※この作品はR-18です。

散弾銃とスモーキング・トーク   作:スナエ

19 / 37
前日談。


サンタクロースは不在だけど

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 クリスマスが近付いてくる。

 第一次近界民侵攻で行方不明になった父母は、季節の行事や記念日を大切にする人たちで、よく凝った料理をふたりで作っていた。

 そんな両親がいなくなり、貝瀬家は積極的に何かを祝うことがなくなっている。

 

“直、誕生日おめでとう!”

“直、メリークリスマス!”

“直、明けましておめでとう!”

 

 ふたりの声を、まだ思い出せることに安心した。

 12月は、寒くて、もの悲しくて、寂しい。

 

「貝瀬」

「ん?」

 

 ひとりきりだった喫煙室に、諏訪がやって来た。

 

「クリスマス、飲み会来るか?」

「行っていいなら…………」

 

 オレは、服薬の関係で酒が飲めない。そんな自分が行ってもいいんだろうか。

 

「いいに決まってんだろ」

「……ありがとう」

 

 いつもみたいに上手く笑えなくて、オレは困った。

 

「じゃ、いつものメンツで、いつもの場所な」

「了解」

 

 諏訪と風間くんと木崎くんと寺島くんと、居酒屋ね。

 なあ、諏訪。オレがおまえのこと好きだって言ったら、どうする?

 まあ、言えないな。貝のように黙ってしまう。

 諏訪洸太郎に片想いをして、2年近く経つ。

 ずっと、おまえを祟ってる。世界を呪ってる。

 悪い人間になったもんだ。両親に顔向け出来ないな。

 

「貝瀬。なんか欲しいもんあるか?」

「は……?」

「クリスマスプレゼント」

「なんで?」

「日頃の感謝?」

 

 テキトー言うなよ。オレのが世話になりっぱなしじゃねぇか。

 

「なんでもいいよ」

 

 おまえからもらえるなら、なんでも嬉しい。

 

「それじゃ、困るだろ」

「じゃあさ、本を一冊選んで贈り合うってのは?」

「いいぜ」

 

 諏訪は、ニヤッと笑った。絶対、推理小説くるなぁ。

 オレは、哲学書贈るから、人のこと言えないけど。

 吸い終えた煙草を、灰皿に押し付けた。

 そして、クリスマス飲み会当日。

 

「ほらよ」

「ありがと。はい」

「サンキュー」

 

 お互いにプレゼントを渡す。

 諏訪は、オレでも知ってる有名な探偵の小説をくれた。

 オレがやったのは、キケロの「友情について」だ。

 友情を抱いてるのも、オレの真実なんだよ。

 だから、それを選んだ。

 冬でも、オレの恋の炎は消えることなく、煙を立ち上らせている。火元は見なくていい。オレが吐く煙たい言葉の先は、知らなくていい。

 いつか、おまえがオレの隠し事に気付く日がくるのかなぁ?

 悪い子にもプレゼントをくれるおまえは、お人好しだ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。