八月の猛暑が余韻として残る九月も終わり、十月に入った。
季節は完全に秋へと移り変わり、少しばかりの肌寒さを感じる紅葉の季節だ。
秋の選抜に
正念場である──
「最近は少し空気が冷たくなってきたな。薙切さん、寒くない?」
「ええ。平気よ。ありがとう、燦徳くん」
「良かった。せっかく綺麗な紅葉を見てるんだから、風邪でも引いたら台無しだからね」
美しい紅葉に囲まれる野原。そこに用意された畳に座りながら、俺はえりなと隣同士で談笑していた。
今回の
平和ではない部分があるとすれば……参加している奴らだけだろう。
「ねぇねぇ! 正吾くん! あそこの紅葉とても綺麗だわっ! 見て見て!」
「アリス! はしたないわよっ! ……それに、少々燦徳くんに近過ぎるのではなくて?」
「なにようっ! えりなばっかり正吾くんとお話してズルいわよっ! 秘書子ちゃんもそう思うわよね?」
「わ、私は……別に。……秘書子って言うな」
俺の右隣にえりな、左隣にアリス。そしてえりなの隣に緋沙子が座っている。この『もみじがり会』は単なる紅葉を楽しむ場ではなく、高等部一年生の実力者たち──厳密に言えば、秋の選抜本戦出場者八名だけが参加出来るものだ。
なので当然、俺達以外にも同じように座っている奴らが五人。優勝した葉山と準優勝した創真。俺に負けた黒木場と創真に負けたタクミ。そしてタクミに負けた田所さんだ。創真を中心になんか騒がしくしているが、俺には関係ないのでどうでもいい。
今回の目的は紅葉を見ながら親睦を深める会──ではなく、とある生徒たちとの顔合わせ。
遠月学園に存在する最高意思決定機関。その名を『
十傑メンバーは学園が持つあらゆる権限と財力の一部を自由に扱うことが許され、自身の研鑽のために高級食材や最新の調理器具・設備、数世紀前の希少なレシピやオークションで数百万の値がつく古典料理書にもアクセスが可能とされる。そしてそれらの権限は席次が第一席に近付く程に行使できる権限が増大していく。学園総帥ですら動かす程の権力を与えられた生徒たち。まさに学園の頂点と呼ぶに相応しい者たちだ。
俺としては十傑の座に興味なんて欠片もないが、十傑になっておけば都合が良いのも事実。だから近いうちに潰しても原作的に問題のなさそうな奴を一人倒して十傑入りをしておこうかと考えている。まあ、十傑になったとしても
「久しぶりだな、新戸。元気そうで良かった」
えりなとアリスが喧嘩している隙に、緋沙子へと声をかける。俺たちの関係を周りに知られる訳にはいかないので、名前ではなく苗字呼びだ。
一ヶ月ぶりぐらいに顔を合わせたからか、緋沙子はどこか気不味そうな顔をしている。攻略したい女が多いと、どうしても攻略し終わった女の扱いが雑になってしまうな。流石の俺も分身なんて出来ないし、悩みどころだ。
「ふ、ふん……! 貴様に言われる筋合いなどない。……連絡すら、寄越さなかったくせに」
おっと、どうやら嫌われてはいないらしい。
可愛らしい文句に頬を緩ませながら、取り敢えず謝っておいた。
「悪かったよ。……でも、俺のお陰でえりなと仲直り出来ただろ?」
「そ、それは……! あ、ありがとう……」
「どういたしまして。またよろしくな、新戸」
秋の選抜で敗北したことにより、えりなから距離を取っていた緋沙子。俺の働きかけでまたえりなの秘書として側に居られるようになったので、こうやって恩着せがましい態度をしておけば勝ちだ。ぐぬぬと言いくるめられたことに怒る緋沙子も可愛い。
両手に花の状態で待っていると、今回の主役たちがようやくお出まし。係の人が声を上げたことで、えりなとアリスも大人しく座り直した。
「──遠月十傑の御成〜〜り〜〜っ!!」
大袈裟に太鼓まで叩いて十傑メンバーの登場を盛り上げる。ただ料理の実力があるってだけで、どこまでも優遇される学園だな。……いや、この世界のことを考えたら今更過ぎるか。
現れたのは一年生であるえりなを除いた、九人。
全員が上級生であり、俺たちから見れば先輩だ。要するに明確な格上。俺とえりな以外の一年生が僅かばかり緊張したのを空気で感じ取った。
──【第九席】──『
──【第八席】──『
──【第七席】──『
──【第六席】──『
──【第五席】──『
──【第四席】──『
──【第三席】──『
──【第二席】──『
──【第一席】──『
遠月十傑。計九名が俺たちの前に現れた。
ヤクザみたいな奴、侍みたいな奴、料理人というよりプロレスラーみたいな大男。白髪の超イケメンに、八重歯を見せながら楽しそうに笑うエロい身体をした女などなど、個性豊かなメンバーが目の前に来た。
正直言ってほとんどの奴らがどうでも良い。俺が興味を持つ対象はいつだって変わらない。そう、抱きたいと思わせてくれる女だけ。
十傑メンバーの中でえりなを除いた女は三人。下の席次から第六席の紀ノ国寧々、第四席の茜ヶ久保もも、そして第二席の小林竜胆だ。この中で俺の獲物となる女は……一人だけ居る。
まず紀ノ国寧々ではない。確かに顔は整っているし、身体の方も悪くない。大和撫子という属性も魅力的ではあるが、それ以上に手を出す気が起きない要素をこの女は持っていた。──と言うのも、紀ノ国寧々は一色慧と幼馴染関係であり、ラブコメの波動を出していたからだ。
個人的に
そして茜ヶ久保ももでもない。食戟のソーマに登場する女キャラは多くが年相応ではない豊満な身体をしているが、この女は逆で高校三年生とは思えない程に見た目が幼い。ロリは守備範囲外なので、当然スルーだ。あんな小さい身体じゃ、絶対に俺のイチモツは挿入出来ないだろうしな。
という訳で、俺の狙いはただ一人。
第二席──小林竜胆だ。
ワインレッドの髪に白い肌をしており、黄色の瞳と八重歯が野生動物のような雰囲気を漂わせている。園果程ではないがかなりの巨乳であり、俺好みの良い体をしている。性に関する意識が薄いのか、制服を着用しているにも関わらず谷間が見えているぐらい露出も大きい。原作での人気も高かったキャラクターだ。
第一席の司瑛士のことが好きっぽい描写もされていたが、そんなもんは知らん。寧々と違って高確率でNTRになりそうだが、全力で無視する。
そもそも、司瑛士が料理以外に興味の持てない男なので、そこまでNTRのようには思わない。学園を離れた後もくっ付いた様子はなかったはずだし、俺が手を出しても問題はないだろう。まあ問題があったとしても、俺が竜胆を手に入れる予定は変わらないのだが。
スカートなのに足を広げて座り、楽しそうに笑っている竜胆。目の前に座られていたら俺は間違いなくスカートの中をガン見していた。良かった、割と離れてて。
「──俺、今すぐにでも十傑に入りたいんですけど。誰か俺と食戟してくれる人居ないっすか?」
創真がなんか言ってるが、竜胆にしか目がいかない。周りに気付かれないようにチラ見ではあるが、全神経が竜胆に向いてしまっている。やべぇ、この女エッロ。
第四席が作った茶菓子を食べたり、第八席の久我照紀に煽られたり、短い時間で色々あったらしいが、マジでほとんど覚えてない。ずっと竜胆のスカートの中をチラ見し続けていた。もうちょい、もうちょいで見える。チラリズムの真髄に改めて触れた気がした。やっぱりこういうのはモロに見えるよりギリギリ見えない方がエロいな。タイミングが来たら絶対堕としてやるから覚悟しとけ。
「面白れぇ……! 遠月十傑の座、奪い取ってやろうぜ! なあ! 正吾!」
「……んぁ? ……おう。そうだな」
創真がなんか話しかけてきたが、全く耳に入らなかった。
十傑との顔合わせである『もみじがり会』が終わってから数日。学園内にはどこか浮ついた空気が流れ始めていた。
それも無理はない。秋に行われる最後の行事──学園祭が迫って来ているのだから。
「……『
「んぐぅっ! んあっ! ……ん゛んっ!!」
体育倉庫で体操着姿の同級生女子を犯す。エロゲーでしか見たことのないような景色が俺の目の前には広がっていた。
バスケの授業で片付けを任されたからチャンスだと思ってヤッているが、非現実感が合わさって中々悪くない。遠月の環境だからか掃除は行き届いており、ホコリっぽさなんかを感じないのも大きな加点だ。次の授業もあるのであまり時間は掛けられない。バックから思いっきり子宮を潰して、ピストンを繰り返していた。
「創真が久我照紀に挑むから、本拠地である中華研に案内してやると……。優しいじゃん、俺以外の男によぉ。俺の女だっていう自覚が足りないんじゃないか?」
「んんっ! あんっ! やっ、やめっ、ろっ! こっ、声が……んぐむっ!!」
「なんかまんこ狭くなったんじゃねぇか? 一ヶ月ちょっと抱かなかっただけでこれとか、お前は本当に世話のかかる女だな! オラッ、出すぞッ!」
「──んんんッ!! イグッ!!!」
田所さんに頼まれたからとか言ってきたが、問答無用で中出しを決める。一番奥の子宮口に亀頭を押し当て、容赦なく射精した。
「ふぃーっ、気持ち良かった。……溢れないように栓をしとかないとな」
「……はぁ、はぁ、はぁ。……な、何をッ!?!?」
ズボンのポケットに入れておいたバイブを袋から取り出し、精液が溢れないように秘部へ挿入する。俺のイチモツと同じ太さをしたバイブなので、栓の役割はしっかり果たしてくれるだろう。
「その状態のまま創真の案内をしろ。それで今回は目を瞑ってやる」
「こっ、こんな状態で動ける訳が……!」
「出来ないなんて言わないよな? 美代子」
「……んむっ、ちゅぱっ、じゅるっ」
鋭く睨みながら文句を言う美代子の口を塞ぎ、舌を捻じ込む。そのまま舌を絡ませ合い、口内を蹂躙した。
「──出来るな? 美代子」
「……くっ。……分かった。やれば、いいんだろ」
不満そうにしながらも従う様子に、俺の口角も上がる。バキバキに心を折ったというのに、美代子はまだ俺への反抗心を捨てていない。……と言うより、捨てていないと思い込んでいる。自分が負けたことを認められず、まだ完全には堕ち切っていないと言い聞かせているのだ。
膣内に精液を溜め込んだまま男に会えなんて馬鹿みたいな命令を断りきれないのがその証拠。可愛い可愛い俺の負け犬だ。
「良い子だ、美代子。ほら、ピル持っていけ。──それと、今夜俺の部屋に来い。アナルの方も……虐めてやるからよ」
「──……ッ! ……も、もう行くッ!」
顔を真っ赤にしながらピルを受け取り、体育倉庫を出て行った美代子。
学園祭も始まることだし、堕とした女たちに飴を与える良い機会かもしれないな。
……そうだ。俺の女もそうだけど、それ以外の女もフォローしておくか。
確か原作では創真の出店を手伝っていたはずだし、男女の関係に近付けるために手を貸すとしよう。
最終的に負けヒロインで終わってしまった──田所恵のために。
「──だからさぁ、これは絶対チャンスだよ。田所さん!」
「そ、そうかなぁ……?」
翌日、俺は極星寮に足を運び、田所さんに発破をかけていた。場所がキッチンなのは創真が出店で出す料理の試作をしているからだ。中華を得意とする久我照紀を相手に創真がぶつけるのはまさかの中華。相手の土俵で戦うのは俺も好きだが、コイツも大概だな。
美代子の案内で中華研に行った際、創真は麻婆豆腐を食わせてもらったらしい。だから試作しているのは同じく麻婆豆腐。辛さが足りないとかで唐辛子を入れまくってたけど、なんとなく方向性を間違ってるような気がした。
しかし、俺がアドバイスに来たのは創真ではなく田所さんだ。創真が買い出しに行っている間の二人きりの時間を使って、さっきから恋愛のアドバイスをしまくっていた。
「創真は超が付く程の鈍感だからね。いや、鈍感っていうか恋愛事の意識が全く無いんだよ。だから惚れさせる難易度は相当高いね」
「あっ、あの! 燦徳くん! さっきから……私が創真くんを、す、好きみたいに言ってるけど……そんなことは全然──」
「いや、そういうのはいいから」
「あぅ……」
無駄な時間を使いたくないのでバッサリ切り捨てる。買い出しと言っても行きやすい環境だ。創真が帰ってくるまで後二十分もないだろう。それまでにどうにかして田所さんをやる気にさせ、今回の学園祭で創真との距離を縮めるように仕向ける。
こういう小さな積み重ねこそが後々効いてくるんだ。俺がえりなを手に入れるためにも、田所さんには創真を攻略してもらわなければ。
「た、確かに、私は創真くんが……好き、かも、しれないけど。……私なんかじゃ、創真くんには相応しくないよ」
「どうして?」
「……えっ?」
「どうして相応しくないと思うの?」
「それは……えっと、えっと」
自信がない人間に自信を持たせるにはどうすれば良いか。色々と方法はあるが、手っ取り早いのはネガティブな理由を全て潰してやることだ。
言い方を間違えれば一気に状況が悪くなる諸刃の剣でもあるが、俺にかかれば約束された勝利の剣。優秀に育ててきた頭脳を駆使して、田所さんのネガティブを潰しにかかった。
「わ、私……地味だし」
「地味なんて言い方は良くないね。田所さんは地味じゃなくて、落ち着いているって言うんだ。話し方も選ぶ言葉も優しいし、男からすれば天使みたいな女の子だよ」
「じ、自信が持てなくて臆病だし……」
「創真みたいな男は好きな女を引っ張っていきたいって思うから、田所さんが短所だと思う部分はむしろ長所になるよ。思い出して? 創真と田所さんのコンビ、空気が悪くなったことが一度でもあった?」
「りょ、料理の腕前だって……全然だから」
「秋の選抜本戦出場者に実力がないなら、本選に出場出来なかった生徒はどうなるんだろうね。石ころか何かかな?」
「…………ぁぁ」
反論のコツは時間を作らずすぐに言い返すこと。変にタメを作ってしまえば、相手に思考する時間を与えることになる。すぐに言い返せば相手は次の言い訳を考えるしかなくなる。そしてそれを同じように潰していけば……必ず言い訳という弾丸は尽きる。
「わ、私は……」
「田所さん。よく聞いて? 田所さんは自分に自信がないかもしれないけど、自分が思っているよりもずっと素敵な女の子だ」
言葉は濁さず、ハッキリと。
大切なのは照れを見せず、真剣な表情と声で伝えることだ。この年頃の女は意外とストレートな言葉に弱かったりする。ましてや田所さんは少女漫画を読むぐらい純粋な少女。効果は十分に期待出来る。
「田所さんは郷土料理研究会に所属していたよね? そっちでも出店はやるはずなのに、どうして創真の手伝いを?」
「そ、それは……創真くんの出店に人手が必要だと……思って」
「つまり、困っている人のために動ける人ってことだよ。そんな優しい女の子に魅力がないはずがない」
「……ッ! ……わ、わだし、そんな風に言われだの、はっ、初めてで……!」
動揺しているのか訛りが出てきたな。本心を引き出せそうなので畳み掛ける。
「田所さん。俺は創真と田所さんがとてもお似合いに見えるよ。もちろん、俺以外の人から見たって、それは変わらないと思う」
「そ、そんなこと。……そ、そうなの、かなぁ?」
「絶対そうだよ! 俺が保証する! だから少しだけ勇気を出してみよう? 少しだけ積極的に、創真にアプローチしてみるんだ」
「……ア、アプローチ」
「大胆なことはしなくていい。笑顔で話しかけることを意識するとか、軽いボディタッチをするとか、それぐらいのことで良いんだ。俺も協力するし、自信持っていこう!」
時間にして約十五分。俺の説得もあって、田所さんの意識は若干だが変わりつつあった。恋を認めること、相手に自分を好きになってもらおうとすること、それらは何も恥ずかしいことじゃない。そう言い聞かせ、彼女の恋愛に対する価値観を作り変えた。
「……さ、燦徳くん。……私。……が、頑張ってみるよ。も、もちろん、料理のお手伝いが一番だけどねっ!」
「うん、頑張って! 心の底から応援してる! 本当に!」
「あ、ありがとう……?」
「──しゃあっ! 買って来たぞっ! 試作の続き頼むわッ!」
と、ここまで話し終わったところで創真が帰って来た。
これ以上辛いもんを食わされたくないので、手早く撤退することにした。
「おっ? なんだよ正吾。帰んのか?」
「ああ、悪いな。試食は田所さんに任せる。創真、ちゃんと田所さんに助けてもらえよ?」
「おう! めちゃくちゃ頼りになるぜ! なっ、田所!」
恥ずかしそうに頷く田所さん。女の子らしい可愛さ全開だ。上手くいってくれることを祈ってるよ。
「そういや正吾。お前って学園祭に出店は出さねぇの? 一緒に十傑目指そうぜ!」
俺がキッチンを出ようとすると、創真からそんなことを訊ねられる。教えても特に問題はないと判断したので、素直に答えておいた。
「──ああ、参戦するよ。
「うおっ! マジかっ! 誰に挑むんだ? まさか俺と同じ久我先輩か?」
「安心しろよ。俺が狙うのは別の人だ。席次も、久我先輩より下だしな。……あっ、もちろん薙切さんじゃないからな?」
これだけ言えば、俺が誰を相手にしようとしているのか分かっただろう。創真はニヤリと笑い、田所さんはあわあわしながら怯え始めた。
「じゃあな、お互い頑張ろうぜ。創真」
「へへっ、そうこなきゃな! おうよっ、負けねぇぞ! 正吾!」
潰しても原作的に問題ない十傑はそれなりに居る。その中で今回の創真の相手と被らない、勝負の場に引きずり出しやすい、尚且つ勝利してもそこまで騒がれないといった条件をクリア出来るキャラなら、コイツが一番丁度良い。
第九席・叡山枝津也。
あのインテリヤクザには、俺の踏み台になってもらうとしよう。
全ては──俺の野望のために。
竜胆先輩……いいよね。ドキドキするもんのところとか最高です。