※この作品はR-18です。

異聞帯『受胎都市トウキョウ』 混沌王・人修羅の罠   作:緑茶わいん

3 / 5
第3話

 服従させた宇津見エリセを『エリセ・ヤクシニー』として仲魔──部下とした後。

 混沌王・人修羅はギンザの地下街にあるBarマダムを訪れていた。

 夜魔ニュクスの経営するその店で、グラスを片手に本のページをめくっていると、

 

「どうした、我が主よ。悪魔全書など飽きるほど眺めただろう?」

 

 彼の背に胸を押し付けるようにして、ランサー・スカサハが後ろから本を覗き込んだ。

 黒を基調とする彼女の装いはバーの雰囲気にも良く似合っている。

 人修羅も過度な反応は示さず、静かにとあるページを示す。

 それだけでスカサハは意図を察して「ああ」と唇を歪ませた。

 

「そういうことか。……確かに、それは少々面白いかもしれんな?」

 

 悪魔全書に記されているのは人修羅の仲魔──つまりは配下たちの情報である。

 しかし、示されたページには他と異なる点があった。

 悪魔ヤクシニー、エリセと合体した彼女のページには血のような赤い色の墨で大きな×印が記されている。

 マシュと合体したエンジェルのページも、同じく。

 

 サーヴァントとの悪魔合体はイレギュラーな行為。

 

 そのためか、サーヴァントと合体した悪魔は悪魔全書を用いても呼び出すことができなくなるのだ。

 それは、エリセやマシュが代えのきかない唯一無二の存在である証とも言える。

 

「懐かしいな」

 

 艶めいた唇をゆっくりと開いたスカサハは、その指で本のページをめくった。

 『スカアハ』。

 その悪魔のページにもヤクシニーやエンジェルと同じように×印がある。

 

「私がお前のものとなったあの時。……今となってはもう、遠い昔のようだ」

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 ランサー・スカサハははぐれサーヴァントとしてこの異聞帯へと召喚された。

 カルデアと合流するため、襲い来る悪魔を打倒しながら時を待っていた彼女だったが──その前に現れたのは藤丸立香とマシュ・キリエライトではなかった。

 

「……お前は」

 

 漆黒の衣装を纏った女。

 顔や肌はマネキンのようである種の不気味さを感じさせるも、言い換えれば作り物のように美しいということで。

 彼女の纏う尋常ならざる存在感に見惚れてしまう人間も少なからずいるだろう。

 

 しかし、スカサハが感じたのは別の印象。

 

 彼女の由来は神話における影の国の女王。

 そして、正史とは異なる流れをたどったこの世界の『彼女』もまた。

 

「そうか。……お前は、この世界の私か」

 

 そう、その悪魔こそが『スカアハ』だった。

 

 姿かたち、能力は違えど同じ由来を持つ者同士。

 奇妙な親近感がその事実を直ちに導き出し、

 

「ここ数日、私をどこかから『視ていた』のはお前だな? 目的はなんだ?」

 

 問われた悪魔は当然のことのように、スカサハの興味を惹く返答を紡いだ。

 我が主ならばお前を殺せる。

 自分を殺せる存在との邂逅、それを待ち望むスカサハにとって、それは願ってもない話で。

 

「いいだろう、連れて行け。その主とやらの元ヘな」

 

 サーヴァントとなった今のスカサハに主はいない。

 これが藤丸立香と出会い、槍を預けた後であればあるいは多少の逡巡はあったかもしれないが──今の彼女には「マスターの来訪を待つ」という選択肢は、強者との仕合いの前では取るに足らないものでしかなかった。

 

 スカアハの案内に従い敵地へと赴いたスカサハは、そこで『彼』と出会った。

 己の運命を変えることになる相手、人修羅と。

 

 

 

 

 

 

「なるほど。お前がこいつの主か」

 

 玉座に座った青年を前に、女王は凄絶な笑みを浮かべた。

 血沸き肉躍る。

 一見、妙な格好をした細身の男でしかないというのに──このプレッシャーはなんたることか。

 面白い。

 期待外れだったらどうしてくれようかと思っていたが、一目でわかる。

 

 彼は、死力を尽くしてもなお打倒しうるかわからない『強者』だ。

 

 槍を構え、眼光を鋭くするスカサハに対し、人修羅もまた玉座から起立することで応じた。

 並の相手であれば立ち上がる必要などない。

 『王』なりの、強者に対する敬意に「感謝する」と心からの笑みを浮かべて、

 

「────参るっ!!」

 

 死闘、と呼ぶよりほかにない戦いだった。

 磨き続けてきた武技はもちろん、原初のルーン、さらには宝具を駆使してなお決定打にならない。

 海獣の骨から作り出された二本の魔槍がただの腕に捌かれ、弾かれる。

 必死に作り出した小さな隙に穂先をねじ込み、小さな傷を積み重ねるのが精いっぱい。

 同時にスカサハもまた無数の傷を負うこととなり、

 

 接戦だった。

 互いに疲弊し、伏せ札を減らしながら互角の戦いを演じて。

 勝敗を分けたのは、人修羅の得意とする大技。

 

 彼を中心に前方へと放射状に広がっていく光の雨。

 疲労によって動きのキレを無くしていたスカサハに回避しきる術はなく、とうとう、ぼろぼろになったその身を床に横たえて。

 

「殺せ」

 

 心からの満足感と共にそう告げた。

 彼女を無言で見下ろした人修羅はしばし、返答を遅らせた後で、

 

「なっ……貴様!?」

 

 スカサハの身体を軽々と抱き上げ、どこかへと運び始めた。

 連れて行かれた先は豪奢なベッドの上で。

 傷の治療を施されたかと思えば、強引に唇を奪われて。

 

 戦いぶりと同様、雄々しく熱烈なその舌使いに呼吸が乱れるのを止められなかった。

 一分以上ものキスの後、自由になった唇は唾液で艶めいていて、

 

「ふん。……なるほど、そちらが好みか。構わないが、私は閨でも無双だぞ?」

「────」

 

 望むところだ、とばかりに、彼はスカサハの身体を押し倒した。

 

 

 

 

 

 

「んっ……♡♡」

 

 大胆ながらも繊細な指使い。

 フェザータッチで性感を引き出すと絶妙な力加減で快感を高めていく。

 興奮が高まり、感度が十分になると「あっ、はっ……♡♡」荒々しく乳首をひねり上げたり、秘所をかき回したり。

 組み敷かれてみると、見た目と裏腹の力強さにも惚れ惚れする。

 無数に槍を交えてきた武骨な戦士たちともまた違う、実用的で、限りなく引き締まった体躯。

 力をこめてもびくともしない頑丈さを持ち、強い雄のにおいを発散させながらも、無駄な汗臭さはない。

 

 落ち着いた物腰と、女の扱いを良く知るテクニックも良い。

 静かな瞳に見下ろされているとそれだけでぞくりと背筋が震え、雌の喜びに胸が高鳴る。

 

 やられっぱなしは性に合わないと指を伸ばし乳首を愛撫すれば、かすかな息遣いと共に快感が示される。

 若干の達成感と共に胸や指にも舌を這わせ、股間に手をのばす。

 ズボンから引っ張り出された肉棒は今まで見た中でも指折りに逞しいもので、思わずほう、と見とれてしまった。

 おまけに硬さもすごい。

 挿れられれば、その存在感に「支配されている」実感を得ずにはいられないだろう。

 その竿にも舌を這わせ、丹念に責める。

 すると、人修羅もまたスカサハの秘所へと舌を伸ばしてきて「はぁっ……!♡♡」気を抜けば簡単に身体がのけぞってしまう。

 

 雄と雌の色香が寝室に満ち、互いの息遣いが興奮をよりかき立てる。

 

 貪るように唇を合わせれば、鷹揚に応じられる。

 執拗とも言える長さで唾液を交換すると、知らず息が切れてしまっていた。

 憤りを覚えながら男の胸を押して馬乗りになる。

 幾多の勇士のモノを呑み込んできた──それでいてなお美しさを保つ秘所をひくつかせながら、上から剛槍を呑み込んで。

 

 大きい。

 

 想像以上の存在感に全身の力が抜けそうになる。

 ただでさえ自分を負かした男だ。

 本能的に身を委ねてしまいそうになるというのに、うかうかしていては情けない羽目になりかねない。

 強いて笑みを浮かべ、腰をくねらせ、膣を締め付けて男の性感をかき立てて、

 

「あっ、あああっ!?♡♡」

 

 軽く胸を撫でられただけで、必死に整えていたバランスが崩壊した。

 下からずん、と突き上げられ、そのままリズムを持って行かれてしまう。

 主導権を取り戻そうとしても、子宮のきゅんきゅん♡ という疼きに思考が乱されて。

 演技ではない、自身の発する本気の喘ぎ声がうるさいほどに響き渡る。

 

 ──男など、他愛無いものだと思っていた。

 

 その逞しさと純粋さに焦がれる夜もあるが、彼らはみな子供のようなもの。

 美しい肢体と甘い吐息、極上の性技があれば篭絡できる。

 赤子のように自身を求める逞しい男たちの姿に自尊心を満たしてきたスカサハだが、

 

「まったく……恐ろしいな、お前は。この私を閨でまで翻弄するとは」

 

 本当に『強い』男の前では女など簡単に雌に戻ってしまうらしい。

 この雄に屈服したいと魂が、本能が訴えてくる。

 プライドにかけて簡単に服従などしないが、困ったことにどうにも勝てそうにない。

 

 マウントポジションを取ったまま腰を『振らされ』、子宮に濃い精を注ぎ込まれる。

 

 嬌声と共にぎゅっと肉棒を締め付け、一滴残らず飲み干して。

 強烈な快感の波にさらされている間にベッドへと押し倒される。

 はしたなく左右に足を開かされたまま組み敷かれて小刻みなプレス。

 

「あああああっ!?♡♡」

 

 あん、あん♡♡ と小娘のような声が止まらない。

 呼吸するだけで精一杯の甘く激しい官能の中、生娘のようにシーツをぎゅっと掴む。

 もう一方の腕は無意識に彼の背中に回され、足は逃がさないとばかりに腰をホールド。

 

「ふふっ♡♡ だが、私を本気で堕としたければ最低でも夜通し腰を振り続けてもらうぞ?♡♡」

 

 余裕を装い囁いてみたものの──結論から言えば、先に音を上げたのはスカサハのほうだった。

 人修羅は精力も絶倫。

 限界まで戦った後とは思えない貪欲さでスカサハの身体を貪り、髪や身体や膣に精を放った。

 獣のように四つん這いにされたり、恋人同士のように抱き合いながら犯されたり。

 精と愛液にまみれた竿を舌で丹念に奉仕させられたり、ぎゅっと両手をつないだまま「逃げられない」ことを強烈に意識させられ強烈なキスを受けたり。

 合間に酒やつまみを流し込まれ、放り込まれ、髪、額、耳──身体中のいたるところを優しく撫でられて。

 

 ──気づけば、ベッドにだらしなく転がったまま微睡んでいた。

 

 完膚なきまでに負けたのはいったいいつ以来だろうか。

 思ったよりもそれは快いもので。

 

 強者による死を望んでいたはずなのに、久々に少女のように幸福な眠りを迎えられた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 目覚めると十分な食事と入浴を与えられて。

 人修羅は酔狂なことに「望むならまたかかってこい」と告げてきた。

 自分が勝てばまた身体をもらう、と。

 

 スカサハは敗北の記憶に頬と身体を熱くさせながら「後悔するなよ」と彼を睨みつけ──。

 

 何度も何度も挑んでは、負けた。

 負けるたびに抱かれ、逆転を目論んでは抱き潰された。

 戦士としての屈辱と女としての喜びを注ぎ込まれる日々。

 囚われているような、そうでないような毎日。

 

 それが日常になりかけた頃、スカサハはもう一人の自分──スカアハが人修羅に奉仕する姿を目撃した。

 

 かの『王』はどこでも女と交わる。

 スカサハ自身、玉座の前でそのまま犯されたこともある。

 ティターニアなど、情婦を兼ねた部下が数多くいることもわかっていた。

 だから不思議はないのだが、同一存在がかの男に傅く姿には感じるものもあった。

 

 雄々しい肉槍が柔らかな双丘に包まれ、唾液を垂らされ、舌を這わされている。

 

 影の女王にはふさわしくない至福の笑み。

 跪くスカアハを見下ろした『王』はその手のひらで女の頭を撫でる。

 優しくも、少し乱暴な手つき。

 幾度となく抱かれた経験からその感触を自分のことのように想像して、きゅん、と胸が疼いた。

 

「面白いことをしているな。私も交ぜてもらおう」

 

 もう一人の自分と張り合うようにして膝をつき、自慢の双丘で彼を包み込む。

 嗅ぎなれた雄のにおいに陶然となりながらも丹念に亀頭を舐め上げ、吐き出された精を口いっぱいに頬張ると──待ちに待った手が頭に載せられた。

 自然と、口元が緩む。

 濃厚な白濁を残らず飲み干しながら、スカサハは「ああ」と理解した。

 

「……私としたことが。どうやらお前を本気で愛してしまったらしい」

 

 頭を振ると身を離して立ち上がる。

 どうしたのかと尋ねてくる人修羅を「構うな」と突き放した。

 

 

 

 

 

 

 サーヴァントである今のスカサハは強者と戦い、殺されることを望んでいたはずだ。

 女王としてのスカサハにはもっと気高い矜持があったはずだ。

 

 なのに、別の想いが生まれてしまった。

 

 雌として強い雄に屈服し、その肉棒に奉仕したい。

 強者に傅き、彼の元で存分に槍を振るいたい。

 

「なにを、いまさら」

 

 想いを振り払うように人修羅に挑んでは敗れ、抱かれた。

 しかし、何度抱かれても今までのようにのめり込むことはできなかった。

 むしろ、雌としての欲求の高まりに苦痛を覚えるばかりで。

 

「……くそっ!!」

 

 こんなことなら人修羅になど出会うのではなかった。

 スカアハの誘いに乗らず、カルデアと合流して異聞帯攻略に乗り出していれば。

 もう一人の自分があの男に傅く理由も心情もわかる。

 だからこそ、知らないままでいられれば、変わってしまう恐怖など覚えずに済んだのに。

 

 変わらず戦士として在るならば敗北をそのままにはしておけない。

 

 槍をもって人修羅を下し、その心臓を貫けば強いスカサハに戻れるかもしれない。

 しかし、実際には戦うたび彼我の差は開いている。

 経験値の蓄積の差、だけでないのもわかっている。

 戦いに集中できていない。

 

 こんなことではいけないというのに。

 

「ずいぶんと荒れているようね」

 

 人知れず壁に拳を叩きつけたところで、優しく声をかけられた。

 ティターニア。

 人修羅の女の一人であるその女は、スカサハのすぐそばまで歩み寄るとこう言った。

 

「その悩み。仮初の存在に過ぎないことが理由の一つならば、肉体を得てみてはどうかしら?」

「なんだと? ……肉体を?」

「ええ。私たちには『悪魔合体』という手段があるの。正確には人修羅様には、と言うべきかしら」

 

 生きた悪魔と一つになることによって英霊は受肉し、新たな生を得ることができる。

 もちろんそれは別の存在と同化するリスクを孕んでいるのだが。

 

「そんなことができるのか。……ならば、私は」

 

 スカサハは悩みながらもその誘いに乗ることにした。

 提示された合体相手がスカアハ──この世界における自分だったせいもある。

 もとより起源を同じくする自分同士。

 一つになってもそう変わることはないだろうという楽観。

 

 それから、サーヴァントという停滞した存在への嫌気。

 

 受肉すれば『先』に進むことができる。

 カルデアとの、マスターとの決別という意味でもそれは大きな変化だ。

 

「後悔はしないか?」

 

 向かい合ったスカアハからの問いには「無論だ」と答えた。

 

「始めてくれ。……さっさと済ませてしまおう」

 

 合体を終えると、スカサハは自身の身体に漲る新たな力を感じた。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「身体が軽い。……心も、驚くほどに凪いでいる。これが悪魔合体なのか?」

 

 呟きにはティターニアが「いいえ」と答えた。

 

「あなたの心はあなたのままよ。……スカアハはあなたに心を『渡さなかった』のでしょう?」

「ああ」

 

 言われてようやく、その通りだと気づいた。

 記憶も想いもなに一つ引き継がれてはいない。

 胸に残るそれらはすべてスカサハ自身のものだ。

 合体に同意しながら、スカアハは敢えて能力だけをスカサハに委ねた。

 

 ──何故か?

 

 答える者のいない、正解のわからない問いに「愚問だな」と笑う。

 答えなど一つしか存在しない。

 必要ないからだ。

 想いも記憶も既に十分に持っている。

 加えて挙げるなら、自分の想いを──半分は引き続き自分だとはいえ、他者に委ねるのは癪だったからか。

 まったく、我ながら面倒臭い。

 

「人修羅よ。もう一度お前に挑ませてもらおうか。……今度は、今までのように行くと思うなよ」

 

 『王』の配下と一つになりながら、その『王』に槍を向ける。

 矛盾した行動にも人修羅は異を唱えず、ただスカサハの挑戦を受けた。

 

 これまででもっとも激しい死闘。

 

 身体能力を引き上げられ、一個の独立した存在となったことで魔力も安定した。

 飛躍的に強くなったスカサハは思う存分槍を振るい、そして──敗北した。

 

「私の負け、か」

 

 初めての戦いと同じく床に転がったまま、息を吐く。

 近づいてきた『王』が手を差し伸べようとするのを「不要だ」と断じて。

 最後の力を振り絞って身を起こすと、その足元に跪いた。

 

「心が嘘のように晴れやかだ。……今ならば素直に、お前に槍を預けられる」

 

 それはエリセやマシュのように「誰かの忠誠心が混ざったため」の行動ではない。

 スカアハは自身のそれを全て自分で持って行った。

 だからこれはスカサハ自身が望み、選んだ道。

 

「新たに得たこの生、お前を愛し、お前に仕えるために使いたい。……受け入れてくれるか?」

 

 返答は、さっぱりとした笑みを伴う「イエス」だった。

 たったそれだけのことで胸が躍り、子宮が疼く。

 

「ありがとう。このスカサハ──いや、スカサハ・スカアハはこれよりお前の槍であり、お前の女だ。今後ともよろしく頼む、我が主」

 

 こうして、スカサハあらためスカサハ・スカアハは人修羅に仕えることになった。

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

「計画も進んだことだし、少しはゆっくりできるのだろう? ……寄り道はどうだ、主よ?」

 

 Barを出た後でホテルに誘うと、人修羅は快くそれに応じた。

 部屋に移動し、ドアを閉じると、ベッドに向かう間も惜しいとばかりに口づけを交わして。

 

「……そうだ。もう奴らを騙す必要もないのだったな」

 

 スカサハは偽装用のルーン効果を解除した。

 ランサーとしての姿は今や偽り。

 本当の彼女──『スカサハ・スカアハ』はスカアハの衣装を纏う。

 といっても、偶然か、あるいは同じ自分であるからか、マシュやエリセほどの変化はない。

 

 戦闘時や素顔を隠したい時は石膏のような仮面を被ることもあるが、今は止めて。

 

「愛しているぞ、我が主♡♡ ……こんなこと、今更告げるまでもないだろうがな♡♡」

 

 何度でも口にしたくなってしまうのは、本気で彼に惚れている証拠だ。

 彼の首に腕をまわし、自分から唇を寄せてさらに何度もキスを強請ると──強引に抱き上げられてベッドに運ばれて。

 せっかく纏った衣装を一つずつはぎ取られていく。

 

「ああ♡♡ ……邪魔が入らないのはいつぶりだろう♡♡」

 

 彼の顔、声、におい。

 存在のすべてが胸を高鳴らせる。

 合体しても記憶は引き継がなかったものの、身体の『弱点』は引き継がれてしまったのか、合体後のスカサハは今まで以上に人修羅の責めに弱くなってしまってしまった。

 二人分の性感、二人分の性感帯を人修羅は的確に責めてきて「あああっ!!♡♡」簡単に喘がされ、ぞくぞくと身を震わせてしまう。

 つんと勃った乳首は軽くつねられただけで全身を蕩けさせ、強く引っ張られれば押し流されるように快楽を流し込まれてしまう。

 

 仕返ししようと指や唇を向かわせるも、あるいは彼にとっては「じゃれられている」程度の認識か。

 

 反対に、二本の指が秘所をかきまわしながら親指がクリトリスを責めたてるとスカサハの身体は簡単に絶頂に達して。

 合体前より一回り大きくなった胸で竿を包み込みながら口淫を披露すると、あの手のひらで頭を撫でてくれる。

 熱い精を嚥下し、睾丸や尻穴にも舌を這わせて。

 指で丹念に扱き上げた竿が再び精を吐き出せばそれも余さず舐め取っていく。

 

 女であれば誰もが羨むような極上のプロポーション、匂いたつ肢体のすべてが『王』の指に委ねられ、舌にあらゆる箇所が味わい尽くされる。

 とろとろの蜜も人修羅専用だ。

 かつては多くの男を相手にしてきたが、これからはもう、仮に主の命令でもない限りは誰も他に誰も相手にする気はない。

 

 人修羅の剛槍専用に作り変えられた秘所を左右にぱっくりと開くと奥深くまで竿を受け入れて。

 その大きさ、硬さ、長さと脈動に「あぁ……っ♡♡」と恍惚を覚える。

 

 マシュにエリセ、人修羅のものになれた女たちは幸せだ。

 

 平和な時代はもちろん、戦乱が当たり前だった時代から考えても類稀なこの素晴らしい雄に傅き、奉仕し、身を委ねることができるのだから。

 

 強者との仕合い、そこからの死という望みを捨てた身は軽く快い。

 

 代わりに抱いた人修羅への忠誠、そして愛はスカサハに柔軟性と、今まで以上の強さを与えた。

 戦士であろうとも、女に男と同じ生き方はできない。

 単純に「向いていない」。女であるならば女らしく、別のやり方、あり方がある。

 わかっていたつもりだったそのことをあらためて実感し、身体と心に表すことができた。

 

「主よ。せっかく二人きりになれたのだから、この身が疲れ果てるまで……たっぷりと、抱いてくれるのだろうな?♡♡」

 

 返答の代わりだと言うかのような激しいピストン。

 ダブルベッドが大きく軋む音に「あぁっ♡♡」と笑みを浮かべて、

 

「ベッドを壊すなよ? この身体は、壊すくらいのつもりで責めてくれて構わないが、な♡♡ っ、あっ、あああっ♡♡」

 

 さらに激しくなる軋み。

 たまにはホテルでの行為も悪くはないが、さすがにここのベッドは人修羅とスカサハの交わりに耐えられるように造られてはいないか。

 かと言ってあの寝室は頻繁に邪魔が入る。

 特にティターニア、マシュ、エリセは強敵だ。

 人修羅に仕えられる喜びは筆舌に尽くしがたいが、ライバルが多いというのは考えものである。

 

 より多くの寵愛を得るためにはより淫らに、より美しく、より積極的に在らねばならない。

 

「壊すのはまずいが、せっかくの部屋だ、目いっぱい使わせてもらうとしよう♡♡ 隅から隅まで、な?♡♡」

 

 窓ガラスに手をついて夜の街を見下ろしながら、秘所を後ろから責められる。

 壁を背に立ったまま挿入され、抱き合いながら絶頂する。

 ドアに続く廊下で四つん這いになったまま、後ろから覆いかぶさられるように犯される。

 浴室でシャワーを出しっぱなしにしたまま、湯気の立つ中で何度も膣内射精される。

 

「ああっ♡♡ はっ♡♡ あっ♡♡ あああっっ♡♡」

 

 嬌声は抑えない。

 どのみち抑えきれないのだから、屈服を宣言するように甘く高らかに響かせる。

 隣に客がいても構わない、彼らにも聞かせるように、愛しい男をとにかく求めた。

 

 永い時の中でようやく手に入れた真の安らぎ。

 

 死以外の形でそれが訪れるとは思ってもみなかった。

 髪に、顔に、胸に、子宮に、精が吐き出され雄のにおいと痕を刻みつけられるのがたまらなく嬉しい。

 槍を手にすることを忘れたわけではもちろんない。

 それでも……この、女の喜びを手放すことなどもう考えられない。

 彼の腕の中はほんの一時、仮初の居場所として求めるものではない、永劫と信じ、そのために戦うに値する場所だ。

 

「射精してくれ、主よ。私の膣内に、一滴でも多く、お前の精を注ぎ込んでくれっ♡♡」

 

 仮の肉体に過ぎないサーヴァントは通常、妊娠しない。

 しかし、悪魔合体によって受肉したスカサハたちにその法則が通用するかどうかはわからない。

 少なくとも彼女の子宮は主の精を望んでいたし、それが注ぎ込まれるたびに歓喜に震えた。

 避妊などするどころか、することを考えもしないままに、スカサハは人修羅とひたすらに交わり続けて。

 

 ──朝日。

 

 部屋のあちこちに行為の残滓。

 快い疲れと共に寝そべったスカサハは、微睡みの中で一つの夢を見た。

 

 膨らんだ自身の腹を撫でる、スカサハ自身の姿。

 

 人修羅の子を授かる。

 紛れもなくそれは、彼女が新たに抱いた『夢』の明確な形であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。