※この作品はR-18です。

散弾銃とスモーキング・トーク   作:スナエ

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IF。


逃避行

 夜道を歩いていたら、血の着いた包丁を持った男が、死体を見下ろしていて。月明かりに照らされていた。

 

「貝瀬?」

「よりによって、おまえか。諏訪」

 

 貝瀬直は、薄笑いを浮かべている。

 

「殺したのか?」

「ああ、殺したよ」

「逃げよう」

「は?」

 

 自分でも、なんでそんなことを言ったのか分からない。

 貝瀬の手を引いて、俺は歩き出した。

 自宅に招き入れ、服を渡す。血塗れの包丁と貝瀬の衣服は、まとめてゴミ袋に入れた。

 

「…………」

 

 着替え終えた貝瀬は、落ち着きなく手遊びをしている。

 

「行くぞ」

「どこに?」

「遠くに」

 

 ふたりで、夜行バスに乗って、一夜明かした。

 

「どこ? ここ」

「さあ」

 

 到着したのは、港町で。聞いたことない名前の土地だ。

 

「腹減った。貝瀬は?」

「オレも」

 

 貝瀬と一緒に、近くにあった定食屋に入る。

 港町らしく、魚料理ばかりのメニューだ。

 焼き鮭定食をふたつ頼み、水を飲んで一息つく。

 

「なんで、何も訊かないワケ?」

 

 貝瀬は、不思議そうにしている。

 

「聞いてほしいのか?」

「うーん。あんまり」

「じゃあ、訊かねーよ」

 

 しばらくして、定食が運ばれてきた。「いただきます」と声が揃う。

 

「美味いな」

「うん」

 

 食事に関して、めんどくさがりの貝瀬は、焼き鮭を骨ごと食べている。

 

「続いては、昨夜起きた殺人と見られる事件の速報です。三門市の————」

 

 定食屋のテレビが、ニュースを流した。

「オレのやつじゃん。早いなぁ」と、貝瀬が呑気なことを言う。

 

「緊張感ねーな」

「緊張したところでなぁ。捕まる時は捕まる」

「そりゃそうだろうがよ」

 

 俺は、どこかで貝瀬は犯人じゃないと思っていた。証拠なんてねーけど。

 

「ごちそうさま」

 

 ふたりで、定食屋を出た。

 

「諏訪、アレ見て」

「ん?」

 

 貝瀬が指を差しているのは、ボートの貸し出し所で。どうやら、ボートで海に出たいらしい。

 貝瀬は、財布を持ってないから、当然俺が払うことになる。

 俺たちは、ボートで海に行く。

 潮風が体を撫でた。

 

「好きだなぁ、海」

「へぇ」

「海辺に住んでる人は、山に死体を持ってくんだってさ。で、山に住んでる人は、海に持ってくとか」

「…………」

「どっちにしろ、見付かるんだろうな」

「おまえは、どうして殺人の罪を被ろうとしてんだよ?」

「秘密」

 

 貝瀬は、殺人を犯してないことを否定しない。

 海を見つめる目が、不意に俺の方を向く。

 

「オレが、諏訪のこと好きだって知ってた?」

 

 知らねーよ。

 

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