A: あ、そうですね
池袋を過ぎ、この列車は副都心線に入り、新宿三丁目を過ぎた。
「案外続いてるわね、この線路」
と唯。
「横浜まで行こうとか言ってたしね。案外修理されているかも」
そうまきが言うと、列車の前方に大きな影。それはマンモスだった。
「マンモス!? 絶滅したはずじゃないの!?」
と私が言うと、唯はこう答えた。
「新宿はだいぶ時空が歪んでいて、所々、変な所へ繋がってるのよ。地下東京もその1つね。他には、梅田ダンジョンとか、南極とか、中野ブロードウェイとか、アガルタにも繋がってるって噂もあるわね。マンモスが出てもおかしくはないわ。肉は硬いから煮込みが良いわね」
いやおかしいでしょ。このマンモス、地底から来たとでも!?
「一狩りいく?」
とまき。
「いや、この人数で、武器も少ないんじゃ、無理でしょ」
と答える唯の腰には日本刀。
「じゃ、戻るか」
とまきが言い、私たちは最後尾を目指した。
最後尾の運転室のドアを開けると、そこはお風呂場で、お面の人が浴槽に入っていた。さすがにお風呂ではお面を取るようだ。で、素顔を見ると、気づいたことがある。まなに似ている。
「キャー! あんたらエッチ!」
お面の人はそう言いながらナゲットを投げてきたので、私たちは新宿三丁目まで逃げた。
「ハァハァ……こんな感じで変な所にハァ繋がっているのよ……」
新宿三丁目駅のホームで唯はそう言った。
「ハァハァ……ここまで逃げる意味ある……?」
と私。すると唯は
「てか、あと2人は?」
「え!? 来てない!?」
と私は振り返ったけど、ホームに上がるときに破壊したホームドアがあるだけだった。
「まあ、あいつらなら、死にはしないでしょ」
唯は信用しているようだ。
賢明な読者ならお気づきだろうが、逸れた理由はあの2人の足が遅いからである。しかし、この時の私たちはそれを見落としていた。
ホームは閑散としていて、案内板や電光掲示板が落ちている他は箱がハコッとしているだけだった。
「いつ来てみても、ここ、しばらく整備されてないはずなのに、状態良く残ってるわね」
と唯が言った。状態良い……?
私たちは近くの階段を登ることにした。
長い通路を通って、唯曰くそれほどでもないそうだけど、8番出口を目指す。え、E8?
すると、前方から逆バニーの女性が歩いてきた。
「異変だ……」
と私が呟くと、
「あんたが言うな」
と唯が言った。お忘れかもしれないので書いておくが、群馬の山中からここまで、私は全裸である。恥ずかしくないのかって? 慣れた。
「キャッ! 変態!」
逆バニーの女性は、そう叫び、ナゲットを投げてきた。流行っているのかな?
そして、ここも逃げるしかなかった。
なんとか逃げ切ったが、
「ここはどこ?」
迷ってしまった。なーんかさっきと雰囲気違うような……。
「寿司の匂いがする。ここは地下東京ね」
唯が言う。すると、前方から黒い制服を着て銃を持った人たちが靴をカツカツ鳴らしながらやってきて、私たちに気づくと、
„Halt!“
「止まれ!」
と隊長らしき人物が私たちを呼び止めた。
„Woher kommt? Was macht?“
「どこから来るのか? 何が?」
自動通訳機能があってよかった。なんか変だけど。てか、私、
唯は上を指差して
「
と答えた。大雑把だな。
しかし、向こうは自動通訳機能を使っていないのか、通じてないようだ。そして、銃を向けて撃ってきた。
唯はそれを避けると、対戦を申し込んで言う。
“Shall we talk in English?”
「英語で話しましょうか?」
„English?! Mach keine Witze. Gibt es einen Grund, warum Arier Befehle von einem Affenweibchen annehmen müssen? Ihr solltet dankbar sein, dass euch überhaupt ein Mensch anspricht. Nun, Affen würden das nicht verstehen. Ich spreche zu euch, weil der Oberbefehlshaber es mir befohlen hat. Auch der Kampf. Freut euch. …Hm? Akahara Yui?“
「英語!? 冗談を言うな。アーリア人がメス猿の言うことを聞かなければならない理由があるのか? 誰かが話しかけてくれることに感謝すべきだ。まあ、猿には理解できないだろうね。私は総司令官の命令で話をする。また、戦いだ。喜べ。...ん?赤原唯?」
男は差別意識丸出しで発言していたが、相手の名にようやく気がついた。
„Akahara Yui?!“
「赤原唯?」
„Die Weltdritte?!“
「世界3位?」
„On'on“
「オンオン」
„Die Führerin der Scarlet Right Hand?!“
「緋の右手のリーダー?」
„Chikuwa Daimyojin.“
「ちくわ大明神」
部下達がざわつき出した。誰だ今の。
„Keine Panik! Sie ist schließlich die Chefin einer Affenbande! Sie kann dem Arier, dem Übermenschen, nicht das Wasser reichen!“
「慌てることはない! 彼女は猿の一団のボスなのだから! 彼女は超人アーリア人にはかなわない!」
と彼が宥めようとするも、
„Kommandeur, seit wir hier sind, haben wir diese Affenbande jemals besiegt?“
「司令官、私たちがここに来てから、この猿の一団を倒したことがありますか?」
„Das ist ein Größenunterschied, Major. Unsere gesamte Armee hat nur Bataillonsstärke.“
「それは規模の違いだ、少佐。我々の全軍は大隊の力しかない。」
„Ein Bataillon in Truppstärke, lol.“
「兵力では大隊だ(笑)」
„Die zehn Leute hier sind das ganze Bataillon.“
「ここにいる10人は大隊全員だ」
„Tanmen an den Nachtbuden!“
「ナイトスタンドのタンメン!」
と、慕われているのか舐められているのか部下は口々に言う。すると司令官は
„Ruhe!“
「沈黙!」
と言いながら机をドンと叩いた。そんな机あったっけ?
„Hauptsache gewinnen! Ich gewinne! Fangen wir schnell an!“
「メインは勝つこと! 私は勝つ! 早速始めよう!」
と司令官が言うと、部下の1人は小言を言った。
„Ich halte das für unvernünftig.“
「それは理不尽だと思う」
„Sei ruhig!“
「静かにしろ!」
そう言って、彼はこっちを向いたが、次の瞬間、右側の壁に穴が開き、サメが現れ、彼の部下の1人が持って行かれた。私は尻餅をついた。
„Du Fisch, wen isst du da!“
「この魚、誰を食っているんだ!」
司令官はサメに発砲。しかし、サメの硬い肌はそれを弾く。
「ダメ! サメに銃弾は聞かないわ! 鼻を殴らないと!」
そう唯が忠告するが、司令官には通じていない。
サメは司令官に襲い掛からんとする!
向こうからバイクのエンジン音。程なくその音の主が現れた。
「中村さん!」
私はその名を叫ぶと、
「「「「「「「「「「「誰?」」」」」」」」」」」
と他全員が口を揃えて言った。
中村はバイクから飛び上がり、サメの鼻にライダーキック! サメは私たちの後方に吹っ飛んでいった。私は突っ込んできたバイクに轢かれた。
そのまま華麗な着地を見せた中村は前述の問いにこう答えた。
「通りすがりのヒーローだ」
司令官は食われていた部下を抱え、
„Danke für deine Unterstützung.“
「ご声援ありがとうございました」
と言い、部下達の方を向き、
„Wir ziehen uns zurück. Wir müssen unsere gefallenen Kameraden betrauern, anstatt mit Affen zu spielen.“
「我々は後退している。猿と遊ぶのではなく、亡くなった仲間を悼まなければならない」
と言うが、抱えられた部下は
„Ich lebe...“
「私は生きている...」
と言った。それが司令官の耳に届いたのかはわかんないけど、彼らはサメが飛んていった方に歩いて行った。
中村は唯の方を向き、
「お前は、邪教クズル・ロッソのグル、赤原唯!」
と言う。当然、唯の反応はこう。
「え、邪教って何?」
「とぼけても無駄だ! ここで貴様らの野望を食い止めて見せる!」