人気モデルのヤリチンがクラスの女子をファン食いする話 作:小暮こなり
ある日の放課後の教室。
生徒がワイワイと騒いでいるなか、俺はひとり机の上でスマホをつついていた。
学校には髪をセットせずに来ている。なので学校での俺は、やけに前髪の長いぼっちの不良男子という立ち位置だ。友達といえる友達もいないし、誰かに話しかけられることもほとんどない。というか、人気モデルってのがバレたら面倒なのでこうするしかないのだ。
ピコン、と画面上にメッセージが届く。モデル仲間からだ。
「またか」
内容は合コンの誘い。ファンのかわいい女の子を見繕ったから食おうぜ、という品のカケラもないものだ。いつもならこの手の誘いはリスクが高いので断っていたが……。
先日のことを思い出して仕事スタンプを打つ手を止めた。
……いちおう行ってみるか。
あまり乗り気ではないが、これも彼女をつくるためと自分に言い聞かせ、了解のスタンプを送った。どうか面倒にならないことを祈る。
「ふぅ……」
アプリを閉じて教室を見回すと、ひとつの人だかりができていた。
男子が取り囲むその中心にいるのは……ひとりの女子、藤堂あかりである。
綺麗にそろえられたサラサラの黒髪ロングと、華奢な身体にしては大きめのEカップの胸。整ったアイドル系の童顔で、落ち着いた雰囲気とみんなにやさしいことから天使だの姫だのと言われている。
特に陰キャ男子からの人気があり、なんでもファンクラブまで勝手にできているという噂だ。
藤堂あかりのまわりには、今もファンクラブらしき男子がむらがっている。
「今日もかわいいよ!」「何か困ったことない?」「手伝うことあったら何でも言ってね」などと、モテない男子に質問攻めにされてかわいそうに思う。ちょっとした人気モデルのようだ。
俺も正体がバレたらああなるのだろうかと想像すると、こうして冴えない不良男子を装っていてつくづく正解だったと思う。興味のない女子に囲まれて、お節介な親切を押し付けられてもニコニコとして……想像するだけで地獄だ。
「何かあったら俺たちが守るから!」と親衛隊気取りの男子が言うと、藤堂は引きつった笑みを浮かべていた。
いやいや本人嫌がってるじゃん。気づいてやれよ親衛隊。そういうのが隙になって目ざといヤリチンに奪われるのだ。女心なんて堕ちるときは一瞬なんだから。
……まあでも、俺には関係ないか。どうせ一年もすればどっかのヤリチンに食われるだろ。
ため息をついて机に突っ伏した。
この後も仕事あるし、少し寝よう。
* * * * *
「――霧島くん、ねえ霧島くん」
女の子の声に呼び起され、目を覚ました。
「……ん、なに?」
「スマホ、震えてますよ?」
「ああ……」
寝ぼけながら言葉を交わし、若干の間があって理解した。
思ってたよりぐっすり寝てしまったらしい。スマホの目覚ましにも気づかなかったようだ。
俺の目の前には、さっき男子に囲まれていた人気の女子、藤堂あかりがいた。
うちの生徒にしては珍しい着崩していないきっちりとした制服姿は、藤堂の真面目な性格を表しているようだ。ブラウスとブレザーをパンパンに押し上げるその胸は、真面目とはいえなさそうだが。
ちなみに、霧島というのは俺の本名であり、
「いつも起こしてくれてサンキュ」
「いえ、どういたしまして」
あっさりしたやりとりをしたのち、俺は帰りの支度を始める。
実は藤堂とは、こうして俺が寝坊をしたときに起こしてもらうという関係なのだ。
もっとも、それ以上の関係でもない。クズ思考の俺が、真面目な藤堂を目覚ましの保険代わりにしているだけだ。つけこまれやすい性格の藤堂は、そんなこと考えもしていないのだろうが。
教室には俺と藤堂以外は誰もいなかった。
「霧島くんも……それ、好きなんですか?」
俺があたりを見回していると、藤堂がどこか恥ずかしげに聞いてきた。
何のことかと思いさっきまで寝ていた自分の机を見ると、うちの事務所のイベントチラシがあった。
「あっ」
ヤベっ。内容の確認しててそのままだった。俺を含めた事務所のモデル勢揃いのチラシ。
「知り合いが……かな」
まだ寝ぼけた頭の俺はよくわからん言い訳しか思いつかない。
「そうですか……」
「そ、そういや藤堂さ、あんなに男子に囲まれて鬱陶しくないの?」
この話題に触れられたくないという焦りから、強引に話題をそらした。
少し残念そうな表情も見えたが、すぐに別の表情に変わる。
「え? えーっと、みなさんとても良い人ばかりですし……鬱陶しいというわけでは……。ただ、好きなことも言えないというのは、ちょっとつらいかもしれないですね……」
そう丁寧に答える藤堂の顔は、思ったより暗い色を浮かべていた。
ファンの男子の目があるから、ということだろうか。ただのクラスメイトのためにそこまで我慢しているのは、真面目を通り越して不器用にも思えてくる。
本当は好きな人がいるとか、恋人がいるとか、そんなとこだろう。藤堂だって年頃の女子だしな。
といっても、俺も人のこと言えないか。なんだかんだファンの目を気にして生活しているのだから。
「……まあ、少しわかるかな」
俺はそれだけ言い残し、教室を出た。
後ろで「え?」という声が聞こえたが、別に気にしない。どうせ藤堂とはそんなに関りがあるわけではないのだから。あまり長く話して誰かに見られでもしたら面倒だしな。
* * * * *
合コン当日。
昼まで寝ていた俺は急いで支度にとりかかった。
ワックスで前髪をアップにし、普段隠している額を大胆に出す。あとは適当にあったトップスとジーンズにジャケットを羽織ってしっかりと決める。休日モードの氷室玲の完成だ。
正直、清楚系美人モデルがハマるのもおかしくないくらいイケメンだ。これでセックスも上手くてチンポもデカい。世の中の男のほとんどは俺のことなんて大嫌いだろう。自分でもよくわかる。
電車に乗ると、近くにいた女子高生らが俺のほうを見てヒソヒソ話しているのが見えた。わちゃわちゃしながらスマホを構えられ、今度は写真を取られているようだ。まったく、人気モデルはこれだから……。
電車から降りて道を歩いていると、声をかけられた。
「お兄さん私と遊ばない?」
髪を金髪に染めたギャルのようだった。
胸元を露出し、ぱつんぱつんなミニスカートを履いた、いかにもビッチな女。
時間がないので無視しようと思ったが、逆ナン食わぬは氷室玲の恥。
少しだけ相手をすることにした。
「んじゃ、こっち」
俺は路地裏のほうを指さした。
女は特に気にしないまま、「なになに~?」とついてきた。
陰になる場所を選び、一気に女を抱き寄せた。
「きゃっ!?」
そのままキスをして舌をねじ込む。
女は突然のことに抵抗もできなかったようだ。
「んっ……んぐっ、んんっ~!」
バタバタと手足を動かす女。
しかしモデルとして鍛えられた男の力に勝てるはずもなく……。
最初は少し苦しそうにしていたがやがて……。
「んっ♡ んんっ♡ んん~……♡」
悩ましげな声を上げ、俺の背中に腕を回してきた。
ちょろいもんだ。
とはいえ、時間がないのですぐに終わらせる。
「んっ♡ んっ♡ んんっ!? んんっ~~~~!! んぐぅ♡ んぐぅぅぅぅぅ♡」
びくっびくっっと女の体が跳ねた。
キスの快楽に耐え切れなくなった女が、我慢できずにイったようだ。
俺も十分堪能したので、解放してやる。
「……っ♡ ……っ♡」
アヘ顔を晒しながら夢心地のようだ。いい思い出になっただろう。
「じゃ、俺は用事あるから」
最後に遊び代金として胸を揉み、そう言い残してあとにした。
氷室玲に逆ナンしたのが失敗だったな。
いや、ある意味成功してるか。
そんなしょうもないことを考えながら、ふたたび目的の場所に向かった。
やや遅刻気味になってしまったが、合コン場所であるカラオケ店に着いた。
エントランスでたむろっている集団の中に幹事の顔を見つけたので寄っていく。
「わりい、ちょいと絡まれて遅くなった」
「おー、玲ちゃんきたきた。んじゃ入ろうぜ」
挨拶も軽めにすぐに中に入っていく。
メンツの紹介とかはあとでってことらしい。
さてと、今日の女子はどんな感じかな?
なんて品定めをしようとしたときだった。
――え?
そこには、思ってもいなかった人物――藤堂あかりがいた。