【序章:亀有の退屈と、悪魔の閃き】
日本の首都、東京。その東部に位置する葛飾区亀有は、良くも悪くも、今日も平和な時間が流れていた。少なくとも、亀有公園前派出所の内部に限っては、午前中は珍しく事件らしい事件もなく、時計の針だけがやけにゆっくりと進んでいるように感じられた。
「あー、暇だ暇だ! 何かこう、ドカンと儲かるような面白い話は転がってねえのか!」
派出所の隅で、競馬新聞を広げていた両津勘吉は、大きなあくびと共に不満を漏らした。彼の頭の中は、常に金儲けと楽をすること、そして面白い騒動を起こすことで満たされている。平和や退屈は、彼にとって最大の敵なのだ。
ふと、両津の視線が、真面目に書類整理に取り組んでいる同僚、秋本・カトリーヌ・麗子の姿に吸い寄せられた。非番の日にはモデルとしても活躍する彼女は、警察官の制服に身を包んでいても、その抜群のスタイルと華やかな美貌は隠しようがない。滑らかな黒髪(アニメ版設定に準拠、原作は金髪)、大きな瞳、通った鼻筋、そして何より、制服の上からでもわかる、女性としての魅力的な曲線美。
(…麗子か…あの美貌とスタイルは、まさに日本の宝、いや世界の宝だな…これを金儲けに利用しない手はねえよな…)
両津の脳内に、悪魔的な閃きが稲妻のように走った。そうだ、麗子を使えば、一攫千金も夢じゃない! 問題は、どうやって彼女をその気にさせるか、だ。生真面目で、金銭には全く困っていない彼女を、ただの金儲け話に乗せるのは至難の業。ならば…
(…公共のため、葛飾区のため…そうだ、その手があった!)
両津はニヤリと口角を上げた。大義名分さえあれば、あの真面目な麗子も、多少の無理は聞いてくれるかもしれない。彼は早速、頭の中で悪質なシナリオを組み立て始めた。タイトルは『葛飾区イメージアップ・極秘プロモーションビデオ制作プロジェクト』! もちろん、制作するのは両津自身、依頼主も両津自身、そしてその収益も全て両津の懐に入る予定である。
「よし、決めた! この世紀の大プロジェクト、成功させるぞ!」
両津は拳を握りしめ、ターゲットである麗子に、満面の(胡散臭い)笑顔で近づいていった。
【第一幕:甘言と大義名分、女神の承諾】
「麗子! ちょっといいか? 実は、君にしか頼めない、極秘の、そして非常に重要な任務があるんだ!」
両津は、わざとらしく声を潜め、さも重大な国家機密でも打ち明けるかのような口調で切り出した。
「何よ、両ちゃん。その言い方、また何か企んでるんでしょう?」
麗子は、ペンを置いて訝しげな視線を送る。両津が「重要任務」などと言う時は、大抵ろくなことではない。
「ち、違うって! これはマジもマジ、大マジなんだ! 実はな、区役所の、それもかなり上層部から、俺に直接、極秘の特命が下ったんだよ!」
両津は、ありもしない区役所の上層部との繋がりを匂わせる。
「内容は、『葛飾区イメージアップ・プロモーションビデオ』の制作だ! 最近、区のイメージがどうもパッとしないらしくてな。そこで、この両津勘吉に白羽の矢が立ったというわけだ!」
「区役所が、両ちゃんに…? にわかには信じがたいけど…」
麗子はまだ半信半疑だが、「区役所」「極秘特命」という言葉に、少しだけ警戒を解き始める。
「だろ? 俺も最初は驚いたんだが、どうやら俺のこの、型破りな発想力と行動力に期待してるらしいんだ! そこでだ、麗子! このビデオの主役として、君の力が必要なんだ!」
両津は麗子の手を取り(すぐに振り払われたが)、熱っぽく語りかける。
「君のその、世界レベルの美貌! 溢れる知性! そして、区民に寄り添う優しい心! それら全てをもって、葛飾区の素晴らしい魅力を、日本中に、いや世界中に発信してほしいんだ! これは、君にしかできない、葛飾区への最高の貢献だと思わないか!?」
「わ、私に…? 葛飾区への貢献…」
麗子は、両津の過剰なまでの賛辞と、「公共のため」という大義名分に、心が揺れ動く。確かに、自分が生まれ育ったわけではないが、勤務地である葛飾区には愛着がある。そのイメージアップに貢献できるなら、やぶさかではないかもしれない。
「…まあ、本当に区役所からの正式な依頼で、公共のためになるというのなら…少しだけなら、協力してもいいわよ」
麗子は、まだ若干の疑いを残しつつも、最終的には承諾の意を示した。
「やったー! さすが麗子、話がわかる!」
両津は内心でガッツポーズをしながら、満面の笑みで麗子の手を取り、ぶんぶんと振った(再びすぐに振り払われた)。
「よし、善は急げだ! 早速、撮影に入ろう! 場所は、自然あふれる公園がいいだろう!」
両津は、用意していた安物のビデオカメラと、手書きの『葛飾区公式イメージビデオ撮影中』と書かれた(怪しさ満点の)看板を手に、意気揚々と派出所を飛び出していった。麗子は、一抹の不安を覚えながらも、その後を追うしかなかった。
【第二幕:順調な滑り出し? 制服からブラウスへ…プロポーション描写①】
撮影場所に選ばれたのは、派出所からほど近い、緑豊かな公園だった。両津は手際よく(?)安物の三脚にカメラをセットする。
「よし、麗子! まずは、この公園の美しい緑を背景にして、君の爽やかな笑顔で、『安全・安心、そして緑豊かな街、葛飾へようこそ!』って感じのメッセージを頼む!」
両津は、監督気取りで指示を出す。
「こうかしら?」
麗子は、少し照れながらも、さすがは現役モデル。カメラの前では、瞬時にプロの顔になる。背筋をすっと伸ばし、優しい微笑みを浮かべ、完璧なポージングを決める。その立ち姿は、凛として美しく、警察官としての規律と、女性としての優雅さが見事に同居していた。
「おー、いいぞ麗子! まるでハリウッド女優だ! 葛飾区の株がストップ高間違いなしだ!」
両津はカメラを回しながら、お世辞を連発する。内心(しめしめ、まずは掴みはOKだな。ここから徐々に本題に入っていくぞ…)と計算していた。
数カット、当たり障りのないシーンを撮影した後、両津は少し言い淀みながら、次の指示を出す。
「うーん、素晴らしいんだが、ちょっと硬いかな… 次は、『区民のリラックスと、自然との一体感』をテーマにしたシーンを撮りたいんだ。そこで、もう少しラフな、自然体な感じを出したいんだが…」
両津は、申し訳なさそうな表情を作りながら切り出した。
「その…制服の上着を脱いで、中のブラウス姿になってもらえないだろうか? その方が、より親しみやすくて、自然な魅力が出ると思うんだが…どうだろう?」
「え? 上着を脱ぐの?」
麗子は、さすがに少し眉をひそめる。公務員の制服を、たとえイメージビデオのためとはいえ、勤務中に脱ぐことには抵抗がある。
「でも…本当にそれでイメージアップに繋がるのかしら…」
「もちろんだとも! 制服姿も凛々しくて素敵だが、時にはソフトな一面も見せることで、区民との距離がぐっと縮まるんだ! これは高等な広報戦略なんだよ!」
両津は、もっともらしい理屈を並べ立てる。
「まあ、上着くらいなら…分かったわ」
麗子は、まだ納得しきれない部分はありつつも、「広報戦略」という言葉に、渋々ながら頷いた。彼女はゆっくりと制服の上着を脱ぎ、肩にかけた。白いブラウス一枚の姿になる。
途端に、彼女の印象は変わった。規律正しい制服に隠されていた、女性らしいしなやかな体のラインが、よりはっきりと浮かび上がる。細いウエスト、そこから自然に広がるヒップライン。そして、決して華奢ではないが、均整の取れた肩のラインと、すっと伸びた首筋。ブラウスの薄い生地越しに、豊かな胸の存在感も、以前より明確に感じられた。それは、制服姿の凛々しさとはまた違う、柔らかで、しかし芯の強さを感じさせる、洗練された美しさだった。
「おお! 素晴らしい! 素晴らしいぞ麗子! まるで緑の風にそよぐ花のようだ!」
両津は、内心の興奮を抑えながら、カメラを回し続ける。(内心:くぅーっ! これだよこれ! やはり麗子は脱がせてこそだな! よし、次はいよいよ本丸だ!)
【第三幕:芸術という名の罠、ブラウスからキャミソールへ…プロポーション描写②】
ブラウス姿の麗子を、様々な角度から撮影し、両津は満足げな表情を見せていたが、それも束の間。彼は、さらに欲を出し、次なる段階へと進むことを決意する。
「うーん、麗子、本当に綺麗だ…綺麗なんだが…」
両津は、わざとらしく腕を組み、難しい顔をして唸り始めた。
「芸術というものは、常に高みを目指さなければならない…! このシーン、もっとこう、被写体の『内面の輝き』や『生命力』を、光と影で表現したいんだ!」
「内面の輝き…? 生命力…?」
麗子は、両津の抽象的な言葉に、怪訝な表情を浮かべる。
「そうだ! そこでだ、麗子!」両津は、意を決したように(もちろん演技で)切り出した。「これは、非常に芸術的な試みなんだが…光を通して、君の美しいシルエットを捉えたいんだ。そのためには…その、ブラウスも…脱いでいただけないだろうか?」
「ええっ!? ブラウスまで脱げって言うの!? さすがにそれは無理よ! 何を考えてるの、両ちゃん!」
麗子は、今度こそはっきりと拒絶の姿勢を示した。顔が赤らみ、両津を睨みつける。公務中、しかも屋外で、ブラウスまで脱ぐなど、常識的に考えてあり得ない。
「いやいや、違うんだ麗子! 誤解しないでくれ!」両津は慌てて弁解する。「これは決して卑猥な意味ではなくてだな! 純粋な芸術表現なんだ! 逆光を利用して、君のシルエットだけを美しく映し出すんだよ! 肌の色や細かい部分は分からない、あくまで形としての美しさを捉えるんだ! これぞ、日本の『侘び寂び』、フランスの『印象派』にも通じる、高尚なアートなんだ!」
「アート…? シルエット…?」
麗子は、両津の口から次々と飛び出す、それらしい言葉に、少しだけ混乱し始める。芸術には疎くない彼女だが、両津の言う「芸術」は、どうにも胡散臭い。
「そうだ! それに、この映像は海外の映画祭にも出品する予定なんだ! 君のシルエットが、世界中の人々を感動させるかもしれないんだぞ!」
両津は、さらに大きな風呂敷を広げる。
「せ、世界…?」
麗子は、完全に両津のペースに乗せられかけている。疑念は消えないが、「世界」「芸術」「公共のため」という言葉が、彼女の判断力を鈍らせていく。
「…本当に、シルエットだけなのね? いやらしい撮り方は絶対にしないと約束できる?」
麗子は、最後の確認をするように、真剣な眼差しで両津を見つめた。
「もちろんだとも! この両津勘吉、神に誓って嘘はつかん!」(神も仏も信じていない男の、最も信用できない誓いである)
「うーん……わ、分かったわ…」
麗子は、深いため息をつき、顔を赤く染めながらも、最終的には頷いてしまった。彼女は、恥ずかしさと抵抗感で震える指を、ゆっくりとブラウスのボタンへと伸ばす。一つ、また一つと、小さなボタンが外されていく。そして、意を決して、ブラウスを両肩から滑り落とした。
白いキャミソール(または、それに準ずるシンプルな下着)一枚の姿が、白日の下に晒される。先ほどのブラウス姿よりも、さらに彼女の身体のラインは露わになった。華奢に見えて、しっかりと筋肉のついた肩。滑らかな曲線を描く腕。きゅっと引き締まったウエストは、もはや驚異的な細さだ。そして、キャミソールの薄い生地は、その下にある、豊満で形の良い双丘の存在を、隠すどころか、むしろ強調しているかのようだった。その輪郭、重力に逆らうかのような張り、そして中心部の硬い感触まで想像させる。麗子は、無意識のうちに両腕で胸元を隠すような仕草をする。その姿は、非常に無防備で、見る者の庇護欲を(そして、残念ながら両津のような男の歪んだ欲望を)掻き立てた。
「(ゴクリ…)か、完璧だ…完璧すぎるぞ麗子! まさに、現代に舞い降りたヴィーナスだ!」
両津は、もはやカメラを回すことよりも、目の前の光景に釘付けになっている。その目は、明らかに「芸術的なシルエット」ではなく、麗子の柔肌と、キャミソール越しの胸の膨らみに注がれていた。しかも、無意識のうちか、カメラを持つ手がわずかに震え、レンズが微妙にズームしようとしている。
【第四幕:越えた一線、女神の聖域と鬼神の怒り…プロポーション描写③】
キャミソール一枚になった麗子の姿に、両津は完全に理性のタガが外れかけていた。しかし、彼の悪魔的な欲望は、まだ留まるところを知らない。彼は、震える声で、しかし有無を言わせぬ響きを込めて、最後にして最悪の要求を口にした。
「し、しかし麗子! 芸術の神は、時に残酷なまでの完璧さを求める! 見えてしまったんだ、俺には! そのキャミソールの、そのわずかな布の存在すら、究極のシルエットにおいてはノイズなのだ! その下にある、君自身の、ありのままの、生命の曲線こそが、真の芸術なんだ!」
両津は、もはや支離滅裂なことを口走っている。
「い、いい加減にしなさい、両ちゃん!!!」麗子の声が、怒りと羞恥で震える。「ブラジャーまで脱げって言うつもり!? あなた、本当に何を考えてるの! そんなの絶対に無理よ! もう帰るわ!」
麗子は完全に拒絶し、両津に背を向けて服を着ようとする。その顔は怒りで真っ赤になり、目には涙さえ浮かんでいた。
「ま、待ってくれ麗子! 頼む! これが本当に、本当に最後のワンカットなんだ! これさえ撮れれば、区のイメージはV字回復! 俺のクビも繋がる! いや、それだけじゃないんだ! このプロジェクトが失敗したら、俺は…俺はもう…!」
両津は、泣き落としと自己憐憫、そして責任転嫁を最大限に利用し、麗子の良心に訴えかける。さらに、懐から取り出した小型のトランシーバー(もちろん偽物)に向かって、「はい!区長!え? やはり秋本君の協力なしでは…? はい、申し訳ありません!私の力不足で…!」などと、迫真の演技まで始めた。
「うっ…くちょう…? そ、そんな…」
麗子は、両津のあまりの必死さと、聞こえてくる(偽の)区長との会話に、完全に冷静さを失ってしまった。責任感の強い彼女は、「自分のせいで、本当に区や両津に迷惑がかかるのかもしれない」という、あり得ない思考の罠に嵌ってしまったのだ。
「…わ、分かったわよ! ほんとうに、ほんとうに、これで最後よ! 一瞬よ! カメラも見ないで! シルエットだって言ったんだから!」
ほとんどパニック状態になりながら、麗子は涙声で了承してしまった。
彼女は、顔を真っ赤にして俯き、もはや限界を超えた羞恥と屈辱に耐えながら、震える指でキャミソールの肩紐を掴んだ。それをゆっくりと引き下げ、床に落とす。そして、さらに深く息を吸い込み、震えが止まらない指を、背中に回し、ブラジャーの小さなホックに触れた。一瞬の、永遠にも感じられる逡巡の後、意を決して、小さな金属の留め具を外した。肩紐が滑り落ち、最後の砦であったブラジャーが、静かに、しかし決定的に、彼女の体から離れていった…。
彼女の上半身が、完全に露わになった、その聖域が白日の下に晒された瞬間!
太陽の光を浴びて、雪のように白く輝く柔らかな肌。重力に抗い、完璧な円錐形を描いて豊かに盛り上がる双丘。その形、張り、大きさ、すべてが神の計算によって創られたかのように、絶妙なバランスを保っている。そして…極度の緊張と、羞恥と、不意に肌を撫でた空気の冷たさ、あるいはそれら全てがない交ぜになった反応か、その二つの頂点に存在する乳首は、薄紅色を濃くし、硬く、小さく尖り、まるで彼女の内心の動揺と抵抗を代弁するかのように、その存在をくっきりと主張していた。 麗子の頬は、もはや耳朶まで真っ赤に染まり、燃えるようだった。
「(鼻血をダムが決壊したかのように噴出させながら)ぐっはぁぁぁーーーーっっ!!!! こ、これぞ究極! 神の造形美ぃぃぃ! 国宝! いや宇宙の宝だぁぁぁ!!!」
両津は完全に理性を失い、カメラのことなどすっかり忘れ、ただただ目の前の光景に感極まって(というより、完全に性的興奮状態で)絶叫する!
その、両津の下品極まりない反応と、絶叫と、鼻血と同時に!
麗子は、目の前で醜態を晒す男の姿と、無情にも地面に転がったカメラの横に見えた、三脚の忌まわしいテープ――そこには、もはや芸術のカモフラージュすら放棄した、『(株)両津興業 企画:超絶永久保存版!麗子・限界突破!神バスト完全ヌードビデオ!』という、悪意と欲望に満ち満ちた文字が、デカデカと書かれていた――を、その涙で滲む瞳で、はっきりと認識してしまった!
全ての点と点が、線となり、面となり、彼女の中で、おぞましい真実の絵を描き出した。騙されていた。利用された。そして、こんな…こんな、最も屈辱的で、無防備な姿を、この男の、この汚れた欲望のために、晒してしまった…!
怒り。絶望。自己嫌悪。後悔。あらゆる負の感情が、彼女の中で沸騰し、臨界点を突破した。
「(全身が、怒りと屈辱と羞恥で、わなわなと震える。顔は怒りで血が上り赤黒く染まり、硬く尖った乳首が、まるで彼女の怒りのメーターのように、さらに際立つのを感じながら)…………………………き、さまぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!!」
もはやそれは、人の声ではなかった。天変地異の前触れか、地獄の釜が開いたかのような、凄まじい怒りの咆哮が、公園全体を、いや、亀有全体を震わせた!
「ひぃぃぃぃっ!? し、しまったぁぁぁ! 本物の鬼神を降臨させてしまったぁぁぁ!」
我に返った両津は、自分が触れてはならない神の逆鱗に触れ、もはや助からないことを悟り、本能的な恐怖に駆られて、一目散に逃げ出そうとする。
「万死をもって償いなさい!!!!」
麗子は、恥ずかしさなど怒りの炎の中に焼き尽くし、鬼神の如き形相と、人間離れしたスピードで、両津に襲いかかる! もはやそれは追いかけっこではない。一方的な破壊と制裁。公園の木々がなぎ倒され、ベンチが砕け散り、地面が陥没するほどの、壮絶な(しかし、こち亀ワールドなのでどこかコミカルな)制裁が繰り広げられた。公園には、この世のものとは思えない両津の断末魔の叫びと、破壊音が、しばらくの間、途切れることなく響き渡ったという…。
【終章:女神の傷跡と、愚か者の末路】
数時間後、亀有公園前派出所には、奇跡的に五体満足(ただし、全身包帯とギプスだらけで、もはやミイラ男状態)の両津と、借り物の警察官用ジャージを羽織り、未だ怒りのオーラを全身から放ち続けている麗子の姿があった。
カメラはもちろん、その破片すら残っておらず、データも完全に消滅(物理的に)。事情を聴取した大原部長は、あまりの事件の内容にショックで泡を吹いて倒れ、救急車で運ばれる騒ぎとなった。
両津には、回復後、前代未聞のペナルティ――派出所勤務でありながら、なぜか北海道の最果てにある駐在所への(無期限)転属と、生涯年収に匹敵する額の罰金(麗子への慰謝料含む)、そして麗子への半径100m以内接近禁止命令――が言い渡されたという。
一方、麗子は、ふとした瞬間に、あの日の屈辱的な出来事を思い出すのか、誰にも気づかれないように、顔を真っ赤にして俯き、唇を噛みしめる姿が、時折見られるようになったという。その時、彼女の硬く尖った胸の記憶が蘇っているのかどうかは、定かではない…。