※この作品はR-18です。

散弾銃とスモーキング・トーク   作:スナエ

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※自死に相当する表現

IF。


あの女

 あの男は、失敗したんだ。だから、こうなったんだ。

 

「貝瀬?」

「なぁに?」

「おまえ……なんか変だな……?」

「そう?」

 

 クスクス笑ってたら、やっぱりこっちを訝しげに見ている。

 

「おまえ、誰だ?」

「貝瀬直。今は、それが、あたしの名前」

「おまえ、アイツの幻覚の女か!?」

「そうだった、ね」

 

 あたしは、真実を告げた。

 

「貝瀬は?!」

 

 肩を掴まれ、焦りながら訊かれる。

 

「死んじゃった」

「は……?」

 

 諏訪さんは、くわえていた煙草を地面に落とした。

 

「死んだの。あたしだけ残して、消えちゃった」

「悪りー冗談だよな?」

「そんなワケないでしょ! あたし、別に、あの男を殺す気なんてなかったけど、勝手に深層に沈んでっちゃったの!」

 

 何も、死ななくてもよかったのにね。

 

「深層ってなんだ?」

「深層意識。入水自殺みたいなもん?」

 

 心の中の海に沈んだの。最期の言葉は、「貝になりたい」だったかな。

 

「じ、さつ……?」

 

 諏訪さんは、狼狽えている。

 

「貝瀬が…………」

 

 友達が死んだから? 仲間だから? 片想いされてたから? 情があるんだろうけど、あの男とは違う気持ちだったから、しょうがないね。

 

「どうしてだよ……貝瀬…………」

「自分のせいだよ。自分をゆるせなかったせい。カワイソーだね」

 

 色んな呪いをかけられて。世界を呪って。最期は、死んだ。

 哀れな人。

 

「頼む。貝瀬を連れ戻してくれ」

「無理だよ。散々止めたんだから。あたしの言うことなんて聞かないよ」

「じゃあ、俺が連れ戻す……」

「それも無理。外の声なんか聴こえないよ」

「でも、まだ生きてんだろ?!」

「誰の声も届かないとこへ行くことを、死ぬって言うの」

 

 自分を殺すことが、あの男の選択。

 

「泣いてるの?」

「貝瀬は、俺の親友なんだ。仲間なんだ」

「うん。でも、今は、あたしがいるから。あの男の代わりにはなれないけど」

「あの男って言うのやめろよ!」

「しょうがないでしょ。あたし、貝瀬直だもん」

 

 諏訪さんは、溜め息をついて、涙を拭った。

 

「俺にとって、貝瀬直は、ひとりだけだ」

「そんな~」

「今日は帰る」

「まだ講義あるのに」

「そんな気分じゃねーよ」

 

 煙草を拾って、背中を向ける。

 

「またね、諏訪さん」

 

 彼は、無言のまま行ってしまった。

 あーあ。傷付いただろうなぁ。あたし、別に悪くないけど。

 あんたが悪いんだよ?

 死んだって、時が解決してくれる? 傷は癒える? あたしが、あんたよりは“いい”って?

 あたしたちは、同じ者だったのにね。分かれちゃったね。

 さよなら。指くわえて見てなさい。

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