A: たぶん違う そうでもない
「バ〜█ラ、█ニラ、バ〜ニ█、求人、バ〜█ラ、バニ█でアルバイト!!」
「なんで農村にバ█ラトラックがあんだよ。費用対効果はどうなってんだ費用対効果は」
近づいてくるアドトラックに、まなもこの反応。
トラックは私たちの前で止まり、ハゲのアフリカ系の大男が降りてきた。
「なんじゃあこりゃああ!!」
「あ、あの……」
「話は後だ! とにかく、お前らを神社に連れていく! 乗れ!」
私たちは言われるままにトラックに乗せられ、神社に向かった。あの曲を流しながら。
「お前ら、あの祠壊したんか!?」
プラスドライバーである神主さんは私たちを見るなり、怒鳴ってきた。
「こ、壊したというか、壊れたというか、勝手に爆発四散しました」
「祠が勝手に爆発四散するわけないだろ!!」
ごもっともです。
「でも、本当に爆発四散したんです! まなも見たよね!?」
まなは小刻みに頷く。すると大男は
「もうダメだ……おしまいだぁ……」
と、膝と手をついた。
「ワシもできる限りのことはしよう。この村と、そこの禍々しいオーラを放ってるべっぴんさんは助かるかもしれん。だが⸺」
神主さんは私の方を向く。
「あんた死ぬわよ」
「死ぬ!?」
「ああ、こればかりはどうにもならぬ」
「そんな!」
「うらやましい」
まながぼそっと言う。
「ほとんどの人は死にたくないんだよっ!」
「まあ、今日ということではない。こういうのは時間がかかるんじゃ。そうじゃな、あの祠について説明しておくかの。この、
「それ長い?」
まなが失礼なことを言ったので、私は
「シー」
と咎めた。神主さんは話を続ける。
「それはそれは大層栄えていた。だが、ある日、大型商業施設がこの村にやってきた。その商業施設はこう言った。
『私はイオ█。すべての商店街を消し去り私自身も消えよう』
と」
「イオンって、あのイオン?」
私が聞くと神主さんは頷く。
「そうじゃ。█オンの物量、品質、価格いずれも商店街とは比べ物にならないものじゃった。店が1つ、また1つと倒れていった。そして消費者はイ█ンに依存せざるを得なくなった。こうして商店街は滅びたのじゃ。じゃが、イオ█側も経営が乏しくなり、宣言通り、イ█ンも消えてしまったのじゃ。それによる村人の恨みは凄まじいものじゃった。村人が次々と命を落とした。最初は多彼さんの一家、次に速色さんの一家……」
「どうして村人の恨みで、村人が死ぬんですか?イオ█関係者がまず死ぬと思うんですが」
「怨念には、商店街の怨念も混ざっていたのじゃろう。滅んだ直接の原因は消費者が商店街に来なくなったことじゃからな。それで、怨念を鎮めるために祠を建てたのじゃ。その祠があの祠じゃ。それをお前らは壊したのじゃ」
「ごめんなさい……」
私が謝ると神主さんは、
「こうなった以上、怨念を鎮める儀式に付き合ってもらうぞ。なぁに、挽肉になってもらうだけじゃ」
と言った。最悪です。VRでの経験からそれに意味はないと知っていながら、頬を抓らざるを得なかった。夢ならばどれほどよかったでしょう。
「救いはないんですか!?」
「ない。儀式にはお前の挽肉と血が必要なんじゃ。儀式の段取りも言っておこうかの。
STEP1: 祠を再建する。
STEP2: アホ毛超乳女の血を抜いて解体する。肉は挽肉にするんじゃ。
STEP3: 祠の周りに円形の溝を掘る。
STEP4: ベーコンをアホ毛超乳女の血に浸す。
STEP5: 巫女が「さらなにきたれ」と何度も唱えながら祠の戸を開ける。
STEP6: 4分44秒の間、巫女は唱え続ける。
STEP7: 戸を閉める。
STEP7: 巫女が『インターナル・スピリチュアル・コアをセキュア・コンテインメント・プロトコルでパーマネントリー・シールせよ』と言いながら、血に染まったベーコンを祠の戸に押し当てる。
STEP8: アホ毛超乳女の挽肉をSTEP3で掘った溝に満遍なく撒き、埋める。
巫女についてじゃが、現在、この神社にはいない。だから、そこの根暗長身ケツでか女にやってもらう」
「私?」
まなは自分を指して言う。
「なにやら邪気が凄まじいが、問題ない。わしを誰だと思っている? ドライバーじゃぞ。一夜漬けでも使えるようには調整してやるわい。抜き挿しは得意分野じゃ。松歳! お前はこれからSTEP1を行え!」
「は、はい!」
大男は応えると、作業に取り掛かるのか、バ█ラトラックに乗ってその場を後にした。あの曲を流しながら。
「お前ら2人はわしの家に来い! 案内して、泊めてやる! というか、ここまで外での立ち話で悪かった!」
「「あ、ありがとうございます」」
家に入り、一番奥の階段を登って、さらに曲がりくねった廊下を奥まで行った先の部屋に通された。
「ここじゃ」
和室。窓はない。
「まなと言ったか。お前は10時になったら自分の荷物を全部持って下の寝室に来い。それ以降は、鍵をして、この部屋の扉を開けるな。何があってもじゃ。捧げるのと取られのでは全然違うのじゃ。あと、声も出すな。いいね?」
「アッハイ」
すると、神主さんは出ていった。
「ねえ伊音、違和感に気付いた?」
まなが言う。
「そりゃー、祠とかプラスドライバーとかが喋るんだもん。違和感ばっかだよ」
「そうじゃなくて、「さらな」って単語。これ、サンスクリット語で「避難所」って意味で、仏教だと「帰依」と訳される単語なんだけど、神道の巫女が、どうしてサンスクリット語を用いた儀式をするのか……」
「混ざってるとか?」
「神仏習合。ありえなくはないか……。でも、この村自体もおかしい。稲穂が実っていたり」
「えっ? 今じゃないの?」
そういうもんだと思っていた。
「今はGW。これから田植えって時期だよ。初等部で稲作しなかった?」
うきす学園に水田はなく、体験した稲作はバーチャルで、時期も違う。生産区見学で実物は見たけど、スペースコロニーで屋内栽培なため、三期作で作られていた。地上の農業サイクルなんて知る由もない。
「それに、あの時聞こえていた『カナカナカナ』という蝉の声、その主は、ヒグラシ。ヒグラシの鳴く頃は6月下旬から7月。まだ稲は十分に育ってない時期」
「つまり、どういうことだってばよ?」
「わからない。けど、何かおかしい……」
10時になったので、まなは部屋を出て、私はドアに鍵を閉めた。それから3分くらい後。
ドンドンドンッ!!
「開けろ! デトロイト市警だ!」
予想外のが来たんですけどぉぉぉぉ!!
ドンドンドンッ!!
「FBI OPEN UP!!」
ドアの向こうから銃撃音や爆発音が聞こえてくる。何が起きてんの!?
落ち着け。こういう時は冷静になるんだ。
まなも言ってたけど、違和感か……。そういえば、この部屋、何か変。やたら奥にあるし、窓もない。ここで密室殺人でもやってくれって感じ。人間ぶっ殺しゾーンか?
ん?
待てよ。
人間ぶっ殺しゾーン?
私はある可能性に思い至って、棚を動かし、その下の畳を剥がす。そこにはハッチがあった。
ハッチだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!
█原ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!
ハッチあったぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!
なんか異様な数のお札が貼られててなんか怖いんだけど、ここで殺されるのを待つよりはマシか。
私はハッチを開けて、中に入ろうとした。そしたら胸がつっかえた。
「ひぎぃっ!」
痛い! ぴ゚ょーんと入ったから、自重で痛い! 今、全体重をおっぱいで支えている! Wカップがこんなところで災いしてくるとは……。
そして、上がることもままならない。どうしよう……。
そうこうしている間に、自重で段々と下にずり落ちて行き、落下。尻餅をつく。
「イタタ……」
2階分は落ちて、今、地下かな。ワープゲートくぐる時に渡されたライトを点ける。手回し充電式。すると、壁には、「ごめんなさい」、「だして」といった文字が無数に赤いクレヨンで書かれていた。
この文言からわかるのは、ここからは出られないということだけど、そうでもなさそうでもなさそうでもなさそうでもないということが、しばらく歩くとわかった。
明るいところに出た。下は池になっていて、この先に行くには池の上の一本道を通っていく必要があるんだけど、この一本道が、簡単に行けるものではなさそうだ。というか、SAS█KE。しかも横から放水での妨害あり。クリフハンガーに放水とか、もう無理だよね。
とりあえずやってみたけど、クワッドステップスの1個目が沈むやつであえなく落下。クリアさせる気ないよね。ちなみに、持ってきた電子機器は全て防水。
というわけで、まともに挑戦せずにアホ毛を回して飛んでいくことにした。これでも放水を避けるの大変なのよ。
こうして突破すると、着信あり。相手の名前は⸺「祠」。