鬱ゲーみたいな世界に生まれた異常者(ボク)はどうすりゃいいですか? 作:姫瑠、結婚しよう
SSD×ぬきたし×ヘンプリ。
好きなエロゲミックスにしたごちゃ混ぜクロスオーバーです。
時系列は
ぬきたし篇(過去篇)→原作SSD→ヘンプリの順番。
オモイデ
今日この日、ぼくは天使を手に入れた。
ぼくだけの天使、ぼくだけの彼女。
そして、ぼくだけの愛人形............。
いや────違うな。
そう、違う。
彼女は天使でもなければ愛人形でもない。
さっきのは単なる比喩。
この世で最も美しい生き物を自分のものにした、男としての喜び。そして猛りを表そうとしたのだけれど、やっぱりこんな陳腐な表現ではぼくが胸中に抱いている喜びを表現しきれないし、なによりも彼女にちっとも似つかわしくない。
ぼくは、自分の語彙のなさを初めて恨んだ。
こんなことならあの退屈な、欠伸を抑えるのに一番力を使うくたびれた中年教師の授業を真面目に聞いていればよかった、と普段なら思いもしない考えを頭の中に浮かべてしまった。
彼女の顔に視線を落とすと、すうすうと自然な間隔で、異常なく小さな呼吸を繰り返している。
ぼくは、その様子を見てひとまず安堵の息をつく。
よかった。これでもし彼女の身に何かあれば、ぼくはぼくを一生許せなかったろうし、自責の念から自ら命を絶っていたかもしれない。
指先を彼女のぷっくらとした薄い唇へと伸ばしてその柔らかな感触を数秒の間じっくりと愉しむ。数秒、といったがそれが正確かどうかは定かではない。もしかすると数十秒だったかもしれないし、あるいは数分だったかもしれない。とにかくぼくは、そのぐらい彼女の唇に夢中になっていたんだから、正確な秒数なんて覚えていられなかった。
「..........んっ........ぅ......」
彼女は小さく喘いだ。
ぼくの指で、本当に小さくだけれどたしかに喘いだ。
もちろんその声に性的なものなんて寸分たりとも含まれていなかったし、そんなことはぼくだって承知の上だ。
でもだからといって興奮しない訳じゃない。
できない訳じゃない。
今まで彼女が通学するたびに傍から見ているだけの分際だっただけのぼくが彼女に触れている。彼女の人生において、路傍の石ころ程度の存在に過ぎなかったはずのぼくが、こうして彼女を好きにできる立場を手に入れたのだと思えば、それだけでオーガズムに達してしまいそうなほどだ。
「はぁ.................ふ............」
いつしか、僕の喉からは、彼女から聞こえたのと同じように小さな小さな声が漏れるようになっていた。
唇に触れ、そして漏れ出た声に反応するぼく。
その視線は次第に、首筋から丸みを帯びた胸に。そしてすらっとした白い美脚へと移っていく。
膨らんだ股間に手を伸ばし────やめた。
焦ってはいけない。
まだその時では全然ないんだから。
物事には順序ってものがあるんだから、ぼくは手順を絶対に間違えちゃいけないんだ。確かに、ぼくは彼女を好き放題する立場と力がある。普通の男なら────いや、普通の男はこんなことをしないだろうが、並平均の性欲と、健全な心身を持つ男なら、実際にするかどうかは置いておくにしても、目の前に美少女が無防備に倒れていれば不埒な妄想の一つや二つぐらいはして然るべきだろう。
中にはその妄想を現実に変えるべく、力にものを言わせて無抵抗な彼女を犯そうとするかもしれない。
しかし、ぼくは違う。
ぼくは彼女を愛しているし、そこを曲げるつもりはない。彼女に不埒な欲望を抱くことはあっても、ぶつけることがあったとしても、そこにバイオレンスな部分は要らないのだ。
がさごそ......と用意していた衣装に手をつける。
すると、手につるつるとしたいつもの感触が戻ってきた。黒光りして、グニグニと反発する手触りの、あの言いようもない多幸感をぼくに与えてくれる、綺麗な分厚いゴムの感触が────。
嗚呼、蒲乃菜。
蒲乃菜、蒲乃菜、蒲乃菜。
今日ぼくは世界で一番美しい生き物に、世界で一番綺麗な衣装を与える幸福を手にしたのだ。その権利を勝ちとった。あの、欲深く、セックスと物欲しか頭にないような、あんなケダモノたちの世界から蒲乃菜を救い出すことに成功した。
今日、彼女は永遠にぼくのものになる。
夢にまで見た、ぴっちりとした黒いラバースーツに身を包んだ蒲乃菜を見ることができるのだ。
妄想は、現実へと結実する。
どんな女を抱いたって、愛がなければ意味がない。
あの島で過ごした日々にいい思い出なんてほとんどないし、大嫌いなものばかりだったけれど、それでも学んだことは多々ある。これは、その一つだ。
日本南部にひとつ浮かぶ常夏の島。
青い空に、藍色の巨海。
そして、島の人間たちの生き方から、本島に住む人間は、あの島のことをこう呼ぶ。
────
ぼくが中学一年生だった頃に、ぼくの両親は離婚している。二人に世間一般でいう夫婦愛なんてものはなかった。いや。もしかすると、かつてはあったのかもしれないが、少なくともぼくの物心つく頃にはとうに二人の関係は冷め切っていた。
父は仕事しか頭にないような人間で、家庭なんて省みるタイプじゃなかった。そのせいだろうか?母が父に愛想を尽かしたのか、あるいは父が母に愛想を尽かしたから家庭に関心がなかったのか、どちらかは定かではないが、二人ともぼくに対して関心がない人だったのは確かである。
そしてぼくは、そんな二人が大嫌いだった。
これもまた、確かなことだ。
喧嘩ばかり、口論ばかりの二人。
ぼくに対して、お互いの陰口を吹き込んでくる両親。
そんな環境で、親を好きになるだろうか?
愛せるだろうか?............否だ。
手本となるはずの両親から愛のない生活を見せられ、まともに愛情も注がれないのに、どうやって愛し方を学ぶことができるのだろう?
当然の帰結として────ぼくは両親に、まったくと言っていいほど懐かなかった。愛さなかった。
代わりに懐いたのは、たまに青藍島から遊びに来る祖父。祖母はぼくが生まれるよりも遥か昔に何かしらの病気で亡くなっており、他に兄弟姉妹もいなかったものだから、家族らしい家族は本当に祖父一人だけだ。
優しいおじいちゃん。
冷たく、見栄っ張りの父。
ぼくをストレスの捌け口にする母親。
離婚すると聞いた時、特に疑問や抵抗を抱くこともなくすんなり受け入れられたのはそのためだろう。
父はぼくと母の元を去り、かといって父親似のぼくを疎んでいる母はまともにぼくを育てる気もなく。ちょうど一年ほど経った夏頃、祖父が亡くなったことで、祖父の住んでいた一軒家は持ち主がいない状態になった。それを好機とし、逃げ込むように移り住んだのが青藍島。邪魔者が消えてくれるならということで母は特に反対もしなかったし、ぼく自身、あの母親と一緒の空間で過ごしたいとはこれっぽっちも思わなかったので、お互い都合が良かったのだろう。
その折、地元にある学校へと転校したのだが、思えばそれが全ての始まりだったのかもしれない。ぼくの人生を語るにおいて────語るほどのことなどほとんどないぼくの人生において、それでも強く印象に残っているのは、間違いなくあの学校で過ごした五年なのだから。
「────東京から越してきました、
たぶん、はじめはこんな感じだったと思う。
オーソドックスというか、テンプレートというか。
とにかく当たり障りのない言葉を紡いだのは覚えている。
パチパチ、という拍手音と共にいくつかの質問が投げつけられ、ぼくはそれにすらすらと事前にある程度予測していた返答を返していく。そうして自己紹介の時間が終わり、指定された席に着いた時、ぼくはある種の違和感を覚えた。
(──────?見られてる..........?)
はじめ、余所者ということで疎まれているのかと勘繰ったが、転校生が奇特な視線に晒されるのは常だろうと、そう自分にだけ言い聞かせた。
そして、それが酷く的外れな考えであると気づくのに、そう時間はかからなかった。
「あぁんっ!♡」「ふっ、ふっ、ふっ!」「そこ.......いい!いい!来てぇ♡」「
「──────────」
ぼくは。
その日はじめて青藍島の習慣を目にして、激しい抵抗と、不快感を覚えた。いや、予想していなかった訳じゃないさ。
青藍島には、「ドスケベ条例」なる頭がおかしいとしか形容のしようがない狂った条例が存在していて、
もちろんぼくだってそんなことは百も承知で来た訳だけど.........実際目の当たりにすると、耐え難いものがあった。
年端もいかない、婚前の娘が当たり前のように貞操を差し出し、男たちの欲望........陰茎によがっている様を、受け入れることができなかった。
想像する。
もしも自分に恋人がいたとして.............
そしてその子が、他の男に犯されていたとしたら..........
考えるだけでも悍ましい。
ぼくは昔から、こういった尻軽たちのことは大の苦手だったし、分厚い口紅ですら嫌悪感を覚えるタイプの人間だった。
でも、
性乱の異名の通り、性に乱れたこの島でしか満たせないぼくの欲望.........そして、夢。
この島なら、ぼくのちょいとばかり特殊な性癖も受け入れてくれると考えたから引っ越してきたのだ。もちろん、母親から離れたかったことも大きな理由の一人だけど..........
ぼくは絶句し、その場で呆けている。
すると、胸元を大きく開けた三人ぐらいの女子生徒が、ぼくに向かって近づいてきた。
「なーがーせーくぅーん♡」
その女子たちは、ぼくが編入したクラスの中でも一際明るい髪色に染めたグループで、ぼくが自己紹介した時にもひときわ強い視線を向けて来た一派だった。
ぼくは察しの良い方ではないし、むしろ悪い方だという自覚があるけれど、それでもこんな光景を見せられても何も察せないほどぼんくらな訳じゃない。
「ふふっ........♡ねね、長瀬くん今ヒマかな?ヒマだよね?本島から転校してきたばっかりでさ、まだ
「.......................」
正直言って、その申し出は渡りに船だった。
ぼくはこういう股と頭の緩そうな、欲望に身を委ねることしか知らない部類の人間を徹底的に嫌悪──侮蔑といってもいいぐらいには疎んでいるわけだけど、でも肉欲を全く抱かないかと問われれば、否としか答えられない。
要するに、
ふやけるような甘美な快楽の誘惑を全て跳ね除けられるほど、ぼくの意志は固くなかった。
...............それに、いきなり
本当に夢を叶えたいのなら、慎重に。
まずは
頭の隅で、ヒヤリと脳髄まで冷やされたように、冷静な自分が内側から語りかけてくる。
────そもそも、ドスケベ条例がある以上性行為を断ることは不可能だ。なら、いっそのことお前も愉しんでしまえ。
そうしてぼくに語りかけてくる。
ゆっくり諭すように語りかけてくる。
じんわり、胸に広がるように.........。
────ベツに、いいじゃないか。どうせ相手だって快楽のことしか頭にない猿みたいな女なんだから。遠慮無用さ。
そして、だんだんと抵抗心も消え────。
「.........うん。よろしく」
ぼくの口は、内心とは真逆の返事をしていた。
駄文&渡の性格改変注意。
基本的に渡は小説版依拠で進めていくのでゲーム版とは矛盾点が生じることもあります。また、生い立ちが原作と全く違うため、性格にも多少変化が。でもラバリストで基本陰鬱なのは変わりありません