異聞帯『受胎都市トウキョウ』 混沌王・人修羅の罠 作:緑茶わいん
「人修羅様に感謝してくださいね、先輩?」
「そうよ。本当ならあの場で殺されていたんだから」
──あれから。
王にも思うところがあったのだろうか。
特別に助命を受けた藤丸立香は混沌王の拠点・その一室を与えられた。
大きなベッドの他、一通りの家具は揃っており待遇は悪くない。
監視役兼世話係として付けられた二人の言う通り、立香は敗軍の将と言うべき立場なのだから。
今は命が助かったことを喜ぶべき。
人修羅が、この異聞帯における兄であった衝撃はまだ収まっていない。
彼になにがあってあんな姿になってしまったのか。
立香たちの歴史とこの歴史とでなにが分岐点になったのか。
ともあれ考えるべきは脱出あるいは説得だが、
「……これ、外してもらうわけにはいかないかな?」
「だめです」
彼の両腕には枷が嵌められ、そこから伸びる鎖は床に打ち込まれた楔と繋がっている。
英霊ならともかく、立香の腕力では外すのは至難だろう。
一縷の望みと発した懇願も、二人の美少女にくすりと笑われただけ。
マシュ──マシュ・エンジェルとエリセ──エリセ・ヤクシニーは共に正装をオフにし、夜着に近いドレスを纏っている。
ベッドの上、立香の両サイドに陣取る姿は「両手に花」のようだが……その実これは単に、捕虜を嬲るための態勢に過ぎない。
人修羅に抱かれて『女』になったせいだろうか。
それとも、悪魔合体とかいうシステムで女悪魔と一つになったせいだろうか。
妖しい色香を加えた少女たちのにおいはそれだけで立香の興奮を誘って、
「っ」
ズボンの下で密かに勃起した肉棒を細い指がくすぐる。
「ねえ、覚えているわよね? あんたに新しい魔術がかけられたこと♡」
◇ ◇ ◇
エリセの囁き。
もちろん、忘れているわけがない。
マザーハーロットとかいう仮面の女悪魔は立香にさらなる魔術をかけた。
それは、
「先輩は、射精するたびに魔力と年齢を吐き出してしまう体質になったんです♡」
「しかも、吐き出すタネがある限り射精し放題♡ 良かったわね?」
「ぐっ、ううっ!」
別の指が円を描くように乳輪をなぞり。
首筋にはふーっ♡ と息が吹きかけられる。
男の喜ばせ方を心得た少女たちにかかれば初心な少年などひとたまりもない。
魔術のせいで常に「溜まっている」状態にされている立香はぞくぞくと身を震わせる。
「やめろ、やめるんだマシュ、エリセ……っ!」
「あら。『やめてください』でしょう?」
「くすくす♡ こうやっていじめる相手としてなら、先輩でもけっこう楽しめそうです♡」
ジッパーが下ろされ、下着の中からペニスが引きずり出される。
平均的な男子レベルはあるはずのそれを見下ろした二人は、
「ちっちゃい♡」
彼女らの王と比較した率直な感想を口にする。
左右から笑われながら、緩く作られた指の輪で竿の表面を嬲られる。
優しい手つきのはずなのに、それだけで精液が上ってきそうになる。
唇を噛んでそれを堪え、はぁはぁと息を吐き出せば、
「立香? 早漏は女の子に嫌われるわよ?」
「でも、いいですよね? 最後にこうやって気持ちよくお射精できるんですから♡」
マシュとエリセの唇が左右の耳を食む。
耳を舌で愛撫されながら、勃起した乳首をシャツの上から弄られ、さらに竿への愛撫。
身体のぞくぞくが止まらなくなり「あっ、ああっ!?」と嬌声めいた悲鳴を何度も上げてしまう。
堪えられない。
今のマシュたちがそれを見逃すはずもなく、
「ほら、射精しちゃいなさい♡」
「~~~っ!!♡」
下半身が大きく跳ねると同時に、亀頭から大量の白濁が吐き出された。
気持ちいい。
普通の射精の数倍に及ぶ快感。
吹き上げるように飛び出した精は放物線を描いて落ち、ベッドのシーツをべっとりと汚す。
五秒近く射精が続き、余韻の脈動は一分近く収まらない。
身体全体がくらくらして、熱を帯びたようだ。
「へえ、けっこう量があるんですね。先輩、いつもこのくらい……射精せませんよね?♡」
「っ、はぁっ、はぁっ……」
強烈な快感を受けた立香は答えるどころではない。
必死に呼吸を整えながら「これは危険だ」と本能的に感じる。
その感覚は間違っておらず、
「見てみなさいよ立香、あんたの身体──ちょっと子供に近づいたんじゃない?♡」
「っ!」
特異点・異聞帯攻略と共に鍛えてきた身体が巻き戻っている。
時間に換算するなら一年といったところか。
この程度ならば大きな変化はないが……部屋の鏡を横目にすれば、死線をくぐったことによる精悍さが薄れ、どことなくあどけなさの残る顔と目が合った。
「魔力も減って……このままだと先輩、礼装も使えなくなっちゃいますよ?♡」
「そんなこと……んんっ!?」
射精を続ければ体力も魔力も落ち、脱出の手立ても失う。
あらためてそう認識した立香は「これ以上射精してなるものか」と決意を固めるも……それをあざ笑うように、後頭部に柔らかな感触。
マシュが後ろから抱きしめるようにして立香を拘束したのだ。
柔らかい。
今まで、アクシデント以外でほとんど触れることのなかった膨らみがはっきりと押し当てられている。しかし、それは愛情から来る交歓ではなく。
「わたしはこうやって、後ろから先輩の乳首をいじめて……♡」
「私は前からおちんちんを扱いてあげる♡」
マシュにはだいぶ及ばないものの、前から押し当てられた膨らみもまた思った以上に柔らかく。
二人のにおいにダイレクトに包まれた立香は、大量射精を経てもなお勃起したままのペニスを痛いほど硬くさせた。
マシュの両手が乳輪と乳首をねちっこく弄り、エリセの手が今度はしっかり竿を握り込む。
絶妙に力加減と速度を変えながらの手コキ。
性感を刺激し、一気呵成に射精へと向かわせるようなそれに、立香は「ぐっ、ああっ!」と悲鳴を上げてしまう。
「先輩♡ 射精してください♡」
「立香♡ 射精しなさい♡」
甘い囁きに今の状況がわからなくなり、本能が抵抗を手放そうとする。
なけなしの理性を総動員して「駄目だ」と言い聞かせるも、そんな抵抗はもって十数秒。
「あっ、あああっ!?」
「あはっ、射精た射精た♡」
あっさりと二度目の精液が吹き上がった。
ドレスをべっとりと汚されたエリセは着衣を脱ぎ捨てながら、シャツ越しに立香の胸を撫でて。
「ほら、また可愛くなったわよ?♡」
「う、うう……っ」
もはやカルデアに入った頃よりも幼くなってしまったのではないか。
大人の色気を手に入れたマシュ、エリセと比べると子供っぽさが目立ち──少女たちに弄ばれている劣等感が強く刺激される。
「先輩? そんな泣きそうな顔をしていてはまるで小さな子供のようですよ?♡」
さらに少年の心を弄びながら、マシュは笑顔で道具を手にする。
柔らかさと弾力を備えた材質の性玩具。
女性の膣を模していると一目でわかるそれは、
「これはですね、実はわたしのおまんこを象ったオナホール♡ なんです♡」
「私のおまんこオナホもあるわよ?♡」
ほらほら、とばかりに晒されたそれについ視線を向けてしまい、その形から「邪な想像」をしてしまう立香。
挿れたら、どんなに気持ちいいだろう。
「先輩は女の子のおまんこに挿れたことはありますか?♡ とっても、気持ちいいんですよ?♡」
「どっちがいいかしら? やっぱり、大好きなマシュのおまんこがいい?♡」
見惚れるように、マシュの手にしたオナホールを注視する立香。
無意識に頷きそうになってから「駄目だ」と首を振る。
しかし、少女たちはお構いなしに準備を進める。
とろり、としたローションをたっぷり注入されたオナホールを握り、力加減を変えてはぐちゅぐちゅ♡ と音を立てながら立香のペニスに宛がう。
「駄目だマシュ、これ以上はもう……っ!」
「はいはい、立香くん? 大人しくしてくださいね♡ お姉ちゃんが気持ちよくしてあげますからね?♡」
「あああっ……!?」
後輩として接してくれていた少女から子ども扱いを受ける屈辱。
涙をあふれさせる間もなく、オナホにペニスが挿入されて。
握ったマシュの手によって適度な締め付けを加えられ、内側の気持ちいい突起をふんだんに活用する形となった偽物の膣に、立香は──。
びゅっ、びゅくびゅくびゅくびゅくっ!♡
マシュが本格的なピストンを始める前に射精を迎えてしまった。
当の立香、そしてマシュでさえわけがわからないとしばしぽかんとしてしまう。
一拍遅れて状況を理解すると、少年を襲ったのは複合した負の感情だった。
堪えられなかった悔しさ、どうせならもっとオナホを堪能したかったという無念、言い訳のしようもなくマシュに屈したという劣等感。
身を震わせ、涙を溢れさせるその姿は、魔術によってさらに幼さを増しており。
「あらあら、立香ちゃん? 我慢できなかったんでしゅかー?♡」
「うううっ、あああっ!?」
「くすくす、仕方ありませんよ。先輩は人修羅様と違ってオスとしては未熟なんですから♡」
「そうね。じゃあ……今度はあたしのおまんこ味わわせてあげる」
「っ!」
交換されたオナホに再び包まれるペニス。
エリセの膣はマシュに比べてさらに狭く、その分締め付けをより感じやすくなっていた。
さすがに挿れた途端射精してしまうことはなかった立香だが、目の前の少女と繋がっているような錯覚に腰を跳ねさせてしまう。
なんだか──精神的に射精に慣れてきている一方で、身体はより敏感になっているような。
荒く息を吐きながら、ほとんど無意識に腰を振り、自分自身を射精へと追い立てて、
「はーい、ぴゅっぴゅっぴゅー♡」
完全にからかう調子のエリセの声と共に、自分の大切なものを吐き出す『快感』に身を震わせた。
身体にはもう、ろくな魔力は残っておらず──どう見てもマシュやエリセのほうが年上の状態。
ペニスはなおも元気に勃起しているものの、若返ったせいか子供ペニスに近づき、そのサイズを減じさせている。
心なしか頭もぼうっとして、難しいことを考えられなくなって。
傍にいる二人の「おねえちゃん」のことが気になって仕方なくなってしまう。
注がれた快感のせいで、気持ちいいことばかりが強く心と身体に残っていて、
「はい、立香くん? もう一回お姉ちゃんのおまんこ使わせてあげますね?♡」
「立香ちゃんもさっきのが消化不良でしょう?♡」
二人に囁きかけられた立香は「うん……」と頷いて、身を任せるようにベッドに寝そべってしまう。
だめなはずなのに、抵抗しないといけないと頭ではわかっているのに、どうしていけないのかうまく思いだせなくなって。
もっとこのおねえちゃんたちに気持ちよくしてもらいたくてたまらない。
ずぶずぶと、柔らかなモノにペニスが呑み込まれて。
「あっ、これっ……♡」
「ふふっ。そうですよ、いっぱい、気持ちよくなってくださいね♡」
「いいのよ、マシュのおまんこにたっぷり射精しなさい♡」
頭の中を真っ白にしたまま腰を振って、精液をたっぷりと吐き出した。
気持ちいい。
引き抜かれると、ペニスはまたさらに小さくなっていて。
「これはあと一回射精したら『終わっちゃい』そうですね♡」
「いいかしら、立香? あんた男として終わっちゃうけど」
魔術によって洗浄され、ローションをあらためて添加されたエリセのおまんこオナホ。
暗に「欲しいか」と問われた立香は、なにも考えることなく「欲しいっ」と答えた。
「いい子ね。それじゃあ、さよなら、カルデアのマスターさん?♡」
心に残る不思議な背徳感は快感を得るための最高のスパイスだった。
最後の射精は今まで一番量が多く、そして気持ちよかった。
夢心地のままに精を吐き出して──オナホールが引き抜かれると、その中にペニスは『なかった』。
「………え?」
猛烈な違和感に頭が少しだけ冷静になる。
呆然とした立香に、くすくすと、左右から笑い声が降ってきて。
「だから言ったじゃない、男として終わっちゃうって」
立香の股間には陰毛も性器もなくなり、ほぼ完全につるつるの肌だけの状態になっていた。
かろうじて尿道の名残として小さな穴だけが開いている。
排泄はそこからできるものの、もはや男性としての機能は完全に失われた状態。
身体も、男子と女子の差異が少なかった頃、完全に子供の状態まで巻き戻っている。……というか、当時の立香よりもどこか「可愛らしく」なっている気もする。
「本来なら、胎児の状態まで戻さなければ性別を喪失することはありませんが」
「あんたは退行と同時に男としての性質を吐き出したでしょ?」
今の立香は男性ホルモンの影響をほぼ完全に排除された状態、というわけだ。
当然、身体は丸みを帯びるし体格も女に近くなる。
「代わりに少しずつ女性としての性質が注ぎ込まれていくそうです」
「同時にちょっとずつ歳も戻してあげるから安心しなさい」
端的に言えば「無性別状態に戻したうえで女として成長をやり直させられる」ということ。
「引き続きわたしたちが面倒を見てあげますね、立香くん……いいえ、立香さん♡」
「立香ちゃん? 大人しくお姉さんたちに教わって、立派な女の子になりましょうね?♡」
「うっ、ああっ……! 僕、僕は……っ!?」
状況を理解した立香は、取返しのつかない状況に嗚咽した。
拘束され、誘導され、そうする以外なかった──抵抗したところで無理やり射精させられただけだろうが、いいようにしてやられた屈辱は、抵抗できなかった悔しさはなくならない。
小さくなった両手ではもはや一般人にすら敵わず。
人ならざる力を持つ二人の少女の言われるがまま、女としての心得や快感を教え込まれるしかない。
できるのは今度こそ屈服しないよう心を強く持つことだけで──。
◇ ◇ ◇
拘束する手枷は外され、立香は自由になった。
といってももちろん部屋から逃げられるわけではない。
子供の身体では妨害がなかったとしても脱出は困難、そのうえ常にマシュかエリセの最低一方がついていて目を光らせている。
男だった頃の服は取り上げられて処分された。
代わりに与えられたのは女の子らしいショーツとキャミソール、それからワンピース。
女の子になるんだから、とそれを着せられ「可愛い」と連呼されて。
「立香さん、お風呂やトイレの仕方もあらためて覚えましょうね?」
「男みたいに適当なやり方じゃ駄目よ。女の子はデリケートなんだから」
座ってするトイレの仕方、丁寧な髪や身体の洗い方、肌をケアする方法などを教えられた。
当然、適当に済ませようとすれば「お仕置き」が待っている。
「エリセさん、どんなお仕置きがいいと思いますか?」
「そりゃあ、子供のお仕置きって言ったらあれでしょ」
生のお尻が赤く腫れあがるまで叩かれた立香は、心中はともかく表向きはマシュたちに従うようになった。
レッスンはさらに歩き方や言葉遣い、食事の仕方や椅子に座るときの仕草など日常生活のあらゆる場面に及んで。
今まで気にしていなかったが、立香とマシュたちでこれほどまでに「違う点」があったのだと知ることに。
また、確かに今の身体には教えられた作法が合っていて。
染み込んでいた習慣を書き換えられていくほどに自分が「女」に染められていく気がして、心の抵抗は強くなった。
立香の気持ちと裏腹に身体の成長は止まることなく。
通常の百倍程度の速さで立香は「少女として」成長させられていった。
つまり、一日経つごとに百日分成長するということ。
二次性徴を経るように急速に女の形質を獲得し、股間もまた無性から女性のそれ──すなわち女性器を備えた姿へと変えられていく。
男性器のあった頃の感覚、射精の感覚はあっという間に思いだせなくなり、女性ホルモンの影響が濃くなるほど自分が感情的になりやすくなっていくのを感じた。
そうしてある程度成長すると、
「そろそろえっちの仕方も覚えましょうね?♡」
「何も知らないままじゃ男に抱かれる時に困るものね?♡」
「ぼ、僕にはそんなもの必要……っ」
「立香ちゃん、言葉遣い。またお尻叩かれたいの?」
「………っ。ご、ごめんなさいお姉ちゃん」
マシュとエリセによる性感開発がカリキュラムに加わった。
乳首やクリトリスを中心に優しく全身を弄られ、感じやすい身体に調教されていく。
喉仏を失い女声を発するようになった立香の声帯は感じさせられるたびに「あんっ♡」と甘い声を出し、立香の男としてのプライドを削り取っていく。
時には少女たちによる実演も交え、
「ほら、こうやって……んっ♡ クリを弄ったり、乳首をつまんだり、引っかいたり……っ♡ 指をおちんぽに見立てて出し入れしたり♡」
「さあ、立香さんもやってみてください」
美少女たちの痴態を間近で見せられてどきどきしたかと思ったら、今度は彼女らの前で実演させられる。
弄られるのではなく自慰を披露させられると、否応なく自分が「女になってしまった」ことを実感してしまって。
甘い声を上げながら自らを責めたて、絶頂に達した瞬間──また少し、元の藤丸立香が削られたような気がした。
「ちゃんといやらしい言葉も覚えましょうね? さ、立香さん♡」
「わ、わたしのおまんこに……ご主人様のおちんぽ、挿れてくださいっ♡」
「そうそう、恥ずかしがらず積極的におちんぽおねだりできるようになりなさい♡」
さらに、淫語の指導。
「さすがに本物はあれだから、ぺニバンを使って……実際に見て覚えなさい♡」
「どうですか立香さん、エリセさんのフェラチオ、とってもいやらしいでしょう?♡」
玩具を用いての性奉仕の指導。
それから、並行して淫らな夢も見せられる。
夢の中で女になった立香はマシュたちに教えられた以上に淫らに男を求め、快楽に耽った。
昼間と夜、二重のレッスンによって性のテクニックが忘れられないものとして沁みついていく。
急速な成長とあわせ、眠るのが怖いと感じることも多かったが──。
立香はそれらを嫌々ながら、強く拒否することなく受け入れ、吸収していった。
それは弱い身故の防衛策であり、知らず知らずに身につき始めた「女の処世術」でもある。
しかし、心の奥底ではまだ『彼』は折れていない。
壊れそうになる心をつなぎ留めながら、最後の一線だけはなんとか守り通していた。
それでも身体は勝手に成長していく。
胸が膨らみ、キャミソールからブラへと下着が変わった。
髪が伸びてヘアケアをよりしっかりと指導されるようになり、どこか少年めいていた顔立ちも少女のそれに変わった。
もう、彼を「男の子」だと言う者はいないだろう。
日々の従順な態度が幸いし、一人で拠点内を散策する許可も出た。
調べれば調べるほど「単独での脱出は不可能」とわかるだけではあったものの、彼は頻繁に出歩くようになり──。
そして、そんなある日のこと。
「ああっ、いいっ!♡♡ 気持ちいいですっ!♡♡ もっとセレシェイラを支配してくださいっ、人修羅様ぁっ!!♡♡」
立香はたまたま通りかかった部屋で、セレシェイラ・エルロンが人修羅に抱かれているのを目撃した。
◇ ◇ ◇
セレシェイラ・エルロンはカルデア職員の一人で、記録書記を担当『していた』女性だ。
青系のロングヘアで目の片方を隠しており、ユニセックスな服装を好む傾向がある。
自分を出すのがあまり得意ではないらしく、口数は多くなく、少々ぶっきらぼうな口調を用いるものの──彼女が人一倍真面目で優しい人であることを立香は知っている。
立香の戦いを裏から支えてくれた立役者の一人であり、英霊たちのような遥か遠い存在とは違う「手の届きそうなところにいる大人の女性」としてほのかな憧れを抱いたこともある。
もちろん、男女の関係などなかったが……それなりに良い関係を築けていたと思う。
そんな彼女が、
「セレシェイラ・エルロンは人修羅様の女ですっ♡♡ 雌奴隷ですっ♡♡ どうか如何様にもお使いくださいっ♡♡ 抱き潰してくださいっ♡♡」
蕩けきった雌の表情で四つん這いになり、淫らに腰を振りたくっていた。
いやらしく開いた女性器は人修羅の凶悪なモノをしっかりと咥えこんでおり、離したくないとばかりに締め付けている。
溢れだした愛液はベッドに染みをいくつも作り、ドアが開いたままであるにもかかわらず、艶やかな唇からは惜しげもなく嬌声が漏れる。
媚びた声、羞恥心を捨て去ったような台詞は、立香が日々教え込まれている服従の作法にも通じるもの。
つまり彼女は──完全に、人修羅に身体と魂を捧げてしまったということだ。
大きなベッドを軋ませながら、ドアの前に立つ立香になど気づいてすらいない様子で「あんっ♡♡ あんっ♡♡」と声を上げ、激しい快楽に酔いしれる。
その光景は、立香に深い衝撃を与えた。
カルデアのみんなが人修羅に忠誠を誓い、彼のしもべとなっていることはわかっていた。
他の職員とも顔を合わせていたし、女として躾けられている立香を見て「その調子で励め」と声をかけられたことも何度もある。
目を覚まして欲しいと訴えれば一転して「まだそんなことを言っているのか」と怒られるのが常で。
だから、セレシェイラがあの男に抱かれていようと驚くほどのことではない──はずなのだが。
「あ、ああ……っ!?」
複雑すぎて言い表しきれない感情にがつん、と殴られた立香は瞳から涙を溢れさせた。
僅かなりとも憧れていた女性が他の男に抱かれている喪失感、劣等感、怒り。
人間らしい感情を残していると思っていた別の歴史の兄が放埓を繰り返していることから来る、裏切られたような気持ち。
生のセックスを見たことによる興奮と、知り合いの痴態で興奮する罪悪感、そしてセレシェイラの痴態でさえ「オスの興奮を覚えられない」と自覚したことによる恐怖。
さらに、知っている女性の行為を見せつけられたことで「自分が人修羅に抱かれる光景」もありありと想像してしまい。
心のどこかで、女として、メスとして、セレシェイラを「羨ましい」と感じてしまっている自分がいて。
まだ、元の自分を失ってはいないはずだったのに。
すでにかなりの部分が女になってしまっていることを強烈に突き付けられて、心が一気にぐちゃぐちゃになって。
「────っ!!」
気が付けば、衝動のままに走り出していた。
途中、誰かに呼び止められたような気もするが立ち止まらず。
行き場のない感情に衝き動かされるように走って、走って。
気が付いた時には、そこがどこなのかわからなくなっていた。
何日もかけて作成した拠点の地図も手にしてはいたものの、現在地がどこかわからなくては役に立たない。
むしろ、地図を手に取ろうとした時に再認識してしまった「スカートに長い髪の自分」にまた心が揺れ動いて。
「あああっ!! ああああああぁぁぁぁっっ!!」
藤丸立香はその場にしゃがみ込むと、大きな声で泣きじゃくった。
昔の彼ならそんなことはしなかっただろう。
勘と経験を頼りに動いてみるなり、誰かいないか呼びかけるなり──理性的に状況打開を目指したはずだ。
しかし、今の立香にはそんなことをする気力はなく。
子供のように、か弱い女のように、助けを求めて泣いて。
「あー? 誰だお前ェ?」
「………ひっ」
泣き声を聞きつけてきたのだろうか。
泣いたのもまったくの無駄ではなかった。
声と共に『一匹の悪魔』が現れ、立香を睥睨した。
その醜悪さと不気味さに立香は思わず悲鳴を上げ、悪魔はにぃ、と邪悪に笑う。
「よくわからないけど、迷子かぁ? それなら、オレがもらってもいいよなぁ?」
「い、嫌ぁっ!?」
一瞬にして、死にかけた過去の経験がフラッシュバックする。
咄嗟に悲鳴を上げ、尻もちをついたままに後ずさる。
しかし、悪魔はお構いなしに近づいてきて、ニヤニヤ笑いながらその手を伸ばし──。
「止めろ、それは僕の所有物だ」
「あ……っ!?」
淡々とした声が悪魔の動きを一瞬にして制止させた。
見上げた先にいたのは兄──いや、人修羅。
彼は立香の兄ではない。
わかってはいるものの、つい、かつて兄に助けられた時のことを思い出して。
身体から完全に力を抜いている間に、人修羅は悪魔へ「失せろ」と命じていた。
──脅威は、あっという間に去って。
その気になれば立香など簡単に殺せるだろう、しかし、何故か恐ろしさを感じない手のひらが差し伸べられる。
「大丈夫か? ……すまない、末端の悪魔まではお前の顔が知られていないらしい。それにしても随分と見た目が」
「うっ、あああっ!! うああああああっ!!」
立香は、再び溢れだした涙を止められないまま人修羅に縋りついた。
人肌の温もり。
かつて兄に抱きしめられた時のことを思い出していると、力強い腕にぎゅっと包まれる。
人修羅は、強く恐ろしいはずの王はただ、立香が泣き止むまで抱きしめてくれていて。
ああ、と思った。
自分はもう、この人のことを憎み切れない。
藤丸立香は、人修羅を兄としてではなく──男として、意識してしまった。
◇ ◇ ◇
恋心を芽生えさせてから、すとん、と反抗心がどこかに落ち着いてしまった。
毎晩見せられる淫らな夢が隔たりもなにもなく「自分のことのように」感じられる。
いずれ自分も男に抱かれるのだと自覚し、覚悟し、心のどこかでそれを望むようになった。
マシュたちから施されるレッスンにも熱が入り、仕草や声音は単に形を真似ただけのそれではなく「本物」になった。
「この間はごめんなさい。変なところを見せてしまって」
「……えっと、ううん、気にしないで」
セレシェイラからは「あの時」のことを謝られた。
気まずい気持ちになりながら首を振った立香はむしろ、彼女の姿が気になってしまう。
最低限の部分だけを隠した、どこかパンクかつ煽情的な衣装。
蝙蝠の翼と先端の尖った尻尾が生え、耳はぴんと尖っている。
「ああ、これ。人修羅様に生まれ変わらせていただいたの」
「もしかして、悪魔合体……?」
「いいえ。あの方の精を受けるとね、人間は悪魔になるの」
セレシェイラは誇らしげにそう教えてくれた。
今の彼女は夜魔リリムとほぼ同等の存在であるらしい。
サーヴァントは悪魔合体によって二人分の記憶とさらなる力を得られる、人間は人修羅の精によって悪魔へと生まれ変わるというわけか。
なら、自分は?
不意に想像を膨らませていると、セレシェイラは艶やかに笑って、
「あなたも、もう『女』なのね」
それに対し、立香はどこか複雑な気持ちで曖昧な表情を浮かべた。
「どうだ、なかなかいい出来だろう!」
「まだ中途段階ですが、必ずやあの方にご満足いただけることでしょう」
また別の日にはネモ、シオンらからストームボーダーを見せられた。
かの次元境界穿孔艦は人修羅を主とする手勢の旗艦として作り変えられていた。
それはネモたちもまた人修羅のペニスによってメスに堕とされたという何よりの証で、それを証明するように彼女たちも女の色香を以前よりぐっと増していた。
カルデアによって運用されるためのかの船は、もうどこにも存在しない。
もし、今ここで立香が勝利したとしても──多くのカルデア職員と女性サーヴァントが戻っては来ないことを、はっきりと理解させられてしまった。
そして、立香自身、心のどこかで「彼に屈服してしまうのは仕方のないこと」と考えてしまっていて、
「……私、どうなっちゃうんだろう」
もはや彼──いや彼女に逃走の意思はない。
マシュたちが立香を放置する時間も増え、すっかり「ここ」の一員として扱われるようになった。
それが嫌、というわけでもないのだが。
もやもやとした不安と悩みが彼女を包み込んでいて、いったいどうすれば解消できるかまるでわからない。
「おっと、邪魔をしたか?」
「っ、誰っ!?」
立ち上がって問えば、部屋に現れたのは髑髏の仮面をかぶった美女(?)。
「マザーハーロット……!」
「そう構えるな。別に取って食おうと言うわけではない」
軽く言い放ちながら、実際特になにをするでもなく立香の前に立つ彼女。
人修羅には劣るのだろうが、彼女もまた圧倒的な力を持っているはずで──何より、立香を改造しあんな夢を見せた、いや『見せてくれた』人物でもある。
警戒したところで無駄と悟って身体から力を抜けば、
「今日は、お前から奪った時と魔力を完全に返そうと思ってな」
「……どういう風の吹き回し?」
「さて」
あっさりと質問を流しながら、マザーハーロットは仮面を手に取る。
彼女の素顔を見た者はこの異聞帯でもほとんどいない。
この悪魔が自分から顔を晒す様を他の者が見ればたいそう驚いただろうが、立香が驚いたのは別の部分──明かされた顔自体で。
今の立香とよく似た顔。
男だった頃と同じ年頃まで到達すればほとんど同じ顔になるだろうと思えるそれに「うそ」と呟き、
「っ!」
次の瞬間にはマザーハーロットに接近され、顎を持ち上げられ──唇を押し当てられていた。
自分自身(?)にキスをされるという異常事態、反射的に押しのけようとするも、キスの上手さと、流れ込んできた魔力に抵抗を止める。
すると、流れ込んできたのが魔力だけでないことがわかった。
身体が急速に成長していく。
それから、自分のものではない意識も流れ込んできて、
『あなたは、誰?』
『私? 私は、藤丸立香。もうわかっているでしょう?』
『そっか。あなたは、こっちの世界の私なんだね』
なにもない空間に二人、向かい合っているような錯覚の中で理解する。
この異聞帯では『藤丸立香』は女で、しかし同じようにあの人──人修羅の妹として生まれてきた。
『私はお兄ちゃんが好き』
『それは、妹として?』
『ううん、それだけじゃない。……女としても、愛してる』
他の誰でもない立香だからこそ、それが本当の意味で理解できる。
『そっか、あなたも、なんだ』
『そう。そしてあなたもそう、でしょう?』
『うん』
今ならば自身を持って「その通りだ」と言える。
『私もあの人が好き。兄妹として、そして、女として』
『わかってる。だからこうして、一つになることにしたの』
『一つに?』
『本当はあなたの身体を乗っ取るつもりだった。でも、今のあなたなら』
成長が進み、立香の身体が年頃にさしかかる。
成長によって女としての心の機微もまた細やかになり──同時に、カルデアのマスターとして生きた記憶もまた鮮明に蘇ってくる。
まるで、女の自分が特異点や異聞帯を生き抜いてきたかのように。
違和感なく、かつての記憶が今の自分に馴染んで。
──目を開く。
伸ばし始めていた髪は肩を超えるくらいに長くなっていた。
オレンジ色に近い赤毛。
明るさを帯びるくりくりとした瞳は愛嬌と意志の強さを表している。
胸もまあ、ほどほどに大きい。
できればマシュくらい大きくなりたかったのだけれど。というかマザーハーロットのほうが巨乳じゃないか。いや、彼女とはベースになっている年齢も育ち方も違うのだろうけれど。
唇を離したマザーハーロットからは「藤丸立香」としての表情は消え去っている。
もう一人の立香の思いはすべて立香の中にあるから。
マザーハーロットは静かに仮面を付け直すと、立香の衣装を整えてくれる。
「これは?」
「決戦用のカルデア制服。今のお前には相応しかろう?」
「ありがとう、マザーハーロット」
白を基調とした極上の魔術礼装。
胸を収めるスペースとスカートを備えたそれは明らかに女性用で。
立香が人修羅のものとなった時用に用意されていたのか、あるいは男の立香用のものを作り直したのか。
立香としての記憶と思いを失っても意外に甲斐甲斐しい女悪魔にお礼を言って、
「行ってこい。お前の気が済むように」
「……うんっ!」
藤丸立香は、あの人の妹として、カルデアのマスターとして、そして一人の女として、最後の戦いに臨んだ。
◇ ◇ ◇
人修羅はまるで待っていたかのように玉座にいた。
「……どうした?」
視線をこちらに向け尋ねる声は、他の者に向けるよりも一段優しい。
妹として彼と過ごした年月──もう一人の自分の記憶を得たことでそれがはっきりとわかって、きゅん、と胸が苦しくなる。
今すぐに彼の胸へと飛び込んでしまいたい。
でもだめだ、それではけじめをつけたことにならない。
できるかぎり毅然と、この戦いの勝者である『王』の前に立って。
「もう一回、勝負がしたいの」
「お前、まだそのようなことを」
「よせ、スカサハ」
傍に控えていたスカサハからゲイ・ボルグを突き付けられても立香は引かない。
主によって制止されたスカサハは「はっ」と槍を引いて。
人修羅の静かな瞳が立香を射すくめる。
「言ってみろ」
「うん。あのね、勝負の内容は──」
それは、一緒に聞いていたスカサハが呆気に取られ目を丸くしてしまうようなもの。
けれど立香はいたく真剣で。
「お前、そんな勝負が成り立つと──」
「いいだろう」
王はすっ、と立ち上がると短く了承の言葉を返した。
その顔には楽しむような、苦しむような、慈しむような表情が浮かんでいて。
「しかし、主」
「いいと言っている。──行くぞ、立香」
「うん」
彼の後を三歩下がって歩きながら、立香はベッドルームへと向かった。
「勝負は簡単。一晩私を抱いて。あなたの精を受けて私が悪魔化したら、私はあなたのものになる。でももし、私の令呪が消えなかったら──私の、マスターとしての資格が残ったままだったら、人理のための戦いに協力して」
豪奢なベッドに寝かされながら、立香はあらためて繰り返した。
彼女の右手には今もマスターの証である令呪が刻まれている。
カルデアが人修羅たちに掌握された今、その条件は詳細にはわからないが──立香の魔力が復活したこと、彼女が戦う意思を取り戻したことは関係しているだろう。
だから、おそらく立香が完全に屈服し、人修羅のメスとしての自分のみを受け入れれば令呪は消滅する。
もちろん、これはかなり自分勝手な条件だ。
同時にあまりにも無謀な戦いだとも言える。
(閨的な意味で)歴戦のサーヴァントでさえも陥落させられてきた無双の王相手に、処女の小娘が挑もうと言うのだから──それは、人修羅の女の一人であるスカサハも「正気か」と思う。
けれど、それくらいでなければ。
誰もが無謀だと思う勝負、一握りの、ひとかけらの勝機しかない勝負でなければ、彼女と彼の置かれた立場からして成立しない。
だから、これに賭けた。
そして一つめの関門、相手にこの条件を呑ませることには成功した。
「ああ、その条件で構わない」
きし、と、小さな音と共に彼の身体がベッドの上に。
どこか愛おしげに頬を撫でられ「綺麗だ」と囁かれる。
それだけで胸がきゅんきゅんと高鳴り、頬が緩みっぱなしになって、
「その服、まるでウェディングドレスだな」
「いいでしょ? 私にとって、好きな人との初めての夜なんだから」
「好きな人? ……僕が?」
わかっていなかったのかこの唐変木。
口から出かかった言葉をぎりぎりで飲み込んで、代わりに微笑んで頷く。
「そうだよ。だから、手加減はしないで。全力で、私を抱いて。心の底からあなたのものになるって思わせるくらいに」
「……それが、お前の」
人修羅は「いや」と言葉を切ると「いいだろう」と頷いた。
「カルデアのマスター。その心意気を買い、全力で相手をさせてもらう」
「っ♡」
期待で胸が苦しい。
彼の手が髪をそっと撫でたかと思うと、軽く頭を持ち上げられて。
「大きくなったな」
「あっ、んっ……♡♡」
甘い口づけが来た。
彼のにおいをいっぱいに感じながら、触れ合う唇に幸福を覚える。
同時に立香の身体はこれから来る激しい責め、あるいは調教を予感して純白のショーツをしっとりと濡らしていた。
期待通り、一度唇が離れると人修羅の表情はメスを抱くオスのものに変わっていて。
再び唇がふさがれたかと思うと「んんっ!?♡♡」唾液と共に舌が入り込んできた。
さっきの甘いキスとは違う、快楽のためのキス。
マシュたちから教わり、夢で数えきれないくらい経験したはずなのに、本物のそれはずっと激しく情熱的で、主導権を握ろうとしてもあっさり舌を絡め取られてしまう。
たっぷりと注がれた唾液を都度、嚥下して。
立香の性感を引き出そうとするかのような指先が身体のあちこちを撫でてくる。
敢えてまだ敏感な箇所には触れず、けれど全身を性感帯に変えようと絶妙な力加減で刺激されて。
もっと、と思えばそれだけ敏感になって、ぞくぞくぞくっ♡♡ と軽くイってしまう。
唇が離れた時にはもう、はーっ♡ はーっ♡ と荒く息を吐きながら、完全にメス顔を晒してしまっていて。
「いったい、何人の女の子を抱いてきたの?」
「さあ、な」
短い返答の後にまたキス。
力強い腕でぎゅっと抱きしめられると、とん、とん、と軽く背中を叩かれる。
安心感と幸福感でもうわけがわからなくなって、ほとんどキスだけで絶頂して。
「……ああ、もうっ♡♡」
この勝負はそもそも、マシュやエリセが挑んだものとは本質的に違う。
恋心という意味では、立香はもう完全に彼に堕ちているのだから。
抱かれること自体は望むところ。
女として、愛する男性に抱かれているのだからトロトロになってしまうのは当たり前で。
立香が上になって精を搾り取るようなセックスはできると思っていないし、したいとも思っていない。
「大好き、お兄ちゃん♡♡」
吹っ切れた心は甘く愛を囁くのにも抵抗はなくて。
今ならセレシェイラの気持ちもよくわかる。
今度は自分からキスを求めた。舌を絡め唾液を飲み込むだけで何度も達してしまう。
何度目か、ようやく腕が離れたかと思うとベッドに再び寝かされて、決戦制服を丁寧に脱がされていく。
まったく、この男ときたら「全力」とか言いながらなんだ、このお姫様扱いは。
まあ、そういう優しさが立香にはクリティカルなのだけれど。
白いレースのブラとショーツを暴かれた立香はさすがに恥ずかしくなって、
「あんまり、見ないで……♡♡」
「見なくていいのか?」
「ううん、見て♡♡ 私の身体、もっといっぱい見て♡♡」
今度は全身にキスをされた。
「あっ♡♡ お兄ちゃん、お兄ちゃんっ♡♡」
キスマークが一つ増えるたびに甘い絶頂に襲われる。
ベッドルームいっぱいに響くようなメスの甘い声を上げ、身をくねらせながら腕を彼の背中に巻き付けた。
めくり上げられたスカートが外され、太腿に指が這う。
今度はブラがずらされた。
大きさに不満はあるものの形のいい胸が丹念に愛撫されたかと思うと「あああっ!!♡♡」乳首を口に含まれ、舌で転がされた。
完全に性感を引き出されている立香はもうわけのわからないままイかされるだけで。
さらに指がショーツに添えられると、くちゅくちゅ♡♡ といやらしい音と共に全身にぞくぞくっ♡♡ と絶え間ない快感が駆け抜けた。
あっという間にベッドシーツにまで恥ずかしい染みができて。
「こんなに濡らして、いけない妹だな」
「だって、お兄ちゃんにして欲しかったから……っ♡♡」
「して欲しいなら、ちゃんと奉仕してみろ」
「あっ……♡♡」
文字通り、夢にまで見た逞しいペニスが突きつけられる。
それがすでに勃起していることにとてつもない嬉しさを覚えながら「はい♡♡」と返事をして。
膝立ちになった彼のもとに跪くと、亀頭の先端にちゅっ♡♡ とキスをした。
上目遣いに見上げながら、強烈なオスのにおいをいっぱいに吸い込んで。
唾液をたっぷりと溜めた口に竿を受け入れていく。
生まれたばかり、と言ってもいい白くしなやかな指で硬く雄々しい肉棒を握り、細やかに刺激しながらフェラチオ。
ぐぷ、ぐぷ♡♡ といやらしい音を立てながら舌も使って射精を促す。
一生懸命覚えた甲斐あってか、しばらくして「射精すぞ」と声。
強い脈動を感じたかと「あっ♡♡」口内に強烈な本流が来た。
むせてしまいそうになるのを必死に堪えて飲み込んでいく。
男だった頃の立香とは比べ物にならない量の射精に女としてときめく。
なんとか全部飲み終えると竿を抜いて、はあ……♡♡ と吐息。
「私、うまくできた……?♡♡」
「ああ、悪くない」
彼はそう言って頭を撫でてくれた。
えへへ、と、普通の妹のように笑って、
「だが、まだまだ甘いな」
「ん、んんんっ!?♡♡」
口内にずん、と突き入れられる肉棒。
喉奥にまで侵入してくるそれに初めての苦しさを覚え、目がちかちかする。
言われた通り、練習はしていても生の経験が足りていないらしい。
気持ちに身体がついていっていない。
今の立香では、猛烈な苦しさを抑え込みながら股を濡らし、絶頂に似た興奮に浸ることくらいで。
その間に彼はオナホールを使うかのように喉を犯してくる。
歯を立てないようにするのでさえ難しい。
二度目の精を直接胃に流し込まれながら、強いマゾの興奮を実感。
竿が引き抜かれるとしばらくえずくような、せき込むような反応が止まらなくなった。
「ひどい……っ♡♡」
ひどいはずなのに、心と身体が喜んでいる。
「私、けっこうマゾみたい♡♡」
「まだまだ、こんなものじゃないぞ」
「やっ♡♡」
右手を取られ、手の甲に舌を這わせられた。
令呪がそんなことで溶けたりはしないけれど、大切な場所を嬲られる興奮で頭がくらくらする。
今度は後ろから抱きかかえるようにされて、胸と秘所を同時にいじられ。
不要になったスカートが放り捨てられる。
ショーツの内側に潜り込んだ指が二本、膣内に突き立てられると高速で出し入れされて「あああああっっ!?♡♡」嬌声を上げながら立香は潮吹きを経験した。
ぐっしょりと濡れたショーツもまた足から抜かれて。
「綺麗な色だな」
「やぁっ……♡♡」
押し倒されたかと思うと割れ目に舌を差し込まれる。
痺れるような快感を覚えながら、眼前に屹立するペニスへと舌を這わせる。
濃厚なオスの味。
大事なところを舐められ、愛液を啜られる羞恥が快感で塗りつぶされて至福の快楽へと変わる。
立香は、口内に射精されるまでの間に三回もイかされて。
必死に呼吸を整えながら、きゅんきゅん♡ と子宮の疼きを感じた。
膣も小刻みな動きが止まらず──身体が強く挿入を求めているのをはっきりと認識する。
視線はつい彼の肉棒へと吸い寄せられて。
「さあ、どうして欲しい?」
「………っ♡♡」
答えはひとつしかなかった。
マスターとしての決戦制服を自ら脱ぎ捨て、ブラも外して裸になると、仰向けに横になりながら足を広げる。
羞恥を堪えながら割れ目を指で広げて、まだ誰にも侵入されたことのない入り口を示して。
「ちょうだい♡♡ お兄ちゃんのおちんぽで、立香の処女を奪ってください♡♡ 立香を、お兄ちゃんの女にしてくださいっ♡♡」
この日をどんなに待ちわびたことだろう。
立香の感じている歳月の長さは正確にはもう一人の立香の感じていたものだが、けれど、立香自身も心のどこかでこの日を待ち望んでいたような気がする。
ずっと兄に会いたかった。
謝りたかったし、償いたかった、そして、もう二度と離れ離れにならないように強い絆が欲しかった。
「ああ。行くぞ、立香」
「うんっ♡♡ 来て、来てぇ、お兄ちゃん……っ!!♡♡」
人修羅に覆いかぶさられて。
先端に広げられた瞬間はさすがに苦しさを感じた。
けれど、竿が処女膜に到達すると女としての喜びが上回って──破瓜の瞬間、立香は身を震わせて絶頂に達した。
きゅうう♡♡ と、膣で竿を抱きしめて。
立香がイっていてもお構いなしに侵入してくる肉棒にさらに身を震わせる。
熱くて、硬くて、大きい。
身体ごと心を作り変えられているような、身体に芯を打ちこまれたような、強烈な経験。
──藤丸立香はいま、この瞬間本当の意味で女になった。
ひとりでに涙が溢れだし、とめどなく流れる。
「痛いか?」
「ううん、嬉しいのっ……♡♡ 好きな人に処女をあげられてっ♡♡」
彼の身体に腕を回しながら「動いて」と囁くと、
「ああ」
「っ、ああっ♡♡ ああああっっ!!♡♡」
立香の身体を耕していくかのようなピストンが始まった。
熱い棒で身体を解され、広げられ、彼のモノを挿れるための形に整えられていく。
苦しさが一突きごとに快感に置き換えられて、何度もこつこつと刺激された子宮が必要以上の幸福を脳に送り込んでくる。
気持ちいい。
生まれてきたのはこのためだったのだ、と掛け値なしに感じる。
マシュたちが堕ちてしまったのも無理はない、いや、彼女たちは単に運命の相手に巡り合っただけだったのだ。
欲しい。
この人の肉棒が、もっと欲しい。
この人の精液が、奥に欲しい。
逃がすまいと締め付けながら、ほとんど無意識のうちに腰を振る。
人修羅は的確に立香の弱いところを見抜くと一突きごとに動きを修正し、より強い快楽を送り込んできて。
イク。
もう何度イかされているのかすらわからない、イきながらただ、彼を少しでも気持ちよくすることだけを考えて。
何度も何度も声を上げながら自分のすべてにこの喜びを刻みつけて。
「射精すぞ」
「だしてぇっ、いっぱい、せーえきっ♡♡ りっかの、なかにぃっ♡♡」
思う存分甘えながら、お腹の奥──子宮へと、熱い奔流を受け入れた。
一瞬、思考の全てが止まるほどの快感が来て。
次の瞬間には怒涛のような快感で押し流される。
波が引き始めてもなお立香を満たした幸福は消えることはなく、脳を犯して。
身体は。
今のところ、まだ変化はない。
人修羅の精を受ければ悪魔化するのが普通らしいけれど。
「一度で悪魔化しなくてもいい。……悪魔化するまで、何度でも精を注ぎ込んでやる」
ああ、そんなことをされたら本当に駄目になる。
そう思っているのに、口は別のことを言って、
「うんっ♡♡ 注いで、お兄ちゃんのせーえき、ぜんぶっ♡♡」
挿入されたペニスが引き抜かれることもないまま、再びピストンが再開された。
マシュやエリセ、セレシェイラ──女たちから聞いていた通り、人修羅の精力は絶倫、果てることを知らないかのような逞しさで。
地下にあるここでは「一晩」という残り時間がどれだけなのかもわからないまま……きっとまだ、かなりの時間が残っていることだけを感じながら。
立香はなにもかも忘れてただ、愛しい男にしてこの世界の王に身を任せ続けた。
対面座位、騎乗位、バック、背面座位。
ほとんど休憩もないままに精を注がれ、乳首や唇を指で弄ばれながら数えきれない絶頂を迎える。
イけばイクほど絶頂は深くなり、イきながら腰を振り膣を締め付けるコツがわかってくる。
そうして何度目か、あるいは十何度目かの膣内射精の後でようやくペニスを引き抜かれると、フェラチオを命じられて。
精液と愛液で汚れたそれをいとおしい気持ちで掃除していると、尻に指が。
「っ、お兄ちゃ……っ!?♡♡」
「どうした? まさか、ここは手つかずのまま済ませてもらえると思ったか?」
「だ、だってそこまでされた私、狂っちゃうかも……っ♡♡」
「ああ、好きなだけ狂え、立香」
「あああっ!?♡♡」
蕩けさせられた身体は力が入らず、ローションをまぶされた指を簡単に受け入れる。
口淫が終わればバックの態勢で開発を続けられ、前と後ろを同時に指で弄られた。
イク感覚を後ろにつなげられた立香はアナルの感度が急速に上がっていくのを理解して。
指三本が入るようになると、太めのアナルバイブを挿入されて。
抜けないようにバンドで固定されると、振動が尻から子宮へと伝わってくる。
「ぃっ♡♡ あっ♡♡ はああっ♡♡」
慣れない快感を意識するのも束の間、身体をひっくり返されて仰向けにされ、
「やっ、だめぇっ♡♡ いま挿れられたらぁっ!?♡♡」
「言っただろう、好きなだけ狂え、と」
前後を同時に犯される快感は、筆舌に尽くしがたいものがあった。
誇張ではなく狂ってしまったかのよう。
いや、一生この快感を忘れられなくなるという意味では実際に狂ってしまったのかもしれない。
ただでさえオスとして最強の彼が相手だというのに、こうして二つの穴を支配されては勝てるメスなどいるはずがない。
彼は本気だ、本気で、たった一晩で立香を調教しつくすつもりだ。
感度の上がりきった身体に遠慮は無用とばかりに荒々しく竿を突き立てられ、その度に彼専用に作り変えられたおまんこは激しい喜びを覚えてしまう。
その快感から解放されると、もう、身体のどこを撫でられてもイけるような状態で。
夢うつつのまま肉棒に奉仕し、
「さあ、次は後ろだ」
「えっ、あの、まだ……っ?♡♡」
「何を言っている、時間はまだ半分近く残っているぞ?」
「……う、そ♡♡」
そのあたりからはもう記憶が怪しくなってくる。
自身の肉棒だけでメスを堕とせる人修羅はアナルバイブだけでなく他の玩具もふんだんに持ち出し、徹底的に立香の身体を嬲りにかかった。
人間とはいえ経歴上丈夫にできている立香でなかったら途中で壊れていたかもしれない。
二穴のどちらかにバイブを挿れられたままハメられるのは当たり前、乳首にもローターを取りつけられたり、目隠しをされて触角を強化されたり、口枷や首輪、手枷で拘束されたまま犯されたり。
犯されながら尻を何度も何度も叩かれたり。
淫語も好き放題に言わせられ、首輪に取り付けたリードを引っ張られながら膣内射精もされた。
ベッドの上が完全にどろどろになるとバスルームに連れて行かれて反響する室内で犯され、ふらふらの身体に黒い下着とドレスを着せられ、それらが精液で完全に汚れるまでさらに嬲られて。
どこからが夢でどこまでが現実だったのか。
あるいは、現実はもっと強烈に調教されたのか。
ただひとつ言えるのは、立香がひとりのメスとして人修羅に奉仕し、彼に抱かれる喜びに心から浸っていたということ。
数えきれないほど精を子宮に注がれて。
悪魔化しなくても妊娠してしまうのではないかというほど白濁に溺れて。
ティターニアが朝になったことを告げに来た時には。
立香の身体は、完全に悪魔へと変貌していた。
◇ ◇ ◇
「ああ、素敵です立香さん……いいえ、今度は『立香様』とお呼びするべきですね♡♡」
「ええ、本当に綺麗だわ立香。悔しいけど、人修羅様と並び立つのも納得してしまうくらい♡♡」
「ふっ。この気配──並の英霊を遥かにしのぐ力だな。おめでとう藤丸立香♡♡」
オレンジに近い赤毛はそのまま。
頭の左右からは一本ずつ、曲線を描く角が生え。
衣装は、激しい夜の経験によって『女』の色香を強く発するようになった身体を可能な限り隠さず、それでいて飾り立てる、煽情的で蠱惑的なナイトドレス。
ロイヤル・アイシングと呼ばれる概念礼装にどこか似通ったドレスの下、下腹部には人修羅の身体にある紋様とどこか共通したマガタマの紋様。
もう一人の立香の記憶によって身に着いた風格がそれらのいで立ちを立香自身に完全に馴染んだものとして周囲に認識させていて。
立香を「敵の首魁」と認識していたマシュたちやカルデア職員たちも見惚れたように声を上げ、その存在を心から認めた。
──悪魔『至聖女・フジマルリツカ』。
それが新しい立香の名前、悪魔としての名だ。
「人修羅様と賭けをしたと聞いた時はどうなるかと思いましたけど……立香様がわたしたちと同じに、いいえ、それ以上の存在になってくださってほっとしました」
かつての形とは異なってしまったものの、再び仲間になれたことを心から喜び微笑むマシュ。
『あなたの精を受けて私が悪魔化したら、私はあなたのものになる』。
約束はしっかりと履行され、立香は人修羅の下僕の一人となった。
普段は妹、あるいは寵愛を受ける女としてふるまうことが許されているものの──王である人修羅が本気で命じれば逆らうことはできない。
そういう意味では確かに、これは藤丸立香の敗北だ。
マスターの完全敗北をもって、カルデアの態勢は完全に崩壊した。
もう、かつてのカルデアが元に戻ることはない。
けれど。
「ううん、マシュ? 私はちゃんと賭けに勝ったよ?」
立香は微笑み、右手を持ち上げた。
隣に立つ人修羅が意味ありげに苦笑する中、その手の甲が向けられると──そこには以前と変わらず、いや、以前よりも妖しく美しい形となった令呪が確かに刻まれていた。
『でももし、私の令呪が消えなかったら──私の、マスターとしての資格が残ったままだったら、人理のための戦いに協力して』。
勝負の内容には「人修羅の勝利条件」と「立香の勝利条件」の二つが存在していた。
そして、それらは両立が可能である。
もちろん、通常であれば人修羅に屈した時点でマスターとして戦う意思など喪失してしまうだろう。
けれど、立香はそうではなかった。
「マスターとしての私も、お兄ちゃんの妹の私も、女としてお兄ちゃんを好きな私も、みんな私だから」
人修羅に抱かれることと人理のための戦いを共存させた時点で、立香の勝ちは約束されていたと言っていい。
同時にそれは、人修羅の勝利条件を満たすことも前提としていたわけだけれど。
「なによそれ。じゃあ、あんたのいいようにしてやられたってこと?」
「そんなことないよ。私は、ぜんぶ取りこぼしたくなかっただけ」
自分たちの歴史のために異聞帯と戦ってきた立香に言えることではないかもしれないけれど。
今は、これが正しいと──選べる道の中で最善だと信じる。
「さあ、行こうみんな。私たちの戦いへ」
立香は、笑顔で宣言した。
「妹の頼みでは、断るわけにはいかないな」
人修羅が号令すると、釈然としない表情をしていた者も表情を引き締めて。
マシュ・エンジェル、エリセ・ヤクシニー、スカサハ・スカアハ、ティターニア、ピクシー……他にも多くの悪魔たちが戦いに出陣。
もちろん、立香と契約したサーヴァントたちも一緒に。
バックアップは共に人修羅の配下となったカルデア職員たち。
正攻法以外の手を用い、裏切りと瓦解を経験させられ──それでも、以前よりも強い体制と結束を得て、彼らは再び人理のための戦いに身を投じていく。
その歩みは、とても力強いものだった。