人の貝瀬直は、それが苦手だ。そのことを知ったのは、いつだったか。恋人になる前だったな、確か。アイツ、途中でトイレ行って吐いたんだよな。

 

“同性愛は注意書きされんのに、異性愛はされねぇの、オレは納得してねぇぞ”

“呪ってやる”

“傲慢なマジョリティどもは、みんな呪ってやる”

 

 直の怨嗟の声。よく覚えてる。

 それが、今では。

 

「うわっ。洸太郎、終わったら教えて」

「おう」

 

 直は、目を閉じ、耳を塞いだ。

 例のシーンが終わったら、直の腕に触れる。

 

「はぁ。ありがとな」

 

 再び映画を見る直。

 

「気にすんな」

 

 完全に俺を信頼してるとこが、嬉しいし、可愛い。

 映画を見終わると、ふたりで感想を言い合った。

 

「ラブシーンがいらない。なんなら、サブプロットの恋愛ごといらない。マイナス5億点」

「アクションが良かった。加点」

 

 直は、よくバカデカい数字を口にする。俺のことは、無限に好きらしい。

 

「アクションは良かったけど~。ストーリーが雑っていうか、テンプレ的っていうか」

「まーな。次見ようぜ。おまえが見たいって言ってた、ゾンビのやつ」

「オーケー」

 

 リモコンを操作し、ゾンビアポカリプスが流れ出す。

 

「オレがゾンビになったらさぁ」

「あ?」

「地下室とかで飼ってよ」

「いや、トドメ刺して焼く」

「埋葬は?」

「するし、ずっと側にいる」

「じゃあ、いいよ」

 

 いいのか。

 直は、俺の手を握ってから、テレビ画面に集中した。

 横目で窺っていると、楽しそうにしていて、俺は安心する。

 

「あはは」

 

 ずっと、おまえが笑っていられたらいいのに。

 

◆◆◆

 

 夜中。隣で眠る直は、涙を流している。

 それを、そっと指で拭う。

 

「きらいだ……みんな…………」

 

 直は、うなされて言った。

 ああ、そうだったな。おまえは、みんなが嫌いだった。もちろん、俺も。

 

「たすけて…………」

「直、起きろ」

 

 頬を撫でる。

 

「……あ」

「うなされてた」

「ごめん…………」

「謝るなよ」

「ごめんなさい……」

 

 直は、口元を手で押さえて、ベッドから降りた。そして、足早にトイレへ向かう。

 吐いてるんだろうな。きっと、アイツの叔母が夢に出てきたんだ。アイツに“異常者”のレッテルを貼った、呪いの元凶。

 口をすすぎ、顔を洗って、水を飲んでから、直は戻って来る。

 

「大丈夫か?」

「あんまり……」

「どうしてほしい?」

「抱き締めてほしい」

「ん」

 

 両手を広げると、直が飛び込んで来た。

 

「洸太郎。愛してるから、置いて行かないで」

「愛してるから、置いて行かねーよ」

 

 ちゃんと、「助けて」が言えるようになったおまえを、俺は助け続けたい。

 

「たまに、頭の中で言われるんだ。おまえが諏訪洸太郎のことも普通じゃなくしたって」

「んなこと言う奴は叩き出せ」

「……うん」

「心配すんな。おまえは、普通過ぎる奴だよ」

「うん……」

 

 この男の生涯を、俺が幸せなものにしてやる。

 直は、前に、俺に与えられるものがないと言っていたが、そんなことはない。

 おまえは、俺の炎(ひかり)だから。

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