※この作品はR-18です。

散弾銃とスモーキング・トーク   作:スナエ

30 / 37
※欠損

IF。


残りもの

 第一次近界民侵攻の折、家が破壊され、ひとりだけ在宅していた男の両脚は潰された。それからは、ずっと義足で生きている。

 貝瀬直は、両脚を失ったことなんて、どうでもよかった。それよりも、両親が行方不明になったことが問題だった。

 外の世界は、苦痛そのもの。しかし、もう引きこもりではいられない。

 貝瀬直は、両親のためにも社会に馴染む努力をした。

 そんな中で、好きな人が出来たのが、とても憂鬱である。

 

「諏訪」

「よう、貝瀬」

 

 ボーダーに入ってから知り合った男。貝瀬の好きな者。諏訪洸太郎は、面倒見のいい、優しい人物だった。

 

「夏は、義足の人間には辛れぇよ。汗で、脚が気持ち悪い」

「そうなのか」

「というワケで、トリガー起動」

 

 トリオン体に換装する。

 両脚が生えてるって便利。義足と生足の間に汗が溜まることもないし。

 貝瀬は、溜め息をついた。

 

「こっちのが落ち着くな、やっぱ」

「……そうか」

「今日、防衛任務一緒だろ? 行こうぜ」

「おう」

 

 貝瀬と諏訪は、連れ立って任務にあたる。

 その後。つつがなく務めは終わり、ふたりは共に帰ることにした。

 トリガーをオフにすると、貝瀬は度々ふらつく。そして、それを支えるのは、いつも諏訪だった。

 

「悪い」

「気にすんな」

「トリオン体から生身に戻ると、どうしてもな。両脚ないんだったなぁって」

「…………」

「あーあ。神は天にいまし、すべて世は事もなしってな」

「なんだったっけか? それ」

「神様はバカンスしてて、人間のことなんて知らねぇってよ」

「ゼッテーそんな意味じゃねーだろ」

「まあね」

 

 夏の夜。虫の声を聴きながら、貝瀬と諏訪は歩く。

 

「家、寄る?」

「ああ」

「じゃ、途中で飯買おうぜ」

 

 コンビニで、夜ごはんやアイスやビールを買い、今はひとりだけしか住んでいない貝瀬宅へ。

 

「たでーま」

「邪魔する」

「いいよ」

 

 ふたりで、食卓に着き、歓談した。その途中で、貝瀬は叫んだ。

 

「あーっ! 痒い! 義足外すわ!」

 

 膝から下の義足を取り外し、床に投げ出す。

 

「はー、すっきりした!」

「そんなにか」

「そうだよ」

 

 それからも、しばらく、ふたりは大学の講義の話や麻雀の話や読書の話などをした。

 

「諏訪、ソファー行きたい。運んで」

「仕方ねーな」

 

 頼めば、いつだって、そうしてくれるんだろうな。

 貝瀬は、薄暗い喜びを覚えた。

 諏訪は、正面から貝瀬を抱えて運ぶ。

 おまえが抱き締めてくれるなら、両腕も失くしたって構わないんだ、オレは。

 諏訪の首元に絡めた腕を見ながら、貝瀬はそんなことを考えている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。