ある日、バイト先のオーナーが変わった。何でもオーナーの娘らしい。
「よろしくお願いします……遠峰鷹子です……」
無口で無表情だったが、端正な顔立ちの美女だった。
髪は短く、綺麗な銀髪。スタイルも良く、胸も大きい。多分Eカップぐらいはありそうだ。男どもに人気が出そうだなと思った。
でも、必要以上に大人しく、どこかお嬢様っぽい雰囲気がある。
「父が体調不良のため……しばらくの間、私がオーナーを務めさせていただくことになりました……」
「ええ……よろしくお願いします」と俺は挨拶した。
「……東田さん、私より年上ですよね?」
「え? まぁ、はい。そうみたいですね」と俺は答えた。
「……ならタメ口でいいですよ。父から、東田さんはバイトで一番優秀だから教えてもらえって。」
「あ、そう? じゃあ、よろしく……遠峰」と俺は言った。
「はい。よろしくお願いします、東田さん」と彼女は言ったが、無表情のままだった。
それから遠峰は俺から仕事内容や接客態度を学びつつ働き始めた。
俺は淡々と仕事をこなしつつ、たまに遠峰を観察していた。
正直、接客態度はぎこちなく、社交辞令も下手だ。
でも、礼儀正しい態度で客に不快感を与えることはなく、たどたどしい話し方が逆に愛嬌になっているようだった。
遠峰がバイトに入ってから、店は繁盛し始めた。
毎晩予約で埋まるほどの人気で、男客はこぞって遠峰を指名し、店内は活気に溢れていた。
俺はおっさんの接客が苦手だから、彼女が来ると正直楽だった。
遠峰のおかげで、バイトに身が入るようになった気がする。
ある日、遠峰が自称なんとかの社長というおっさんに絡まれ、困っているようだった。
そのおっさんはセクハラでもしそうな目つきをしている。
俺は席に行き、遠峰とおっさんの間に入った。
「お客様、ご注文をお伺いしてもよろしいでしょうか?」とわざと気持ち悪い笑顔を作って圧をかけた。
おっさんは俺の雰囲気に少し引いたようだ。
「じゃあ、ワインでも飲むか」とおっさんは言った。
「かしこまりました」と俺は答え、遠峰に小声で「ここは俺に任せて隠れてな」とおっさんの死角に連れて行った。
おっさんが去ったのを確認してから戻った。
「あ、ありがとうございます……東田さん」と遠峰が感謝を述べた。
「いいよ、気にしないで」と俺は言って接客に戻った。
遠峰は何も言わずに立ち去っただけだった。
(あれが男に慣れてないってことなのかな)と思った。
閉店になり、遠峰が再び近づいてきた。
「東田さん、さっきはありがとうございます……」と頭を下げた。
「いいって、別に」と俺は返した。
「こういうバーだと、キャバクラや風俗と勘違いする奴もいるし」と遠峰に話しかけた。
「そうですね……たまにそういう人もいますが」と彼女は答えた。
俺は周囲を見つつ、他のスタッフに聞こえないように小声で質問した。
「……遠峰って、ああいうのが怖いんだ?」
遠峰は下を向いたまま震える声で答えた。
「はい、私、高校まで女子高で男性経験がないもので……」
俺は少し驚いた。
「へぇ……でも、よくバーのオーナーなんてできるようになったな。父親からの指図か?」
遠峰は少し間を置いて答えた。
「はい、父から人付き合いや異性との接し方をここで学ぶように言われたんです。」
「でも、よくそんなことを引き受けたな」
「社会勉強です。私、世間知らずで……父の会社をいずれ継ぐことになるので、その予行練習ということで……」
「はい。でも、あまり上手くいかなくて。すみません……」
「なるほど、それでか。」
「まぁ最初は誰でもそんなもんだよ」と俺は励ました。
すると遠峰は少しだけ笑顔になった気がした。
「あの、東田さん……一つお願いがあるのですが……」と彼女が言ったので、俺は聞くことにした。
「何?」
「その……この後、私と一緒にお食事しませんか? 相談があるんです。」
「ああ、そういうことか。別に構わないよ」と俺は答えた。
「ありがとうございます!」と彼女は嬉しそうに言った。
俺たちは近くの小さくて洒落た洋食屋に移動した。
店内に入ると良い匂いが漂い、落ち着いた雰囲気だった。客層も大人しい人が多く、静かな空間が広がっていた。
俺と遠峰は向かい合って席に着き、俺はステーキ、彼女はオムライスを注文した。
「それで、相談って何だ?」と俺は聞いた。
「はい、実は私……告白されたんです。」
「ふーん、どんな人?」
「……えっと……分からないんです。大学の同級生で、突然告白されて。でも、その人とは授業で数回話したくらいで、あまり知らなくて……」
「それで、その男と付き合ってるのか?」
「いえ、今は保留にしてます……。どうして私なんかに告白したのか全然分からなくて、そんな人と付き合うのは不安で。」
「じゃあ、断るのか?」
「はい……。でも、断ったら相手に悪い気がして……」
やれやれ、悪者になりたくないってところか。
「東田さんは恋愛経験ってありますか?」
「高校の時に後輩と一度付き合っただけだな。でも、すぐ別れた。」
「そうなんですか。じゃあ、東田さんは恋愛経験があるんですね。」
「いや、そうでもないよ。本当に一回だけだからな。」
その時、料理が運ばれてきたので話は一旦中断し、食事を始めた。
俺はステーキを半分くらい食べながら、遠峰の話に耳を傾けた。
「その男のこと、好きじゃないんだな?」
「はい、嫌いじゃないですけど、好きかと言われると分からないです」と遠峰が答えた。
「まぁ、最初は誰でもそうだよ。他人のことなんてよく分からんもんだ。」
俺はステーキを切り分けて口に運んだ。
「そんなにウジウジ悩むなら、断った方がお互いのためじゃないか」と俺が言うと、
「そうした方が……いいですかね。悪い気がして……」と遠慮がちに聞いてきた。
「もし本当に好きなら、もう一度告白してくるだろ。それで本気度が伝われば、付き合ってやればいいさ。」
「はい……そうですね。分かりました。すみません、こんな話聞いてもらって。」
「構わないさ。人に話すと気分がすっきりすることもある」と俺は笑った。
食事を終え、会計を済ませて店を出た。
「駅まで送っていこうか?」
「あ、はい、お願いします」と彼女が言うので、一緒に歩いて帰った。
駅までの間、さっきの話以外にも他愛ない会話をしながら歩き、最寄り駅で別れた。
遠峰の後ろ姿を見ると、幸薄そうな雰囲気で、なぜか保護欲を刺激された気がした。
数日後、遠峰がまたバイトに来た。
「あ、東田さん、おはようございます」と相変わらず無表情で挨拶してきた。
「おう、おはよう」と俺は返し、接客に戻った。
「あの……東田さん……」と遠峰が話しかけてきたので対応した。
「ん? どうした?」
彼女は少し言いづらそうに口を開いた。
「実は……この前のお話なんですけど、やっぱり断りました。そうしたら、その人も分かってくれたみたいで。」
俺はホッとしたような、納得いかないような複雑な気分だった。
「そうか、良かったじゃん。これで悩みも解決だな」と俺は言った。
「はい……その、東田さん、色々ありがとうございました」と彼女は頭を下げた。
「別に大したことしてないよ」と俺は返した。
「お礼にご飯奢りますよ。何がいいですか? 何でも言ってください」と遠峰が言った。
少し考えてから答えた。
「そうだな、じゃあそこらへんの居酒屋でも行くか?」
「はい、分かりました。」
俺と遠峰は近所の安い居酒屋に移動した。
店内は客が少なく、閑散としていた。
注文して早速ビールを飲み始めた。
「しかしまぁ、良かったな。これで一安心だ」と俺は言った。
「はい、本当に良かったです」と遠峰は安心したような顔をしていた。
「でも何か悪い気がするな。俺のアドバイスで決めてしまったみたいだし。」
「いえ、東田さんのアドバイスのおかげです。それに、私、東田さんにお礼したいんです。」
「だから、何でも言ってくれ。できることならするから」と俺は言った。
「はい……」と彼女は静かに答えた。
俺たちは時間を忘れて話し込み、店を出た。
外はすでに暗くなりかけ、少し肌寒い気温になっていた。
駅に向かって一緒に歩いていると、
「今日は本当にありがとうございました。助かりました」と遠峰が言った。
「いいんだ、気にすんな。良い結果になって俺も嬉しいよ」と俺は答えた。
その時、突然雨がポツポツと降り始めた。
「やばっ、急いで駅に向かわないとな」と俺は走り出した。
だが、駅の方向へ進もうとすると、腕を掴まれた。
振り返ると遠峰がいた。
「あの……東田さん……私の家に来ませんか? ここからすぐ近くなので……」
「え、いや、でもな」と俺は少し躊躇した。
「おねがいします……このままだと風邪引いてしまいますし」と遠峰が言った。
確かにその通りだ。このまま濡れて帰れば体調を崩すだろう。
「じゃあ、少しだけお邪魔させてもらおう」と俺は仕方なく承諾し、遠峰の家に向かった。
彼女の家に着くと、すぐにシャワーを浴びるよう言われたので浴びた。
用意された着替えに着替えて居間に戻ると、遠峰が服を脱いでいた。
その裸体は絹のように白く、男を惹きつけるボディラインが豊満な曲線を描いていた。
胸は膨らみがありつつ自然に張り出し、柔らかくむっちりとした感触がありそうだった。
くびれと対照的な安産型の巨尻は手頃な大きさで、揉み応えを感じさせる。
腰回りの肉感的な妖艶さと、どこか堂々とした印象が共存していた。
思わず固まってしまった俺の視線は、いきり立った部位に吸い寄せられるように釘付けになった。
その先端が僅かに潤みを帯び、何を意味するのか無意識に想像してしまう。
遠峰も自分の体に向けられた視線に気付き、そこがムクムクと力を帯びていくのを隠せなかった。
「あの……こっちへ来てください……」と彼女は恥ずかしそうに呟いた。
俺は言われるままに近づくと、そのまま抱き寄せられた。
「あの……私……初めてなんです。だから上手くできないかもしれませんけど……」
そう言って、彼女は俺の唇を奪った。
最初は軽く触れ合うだけのキスだったが、次第に激しさを増していった。
やがて舌を絡ませる濃厚なものに変わり、お互いの体温が上がっていくのを感じた。
ゆっくり唇を離すと、銀色の糸が引いていた。
「あの、東田さんは迷惑じゃないですか?」
遠峰が不安そうな表情で聞いてきた。
「いや、そんなこと思ってない」と俺は答えた。
それを聞くと、彼女はホッとしたような顔をした。
そして再び唇を重ねた。今度は先ほどより長く濃厚で、お互いの唾液を交換し合い、舌を絡ませる音が部屋に響いた気がした。
ゆっくり口を離すと、糸を引いた唾液が垂れ落ちた。
しばらく見つめ合った後、俺は遠峰の豊満な乳房に触れ、その感触を楽しむように揉みしだいた。
彼女の口から甘い吐息が漏れ始め、乳首を摘まむとビクビクッと体が震えた。
そのまま愛撫を続け、今度は下半身に手を伸ばした。
割れ目に沿って指を動かすと、愛液で濡れた膣口に触れた。
人差し指を膣内に侵入させると、小さな水音が聞こえた気がした。
ゆっくり出し入れを繰り返すたび、溢れ出す愛液が増え、やがて俺の手まで滴り落ちた。
遠峰の部屋は質素で、必要最低限の家具しかない。一見、男の部屋のようでもあった。
布団に移動すると、彼女の秘所が露わになった。
ピンク色の肉壁がヒクヒクと動き、愛液を垂らしている様子を目にしてしまい、思わず興奮が高まった。
それを見た瞬間、一気に限界を迎えそうだった。
「これ、付けてください……」と遠峰が避妊具を手渡してきた。
俺はそれを受け取り、装着すると再び腰を深く入れ直し、ゆっくり動き始めた。
彼女に覆いかぶさるような体勢をとり、腰を浮かせて一気に挿入した。
膣内は狭く窮屈だったが、その分いつもと違う感覚があった。
動くたびに子宮口に当たる感触があり、それが新たな刺激となって俺たちを高めていく。
亀頭が引っかかるたび、思わず出そうなほどの快感に襲われ、必死に歯を食いしばって耐えた。
徐々にスパンが短くなり、限界が近づいたところで、遠峰が突然抱きついてきた。
俺の顔に胸を押し付けるようにしてきたが、息苦しさを感じる前にその肌触りと温もりに癒された。
さらに密着したことで顔の距離が縮まり、キスがしやすくなった。
ピストン運動に合わせてしゃぶりついてくる舌の感触は、想像以上の快感で脳が蕩けそうだった。
そして遂に限界を迎え、俺は遠峰の中に精を放った。
ドクンドクンと脈打つたび、大量の精液が流れ込み、満たしていくのを感じた。
長い射精が終わり、遠峰は名残惜しそうに口を離して俺を見つめた。
その瞳は潤み、頬は紅潮していた。
彼女は俺の口と顎に伝った唾液の糸をペロリと舐め、そのまま唇へ移動してきた。
舌を差し込み、深いキスをしてきた。
俺の唾液を流し込むようにスリスリと絡ませてくるため、息が上がってしまったが、密着したまま離れることはなかった。
しばらくして口を離すと、透明な橋がかかっているのが見えた。
「目が綺麗です。」
事が終わり、俺に抱かれた理由を聞いたところ、遠峰から返ってきた答えがこれだった。
「目? 別に俺の目なんて普通だぞ。」
「いえ、東田さんの目はとても綺麗です。その目で見つめられると吸い込まれそうな感じがして……だから、つい。」
「ふーん、分からないけど。」
「あなたの目を見ると落ち着くんです。」
「そんなもんかね。」
「はい。」
「東田さん、ずっとあなたと一緒にいたいです……。」
「付き合いたいって意味か?」
「そうですね。できれば」と彼女は自己肯定感が低いのか、自信なさげに言った。
「まあ、別に構わないけど、ちょっと俺は複雑なんだ。」
「複雑? それはどういう意味ですか?」
「好きな女がいる。でも、その人は絶対に俺なんて見てくれない。」
「……その人のこと、忘れませんか?」
「無理だ。忘れたくもない。」
「そう、ですか」と遠峰は悲しそうに下を向いた。
「……でも、それでも私は東田さんの側にいます。いえ、それだけじゃなくて、あなたが他の女性と寝ても構いません。」
「本気か? それで平気なのか?」
「はい。あなたの側にいたい。それだけが今の私の望みです。」
「……」俺は分からなくなり、遠峰を抱きしめながら黙って考えていた。
翌朝、目が覚めると見慣れない天井が目に入った。
ぼんやりしていた頭が徐々に覚醒し、昨日の出来事を思い出した。
遠峰がいないことを確認してから服を着ることにした。
部屋の外に出ると、リビングで彼女が座っていた。
「おはようございます、東田さん」と小さな声で言った。
朝が苦手なのか、少し眠たそうに見える。
「ああ、おはよう」と俺は返し、洗面台に向かった。
顔を洗い、歯を磨いてからリビングに戻ると、遠峰は俺が戻るのを待っていたようで、すぐに朝食の準備を始めた。
「何か手伝えることはあるか?」と聞くと、彼女は首を振った。
「いえ、大丈夫です。ゆっくりしてください」と言うので、大人しく待つことにした。
しばらくすると、テーブルに美味しそうな朝食が並んだ。
目玉焼き、サラダ、味噌汁といった定番に加え、焼き鮭まで付いていた。
「どうぞ召し上がってください」と言いながら、俺を座らせてくれる。
遠峰の手料理を食べた。シンプルながら洗練された味で、とても美味しかった。
食事を終えると、俺と遠峰で一緒に皿を洗った。
「じゃあ、また店で」と俺は言って玄関に向かった。
「はい。あの……また来てくださいね。」
「ああ、また来るよ」と俺は答え、部屋を出て駅へと向かった。
その日の夜、俺は遠峰のことを考えていた。
彼女は俺に好意を持っているのか、それともただ寂しいだけなのか、分からない。
俺は遠峰を愛していない。というより、愛せない。
千鳥さんという女性が心に残っていて、彼女の代わりとして遠峰を愛そうとしても、それは遠峰を苦しめるだけだ。
だから、俺は遠峰と付き合う気にはなれない。
そう彼女に伝えた。
「代理で構いません。ただ一緒にいてほしいんです……お願いします。」
潤んだ瞳で俺を見つめてくる。その姿はとても切なく、俺は何も言えなかった。
遠峰はそのまま俺の唇を奪い、舌を絡ませてきた。
彼女はキスを続けながら俺の服を脱がせ始めた。
ズボンとパンツを下ろし、お互い全裸になると、遠峰は覆いかぶさるように抱きついてきた。
女性特有の柔らかさと温かさが肌に触れるたび、脳が痺れるような快感に襲われ、徐々に興奮が高まった。
汗で濡れた肌がぶつかり合い、ペチャッと音を立てるたびに聴覚的にも刺激された。
やがてお互いの秘部が合わさり、愛液を潤滑油にして擦り合わせるように動き始めた時、今までにない快感が襲ってきた。
腰が抜けそうなほどの気持ちよさで、すでに限界を迎えそうだったが、遠峰は止まる気配なく、さらに激しく動いていく。
「東田さん……私、もう……」と彼女が切羽詰まった声で訴えてきた。
俺は遠峰の尻を掴み、乱暴に揉みしだきながら、「俺も……」と返した。
遠峰は俺のペニスを強く握り、上下に動かして勃起させると、コンドームを着けて跨ってきた。
ゆっくり腰を落とし、徐々に沈めていくと、根元までしっかり入ったところで動きを止めた。
「動かないでくれ……まだ苦しいんだ」と遠峰は深く深呼吸した。
俺は彼女が落ち着くまで動かずにいたが、やがて遠峰が自分から腰を動かし始めた。
「あ……ん……はぁ……あ……」
最初はぎこちなかった動きも、次第にスムーズになり、結合部からは愛液が溢れ出し、滑りが良くなってきた。
「東田さんのが奥まで届いてる……すごい……」
遠峰は快楽に蕩けた表情で呟いた。
「東田さんのが私の中で動いて……」
俺は彼女の動きに合わせ、下から突き上げた。
すると遠峰の口から甲高い悲鳴が上がり、膣内が強く締まった。
「ああぁっ! だめっ、そんなにされたらすぐイッちゃいます」と彼女が言ったが、構わず続けると、やがて絶頂を迎えたようで大きく仰け反った。
全身から力が抜けたのか崩れ落ちそうになったので、慌てて抱きかかえた。
荒い息を繰り返す彼女をベッドに寝かせた。
そうして、二人で横になった。俺は遠峰を抱き寄せた。
「これで良かったのか?」と聞くと、遠峰は小さく頷いた。
「はい、ありがとうございます」と彼女は言ったが、その表情にはどこか寂しげな雰囲気が漂っていた。
「あの……東田さん、誰も愛せないんでしょうか?」
「……ああ、そうだ。」
「……そう、ですか。」
遠峰はそう言うと黙ってしまった。
しばらく沈黙が続いた後、彼女はゆっくり口を開いた。
「……じゃあ、私は愛されなくても側にいてもいいですか?」
「本当にそれで構わないのか?」と確認のために聞いてみると、遠峰はコクリと首を振った。
「そうか……ならそれでいい」と答え、俺たちは再び抱き合った。