マジで焦った、ギリギリだった。今回ばかりは本当に終わったかと思った。
ただ運が良かった、それに尽きる。まさかこの大事な時に寝坊するなんて夢にも思わなかった。
俺は馬鹿だ。油断だ。油断していた。
ここまで順調にいき過ぎていたからか、俺が意識していないだけで慢心していたんだ。僅かな気の緩みが全てを終わらせる。俺はそんな綱渡りのような野望に挑んでいるというのに。
こんな無様な姿で女を助けに来るなんて、燦徳家次期当主の名折れだな。
……さて、これ以上の反省は後でするとしよう。
今は取り敢えず、目の前の事に集中だ。
なんせ今、俺の前に立っている男は高等部一年生編のラスボス──薙切薊なのだから。
「……はぁ、はぁ。……すみませんね。そこの席は予約済みなんです。今回はご縁がなかったということで、お引き取りを」
「……『燦徳』。……なるほど。君が燦徳家の後継者、燦徳正吾くんか。噂はよく耳にしているよ。かなり優秀だとね」
「それは、どうも。……はぁ、嬉しい、限りですね」
「大丈夫かい? 随分と息が切れているみたいだが?」
「お、お構いなく……!」
ヤバい、息が整わない。やっぱ最短距離だからって屋根の上を走り抜けたのはやり過ぎだったかもな。心臓の鼓動がうるさいぐらいに響く。
これはあれだ。喋ってないとダメなやつだ。喋りながら息を整えていく方向に切り替える。
「貴方は……薙切薊さん、ですよね? 確か遠月を……追放されたと聞きましたが?」
「フフッ、お恥ずかしい限りだね。──しかし、それも今日までのことだ。僕は再び薙切の名と共に、この世界を真なる美食で埋め尽くす。大変革を成し遂げるのさ」
自信に満ちた発言から、学園総帥の地位は既に手に入れているんだろう。原作通り、十傑を抱き込むことには成功しているようだ。
「……だが、まさか君がえりなと近しい関係になっているとはね。僕の愛娘に変な気を起こされては困るんだが?」
「ご心配には、及びませんよ。えりなさんは自分にとって、大切な友人ですから」
息切れしながら嘘を吐く。
変な気しか起こしてません。貴方の一人娘を手に入れることが、俺の人生最大の野望です。対戦よろしくお願いします。
「そして驚かされたよ。今朝、君は紀ノ国寧々を食戟で破り、見事遠月十傑・第六席の座を奪い取ってみせたのだから。……やはり、僕の予想していた通り、君は危険だ」
薊の発言を聞き、緋沙子が目を見開いて驚いた。えりなは呆然としているからか耳に届いてすらいないようだ。
やはり、という言葉を使っていることから、俺のことは前々から知っていたようだ。薙切家に唯一対抗出来る燦徳家の後継者が遠月に入学したんだから、用意周到な性格なら当然か。──というかむしろ、それぐらいしてもらわなきゃ困る。無駄に頭の良いやつの考えならいくらでも先読み出来るが、馬鹿の考えは全く読めないんだから。
「……ともかく、今夜の食事はご遠慮ください。他に席は空いていないようなので。全て、予約しなかったご自身の責任ですしね。薊さん」
「おやおや、手厳しいな。……ふむ、君の言う通り、この場は引き下がるとしよう。料理は食べられなかったが、娘の元気な姿を見ることは出来たからね。今回はそれで満足しておくとするよ」
おうおう、別に僕は負けてませんけど? みたいな言い方するなよ。
アンタ負けてるから、一方的に。予約してないのに居座ろうなんてガキみたいなことしたくせに、強キャラ感出そうとするな。
「……どうやら、出迎えも来たようだね。君が連絡したのかな?」
「まさか。自分は、そんなに暇じゃありません」
誰がそんなことするか、走るのに必死だったわ。メロスに並ぶぐらい走ったわ。何ならメロスより立体的に駆け抜けたわ。
「さて、久しぶりにお義父さんに挨拶するとしよう。……えりな。これからはまた、一緒に居られるね。じゃあ、失礼するよ」
「……ッ! ……お、お父……様」
黒のロングコートを靡かせながら、薊は店を出て行った。えりなの恐怖を誘発するような発言を残して。
まだ精神が成熟していない幼少期に洗脳を施すのはとても効果的だ。例えるなら、真っ白なキャンパスに自分の色を無理矢理塗り付けるといった具合か。納得は出来るが、上から自分の色で塗り潰す方が好きな俺としては趣味じゃないな。後、子供相手にそんな真似するとか普通に引く。実の娘によくそんなこと出来るもんだ。毒親ランキングなら間違いなくトップクラスの男だろう。
ようやく息が整い、心臓の鼓動も落ち着いてきた。
涙目で頬を赤く染める緋沙子の肩に手を置いて労ってから、座り込んでしまったえりなへ声をかけた。
「薙切さん。もう大丈夫だよ」
「……さ、燦徳、くん。わ、私……」
「大丈夫。ゆっくり深呼吸しよう。俺が居るから」
「…………あり、がとう」
手に手を重ね、安心させるように声をかける。過呼吸になりかけているように見えたので、深呼吸を促す。どうだ、頼れる男だろう。好感度が上がってくれることを期待しつつ、空いているもう片方の手でえりなの背中をさすった。
外には遠月学園現総帥、薙切仙左衛門が来ているはずだ。確かそこで十傑の署名が入った総帥交代の紙面を突きつけるんだっけか。俺にとってはどうでもいい場面なので、えりなの介抱に尽力する。
「緋沙子。コップに水を入れて持って来てくれ」
「わ、分かった!」
俺の頼みを受け、素直に動いてくれた緋沙子。さっきチラッと見えた絶望顔が嘘のようだ。俺が来てあんな顔になったのだと思うと愛おしくてたまらんな。可愛いやつだ。
……これで明日から薊政権が始まるわけだが、気を引き締めていかないとな。俺の計画に不備はない。不備があるとすれば、今回のような油断と慢心だけ。俺の敵は、俺自身だ。
「……あ、あの、燦徳、くん」
「ん? どうしたの? 薙切さん」
考え事をしていると、えりなが怯えたように声をかけてきた。しまった、顔が怖かったか? 慌てて表情を柔らかくしたが、どうやらえりなの言いたかった事はそうじゃなかったらしい。
「そ、その……手、手を……」
「……ああ、ごめんごめん。はい、ちゃんと居るよ」
「わ、私の方こそ……ごめんなさい」
考え事をしている内に無意識で、重ねていた手を離してしまっていた。えりなが言いたかったのは、もう一度手を触れ合わせて欲しいというものだったのだ。
嬉しさで表情筋が緩み過ぎないように堪えつつ、今度は手を重ねるのではなく指と指を絡めてしっかりと繋いだ。俗に言う、恋人繋ぎだ。普段なら照れて拒否されるだろうが、今はそんな余裕もないだろう。えりなは安心したように微笑んだ。
……あれだな。恐怖に怯える美少女って──良いな。
学園に革命が起きようとしているにも関わらず、俺の頭にあったのは薙切えりなが可愛いということだけだった。
翌日、学園は騒ぎに包まれていた。
話題の中心は当然──新総帥・薙切薊についてだ。
学園新聞で大々的に取り上げられて全生徒が困惑する中、外部のメディアに向けた新総帥着任の挨拶も無事に終わった。これで内部にも外部にも、薙切薊の顔は広く知られることとなった。遠月学園のトップ、学園総帥として。
根回しなんて裏工作をする男だ。俺と同じように負ける勝負はしない主義であると見て大きな間違いはない。薊によってもたらされる改革は瞬く間に学園を変えていくはずだ。明日からは次々と好き勝手に弄り始めることだろう。
生徒としては大きな変化と言わざるを得ないが、俺個人にとっては特にどうでもいい。料理に変なプライドとか無いしな。
それよりも緋沙子がえりなの秘書を解雇されて、俺に泣きながら電話してきたことの方がよっぽど重大だ。午前中に予定が入ってしまったのでもうしばらくは会いに行けないのが残念だが、夜には会いに行く予定だし近い内にちゃんと抱くとしよう。慰めセックスとか絶対に気持ち良いだろ。
そして緋沙子との逢瀬の前に、俺は一人の女を堕としておかなければならなかった。それこそが『午前中に入ってしまった予定』だ。
ここからは色々と忙しくなるので、時間をかけて調教出来るのは今日の午前中ぐらいのものだ。朝から獲物である女を俺のヤリ部屋に呼び出し、ベッドの上で可愛がっていた。
昨日の早朝に食戟でぶっ潰した──
「薙切家を追い出されたってのに総帥の座を奪うなんてな。人生、何が起こるか分からないもんだ。どれだけ逆境でも死ぬ気で頑張れば何となるんだな〜。……なあ? 十傑・『元』第六席──負け犬の寧々ちゃん?」
「ん゛おッ! ……んんッ!? ……お゛おッ!!」
着物を着せてから辱めているが、やはり和服が似合う女だ。胸のサイズもBカップぐらいと慎ましいからかもな。俺は巨乳が好きだが、貧乳も貧乳で好きだ。乳首の感度が高い傾向にあるし、弄り甲斐がある。
縄で身体を縛り上げ、吊し上げる体勢での調教。乳首にはそれぞれローターを付けて刺激し、開通済みの秘部には極太のバイブを突っ込んだ。容赦なく中出ししたので、膣内には大量の精液が溜まっている。
本来は肌の露出など無いに等しい着物も、着崩して着ればエロさを増長する布切れでしかない。胸も、秘部も、脚も、大事な所は全部丸見えだ。太ももには秘部から垂れた愛液が流れ、寧々の喘ぎ声と共に官能的な雰囲気を作り出す。
縛り方は最も有名な『亀甲縛り』。初めて緊縛を女に試すので、オーソドックスな縛り方をしてみた。なるほど、有名になるのも納得出来る分かりやすいエロさだ。右脚を上げた状態で固定しているので、体重を支える左脚に負担がかかる。この体勢で犯し始めてから三十分は経つし、そろそろもう一発中出ししてから体勢を変えるとするか。
「よし、もう一回挿れるぞ〜。ちゃんとマンコに集中しろよ〜?」
「んあっ! ちょ、ちょっと、待ってぇ……ッ!!」
バイブを引き抜き、すぐにイチモツを挿入。貫通するのは二度目なので、膣内はまだ狭い。一回目は中々挿れられず、イチモツを根本まで挿れるのに時間がかかってしまった。それに比べれば、二回目は大分スムーズだ。愛液は十分だし、ピストンもしやすいな。
「ふっ、太っ……ッ! お、奥が……ゴリッて、してるぅっ!!」
「いいね〜、キツいキツい!」
「んんっ! い、息が……できっ、ないっ!!」
「おっと、ストップか。休憩〜」
処女を卒業したばかりの女には厳しい責めだが、手を抜くつもりもない。何故ならこの女は俺に負けた。言い訳も出来ないぐらい、ズタボロに。
十傑の座を奪われ、プライドを崩され、料理人として立っていることすら出来なくなっていた。俺の誘いにホイホイついて来たのも、俺が食戟で出した蕎麦の秘密を教えてもらえると勘違いしたからだ。どこまでも救いようがない。
──だが、それぐらい情けない女も魅力的だ。
言うまでもなく扱いやすく、アリスと同じように箱入り娘として生きて来たので性の快楽にも溺れさせやすい。絶頂にも慣れていないので、一度の絶頂で得られる快感も大きい。
「休憩中だけど気は抜くなよ〜? ほら、クリトリスにバイブ〜!」
「ああんっ!! だ、だめぇっ……! イぐぅッ!!」
厳格な家で育てられてきた女に下品なことを言わせる優越感は、何度経験しても良いものだ。芋っぽい印象を与えるおさげ髪を解いてやれば、美しい大和撫子の出来上がり。しかし、丸メガネはかけさせたまま犯している。視力が落ちて自分の醜態が見えないなんてつまらないからな。
勃起したクリトリスの根本にバイブを当て、振動から逃げられないようにする。身体の芯に響く快楽が寧々を襲う。
「んぎぃぃぃいいっ!!」
「ハハッ、潮吹いたか! いいねぇ、素質あるぜ。寧々」
「も、もう……むりぃ。……むりだからぁ」
「確かにキツいよな。──けどお前、
「……ふぇ?」
犯し始めてから気付いたことだが、紀ノ国寧々は潜在的なドMだ。学園での評判じゃ、冷たい目で相手を罵るドSとか言われてたけど、俺に言わせれば全くの真逆。やめてやめてと叫んでいても顔は笑っている。未知の感覚に戸惑いながらも、押し寄せてくる快楽を拒んではいないのだ。
こんなにチョロい女は初めてだってぐらい寧々はチョロい。美代子に燦徳家の中華食を担当させるように、寧々には日本食を担当してもらうとしよう。俺の女兼、俺専属の料理人として。
「本当はもっとして欲しいんだろ? バカになって良いんだぞ?」
「……ば、ばか、に?」
「そう。バカに。頭悪そうに下品な声上げて、快楽に身を任せれば良いんだ」
「……そ、そんなのぉ、だめに……きまって」
「そういう台詞は真面目な顔を作って言えよ。そんな蕩けた顔で言ったって、意味ねぇから……さッ!!」
「ひぐっ! ふ、深いぃっ!!」
止めていたピストンを再開し、膣内をグリグリと広げる。Gスポットを責めまくり、膨れ上がった亀頭で子宮口を押し潰す。粘膜と粘膜が触れ合う感覚に懐かしさを覚えながら、二発目の射精が迫ってきたことを感じた。
「あ゛あんッ! あんッ! んん゛ッ!」
「ほらちゃんと言えよっ! もっと虐めてくださいってよぉッ!」
「い゛ッ、いじめで、ぐださいッッ!! も゛っとぉっ! いじめてぇぇぇッ!!」
少し誘導してやればすぐに堕ちた。十傑から外れて精神的に不安定な所を狙ったのもあるが、随分とやりやすかったな。
まあ良いだろ、簡単な女が一人ぐらい居たって。言われたことだけを真面目にやって、自分では何も考えられない単純女を依存させるのも悪くなさそうだしな。
「寧々。お前はもう俺の女だ」
「お゛、おんな……?」
「そうだ。これから先、
腰を両手で掴み、イチモツを更に奥へと捻じ込む。亀頭が子宮口を突き破ってしまいそうな程に押し込み、バカになるぐらいの快楽を身体に刻み込んだ。
「う゛うんッ! んぐぅッ! ──イぐぅッッ!!」
「俺の女になるよな? 寧々」
「な゛るッ! な゛りますぅぅッ!」
「良い子だ。じゃあ、追加の精液やるからな」
我慢していた精液を欲望のままに解放。一発目よりも多くの精液を寧々の子宮に直接注ぎ込んだ。これはアフターピルを飲まなかったら確実に妊娠するな。そんなんで退学になられたら困るので、ちゃんと後で飲ませるつもりだけど。
「ふぃーっ、出した出した。取り敢えず今日はこんなもんかな。……ほら、寧々。ちゃんと口で掃除して」
「……んあっ。……んちゅ、じゅぼっ、れろぉ」
吊し上げていた縄を切れ味のいいナイフで切り、寧々の身体をベッドに転がす。そしてそのまま射精したばかりのイチモツを顔の前まで持っていき、お掃除フェラをするように命令した。
寧々は放心状態でありながらも、ぎこちなくフェラを開始。イチモツの臭いを嗅がされて完全に発情している。自分の出した愛液と俺の出した精液で汚れたイチモツを、寧々は幸せそうに舌で舐め上げていた。
「これでお前は俺のモノだ。一生愛して幸せにするからな。寧々」
「……ぁ。……う、嬉しい……!」
天才肌の幼馴染に負け、才能頼りの転生者にも負け、紀ノ国寧々は一人の雌に成り下がった。コンプレックスを塗り潰す圧倒的な性への欲望。それは言うまでもなく絶大で、抗うことの出来ない幸せの魔法だ。
この調子で紀ノ国寧々も、俺無しでは生きていけない身体に作り変えていくとしよう。予定外の攻略ではあったが、これはこれでアリだ。寧々はメガネっ子属性を持つ数少ない女だしな。
「……けど、コンタクトも似合いそうだな」
眼鏡有りと無しの二刀流で楽しむのも良いかもしれない。そんなことを考えながら、今までわざと奪わなかったファーストキスを奪うため、甘酸っぱさの欠片も無いディープキスをした。
「んんっ。……ふふっ、もっと、もっと、キス……して?」
理性が飛んだせいか、急に可愛らしいことを言う。
時計を確認すると時刻は十三時。まだ余裕があるので、イチャイチャするとしよう。飴と鞭は上手く使い分けなきゃな。今まで鞭を打ってきた分だけ、とびきりの飴を与えるとしよう。
「……あんっ、も、もっとぉ……! もっとぉ……!」
十傑キャラ、初の攻略。
紀ノ国寧々──完食だ。
寧々を五時間ほどかけて抱き潰した後、二時間ほどのピロトークに花を咲かせて更に依存させることに成功した。これで寧々が俺を裏切るようなことはなくなるだろう。アリスの時と一緒で、性的快楽を与えてやれるのは俺だけだと念入りに刷り込んだからだ。
体力を使い果たした寧々を自室まで送り届けてから、俺は次の目的地に向かって行動開始。
外に出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。新総帥の話で騒々しかった昼間とは違い、とても静かな夜だ。地面から虫の鳴き声が聞こえてくるほどに。
緋沙子に連絡を取り、薙切家近くの森で待ち合わせる。予想通りというか何というか、緋沙子は号泣したようで目を真っ赤に腫らしていた。薊の野郎、よくも俺の女を泣かせやがったな。俺の女を泣かせて良いのは世界で俺だけだぞ。痛みじゃなくて、快楽でな。
「しょ、正吾……!」
「お待たせ、緋沙子。遅くなって悪かった」
震えた声で胸に飛び込んできた緋沙子。普段では考えられない行動だが、それ程までに追い詰められているということだろう。清涼感のある香りが鼻をくすぐり、女性らしい柔らかさと体温を感じた。
当然イチモツは反応を見せたが、今は青姦なんてしてる場合じゃない。時と場合を考えるのが出来る男ってものだ。それに青姦はリスクも高いしな。やるとしても学園内じゃ絶対にやらない。俺が用意した土地を使って念入りな下準備を……話が逸れたな。寧々とヤッてきたばかりだからか脳内ピンク色だ。ちゃんと切り替えよう。
「薙切さんは? 自分の部屋か?」
「そ、そうだ。……電話でも話したが、私は薊殿に秘書を解雇されてえりな様に会うことすら出来ない。えりな様はお一人で……! 頼む! 正吾! えりな様を……助けてくれ」
俺の肩を掴み、涙目で懇願してくる緋沙子。非常に性癖に刺さる顔だ。薊が原因じゃなきゃ素直に喜べたんだけどな。
「当たり前だ、助けるよ。俺はそのために此処に来たんだからな」
「……正吾」
原作ではアリス、黒木場のサポートでえりなを屋敷から連れ出していた。しかし、この場にその二人は居ない。何故なら助け出そうとしているこのタイミングは原作よりも
原作ではえりなを助けた際に雨が降り、雨宿りと逃げ場を求めて極星寮へと駆け込んだ。大まかな流れを変える気はないが、少しばかりえりなの脱出を早めて俺だけのイベントを起こしておきたいのだ。
「……よし。あの部屋だな?」
「そうだが……どうやって登る気だ? ハシゴなんてないぞ?」
「そんなもんいらねぇよ。──親から貰った足がある」
無駄に装飾された金持ちの家の柱なんて、俺からすれば登りやすい木と同じだ。つま先やかかとを上手く引っ掛け、十秒もかからずにえりなの部屋のバルコニーへと移動した。
「なっ……! ば、化け物か! お前は!」
「おいおい、旦那様に向かって化け物はないだろ」
「だっ、誰が……お、おおおお、奥様だ……!!」
「いや、静かにしろよ」
思わず素でツッコんでしまった。からかって遊ぶ場面でもなかったな。予想より面白い反応をしてくれたから満足ではあるが。
「緋沙子。えりなは俺が連れ出すから、お前は一旦家に帰れ」
「だが……私も……!」
「落ち着ける場所に移動したら連絡する。そしたら来てくれ。えりなの着替えとか、頼めるのは緋沙子だけだからな」
「……わ、分かった。……えりな様を、頼む」
流石に俺との付き合いが一番長いだけあって、それなりに信頼はされているようだ。緋沙子は俺の言うことに頷くと、不安そうな顔のまま森の中へ走り去っていった。どっちかというと俺がえりなを助けられるかどうかというより、俺がえりなに手を出さないかどうかを心配してるんだろうけど。
「……さて」
緋沙子の姿が見えなくなったのを確認してから、ゆっくりと窓に近付いてコンコンと優しくノック。
カーテンの隙間から光が見えるので起きていることは間違いなさそうだ。三回ほど同じようにノックを繰り返すとカーテンが開かれ、部屋の中からえりなが顔を覗かせた。俺と目があった瞬間、すぐに窓を開けてくれた。
「──さっ、燦徳く……んんっ」
「しーっ。静かに。大声出すと見つかるからね」
えりなの口を掌で塞ぎ、声を出さないように伝える。驚かせるとは思っていたので、この反応への対処は容易かった。
「ど、どうして……?」
部屋に居たからかブレザーは着用しておらず、ワイシャツ姿のえりな。思わず見惚れる抜群のスタイルが隠されることなく丸見えだ。緋沙子といいえりなといい、無自覚に誘ってくるのやめて欲しい。その度に理性を働かせて性欲を押さえ込まなきゃならないんだから。
俺は出来る限りのキメ顔を作り、閉じ込められていた姫に手を差し出した。
「助けに来たよ。──さあ、逃げよう」
いいペースで書けてるんで、このまま失速せずにいきたいものです……。
日頃からたくさんの応援ありがとうございます!